最果てのパラディンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
ウィルの瞳に満ちた、暗い増上慢。
転生野郎の思い上がりを、泥まみれの友情が強く叩く。
前世の無念、父祖の教え、絆と友情。
よく生き、よく死ぬために必要な心の剣を高く掲げ、ウィルは英雄への道を駆け抜けていく。
その道行きに、眩き光あれかし!
そんな感じの作画爆裂最終回! 領主エンドで一旦幕な、最果てのパラディン”一期”フィナーレである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
実質的なクライマックスは雨中の友情殴り合いで、キマイラ殺しと領主就任はエピローグという感じもあるが、幾度目家のいい最終回であった。
勝負どころでしっかり作画力使うのは、とても良い感じ。
ぶっちゃけ作画は若干ヘロる時もあったけど、伝わるべきは十分以上に伝わってきたし、そういう太い話の骨に整った絵が乗っかると、さらなる馬力がグイと感動を押し込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
最後にこういうボーナスを頂けると、気持ちよく見終わり、また続きを待てるものです。ありがたい。
つうわけで特別な生まれと育ちのチート主人公が、人間味を失った事件解決ロボに墜ちる瀬戸際で、只人代表メネルくんが体を張るところからスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
圧倒的な実力差を無様な拳闘、外された肩で示しつつも、人の強さとはそんな所にはないと、しっかり告げる友情バトルである。
あのままウィルを行かせていたら、”よく生きる”どころじゃない道が待っていたと思うし、それを捻じ曲げて本来の人道に戻す試みは、怪物殺すよりもよっぽど大変である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
メネルはよく気づき、追いつき、体を張って解らせたと思う。
でもそう出来たのは、ウィルが正しい事を彼に施したから。
人を食わすために鬼になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
そういう道を進みかけた時、ウィルもまた父母の教え、神の導き、己の心に従い体を張った。
その善因が彼に戻ってきて、人生踏み外す直前で泥まみれに止めてくれるダチを差し出してくれたのだ。
こういう人生劇場のど真ん中を、ちゃんとやるのがこのお話の好きなところ。
彼我の戦力差だけを見据えて、人間を壊すことも冷徹に計算できてしまう、絶望に沈んだウィルの冷たさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
力で彼を解らせることは出来ないが、んなこたぁメネルには関係ない。
とにかく思いを届かせる。
自分が受け取った温もりを、親友に戻す。
降りしきる雨は冷たいが、男の心は熱く滾っている。
今回の友情バトル、メネルが何を武器に戦い、どういう場所にいるかがよく演出されていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
彼は幾度も地べたに這い、泥に塗れる。
力の優越に驕ったウィルは、高く清潔なポジションを維持して綺麗なままだ。
しかしそこにこそ、最果ての聖騎士が守りたかった人の営みがあり、生き直す意味もある。
無様で弱くて必死で、そんな生者の営みを愛すればこそ、彼は強くなれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
メネルの思い、人生の泥から遠い場所にいるウィルは、彼自身の起源を忘れてしまっているのだ。
ここに親友を引っ張り込むべく、メネルは当たらぬ拳を振るい、肩を外され、自分を的に魔法を打ち込む。
いざ一撃が親友に入りそうになると、ウィルは冷えて清潔な高御座から人間の領域に降りて、本当に大事なものを思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
ここで自分の命を天秤に乗っければ、俺のダチなら思い出す。
そういう確信と期待あればこそ、レジストされた飛礫が自分に飛んでくるよう、細工をしたのだろう。
”意思”を名にし負う聖騎士が、心の領域で上回られたからこそ、道は正しい場所に戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
他人を上から制圧する強さ、一方的に綺麗な場所から搾取する傲慢が欲しいなら、ウィルはグレイスフィールに誓いなど立てていないだろう。
人の持つ力の中で、最も脆く、最も尊いもの。
父母が英雄として名を馳せ、この世を守った”それ”が不撓にして不屈であると証明するために、彼は人間の世界へと旅立ったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
メネルはそれを思い出させるために、圧倒的に格上の親友へと己の心魂を…そこに燃える親友自身を、真っ直ぐに突き出した。
そして勝ったのだ。見事である。
後に吟遊詩に語られる戦場の誉れよりも、この泥まみれで誰も殺さない勝利こそが、”スウィフトウイング”のなし得た最大の勲功なのかもな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
本当に大事なものはこんな風に、個人的で小さくて、だからこそ譲り得ない形をしているのだろう。
そういうモノが、最終話に描かれる。ええ運びや…。
関節外されるくらいは、挨拶のウチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
『ダチとの喧嘩』で納めるには被害がデカいが、それで丸めちゃう度量のデカさ、辺境育ちの荒らくれた魂が、今は頼もしい。
メネルが無傷で収まらないのは、傷も痛みもひっくるめの友情を感じさせ、真っ直ぐで良かった。
普段のウィル(つまりブラッドやマリーが好きなウィル)なら、『腕の一本や二本、治るし良いだろう』とは考えないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
人としてしてはいけない驕り高ぶりに、生きる過程を蔑ろにする振る舞いが、冷たい戦いに…それから醒める瞬間に、上手く宿っていたと思う。
どんだけチートな力を持っていても、『よく生きる』という普遍の難問に、簡単に答えは出ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
こうして迷い間違い、魂を込めて殴りつけてもらうことで、チート転生者も人として当然の道をフラつきながら進むと、体温を宿して教えてもらえる。
このベタな課題と克服のストーリー、好きだぜ…。
というわけで”意思”が正しい場所に戻ったので、あとは勝つだけだッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
弱いからこそ群れる人間が蓄積した、群体としての戦術。
油断なく周囲に目をやり、異変に備え力を合わせる戦い方で、二度目の決戦は進んでいく。
一回目にはいなかった、僧侶や魔術師も抜かりなく動員だ!
フロンティアを馳せる命知らずの戦士たちが、各々の神に誓いを立てながら突撃していくシーン、大変良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
彼らは蛮勇なれども不信心ではなく、より良く生きる縁として、この世界の信仰はしっかり根付いている。
”聖騎士”たるウィルは、そんな営みにアクセス出来る存在だ。
デーモンを倒すこと、人の営みを豊かにすること、信仰を蘇らせること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
具現化した”悪”が渦を巻く南大陸において、これらの営みは”意思”によって繋がっている。
不屈、進行、希望、連帯。
人の持つ形のない力は、このファンタジー世界においては有形力として機能しうるのだ。
善き思いが善き人生を連れてくるという、古臭い夢想に最新鋭の衣装を着せて、説教臭くなく届けてくる姿勢が、僕はやっぱり好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
祈りが力となり、複雑な人の営みが確かに駆動している”もう一つの世界”を舞台にすることで、人の心が持ちうる強さはより鮮烈に、面白く物語を彩る。
”意思”を武器に運命を切り拓いていく物語は、モニタの向こうの遠い英雄譚ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
あるいは、そうあってはいけない。
そういう思いが作り手にあるから、話が一旦幕を下ろすここでウィルは一度”意思”を失い、彼自身が救った親友によって、本来の志と強さを取り戻すのだろう。
人は間違え迷うが、善き行いとそれに紡がれた縁に助けられれば、それを正すことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
そんなファンタジーに堂々正面から挑んでいる所が、やっぱ良いな、と思う。
あらゆる絵空事が、それぞれの角度から”それ”に挑み、己の物語を紡ぐのだろうなと、僕は考えているので。
かくして連帯の力を盾に鉾に活かし、人類の生存領域を確保する戦いは堂々と前進していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
前回ハメられたキマイラの奸智を、ウィルの鋭いINTチェックがぶち抜いていくのは見応えがあった。
マージで《透明化》からの不意打ち許せねぇからよ…防御ペナ-10だぁ!?(体内の冒険者細胞が軋む音)
キマイラ戦は複数回行動カマしてくる大型BOSSを、二人の魔法戦士が絡めて交えつつ刻んでいく面白さに満ちて、大変見応えがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
バフもデバフも総動員、間違えなければ勝てる戦いを丁寧に進めていく様子は、チートで圧倒するのとは別の心地よさがあり、この作品らしかったです。
中BOSSぶっ倒してさぁ本命だ! って思ってたら、レイストフおじさんが抜かりなく先駆けてぶっ倒していたのは、個人的には好きなオチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
ウィルとメネル二人がかりでぶっ倒したキマイラより、更に凶悪だろう邪竜を単騎で押し込む辺り、実力計り知れない感じがあってよかった。
デーモンの巣窟と化した修道院がキッチリ涜神されてたり、そこを復興して信仰の根城に生み直したり、最終話までこの世界における”信仰”を生活の一環として、ちゃんと彫り込もうとする姿勢が見えたのも良かったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
やっぱ邪悪種族は神殿汚してくれないと、”空気”出ねぇからよ…。
というわけで新たな伝説を打ち立て、南進への足がかりを気づきあげたウィルは、当然の帰結として領主の地位へとのし上がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
現実見えてるメネルがしっかり解説していたように、地位とは人間が生きるための様々なシステムの一部であり、またそれを統御する実効体でもある。
聖騎士叙勲の時、建前と儀礼がどういう役割を果たし、実効を持っているか描いたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
ビーストウッズ戦線は”統治”なるものが何を庇護し、何を足場とし、何を期待されて生まれるのかを、結構上手く描いたと思う。
形だけのものと、僕らの実感から疎外されがちな権力機構。
死にものぐるいの生々しさ、暴力と卑劣と理不尽の詰め合わせから”人間”を遠ざけるために確立された、血の通った発明品。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
生きるか死ぬかの開拓地を新章の舞台とすることで、都市とそれを駆動させる様々な機構-政治、典礼、経済、軍備-が、何故必要とされるかを瑞々しく書き直す。
そしてそれはどっか遠い場所に書かれた冷たいお話ではなく、強い意志と人の弱さを兼ね備えた主人公が、熱い血潮と友情で突き進んでいく、心躍る善き物語である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
ウィルは統治者の優越や、中身を伴わない栄光を求めて、危険なフロンティアを駆け回ったわけではない。
よく生き、よく死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
神に立てた誓いであり、己を律する人生訓を実現するために必要なものを、一個一個拾い集めていった結果、領主となるのだ。
人が当たり前に望む、平和と幸福。
その値段がどんだけ高いかを、少年英雄の歩みで書き直すお話でもあるわけだな。
ただ戦闘に勝利したから領主になるのではなく、それを有利にすすめるために…あるいはただ、人が幸せに暮らせるように交易とか安全保障とか政治とか広報とか、戦闘以外のことを沢山やった結果そこまで上り詰めるのも、納得感が分厚くて良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
卓越した武力は、それだけでは危うい凶器。
ワイバーンを殺した”後”にこそ見せ場があったように、このお話は人間が獣にならずにすむよう積み上げてきたシステムの大事な一部として、チート主人公を社会に組み込むように進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
そして英雄の大暴れは、社会に利用されるだけの道具ではない。
それ自体が安全に暮らせる街を生み出し、語られる武勲に希望が沸き立ち、騒乱を沈め日々を安堵する発生源として、ウィルの冒険は大事にされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
個人を包む大きなものと、そこに働きかけられるちっぽけで大事な、一人の人間。
それを書き続けているのは、とても良い。
ウィルの”意思”はただ思うだけ、信じるだけの題目ではなく、祝祷術として傷を癒やし、刃を振るう強さを支える、実効のある力だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
泥に汚れるのを厭わず、受け継いだものの意味を確かめながら進む少年の歩みは、かくして登りつめた玉座の先に、更に広く続いていくでしょう。
それを見れる”二期”を楽しみにしつつ、今は一旦の幕であります。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
面白かった、大変良かったです。
”アンデッド三人による転生者育児”つう、最初の発想に光るモノを感じて見始めた作品でしたが、第一章が大満足のうちに終わった後も、また面白かった。
というか修行時代を終え広い世に出たことで、作者の筆が捉える異世界のシステム、それが守らんとする普遍の価値がよく届いて、大変面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
死者たちの祈りを背負って生者の領域に出てきたウィルが、卓越した実力をどう社会に馴染ませるか。
あるいは、一人間でしか無い”分”を適切に学ぶか。
チートを活かした無双成り上がりの気持ちよさもありつつ、人が人たる所以を多角的に、趣深く描く筆は、新たな舞台、新たな仲間があってこそだと感じました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
話が新しくなったからこそ描けるものに、ちゃんとピントを合わせてお話を仕上げるのは、大事だし偉い。
”なろう”ちゅうことで身構えていた部分もあったのですが、ファンタジーとしての味付けは濃厚にTRPG風味、扱う題材もどっしり腰の落ちたオーソドックスと、肌に合う転がし方でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
やっぱ自分が慣れ親しんでる領分で話が暴れちまうと、お話がグッと身近になってくるよね。
個人の集合体でありながら独自の駆動律を持つ社会と、それに繋がりつつ個別の尊厳を持つ人間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
その距離感がどんなもので、”尊い”と高い場所に置かれ当然視されている価値にどんな手触りが在るのか。
ファンタジー・エンタテインメントでそれを語り直す志が、生き生きと力強かったです。
都市、武力、典礼、政治、交易。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
それら巨大で総体が解りにくい機構が、何よりも守りたい人の尊厳ある生と死。
かなりデカいモノを視野に入れつつ、それが読者を置いてけぼりにしないよう、世間知らずの超級英雄の冒険譚として毎回ワクワク出来たのは、とても良かったです。
”聖騎士”として高潔なウィルのキャラクターには、『そういうもんだから』と予定調和で既に用意されているのではなく、遺跡都市での父母との日々、旅立ってからの出会いと触れ合いで彫り込まれていく生身の魂として、心地よい存在感がありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
主役が好きになれるので、彼を経先に切り開かれていく運命の物語、その舞台となる異世界と、そこに息づく人々もまた、心地よく楽しむことが出来ました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
スタンダードで骨の太い英雄譚、異世界に確かにある社会を堪能できて、大変満足です。
面白かった。
かくして地位と責任を手に入れたウィルの眼前には、また新しい世界が広がっていくでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月3日
そこで描かれる物語に、どんな色彩が宿るのか。
アニメで見れる確約が既に果たされているのは、なんとも嬉しいことです。
二期を楽しみに待ちつつ、今はお疲れ様を。
とても良いアニメで、面白かったです!
追記 この”二度目の青春”感は、転生モチーフとも噛み合ったこの作品の、大事な強みだと思う。
パラディン追記(総評出した後だけど)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月4日
転生者ゆえの”人生”の唯一感への遠さが、泥の跳ねから己を遠ざける傲慢として暴走してたウィルであるが、ダチが泥まみれで体当りしてくれたおかげで、そういう実感が彼に戻ってきた感じもある。
ある意味”死にぞこない(アンデッド)”から人間になった、というか
対等に殴り合い向き合える友人は、如何に父母が偉大でも死人の街では子供に差し出せないものであり、ウィルはメネルと共に進んでいくことで、人らしい幼年期を再獲得している、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月4日
多分それは、恵まれぬ人生を歩んできたメネルにとっても同じなのだろう。
片や人生二周目、片やエルフ混じりと、頑是ない子供時代とは縁がないように思える彼らだからこそ、人間に与えられて当然の時代を取り戻していく姿には、みずみずしい尊さが宿っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月4日
ベタな場面なのだが、そういうキャラ個別、作品独自の息吹が大事なシーンに宿っているのは、とても良い。