ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
レーニアに激高し襲いかかるノエを、クロエは一蹴する。
その脳裏に蘇る、旧い記憶。
人の世に隠れて生きる不死者として、狂った世界を是正する。
一族の悲願は冷たい雪城の中で、ついに形を得る。
世界を書き換えるダブシェの機械が、今まさに雷鳴を轟かす…ッ!
そんな感じの氷の姫君ご事情公開、ヴァニタスアニメ第15話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
謎めいたクロエがどんな存在か、ガーッと語る…と同時に、今まであんま彫り込まれなかった『人間社会にとって、吸血鬼はどんな存在か』が見えてくる回であった。
ここまでは、吸血鬼側からモノ見るお話が多かったからね。
クロエはバベルの余波で突然吸血鬼化した元人間であり、城に閉じ込められて外には出ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
吸血鬼だけで構成された”アルタス・パリ”も、それが生まれるきっかけとなった絶滅戦争も知らぬまま、父の祈りが一族の悲願へと変じた装置を背負い、孤独に生きてきた。
そのメンタリティは、どっちかっていうと人間より、少女よりなのかなー、と思ったりもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
ノエにもジャンヌにも可愛い幼年期があり、ルスヴン卿ですら戦争を経て老ける。
この作品の吸血鬼には時の刻みがあるが、クロエは時間から切り離されたように、お城の中で止まった時間を生きている。
これが人間界に身を置く吸血鬼だからなのか、”若芽”を語源とする彼女に、あまりに皮肉な固有の停滞なのかは、現状わかんないけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
今までヴァニタスたちを揉んできた吸血鬼と人間、吸血鬼同士の長い闘争、それを経て構築された社会から、切り離された存在である。
そんな彼女は狂気の女王・ネーニアと親しく触れ合い、名前を捧げて願いを叶えようとしている…ように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
ジャンヌが教えてくれた世界の広さと美しさに、父が祈ってくれた幸福の再獲得を、歪んだ手段で掴み取ろうとしているのか。
果たして、彼女が”獣”なのか。
曖昧な白昼夢を間に挟むことで、獣の犯行をクロエ主観で確定できないように描いているのは、なかなかうまい描写であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
果たしてクロエは、何を望むのか?
それがジェヴォーダンを舞台にしたこのミステリで、いちばん大事な問なのだと思う。
まーだ、材料たらねぇな…。
あんだけ強かったノエを一蹴する、永生者の実力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
あのビンタは味方を変えると、勝ち目のない強敵に襲いかかった若造を止めた、とも思える。
『食べ残しを始末する』と言いつつ、ノエにもムルにも優しいジャン・ジャックと合わせて、どうにも”悪役”という感じがしきらない。
無論このいい人オーラを逆手に握って、悪辣な邪悪さが迸ってくる可能性もあるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
まぁ声も釘宮だし、超実力派の学者系ロリババァだし、エゴに塗れた卑しい悪役より、気高き何かを秘めた永遠の少女でいて欲しい…かなぁ。(個人的嗜好で客観判断マン)
クロエにとってダブシュ家の一員であること、誇り高き生き方を求められる貴族であることは、どんな意味を持つのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
最初は一人間として、我が子の幸福を願った世界改竄の悲願は、時の流れの中で実体を失っていく。
代替わりするダブシェ当主の、裏に影に君臨する忌み子であり守護神。
継ぐことも終わることも許されず、狩られるべき異物として人間社会から出ることもなかった旧い吸血鬼の心には、一体何が残っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
回想シーンに、彼女の孤独を唯一埋めているはずのジャン・ジャックが、一度も登場していないことが逆に、疑問を強くしていく。
今回暴かれた事実はかなり編纂されたものであり、まだまだ見えないものが多数残っている感じはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
しかしクロエが語った時の重さ、軋む心に嘘はない…と感じた。
問題はネーニアが誘う狂気の救済を、跳ね除ける気高さが貴種に残っているか、否か、だ。
クロエの真名がどんなものであれ、それを明け渡すことは”クロエ”という個人の名だけでなく、父から引き継いだダブシェ一族の姓も蔑することになるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
城に秘された一族の太母として、当主たちの生き死にを見守り続けただろう彼女が、寂しさに家名を売っぱらうことをするかなぁ、という感じはある
このお話では名前を改竄し訂正することと、怪物となる病を治療する行為が魔術的≒科学的に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
名前は怪物化する個人のものであると同時に、それが連なる血脈の…流れて繋がる時に摩耗しない、確かな思いの証でもある。
クロエは父の祈りを、いまだにしっかり覚えている。
たとえ怪物的な悲願へと空洞化し、その担い手が皆去っていっても、世界を改竄し人間に戻る装置は、彼女にとっては愛の証であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
そして真の貴族は、個人の感情を押し殺し、尊き勤めを果たすべく鍛錬されている。
旧き吸血鬼として、ジェヴォーダンの領主として、情に溺れぬ強さを維持しているか。
あるいは人間世界にとどまらざるを得なかった鬼として、長い時にも愛を忘れず、誰かを思えばこそ戦える人なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
ここら辺を、この回想の後に見定めたいところだ。
ノエすら屈したルスヴン卿の接吻を、跳ね除ける気高さ。
彼が諦めてしまった融和を、孤独の中未だ抱きしめる強さ。
そういうモノを印象づける過去回想かなと、僕は受け取った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
オーガストを名乗っていた時代の、両目が揃った青年は大層な理想主義者だったと分かって、寂しくもある。
戦争に片目を奪われたとき、彼に見えている世界は一変したのだろう。
夢は反転し、祈りは呪いに変わり、人を呪う”吸血鬼”が生まれた
その願いが吸血鬼社会と人間社会の完全な分断…あるいはどちらかの消滅にあるのかなと、考えたくもなる回でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
ここら辺は”獣”編が終わった後に、話の真ん中に据えるネタなんかなー。
祝福と呪詛が背中合わせである描写が多いのは、”吸血鬼”の話としていい感じだ。
世界最古最大の”名前の混乱”であるバベルを冠する魔術災害で、ネジ曲がってしまった世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
その真実の名前を探り当て、『吸血鬼がいる世界』という病を治療する…と考えると、打ブシェ家の悲願は主人公の医療行為と、通じ合うものがある。
歪みは正されねばならない。それは間違っているから。
しかし歪みとされるものにも、愛と幸福がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
それがあればこそ、ただ狂っているよりも強く歪む、ということもあるだろう。
そういう作中のルールを考えると、狂気の中心にいるネーニアの正体…真の名前もまた、探られ暴かれ正されるべき”病”なのかもしれない。
ルスヴン卿のキレっぷりを考えると、吸血鬼社会の不在なる中心である女王こそが、その名前…って感じはする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
影胞子に外見が歪み、声にも強いディストーションがかかったネーニアは”誰”なのか。
世界に歪みを広げる彼女を、歪めたのは誰か。あるいは何か。
それが世界の理だとしたら、それすらもヴァニタスの書は…あるいはダブシェの機械は書き換えることが出来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
”獣”限定の狭い事件に見えて、吸血鬼という存在、バベル以降歪んだ歴史の根源に近いクロエを楔にして、お話の中心に深く突き刺さる味わいが出てきた。
彼女はお城に閉じ込められ続けた籠の鳥なので、人間と吸血鬼がどんな戦争をして、社会がどう変化したかを知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
ルスヴン卿の元老議員就任すら、機械じかけの代理人からの手紙で知るのだ。
…”吸血鬼ヴァーニー”とは、また古い所からネタ引っ張ってきたね。好きよ。
しかし”アルタス・パリ”に下がらず人の世に生き続けたこと、人間から吸血鬼に変じた古い種族であることが、若造には見えないものを掘り下げもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
作品世界を語る新たな証言者として、クロエはとても興味深く、魅力的なキャラクターであった。
声も釘宮だし(結局そこ)。
ヴァーニー卿はなぜ、古馴染みであるクロエとヴァニタスを接触させたいのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
彼が持つヴァニタスの書は、個人レベルで歪められた”名”を書き換え、あるべき姿に正す力を持つ。
『名前の是正による改竄、是正』という意味では、ダブシェの機械と同じ能力を持っているわけだ。
同じワールド・リライターとして二人をぶつけることで、何らかの変化を期待しているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
はたまたジャンヌと同じく、過ぎ去った時に微かな痛みを抱え、座視できずに手を打ったのか。
情報屋達の見えざる依頼人の気持ちも、また気になる。
情報開示回だが、逆に謎が増えるな…いい作りだ。
クロエとダブシェの機械が舞台に上がったことで、バベルによって歪まされた世界(唐突に吸血鬼したクロエは、その無垢なる犠牲といえる)が正さなければいけない歪みとして立ち上がってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
しかしネジ曲がってもなお、2つのパリは喜びに満ちて、とても綺麗だ。
”中世”を我々の歴史とは別の形で終わらせたバベルから、もはや幾百年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
繰り返す時の中で人は必死に生きて、代と思いを重ねてきた。
世界改竄という強い力は、その上に乗っている小さな幸福と悲しみもまた、全部ひっくり返す第二のバベルではないのか?
そんな疑問も湧いてくる。
『だって、それが悲願だから』と思考停止し、機械の一パーツとしてクロエが動くと、非常に危うい状況である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
しかし彼女は、父の祈りを覚えている。
自分が人間であったこと、ダブシェの家に生まれ血を継いでいく立場にあることを、忘れずに一人で生きている。
そこに、逆転の鍵がある…か?
そんな事を考えさせられる、良い情報開示エピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
やっぱ謎の鍵はクロエの心にこそあって、ジャンヌは彼女に新しい世界を見せた特別な存在として、力強く踏み込む定めにあるんだろうな。
そこにヴァニタスやノエが、どういう助けを…あるいは主役としての存在感を示せるか。
そして不自然な空白として描かれている、朴訥なるジャン・ジャックが今後、どういう仕事をしてくるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
そこら辺に注目して、今後を見守りたいと思います。
世界設定レベルでもキャラクター個人でも、謎と真実がたっぷり詰まったエピソードが、それに相応しい雪の城で進展してくの、見てて楽しい。
”名”を探る物語である以上ミステリの側面は強くあったわけだが、『ジェヴォーダンの獣』という史実伝奇をネタに取ったことで、それを掘り下げる力がより強くなった感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
謎めいた永遠の少女、雪に閉ざされた城、正体不明の獣。
座組の時点で雰囲気満点だったのを、こう活かしてくると嬉しいね。
世界の謎と同じくらい、個人レベルの感情のうねりが魅力的に描かれる話なので、今後もビシバシ暴れて欲しい所だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年1月30日
とりあえずヴァニタス一行が城にたどり着いた時、大きく話が動きそうです。
囚われの姫様ポジションにあるノエの活かし方含め、次回も大変楽しみです。