ルパン三世 PART6を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
大英自然史博物館に眠る、始祖鳥のオリジナル。
それが謎めいた依頼人から、不二子が請け負った盗みのターゲット。
探るほどに謎が増え、人智を超えた闇の広がる依頼に、果たして何が潜むのか。
今、秘されしものが翼を広げる…。
そんな感じのうるせぇええ! 第4話では”ルパン”っぽい事いっぱいしたから良いだろ!! な、押井守二度目の登板である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
やっぱり出たよ天使の化石…幻に終わった押井ルパンの中核が、装いも新たに話の真ん中に居座り、化石と剥製が見守る中虚実あやふやな伝奇が、厳かに語られる。
まさかまさかの絵コンテ荒川眞嗣、抑圧の効いたトーンと静謐な画面作りが、不二子を翻弄する天使の陰謀を上手く彩り、奥行きと余韻の残る幻想譚となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
ふわっと浮ついた雰囲気ではなく、重くぬめる冷たさがエピソード全体を支配しているのが、なかなか良い。
お話としては『もう我慢できないッ!』とばかりに長々うんちくが語られ、歴史の闇に秘められた謀略と陰謀、明かされるべきではない悪い夢に不二子が踏み込んでいくお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
はたして何が現実で、何が嘘なのか。
因果律と時間を操作することで、答えを出しきらない質感が面白い。
何しろベラベラよく喋るので、画面は自然動きの少ないものとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
絵画的なレイアウトをうまく使い、キマった絵で静止した場面をよく食わせる語り口は、謎めいて妖しい話運びと良い組み合わせだった。
PART6は凄く美術が良いアニメだけど、こういう話では屋台骨を支えてくれるね。
まーた剥製がいっぱいある場所でダラダラ喋ってて、『見た! ”獣たちの夜”で爺とオッサンがこういう事話してた! これみよがしに固有名詞と年号放しまくってた!』と、異様に興奮してしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
『第4話は(あれでも)我慢してたんだなー…』と納得する、押井汁溢れる長喋りである。
本筋に関係のない無駄足に見えて、あそこの会話には色んな暗号が埋まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
その飴玉を舐めてしゃぶるのも押井ファン(認めたくないけど、今回こういうのやられるとやっぱ…好きだわ…と言うしかない)の楽しみであるが、まぁ七割くらい意味はないので聞き流したほうが、健康には良いのだろう。
化石、あるいは剥製。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
終わったはずのものが未だに残り、死んだはずのものがあまりに美しい形を保つ。
存在し得ないものが存在し、あってはならないものが飾られている。
”神”なる不定形の謎の、実在を信じざるを得ない存在証明。
(画像は"ルパン三世 PART6"第10話より引用) pic.twitter.com/z9CnPbRzJ2
それを回収するべく、ミカエルは人の形を借りて不二子に接触し、ルパンを演じて運命の現場へと足を伸ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
隣りにいる賢すぎる男がルパンではない事実は、鳥と同じ瞳が顕にされることで暴かれていく。
視線の先にあるのは、隠知に秘められた天使の化石。
今回不二子は謎に翻弄される立場であり、虚実のはざまを彷徨う旅人となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
してやられる立場なのだが、ルパンをモノを盗み出す手助けではなく、ヒトを洗い出す要として頼る慎重さなど、プロとしての凄みはよく描かれている。
最新ガジェットを活用する侵入シーンの書き方も、緊張感があって良い。
人間としての出来る限りを尽くす不二子を、翼ある存在は超越的に翻弄する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
幻の中にとらわれている時、犠牲者はそれが幻であることを確認できない。
あるいはそれが人智を超越したヤバい山だと、嗅ぎ分けるところまでが人の領域か。
(今回の)ルパンは浪漫に体重を預けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
シビアな銭金…魂の救いを信じられない愚者の黄金を媒介にすることで、彼は自分を現実に繋ぎ止めている。
だから不二子の頼み通り、足場固めで撤退して現場には足を運ばない。
存在するはずのない”ルパン”を信じ込んだのは、不二子のミスか。
それともらしからぬ夢を見るほどに天使の眩暈に取り込まれ、しかしそれがあり得るはずがないと教える理性も捨てられず、”ルパン”に縋ることにしたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
天使の化石だけでなく、不二子もまた今回、虚構と現実の狭間に立ち続けている。
侵入を果たした後、セキュリティールームから監視する現実の目を欺くのは、不二子の用意したプログラム…であり、おそらくミカエルが張り巡らせた時の魔術である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
真実が暴かれた後、OPのシーケンスがもう一度繰り返され、別の結末に辿り着く今回。
それもまた、天使の特別な策略だったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
はたまた、あり得たかも知れない可能性を夢と見て、現実は別の道を進んだのか。
そうだとすれば、依頼人の真意を探りきれず、まんまと堕天使の化石への鍵穴を開けられた結末と、危うきに近寄らない賢さを見せた終わり、どちらが現実で夢なのか。
ミカエルが語るように、神意は常に図り得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
クリエーターに作り出された存在はそこに疑問を抱かず、『歴史の闇に秘められた、神の存在証明を盗んでこい』と言われれば、そうするだけだ。
このエピソードに、『”受ける”か”受けない”か、どっちが本当なのか』という問い自体が立たないのだろう。
不二子が依頼自体を受けず、物語が発生しないことで今回のエピソードは終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
散々に翻弄された”峰不二子”が、彼女の颯爽としたキャラクターを取り戻して終わる形だが、この時彼女は依頼人の真の名を、既に知っている。
超常的な存在に人の力は届かないが、その名を知ることはその力を制御し遠ざける
ソロモンが魔神を、役行者が数多の鬼を使役しえた魔術の秘奥を、人間でしか無い不二子は最後の最後で突きつけて、天使の謀略から距離をとった形だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
この賢さが『あり得るはずもない一周目』から得た、タイムリーパー的な知識なのか、否か。
物語は語らない。その虚実は、見てる側が決めるのだ。
空を飛び、人の手の届かないもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
鳥と夢は似通った構造を持ち、しかしそれは死せる剥製として…あるいは森にこだまする声としてしか”一周目”では描かれない。
羽ばたくものの姿を垣間見るのは、物語が始まらないことで終わる、そのエンドカットだけだ。
この奥行きの見えない浮遊感、恍惚とした不安が重苦しくモノトーンな画面と上手く噛み合って、いい雰囲気であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
”押井の手癖”といっちまえばまぁその通りなんだが、やっぱ眩暈に翻弄される人間を描く筆には詩情と冴えがあり、肌と心に馴染む。
おじいちゃん、もっと夢のお話してぇ…。
個人的には、異様な眼力のある鳥たちに睨みつけられ、翻弄されるお話の主役が不二子であることは、フロイライン・オイレとしてサイケな幻覚に悩み、自身の起源を虚実のはざまに揺らした『峰不二子という女』と重なる所で、そこが一番面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
このモチーフの共鳴を狙ってやったのか、偶然重なったのかもまた、クエリエーターの図り得ぬ意の奥にあるもので、こっちが勝手に読んで楽しむものである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
不二子は鳥と敵対する。
自由に男の間を、数多のお宝と裏切りを飛び回っているようで、意地に足をつけ地面を這いずり回る。
そんな彼女が同時に、鳥かごに囚われた花嫁にはなれないことも、PART5で描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
古き善きルパン、古き善き押井守へのノスタルジーに満ちているようでいて、ルパン・ルネサンス(と、僕が勝手に言っているもの)以降の生きた流れにちゃんと続く、良い幻想譚だったと思う。
不二子主役の今回であるが、現実主義の泥棒を自任しつつも、お宝には触れないルパンの肖像も、面白く描けていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
知的な皮肉屋で、不二子が陥った罠を賢く避けうる、老成した賢者としての”ルパン三世”。
そういう横顔も、ルパンの多角形を描く上ではとても大事だろう。
『降りるならここしかないぜ』と忠告しつつも、強引に手を引っ張らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
巨額の報酬を山分けしてでも、自分を見込んだ意気。
騙し騙されのライバルとして、仕事に賭けるプライド。
そういうモノの重さが判るからこそ、何かを言っておきたくて、でも道を歪められはしない。
そんな静かな優しさが”ルパン”にあったのは、今回一番良かった描写かな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
ここら辺、ルパン=ミカエルが不二子をコントロールし過ぎなのと、面白い対比よね。
天使は最善を尽くしてなお愚かな人間を侮り飲み込み、人はそこに宿る小さな矜持にこそ生きる。
そんな信頼が、美とか愛とか形のないものには己を預けられない泥棒たち、最後の翼なのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月20日
超越的存在を依頼人にすることで、逆に”ルパン”の人間味、峰不二子の颯爽が際立つエピソードでした。
大変良かったです。
ホームズ編に一段落つきそうな次回も、また楽しみですね。