鬼滅の刃 遊郭編を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
地底に巣食う眷属を呼び戻し、堕姫は新たな力を得る。
断ち割られた郭に満ちる、悲苦と惨劇の匂い。
炭治郎の血が泡立ち、理を越えた力が総身に宿る。
敵を…そして己を追い込む死闘に倒れ伏した時、もうひとりの鬼が総身に怒りを宿し、戦場に立った。
そんな感じの竈門兄妹総力決戦、闇夜に血が飛沫く遊郭編第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
思い返せば数話前、艶やかに吉原の夜を彩っていた明かりが酷く遠く、敵も味方も血みどろの修羅場である。
この凄絶な感じを日常との対比で食わされると、”鬼滅”摂取している感じがして嬉しい。
いやまぁ、血煙色を増してなんとも壮絶ではあるのだけども、その容赦の無さあってこその作品、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
帯を呼び戻し、鬼の力を増した堕姫の一撃が郭を断ち切り、一瞬で日常が地獄へと変わる。
上弦の名は伊達ではなく、その異能の前には人名も塵芥…
という、力が全てを支配する身勝手なルールを、炭治郎は認めるわけには行かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
唐突に親を殺され妹を鬼に変えられ、何もかも奪われてなお…だからこそ、奪われぬ力を得て誰かを守る。
そういう決意を固めた少年にとって、堕姫の巻き起こした地獄は許されざるものである。
瞬きも呼吸もしない修羅に己を追い込む前に、しかし炭治郎は堕姫に問う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
他人を踏みにじって顧みない心は、変わることがないのか。
踏みにじられる側だった苦しみを、足下の犠牲者に寄せることはないのか。
何故鬼は、己の起源も人であった弱さも憐れみも、皆忘れてしまうのか。
この問いかけは堕姫に埋め込まれた無惨の細胞に、深く刻まれた恐怖を呼び覚ます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
史上最強の剣士であり、全ての運命の始まりでもあるかの男もまた、鬼は何故人になれないのか問いながら、その刃を奮っていた。
鬼は人には戻れない。
その不可逆がこの世の鉄則であり、鬼の定め…のはずだ。
しかし炭治郎は身近に、肉食らう牙を竹筒で塞ぎ、つづらに身を縮めて人であろうとする鬼を知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
争い、奪い、餓え、憎む。
人の間近にいつでもある鬼の住処を、抜け出る術を知っている。
炭治郎もまた、鬼になっておかしくない境遇を抜けてきた。
堕姫が炭治郎の詰問を跳ね除ける言葉は、後にさかしまに彼女自身の過去を襲う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
力ある怪物と己を定義し、人の弱さと哀しさを遠くに跳ね除けたとうそぶいても、その魂を定める地獄。
別に鬼がいようといなかろうと、人は人を騙し、奪い、憎み、殺すのだ。
欲界吉原は、そんな業の掃き溜めでもある。
例えばカナヲが身を置き、蝶の姉妹に手を差し伸べられて抜け出した、この世の餓鬼道。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
そこから抜け得ぬものがいて、業の引力に惹かれて鬼になるものがいる。
そうなってしまえば、もう己が弱く苛まれる側だったことは忘れてしまう。
慈悲の心を置き去りに、苛み奪うルールを再現する側に回っていく。
炭治郎も数多の闘いを抜けて、鬼なるものが改心の余地なき外道であることは、よく知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
それでもどうにか、道を引き返せぬものかと希望を載せて、問いを投げる。
堕姫はそれを跳ね除け、事態は死闘へと突き進んでいく。
聞く耳、戻る足が在るなら、鬼は鬼にならぬのだろう。
それでもなお岐路を尋ねるのは、炭治郎自身の菩提心であるし、鬼となってなお人であろうとする妹の運命を、悲観したくないが故でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
二度と人の言葉を話せず、光の下を歩めぬとしても、血肉を沸かす惨劇の業に押し流されず、弱者を苛む側には落ちない。
禰豆子を鬼には落とさない。
そんな細い道を進んでいくためにも、炭治郎は鬼が元々人であり、人に戻りうる可能性があるのだと確かめざるを、えないのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
ここら辺人道をまっすぐに歩みつつ、個人的でエゴイスティックな垢が微かに香って、優等生の人間味…といった味わいがある。
さて未完成のヒノカミ神楽を携え、力を増した上弦に挑む炭治郎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
血みどろに目を見開き、人間の領分を越えた速度と精度で斬りつける凄みが、超絶作画に宿って圧巻である。
この息詰まる感じが、過剰なモノローグで逃げるのは、やっぱもったいなく感じるねぇ。
一切瞬きも呼吸も止め、鬼を殺す鬼の表情…あるいは明王の憤怒を浮かべながら、炭治郎は難敵を追い込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
底しれぬ怪物感が、『弱い人間なんて止めたんだよ!』と啖呵切った梅ちゃんではなく、彼女を追い込む決死の剣士側にあるのは、なかなか面白い。
ヒノカミ神楽を舞う炭治郎は、いかさま人間味がない殺戮マシーンのように思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
本当に怒った時頭に血が上るのではなく、体が冷えて声が低くなる所に、炭治郎の殺戮者としての資質を強く感じたりもするが。
呼吸…鬼殺隊の戦闘技術を支える根幹すら忘れ、救えぬ鬼を断つ刃は、人の命を削る。
後半足で自分も相手も三途を渡る直前で、今はなき妹の声が炭治郎に呼吸を取り戻させ、彼は殺戮の機械であることを止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
この作品には霊も冥府も存在するので、死地にかかった声はすなわち、ずっと炭治郎を見守っていた家族の霊、そのものの助けである。
後に息も絶え絶え、聴こえてくる弟の言葉が告げたように、竈門家の人達は兄たちに勝つことよりも、人であることを望む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
これは優しき希望であると同時に重い枷で、炭治郎も禰豆子も人斬りの機械に墜ちることなく、相打ちで死ぬことも許されず、地獄を越えて勝ち延びることを願われている。
それが難しいから、人は不可逆に鬼に落ち、斬られることでその悪逆を止めてもらう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
殺すか、殺されるか。
それしかない無情の道を越えた場所に生き延びて進めと、死者たちは厳しく問いただしてくる。
炭治郎の血を焦がした憤怒は、彼が人として生きる道を閉ざしかけた。
それに背中を押され、人でなしの鬼切りとして生きる道を、死者たちは許してくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
これは一本角を豊かに生やし、上弦クラスの再生能力を覚醒させた禰豆子も、また同じである。
猛獣のような唸りを上げる禰豆子の脳裏にも、激しい怒りが燃えている。
家族を無惨に奪われたものとして、奪うものを殺す一匹の修羅。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
そんな暴走する正義の化身であることを、死者たちは許してくれない。
炭治郎は冥界から受け取った想いを傷だらけの体で運んで、禰豆子を人に戻さなければいけない。
自分がそうしたように、戦う機械を止めなければいけない。
激怒パワーとヒノカミ神楽…あるいは鬼としての覚醒と開放でもって、堕姫を圧倒して終わりにしない話運びには、戦うだけの機械であることがすなわち、答えであってはいけない作品の矜持を感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
堕姫が踏み越えてしまった一線を、越えないまま鬼を超えていける力は、どこから来るのか。
未完成のヒノカミ神楽で圧倒し、また翻弄もされる今回の戦いは、そんなことを問いかけもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
天元が忍びの韋駄天足で駆けつけてはいるものの、兄妹二人きりの激戦はまだ続く。
血濡れた刃は、果たして何を奪い、何を救うのか。
それを問いただすのに、高密度のアクションは良い筆である。
やっぱ暴力表現が陰惨でグロテスクであることが、鬼がぶん回すもの、人が落ちてはいけないものを上手く照らしてるな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
あってはならないこの世の地獄が、鬼にかかると簡単に生まれる。
それをせき止めるべく振るわれる刃は、敵のみならず己も追い込んでいく。
それでも、進み戻ることが出来る道はあるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
答えは闘いの中にしかない。
剣の森の菩薩道、血塗られた阿羅漢行は苛烈さを増しながら、まだまだ続く。
次回も楽しみです。
あ、煉獄パパの憑き物が落ちて、折り目正しい謝罪と激励の手紙が届く場面は、『鬼は戻れず、人間は戻れる』という作品の基本ルールを別角度から照射してて、面白いカットインでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
あんだけ荒くれていたものも、炭治郎の思いで殴られ、粛と人生を正すことが出来る。
そこには愛別の苦しみがあり、無力への痛みがあり、さんざん酒毒と後悔に溺れてなお進む、人の強さがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
それは上弦の圧倒的な実力に…それが再度生み出した惨劇に震えながら、強敵に追いすがり刃を構えた主人公と同じだ。
そういう青年の拳だから、腐れた父の生き直しスイッチを押した、とも言える
荒れてた頃の煉獄パパは、家族への愛とか戦士としての勇とか、自分を尊足らしめていたものを、すっかり忘れてしまっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
しかしそれが喪われる苦しさと向き合い、奪われてなお燃え盛る事実を認めたことで、彼は生き直すことが出来る。
それが出来れば、人は鬼にはならない。
これが無惨の血を受けたという、物理的な”種族”の問題ではないことは、禰豆子と珠世…あと浅草のおじさんが証明しているわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月11日
奪い奪われる修羅の巷、鬼に墜ちるが当たり前。
梅ちゃんはそううそぶいてあのザマであるが、菩薩の道は遠いからこそ、尊いのかもしれないね…。