東京24区を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
豊穣の角に雷が落ちる時、誰かが死ぬ。
ヴィジョンが告げた残酷な未来を拒絶するべく、シュウタは嵐を駆ける。
師ゼロスの囁くまま、ミサキシステムの深部に潜るラン。
コウキは一人、嵐の中に立ちすくむ。
カルネアデスの仮面の奥には、どんな秘密が隠れているのか?
そんな感じの風雲急、嵐の中の決断回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
カバ先の死以来、勝手なガキではいられなくなったシュウタが前回日常の中で見つけ掴み取ったものを、ヒーロー活動の中で発露させるエピソードだった。
ヴィランであるカルネアデスが、黒葛川さんという顔と声を持った個人であること。
その命を助け、意志を確かめること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
何も切り捨てず、生身で現実なるものの実感を確認する道を選んだシュウタが、厳しい状況の中自分のヒロイズムを貫いた。
しかし待ち構える嵐は大きく、状況はけして楽観視出来ない。
なかなかいい感じの、成長と波乱だと思う。
カルネアデスの正体が早めに割れたが、もともと仮面の代弁者であることは読みやすい配置であるし、コウキがその遺志を継いだことである意味存命…とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
カナエシステムのバグ、コルヌコピア放棄の理由、ゼロスの壊された世界。
終盤を支える謎も、むしろ増えた感じだ。
ゼロスに囁かれる形で、ランちゃんが目の前の事件解決ではなく、その先に待ち構える状況を有利にするべくハッキングを行っていたのが、一つの分水嶺なのかな、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
思惑を明かしきらぬまま、謎めいた態度で若人を翻弄するゼロスの意思に、ランもシュウタも踊らされている。
編入投票の期限が迫る中で、観念を弄ぶモラトリアムは終わり、何かを決断し選別し行動しなければいけない”大人”の時間が迫る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
そのひどく焦って混沌とした余裕の無さは、確かに”現実”なるものの真実の顔の一つで、事態がグツグツ煮詰まってる感じも相まって、なかなか嫌いではない。
さて、どうなるか
シュウタが流されるのではなく自分の意志で掴み取る形で、秩序でも自由でもない第三の道へと進みだしたのは、とても良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
その足掻きが本来死ぬはずの、黒葛川さんの命を救えたことも。
カバ先のときは見てることしか出来なかった無念を、取り戻す形になった。
事態が終わった後、自身傷だらけになりながら『意識が戻って、始めてヒーローだろ』と落ち着いた言葉を紡ぐのが、シュウタの変化を示して良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
ヒーロ活動それ自体に酔っていた時代を終えて、シュウタは超常の力で、救いたいという願いで何をするか、自分の頭で考えるようになってきている。
同時にそれをビス止めしているのはアスミとの約束であり、ヒロイズムは未だ少年の心に、完全に根付いているとも言えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
ここら辺、マリちゃんが死者からの電話を覗き見て、状況に関与する鍵を手に入れたのと合わせて、今後揺れそう。
システムに取り付いたアスミの亡霊も、描写があったしね。
何かと選別を強いるこの作品だが、シュウタがアスミとマリ、どちらのヒロインを選んで進むかってのも、大事な選択なのかなー、と思ったりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
死してなお巨大な引力に囚われるか、全てを忘れてぬるま湯の今を生きるか。
ヒーロー活動と同じく、二択それ自体を蹴っ飛ばして欲しい所。
ランちゃんはグラフィティ戦争が茶番であると、黒幕当人に確認しつつ半歩、今までよりヤバい場所に進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
仮面のヴィランを演じていた黒葛川さんもそうだが、カルネアデスに関わる者たちは皆なにかの代弁者でしかなく、実態と思えるものに身を隠し、別の目的を果たそうとしている。
ではその”目的”ってのが何か…て話なのだが、黒葛川さんは昏睡しちゃったし、ゼロスはのらりくらりとアーティスト言辞を弄して本心言わないので、未だ伏せ札である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
翠堂香苗に集約される、人間定義を書き換える超テクノロジー。
利便性を吐き出す、ブラックボックスの中の豊穣の角。
Cornucopiaとはよく言ったもんで、魔法の裏には良くないカラクリがあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
果たしてそれがどんなもんか、ランちゃんがハッキングしていく話…だとは思うんだが、死んでいながら死んでない、電子の妖精アスミちゃんへの慕情が絡んでくるのが、またややこしい。
ランちゃんは死人は死人と割り切るのがクールな大人の態度…って感じだったけど、カナエシステムがアスミの死体の上に存立してて、なおかつその遺志が電子的に保存されてる…ある意味、アスミが生きてる事実が表に出ると、そんな常識的判断も少し揺らぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
シュウタのガキっぽさの象徴だった『アスミはまだ生きてる!』が夢幻ではなく、問題の根幹にガップリ刺さった大きな事実であるとすると、ノスタルジーもヒロイズムも途端、甘っちょろい夢ではなくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
この価値反転機構は個人的に面白くて、今後ランちゃんがどう揺れるかは楽しみ。
現実を前に道を決断したようでいて、新事実が”現実”をガタガタに揺らしてくると、また悩み選ぶ必要も出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
これはコウキにも言えることで、ヴィジョンに示されていたより早いタイミングで、トロッコの切り替え指示を出してしまった事実が、カルネアデスの仮面を継承させる。
カルネアデスが突きつけていた決断は、シュウタ達が受け取っていたヴィジョンと同源のものであり、完全な社会監視システムに収まりきらないアスミの人格が見る、悪夢の残滓。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
家族への愛を切り捨て、”現実的”に未来を選んだはずの足場に潜んだ、危険な倫理的地雷である。
これを爆破させないために、不在なる中心としてカルネアデスを演じていた黒葛川さんは、運命にもてあそばれる翠堂一家を守りたいという、情一本の人だったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
人間と世界の不完全性を補填する、神様の機械。
それは屍体と悲しみの上に乗っかった、ひどく不安定なバベルの塔だ。
しかし区長が推進した監視と利便抜きでは、24区は立ち行かないところまで来ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
精査されないままドライヴする、ひどく危ういものに社会の礎を乗っけている状況ってのは、SF的に戯画化されてはいるが、現実姿の歪な似姿でもあろう。
それを照らすのがSFジャンル一つの使命、とも言える。
カナエシステムを通じて、画面の外側にある僕らの世界の危うさをどれだけ演算し、描けるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
その真相に迫っていくだろう後半戦は、作品全体の説得力とメッセージ性にダイレクトに関わりそうで、仕上がりが大変気になる。
いい具合に主役たちも揺れだして、こっからのクライマックスが勝負だよなー。
アスミがうなされるヴィジョンには揺らぎがあって、結末は固定されていないし、想定されていないファクターでズレもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
黒葛川さんに何気なく発した警告が、自己犠牲の決意を固めさせ、その結末を揺るがすガムシャラな行動は、コウキではなくシュウタが行う。
ここでシュウタが、『カルネアデスは悪いやつ!』と決めつけるのではなく、仮面の奥の心を聞き取ろうとしたのが、やっぱ良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
わけの分からぬまま押し流され、その思いに触れることすら叶わなかったクナイの事件から、やっぱ大きく変化してる感じがある。
同時に思慮深いコウキは自分が切り替えスイッチを押した事実に押しつぶされて、何も行動できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
彼がカルネアデスを継承したことが、果たして今後どんな意味を持つのか。
仮面から”選別”を叫ぶことが、妹の悪夢を晴らす特効薬足りうるのか。
それが、コウキが選んだ”行動”なのか。
東京編入を問う住民投票をXデーとして、お話もキャクターの変化も、グツグツ煮詰まってきた感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
アスミの残留思念が描写されたことで、未来予測機械がどんだけ不安定でヤベーか、描写が確定もされたし。
それでも莫大な利便と変革をもたらすなら、駆動させるのが人間社会…か。
のんびり平穏な日常を送ってる区民にとって、カナエシステムは前回描写されたように『ちょっと怖くて、なんとなく便利なもの』でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
指先一つで許諾を送るその気軽さの奥に、社会の根幹を、人間の存在を揺るがす危うさが秘められているかもしれない。
それ自体では方向性を持ち得ないテクノロジーが、奉仕するはずの社会や人間存在に害をなすものとして、牙を剥く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
”プロメテウスの火”の逸話以来、幾度も語られてきた一つの寓話を、今後この物語は追うのだろう。
その中心には何も決着していない子供たちの青春と、そこに閉じ込められた亡霊がいる。
そんな構図も見えてくる、嵐再びのエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
シュウタがヒーローとして大人として、チョトずつ安定してきてるのと、一足先に大人になってたはずのコウキとランちゃんが、亡霊の実在に揺るがされる形で決断を試されているの、面白い対比構図だと思う。
『これが現実、これが世界』と割り切って決めてしまうことは賢いが、今見えているものが必ずしも真実ってわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
真実に基づかない決断は必ず何かを切り捨てていて、亡霊が蘇った時に試される。
そういうお話の流れで、ゼロス師匠が顔出してきたんだろうなぁ…過去は、幾度も蘇るわけだ。
実態なきグラフィティ戦争を焚きつけることで、Do Redを肥大化させた彼が、一体何を望むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
ランちゃん、自分が作り上げた社会活動団体を、師匠にクラッキングされた形だよなぁコレ…。
炎上利用してバズらされた理想が、今後どう利用されるか。
アートだけでは、もう足りない。
ある種の敗北宣言を堂々叫んで、愛弟子がデータの海から掠め取った炎を睨むゼロス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
さて、こっからどうなるか。
カルネアデスが強いる”選別”にシュウタは反逆するが、それは彼が信じるヒロイズムの根源…アスミの見てる悪夢でもあんだよなー。
このズレは、滅茶苦茶拗れる起点になりそうね。
どっちにしても、RGBの少年たちは暴かれる真実の中で、変化していく現実の中で、何かを選んで大人になるしか無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月2日
それは一回こっきりの選択ではなく、苛烈に連続する一つの流れ…てのが、このお話が書きたいことの一つなのかな、と思ったりする。
何かを選んでも、物語は続く。
次回も楽しみ。