ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note- 特別編を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
二世のもとに届いた同窓会の頼りは、追憶と復讐を共に届ける。
過ぎ去った過去、淡く消えた夢。
幻燈の只中で、かつてウェイバー・ベルベットであった男は如何にして、懐旧の続きへと進んでいくのか!?
そんな感じの年末恒例TYPE-MOON特別アニメ、今回はⅡ世アニメSPである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
10年ぶりの同窓会を題材にとって、懐かしい面々が元気に大集合。
あのアニメが好きだった自分にとっても、少し懐かしい同窓会のように思える。
本放送時の手触りが残る、良いアニメだった。
ミステリという形式がいい方向に作用しているのか、主人公の人徳の為せる所か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
Ⅱ世は型月作品群の中でも、一番人間らしい情感が宿る作風で、自分的にも大変好みの味付けである。
写真、同窓会、幻燈。
ノスタルジーに塗れた優しい微睡みを、彩る無数の小道具がいい感じだ。
加藤監督とTROYCAの筆先も作風とよくマッチしており、ウェイバーくんの学生時代、ほのかに苦い恋の思い出を遠景に据えた今回のエピソードとの相性も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
ロンドンの情景に宿る湿り気を、スパッと切り取るような垂直方向に叩き落とすレイアウトが印象的。
同窓会にかこつけて過去の罪が暴かれ、クラス全体を巻き込んだ事件が進行していく筋立ても、どこか英国ミステリの味付けを残して、とてもⅡ世らしい運びであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
それがシンプルな復讐劇で終わらず、永遠を微睡む過去への愛着、それを突破していく変化と今に繋がっていくのも、またこのお話らしい。
このお話の主役たるロード・エルメロイII世は、その初出たる”Fate/ZERO”においてウェイバー・ベルベットという別の名前の少年として、主役の一人を努めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
過酷な聖杯戦争において少年は錬鉄され、取り戻せない後悔と不退転の決意をに固めて、己の生き方を見定める。
その結果として、自分が殺戮の片棒を担いだ”エルメロイ”の名を継ぎ、モラトリアムの渦中にいる落第学生の立場を捨てた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
今の彼は既に道を選び終えた一人の大人であり、子どもたちの導きとなる”先生”である。
しかし今回、それが眩暈とともに揺るがされていく。
10年前に家族も魔術も奪われた犯人は、隠した牙で思い出を切り裂き、時を巻き戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
写真の中に捉えた思い出は、かつて恋した少年を中心に拡散し、またウェイバー=エルメロイ自身を引き戻そうともがく。
時を巻き戻し、美しかった永遠の中に微睡む。
それが、犯人の本意である。
その甘やかな眠りは、例えば”Stay night”においてアルトリアが願ったことであるし、その貌を継ぐグレイにとっても理解できる、甘い夢である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
同時に征服王イスカンダルが、ウェイバーとともに進んだ”ゼロ”においてけして望まなかった、危険な停滞でもある。
魔術師よりも人間らしいウェイバーは、幸福だった学生時代に数多、心残りと愛着を定めつつ、けして犯人の隣にはいられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
それはかの征服王の臣下として恥ずかしくない生き方をすると、己の”ZERO”に刻んだ男にとって、けして選んではいけない道なのだ。
しかし彼は優しい男でもあるので、犯人が過去に寄せる郷愁、自分に向ける視線を無視もできない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
共に眩暈に迷い、そこに再生される愛おしさや愚かさ、哀しさをまるごと飲み込んだ上で、ニュクスの卵を割って目覚める道を選ぶ。
断罪の正しさよりも、共に在る優しさを。
この決断が、エルメロイ=ウェイバーとして過去と現在…沢山の生徒とともに未来に進んでいくこの作品の主役を、とても良く照らしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
彼がかつて教室に満ちていた血統主義を乗り越え、停滞し腐敗した同窓会の仲間よりももっと先に進めるのは、そういう甘ったるさが抜けきらないからだ。
色々超常的な小道具は顔を出しつつ、あくまで人間的な動機と感情で話が動く”Ⅱ世”らしく、今回の物語は犯人の動機…ワイダニットの解明が軸となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
それが健気な恋の気配に気づけなかった過去の清算という、こっ恥ずかしい青春ど真ん中になるのが、まぁウェイバーくんである。
彼は写真の中の過去に囚われた犯人≒旧友と隣り合うために幻に飛び込み、その外側に彼の生徒たちを置く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
プライドで背骨を支えている凡百の魔術師には持ち得ない、”頼る”という強さこそが、彼と犯人を未来に繋げる現在へと…今と思い出に満ちた場所へと帰還させる。
そうすることで、不当に過去を奪われた被害者でもある犯人は、より実り在る”人間らしい”未来へと旅立つことも出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
魔術師にしてはヒューマニティ溢れるこういう解決法が、とてもⅡ世らしく、このアニメらしいなぁ、と感じた。
この懐かしさが、一番”同窓会”かもしれない。
今回のエピソードは可愛い可愛いウェイバーくんの爆モテラブコメとして読むことも出来、映像は彼を取り巻く女達がどの距離感で、彼の側にいるのかをかなり残酷に切り取ってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
(画像は”ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note- 特別編”より引用) pic.twitter.com/DODkfrhDl7
窓の向こう側、気づかれることも隣り合うこともなく、思い出を写真に収めることしか出来ない距離感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
真実に辿り着くために同じ部屋に隣り合いつつ、扉を越えて踏み込むものと、一線を画して見守るもの。
『グレイたんつえぇ…』と、思わず呻いてしまうエグさが、しっかりレイアウトに乗っかる。
ウェイバーでありエルメロイでもある青年(元少年)は、魔術師であり教師である事を選んだ今の自分を肯定するべく、旅立っていく友と同じ列車には乗れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
しかしその確かな分断は、犯人が時を巻き戻したからこそ向き合えた過去からの言葉で、しっかり繋がる。
それは青臭くこっ恥ずかしく、しかしとても輝いて見える青春時代を再生し取り戻す…と同時に、そこを超えて未来に伸びている”今”を肯定したからこそ、二人に繋がった橋だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
過去を照らす幻燈を犯人が求めればこそ、ウェイバーでありエルメロイでもある男は、自分が置き去りにしたものに気づけた。
それは復讐よりも郷愁を、憎悪よりも恋慕を求めた、とてもロマンティックな犯行に秘められた想いを、探偵たる主人公がちゃんと気づけたからこそ掴めた、とても暖かな結末だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
ここで、Ⅱ世に隣り合っているのが誰か、という構図取りを残酷に怠けないのが、まぁエグいけども。
しかしグレイが専有するそのポジションだけが、この世に許された幸福ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
離れ旅立っていくこともまた、誇らしく満ち足りた道に繋がっていることを犯人最後の笑顔は告げているし、それは”ZERO”においてイスカンダルと死に別れた時、ウェイバーくんが心に刻んだものではないのか。
魔力があろうとなかろうと、写真に刻まれた思い出は消えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
ただそれは、静止した永遠に微睡むのではなく、それを後景に置き去りにして前に進めばこそ、初めて活きてくる景色だ。
ウェイバー=エルメロイは彼の主から引き継いだその歩みを、嘘にしないために教師であり続け、大人であり続ける。
そんな、彼が既に定め、時に試されながらもけして諦めない生き様を照らすのに、今回の幻燈は非常にいいマテリアルであったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
久々のアニメでの再開がこのように、主役と物語がどのようであったものか、真芯を捉えて強く表現できるエピソードの仕上がったこと。
これは、とても幸福であった。
事件の推移と犯行動機、主なトリックとその打破方法を考えながら楽しめる、魔術ミステリとしての面白さもまた健在だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
超常的犯行手段の存在を前提とした上で、色々思考をめぐらして先がどうなるか、何が暴かれるかワクワク出来るのは、やはりこのアニメの醍醐味と言えよう。
懐かしい面々にも幅広く見せ場があり、キャラと再開し挨拶する楽しさを随所に残してくれたのも、善き”同窓会”だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
個人的には、やっぱライネスとグレイが可愛くてよかった。
二人共ブッチギリにⅡ世LOVEなのだが、その歯ざわりがそれぞれ異なってるのが、可愛くて好きだ。
というわけでファンに嬉しく、それだけで終わらない奥行きとぬくもりを持った、とても良い特別編であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月1日
僕が好きになった事件簿アニメが、懐かしくも新しい手触りで届いてくれて、とても嬉しかったです。
またこの作品アニメで見れたら嬉しいな、と思わせてくれました。楽しみに待ってます。