鬼滅の刃 遊郭編を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
燃える、燃える、郭が燃える。
”上弦の陸”との激闘により、現世の地獄と化した遊郭で、炭治郎の意識は薄れていた。
妓夫太郎の一撃は全てを切り裂き、剣士は皆倒れた。
そこに落ちたのは決着の一撃ではなく、”兄”たる鬼の誘い。
憎むべき人の弱さを、超える術はあるのか!?
そんな感じの大激戦、”劇場版クオリティ”という言葉も生ぬるい遊郭編決着の第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
いやー…凄かったね。
僕は鬼滅の刃の血みどろ残酷絵巻な所が好き(なので、こんな国民的コンテンツになってビックリもしてる)なのだが、その凄惨に一切嘘なく、敵も味方も血まみれ叫びまくりの限界バトル。
前半BGMを抑え、”譜面”が完成し柱 VS 上弦のちょうど派手バトルに突っ込む所でドドドーンと温情鳴り響くメリハリとか、作画とエフェクト以外のところでも、決着に相応しいパワーが有りました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
無限列車では見ているしか出来なかった…だから煉獄さんが死んだ渦中に、一刀叩き込む資格。
”参”が逃げておおせて”陸”が倒されるのは、位階に応じた力の差ってのもあるだろうけど、煉獄さんの姓と魂を背負って実力をつけた、炭治郎たちの成長でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
首をもがれてなお藻掻く、まさに悪鬼の一撃の始末もあるが、遊郭編一つの決着である。
炭治郎は夢うつつに、惨めさの中で必死に生きる強さを禰豆子にねだられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
四苦八苦に満ちた憂き世の中で、それでもなお人で有り続ける事を望む妹の声は、炭治郎の内心なのか、口を塞がれた魂の叫びか。
どちらにしても、炭治郎は『お兄ちゃん!』の呼びかけで人に、戦士に留まる。
炭治郎の間違えたり悩んだり、人間の必然的マイナスを飲み込んでしまえる主人公気質(この作品においては”長男気質”というべきかもだが)は、傍から見てると時に哀しく、辛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
彼はどれだけシビアな現実に苛まれても、人が(理想化された)人として守るべき正しさに、必ず帰還する。
その強靭な復元力が、業と弱さに向き合い続ける物語の背骨となり、鬼のようにニヒリズムに堕ちることを跳ね除けているわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
それでもあのあどけない顔が血鎌で貫かれ、修羅の表情で死力を振り絞る様…そうすることで人間の証明を打ち立てようとするのは、怖ろしいことだ。
戦いが続く限り、主人公である炭治郎は刃を捨てれないし、厳しく試され間違えることを許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
鬼に宿る微かな仏性を嗅ぎ分け、目の前の外道もまた自分のありえた可能性なのだと、修羅道の只中で慈悲を忘れない使命も含め、炭治郎の荷物は重い。
まぁ、長男だからね。時代性のある言葉だな…。
スケベで臆病でいても良い善逸に、獣めいてわがままに振る舞える伊之助と、擬似的な三兄弟として活きてる事を考えると、剣士新世代の家督相続人としても、炭治郎はなかなか緩めないんだなー、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
その資質が徹底して、立派であり続けることに向いてるとしても、やっぱ大変な主人公ではある。
さて夢から醒めてみれば、郭は八大地獄めいて炎に包まれ、妓夫太郎のシルエットは完全に悪鬼のそれである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
後半の超絶バトルもビリビリ来たが、そこに赴く前の静かな対峙が、やっぱ自分的には面白い。
ほんと炎の表現が図抜けて凄くて、UFO撮影班は怪物。
(画像は”鬼滅の刃 遊郭編”第10話より引用) pic.twitter.com/aFFt5uTBrD
今回のエピソードが、禰豆子がすがる夢うつつから始まるのが、個人的には好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
この世のものとは思えない炎の地獄は、悍ましくも美しい。
殺し合いをしていた鬼がよろよろと近づき、語りかけてくるこの現実もまた、夢の続きなのだろうか?
そんな夢遊感が、激しい戦い一拍の空白と冴える。
妓夫太郎は勝勢を疑わず、過去の復讐をするように弱い人間が藻掻くさま、何も出来ずに死んでいくさまを楽しもうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
炭治郎に語りかけたのもそのサディズムの延長…でもあろうが、やはり”兄”という属性が、鏡合わせの鬼と人を引き合わせていく。
炭治郎が後に、伏せる悪鬼に自分を重ねたように…
妓夫太郎もまた、鬼となった妹を背中にかばう”兄”に、自分を見たのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
それは打ち捨てたはずの人としての過去であり、鬼になってしまった自分が絶対に歩めない未来でもある。
あり得たかもしれない、弱さを飲み込んで強く生きていく、妹とともにある人生。
ここで妓夫太郎が無明の闇を払って、微かな光に惑わされてしまったこと…”兄”を核として鬼の中に人があったことが、戦いの決着を決める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
ド汚く超強い悪鬼を貫いて、炭治郎を即ぶっ殺しておけば、逆撃もまたなかった。
妹ともに弱きを踏みにじり強い自分を確認する、畜生道が元気に続いた。
しかし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
しかし、妓夫太郎もまたそこから抜け出したかったから、炭治郎を鬼に誘ったのではないか。
己の弱さ、辛さ、愛おしさが分かる鏡の向こうの自分を、孤独な鬼の道行に連れ立ってくれる輩として、求める気持ちがあったのではないか。
鬼とは個体として完成した、死を超越した歪な命。
本来連れ合いを必要としない生物のはずが、同じ地獄に人を誘う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
ここで(すっかりネットミームと化した)猗窩座の勧誘が何か凄絶な過去の残滓…修羅道を行く寂しさの宿ったものではないかと、巻を巻き戻して考えれるの、なかなか好きな構成であるね。
炭治郎を誘う時、妓夫太郎は鎌を地面に突き刺し、対等の立場に頭を下げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
貧しさ、ひもじさ、辛さ、苦しさ。
人が生きることは根源的に”苦”であり、そこから大事な妹を守ろうとすれば、鬼になるしか道はない。
(画像は”鬼滅の刃 遊郭編”から引用) pic.twitter.com/Xgn5ZlHUJL
そううそぶく妓夫太郎は、しかしその惨めさ、醜い必死さにこそ、炭治郎と通じ合うものを感じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
それしか人生になかったのだから、妓夫太郎が弱さと苦しさだけで人間を判断するのも、そこに共感の足場を置くのも、また必然であろう。
そして鬼に落ちた彼は、人とは手を繋げない。
指をへし折って、痛みを与えること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
対等に並ぶのではなく、殺し合いになったらどっちが生き残るか、修羅の殺伐でしか立場を確保し得ない。
この立ち位置もまた、妓夫太郎生前の地獄の延長であり、彼はそれ以外知り得なかったから、今もうこうして鬼なのだ。
…本当に、そうなのだろうか?
醜さの象徴と愛しく撫でる痣が、全身全霊を越えた力を生み出し自分を殺す未来を、妓夫太郎は知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
対等の弱さを持つ”兄”として頭を下げたからこそ、頭突きで反撃を喰らい盤面をひっくり返される。
結局、人と鬼はこのように譲れぬものを巡り、殺し合いになる仲である。
しかしそれでも、妓夫太郎が寒中の温もりを求めるように、自分に似た醜く弱くそれでも”妹”を守ろうとする炭治郎に引き寄せられたこと…その事情を知らぬとしても、炭治郎がそこに己の姿を見つけたことには、大きな意味があろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
運命に選ばれなかった”陸”に、もはや戻る道はない。
妓夫太郎は人を嬲って殺して、もう運命に翻弄されるだけではない強い自分を確認する道から、外れることは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
死ぬべき定め、業に苦しむ命を超越し、生態系の強者になったのだと驕る鬼は、周りにいる人とふれあい(指を折るんじゃなく!)、変化していく可能性を閉ざされている。
炭治郎たちが死せる煉獄さんの思いを継ぎ、より強い…柱と”上弦”の戦いに刃を届かせられる自分に変われたような未来は、鬼には永劫に訪れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
それはとてもシビアなルールだ。
自分たちがどこから来て、本当は何をしたかったのかを、鬼は思い出せない。
弱き人である自分を、憎んだ理由を。
炭治郎は最も人らしき人(つまり現世の菩薩)なので、いつでも血みどろの我が家を…そこに確かにあった幸せな日々を思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
苦しみの中それを忘れそうになったら、夢うつつ家族が教え、同輩が支え、先達が導いてくれる。
そういう縁から、鬼は切り離されている。血みどろに切り裂いてしまう。
そしてその一線は、炭治郎が賢く気づくように細い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
半歩間違えれば、進む先は奈落の底なのだ。
だからこそ、鬼にならなければ勝てない、生き残れない戦いの中でも、誰かを慈しみ守ろうとする人の心を、捨てることは許されない。
極めて厳しいことだ。
鬼の住処で、妓夫太郎は必然的に鬼となり、鬼に殺されて鬼に化けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
誰かを愛する慈悲はたった一人に向けられ、だからこそそれが燃え落ちた時、彼の中の光も消えた。
そのはずなのに、無明の闇の中妓夫太郎は炭治郎に、己の似姿を見た。
共感を寄せ、変化の可能性を見たのだ。
しかしそれは、ビンタし指折り頭突きを食らう、拒絶のコミュニケーションになるしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
鬼とはそういうものだし、剣士はその業を断てる唯一の存在だからだ。
もはや救いは、刃がもたらす終わりにしかない。
剣士たちが血みどろに勝利を諦めないのは、敵にとっても救いであろう。
どうやったって自分で止めれねぇ悪業を、誰かにせき止めてもらう。あるいは変えてもらう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
背の高い妓夫太郎がその異形を曲げて、炭治郎と同じ目線に座ったのは、そんな救済を望む微かな軋みが、この土壇場に唸ったからかな、などと思う。
どんだけ高笑いしても、鬼でいることは苦しいのだろう。
それはまぁ、人であることも同じで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
ここからはじまる大激闘で、さらなる凄惨が画面に刻まれていく。
生きることは血にまみれて苦しく、しかしそこに確かに、尊い魂の音色がある。
心音を殺してまで、必殺の好機を狙う生粋の忍びは、”譜面”を完成させて最後の一撃を打ち込む。
宇髄さんと妓夫太郎の超高速バトルは大変な迫力で、同時にその領域に首突っ込める所まで来た炭治郎の成長を絵で理解らせてくれて、大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
同時進行する堕姫と善逸の空中戦は、”霹靂一閃・神速”の持続がアニメ鬼滅特有の時間の歪みに巻き込まれてて、なかなか大変なことになってたね…。
とまれ、死力を尽くし郭を燃やした激闘は、人の力と縁が勝り、”上弦”は首を落とされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
死んでなお藻掻く妓夫太郎、最後の一撃がどんな結末にたどり着くかは、次回最終回を見届けなければ解らぬところだ。
果たして鬼に落ちた兄弟はどんな闇に倒れ、どんな苦しみに耐えられなかったのか。
『敵役の悲しい過去を本格開陳するのは、バトルの決着がついてから!』という鬼滅メソッドが、このクオリティでどう視聴者の心をズタズタにするか、今から楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
ホント戦いのテンポを殺さず、憎むべき敵を憎んだまま走りきれる、優秀なメソッドだよな…。
あり得たかもしれない”人”として…”兄”としての己に縋ったことが、”上弦の陸”の首を落とす決定打だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日
鬼は自分が人であると思いだした時、その終りを迎える。
ではその生き様は、どんな色で満たされていたのか。
苦界の楽土、残酷の果て。
次回、兄妹無残郭囃子。
大変楽しみです。
しかしこうして超絶クオリティで書き直されてみると、鬼殺隊の戦いは過去の因業に縛られた亡者を、刃の念仏で弔ってやるターンアンデッド・バトルで、容赦なき鬼に落ちかけてた鬼殺隊に徹底的に”人”たる炭治郎が加わったことで慈悲の本分を取り戻して因縁の戦いに決着がつくのは、必然なのだと解るね
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月7日