東京24区を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
死者からの頼りが教える、豪華客船爆破テロ。
それを阻止するべく、RGBの三人はそれぞれの道を進んでいく。
遅効性の救済か、即効性の絶望か。
泥沼のような現実に爆薬が溢れ出す前に、秩序の維持者達は社会の患部に外科手術を施す。
果たしてその選択に、余地はないのか?
そんな感じのクナイエピソード後編、赤と緑を決定的に分かちそうな一撃が打ち込まれる、東京24区後編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
グラフィティとクラッキング、どちらも既存の法体系、秩序構造では反社会的行動と扱われながらも、どこかに芸術的側面を残す営為。
人間の心を天国に吹き飛ばす絵と、憎悪と快楽に落とす麻薬
ランちゃんの天才性がクナイの嫉妬と孤独を呼び込み、説得完了して120点取るのではなく、予防措置知的に射殺して80点取る結末に繋がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
クナイが新世代の音楽アプリという、芸術のプラットフォームに自分の可能性を見出していたのが悲しい。
彼は幼馴染と対等のアーティストでいたかった。
しかしより善い目的に使えるはずのツールは電脳麻薬のプラットフォームとなり、24区から私欲を吸い上げるための政治的爆弾として利用された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
世界を変えてしまうほどの技術が荒野に生まれた時、大資本がそれを吸い上げ、理念なき道具として使い潰してしまう。
ベンチャー倫理の問題も、ちょい絡むか。
死者からの便りが未来を教えた時には、様々なものがもう時間切れで、そこに刻まれたタイムリミットよりも前に、状況を変えうるチャンスは終わっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
RGBの友情、それが体現する秩序と自由の対話に大きなヒビを入れるだろう今回の決着は、実は予言機械に頼りきりだと解決できなかった。
クナイの芸術家コンプレックス、親友への拗れた感情を早めに理解し、人間関係の爆弾を解除しておけば、こんな悲劇は起きなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
あるいはシャンチータウンを取り囲む不公平を是正し、腐敗を一掃しておけば、犯罪の芽は事前に積めた。
そんな高所からの見方は、確かに正しかろう。
しかし理念だけで現実は動かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
『こうなるのが正しい』と分かっていても、豪華客船に腰を落として弱者の血を吸う特権階級は既存の秩序に保護され、公平に振るわれるべき正義の裁きから逃げていく。
そもそも24区、公的な秩序維持機関、正義執行機関が存在してないしね…。
そんなままならない世界で、爆薬と麻薬はインスタントな答えとして、一定以上の説得力を持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
アートで心を動かして、それが世界を変えていく
ランちゃんの綺麗な理想は確かに正しいが、クナイが指摘したように遅効性だ。
それよりもっと手っ取り早く、もっといい場所に移りたい。
クナイを地獄に引きずり落とす道具として、”エレベーター”が象徴的に使われていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
足が悪く、認知症も進行している祖母(シャンティタウンに押し込められた弱者の結晶体)には、アナログで当たり前な階段での上り下りは辛すぎる。
本来ならば、”公”がその弱さを補助し、上り下りを助けるべきだ。
しかし番外地にも、経済論理が支配するその外側にも、エレベーターを公設する存在はいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
それが欲しければ常識を超えたマネーで買い上げるか、それを持っている存在と取引するしか無い。
エレベーターは社会の上層と下層を繋げる、悪魔の階段でもあったわけだ。
”D”をキメてたクナイの瞳は、死者のメールを受け取ったRGBと同じく、拡張された色合いに染まっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
主役たちに異能を与える存在と、今回の事件の根本…音楽的治療薬として生まれた存在を電脳麻薬に変えてしまったハッカーは、同根の存在なのだろう。
テクノロジーは、人を天使にも悪魔にもするのだ
となれば、人間とその社会を変えうる技術に倫理の軛をつけるしかないが、高度な自由を手に入れた経済と情報通信技術は、悪徳を開放していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
警察権力も犯罪組織も、既存の枠組から外れ私的存在となっている24区には、そういう社会的下層だけが存在しているわけではない。
24区外の権力構造と結びついた資本は、半グレやハッカーが思いつくよりも悪辣に番外地を包囲し、自分に泥が飛んでこない安全地帯を確保した上で、利益を吸い上げに来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
今回の事件、表面上は『スラムのクズがテロを計画した』で終わりだ。
コウキは事件の裏にある不可視の構造を、冷たく切り捨てた。
公権は己に都合の悪いものを含めた生きとし生けるもの全てではなく、その秩序に従順な”良き市民”だけを助ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
カルネアデスが突きつける二択よりももっと前に、もっとアナログな形で存在している、人間社会の厳しい選別。
では悪い場所で、”悪い市民”にならざるを得ないものはどうすればいいのか。
放置すればそこに溜まった不平とエゴが、毒薬なり爆薬なりの形で世界を壊していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
コウキが身を置く秩序維持組織としては、強制的な暴力を用いてでも、既に正しいとされているものを正しく維持していくことが、自分たちの答えになる。
何が正しいのか、根本的な所に悩んだら、警察は警察出来ないのだ
この固着した安定感は、ランちゃん達庇護されず、自由で、根本的な疑問を抱けるノマドたちの対極に位置する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
環境的にも塵一つなく整えられ、監視と裏腹の安全に守られ、仕事も幸福も存分にある場所がスラムを処する時、一番楽で確実なのは銃弾だ。
今回コウキは、そんなお仕着せに従う決断をした。
グルフェスの時より連絡を取り合い、コミュニケーションしているように見えるRGBだが、ランちゃんは身内可愛さに情報をミスリードし、コウキはそれを読んでランちゃんを犯人への道糸に使った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
世界を変える同志のはずなのに、知恵者たちは騙しあい、出し抜きあったわけだ。
それは彼らが、『俺頭ワリぃけど、とにかく突っ込めば良いんだろ?』なシュウタと異なり、既に自分なりの”正しさ”を見つけているからかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
シュウタはカルネアデスの押し付ける二択が気に食わず、どうにかベストな答えがないか必死に探し、今回も決定打を打てない。
その不定形の迷いは結論を決めすぎない柔軟さでもあって、多分そこにこそ答えがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
人間はどうあるべきで、社会はどうあるべきか。
既に答えを見つけ活動しているランとコウキは、それに自分を縛り付けて、新しい答えに柔軟に対応する可能性を殺してもいる。
同時に”D”(の背後にいる、電脳パワーで人間の精神や能力をどうにか出来る存在)に心をぶっ壊されたクナイに、即効性の説得は届かなかっただろう、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
時間制限付きの倫理問題を前に、コウキは最初から対処を決めていた。
ランの甘い迷いに漬け込み、リアルな解決策を間に合わせたのだ。
80点の答えを選んだ…あるいは選ばされた今回は、作品にとって重要な”選ぶ”という行為が切り捨てるもの、止めて守るものを、結構鮮明に描いたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
『なんか気に食わねぇ』で現場に突っ込んだシュウタは、結局事件の真相も理解らず、根本的解決にも迫れない。
突如噴出したかに見える社会的患部を前に、切り捨てず思いを汲み取りたかったランちゃんは、警察組織のアンカーとして利用され、シンプルな決着を叩きつけられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
最初から揺るがず、友達の嘘を見通し信じる結末を掴んだコウキが、今回の勝者…という話でもないだろう。
コウキが今回の冷たい結末を、自分の信じたものを真実守るための必然として、意思を込めて選び取っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
それとも、『これが正しいとされてるから正しいんだ』という思考停止で突き進んだのか。
そこは今後、コウキを主人公にしたエピソードの中で暴かれていくだろう。
あり物の価値観に乗っかることは、自分を支えるもの、支えられる自分を疑わずに済むので、ある意味楽である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
アーティストであるランちゃんは、そういう哲学的内省あって初めて”自分らしく”いられるけども、コウキはとことんまで何かを疑い、何かを生み出す行為は苦手なのかもしれない。
でも結局、かなり難しい問題をアニメで…エンタメで扱おうとしてるこのお話はそういう思弁を、キャラクターに背負わせなきゃ上手く描けないわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
脳筋バカなシュウタを今後、どんだけ素朴な哲学者として説得力持たせて書けるかは、かなりの勝負どころだと思う。
ランは親友を鏡にして、芸術家としての自分に、ギリギリとどまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
シャンティータウンの現状、それを取り巻く既存の権力と陰謀は、彼らを簡単にテロリストにする。
人の心を揺さぶるアートより、爆弾と麻薬のほうが作りやすいからな…
”ラン”は既存秩序をひっくり返しかねない”乱”でもあるんだろう
ならば”公器”でもあるコウキは、公なる器に何を載せ、何を排除するのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
それを選ぶ傲慢は、何によって保証されるのか。
自由であり、エレベーターに見捨てられた下層から必死に声を上げることの難しさを、クナイの死体で描く今回は、一つの答えでありまた問いかけでもあるだろう。
現実なるものは、ありとあらゆる価値観、希望をすべて叶えてくれる楽園ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
衝突し合う欲望と願望が、どうすれば最適の答えにたどり着けるのか。
”公”なるものはそれを常に考え、実行する責務がある。
そしてそれを体現するコウキは、クナイを切り捨てた。
それがクナイに繋がるシャンティタウンの矛盾、そこに確かに生きてる人たちの願い、あるいはそれを届けるために必死に足掻く親友をも切り捨てることになるのかは、今後の転がし方次第だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
つくづく適切に”公”であることも、そこに適切にアプローチできる”私”も難しい。
そう思わされる回だった。
カバ先のレガシーをWebで繋げて広げる、梢ちゃんの小さなホッコリが、今回描かれたドラッグとテロルとスラムの重たい現実に、どんだけ答えとなるか、俺にはよく分からない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
それは確かに尊い決断だし、無力な人間に出来ることはそれくらいの、小さな一歩なのだろう。
しかしRGBが否応なく直面しているのは、様々な階級分断と差別、搾取が渦巻く広い24区であり、人類のあり方を変えてしまう新たなテクノロジーと、古臭い倫理問題が癒着した厄介な現状だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
そこでは人が否応なく死ぬし、時間は限られていて問題は多い。
こんくらいシビアな状況を描くなら、もうちょいポップじゃない道具立てでも良かったかなー、と思ったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
さて、テロリストが射殺されても世界は動く。
商店街は明日も、日常ドラマを演じるだろう。
その無情も含め、どんな温度と深度で話を紡いでいくか。
次回も楽しみです。
追記 例えば『美少年三人の反目と友情で特定層をフックしてグツグツ煮込もう!』みたいな色気が、畢竟のところまでブチ抜けてない及び腰な感じとか、色々含めて現状生煮えな感じはある。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
5話まで描かれてみるとこのアニメ、結構フツーで真面目な問題を取り扱ってる、結構腰のしっかりした話だとは分かってくる。
そういう普遍の倫理を問う時、24区という特殊な場所の、濃い口なキャラクター性とデザインを背負った異能者だけのな話だと受け止められるのは、かなり危うい事故だろう。
特別な描写は身近にある”私達の話”を分かりやすく戯画化するための道具立てであり、同時に楽しさで難しい問題を咀嚼しやすくするための溶媒。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
そういうふうに、ポップで派手な要素をシリアスで地味なテーマとなじませ扱う技量は、こういう話ならば相当に必要とされている。
軽い要素でウケを取りたいのか、食いつき悪くても重い話がやりたいのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
両取りを狙っているのは分かるが、食い合わせの悪い両極を上手く馴染ませるヤスリがけの技法が、ちっと足りてない感じは受ける。
テーマと面白さの両方を、真芯で射抜くような大正解の描画力、『これしかない!』という強い場面
そこら辺がもうちょい分厚く強くあるとより、作者が描きたいものが見ている側にも届きやすいかなー、とは感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月3日
どーもコンパクトに小器用にまとまりすぎてて、そろそろどっかでズドンとぶち抜くパワー勝負に打って出て欲しい気持ち。
でもこの地味さが”味”ってのも分かるしなぁ…むつかしい。