ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
あの雪の城から帰り来て、セエヌの水面は瑠璃の如く輝き、風は花に満ちて甘い。
炎の魔女、麗しの乙女、我が愛。
ジャンヌ。
そのかんばせは心を刺して止まず、まなざしは未知の甘き毒。
恋知らぬもの達の初音は、雪融けの颯爽と危うさを同時に宿し…
そんな感じの、ラブコメ街道まっしぐら! ヴァニタスアニメ第20話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
お医者様でもルルドの泉でも、けして治せぬ恋の病。
それに始めて取り憑かれた悪ぶりピュアボーイと、殺戮機械の宿命から解き放たれた乙女の微笑ましき青春を描き…新たな事件の予感で残忍に断ち切る。
アップテンポでハイテンション…そしてとても平和で幸福な恋の時間は嘘ではないが、同時にドミは嫉心に囚われ、不幸は足下で牙を剥く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
恋すればこそ世界は華やぎ、愛すればこそ茨が袖を掴む。
この作品らしい、甘いだけでは終わらない一瞬の甘やかな休符であり、惨劇の幕開けであった。
前半は恋心入っちゃったヴァニタスが幸せの拒絶反応に身悶えし、ワイワイガヤガヤ大騒ぎ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
常時血圧高い感じに喧しい、ロマンティック・コメディな味付けが懐かしくも嬉しい。
冬のジェヴォーダンはシリアスに冷たく閉ざされてて、こういう空気全然吸えなかったからな…。
街に駆け出したヴァニタスの当惑を受け止めるのは、法衣を脱いだ狩人達。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
パリの紳士としてのローランとオリヴィエが見れて、なかなか眼福な展開である。
描かれてみりゃ当然なんだが、彼らにも時代遅れな聖騎士以外の顔があって、プライベートでは恋とかするよね…。
一見微笑ましき先達と若人の会話なんだけども、思いを掘り下げるほどにヴァニタスの自己否定が表に出てきて、見た目ほど笑ってもられねぇな、って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
いや、大変えっちな表情とか切り取られて、眼福しきりなんだけどさ…。
(画像は”ヴァニタスの手記”第20話より引用) pic.twitter.com/wyvrglEu8b
自分を好きになる相手が嫌いなヴァニタスは、つまり精算な過去を生き延びてきた自分を肯定できてない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
誰かを愛する思いは、自分を愛せる自己肯定の上に乗っかる。
そういうもんが全く無い…殺さないと生き残れない子供だったヴァニタスの魂は、ノエ達と出会い青春を走る中、生き返りつつある。
ノエの信頼に背中を押されて、ジャンヌに未来を約束し、魔女の檻から解き放ったヴァニタス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
彼もまた、ジャンヌに愛され彼女を信頼することで、人並みの幸福を追い求めても良い存在へと、自分を開放しつつあるのだと思う。
同時に苛烈極まる人生は、恋する自由すら彼に与えていない。
ヴァニタスの書を用いた世界変化、式の書き換えを得意とするヴァニタスが、ジャンヌという他者によって自分を書き換えられる感覚に戸惑い、秘めやかなる歓喜に悶えている姿は、なかなかに意味深である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
彼もまた、過去のトラウマを描き直し、世界と己の真の名を探す”患者”なのだろう。
不器用極まる恋の身悶えは、幸福のワクチン接種を受けた副反応…といった所か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
このまま薬が効いて、救済とか助力とか、なんだかんだ立派なことを成し遂げている自分を肯定してあげて欲しいな、と僕は思うが。
運命はどうも、そういう安楽な道をこの青年に用意していない感じもある。
ヴァニタスがなぜ今の彼になったのか、その片鱗は見えつつ、全ては明らかにされていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
ノエがルイの一件で感じた以上の無力感と絶望に魂を砕かれ、それでも蝶の羽の一仰ぎ、幸福に近い方へ魂を押し出す何かがあって、身勝手極まる魂の救済者として生きる道を選んだ…ようだ。
誰かが好きになることを許さないほどに、自分のことを嫌悪しているのに、歪んだ世界の犠牲者には救われたほうが良いと、走り回って治療に勤しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
一見矛盾している在り方だが、ヴァニタスにとって過酷な救済業はある種の自罰というか、遠いからこそ追いかける意味のある奇跡なのかもしれない。
他人を救うことで自分が救われる…救われるに値する自分があるとは考えていないのがミソで、ヴァニタスの救済は身勝手な押しつけでしか無いが故に、見返りを求めない無私の行為だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
行くところまで行ったエゴイズムが持つ清廉みたいなものに、ノエもジャンヌも救われ、惹かれてる感じがある。
ある意味受難者であり聖人の精神構造をしているので、神父たるローランも、そら執着するよな…って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
彼がザルなの、嬉しい情報だったな。
アルコールがもたらす酩酊なんぞで酔えない、強靭過ぎる自我を持つからこそ、信仰という苦い酒をがぶ飲みして、己の理性を試してんだろうな…。
微笑ましく甘酸っぱい初恋デザートを味わっていた紳士たちが、思わず真顔になるほどの絶叫。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
不遜な態度で鎧っていたヴァニタスの柔らかな部分が、恋に揺り動かされて表に出てきてもいる。
多分ここまで、低いポテンシャルでヴァニタスの精神って安定してたんだと思う。
何にも期待せず、何も愛さない
だって世界はあまりに厳しく、自分はあまりに無力だったから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
諦観と絶望は生存のための処方薬であり、それで人間らしい希望を麻痺させることで、なんとか生き延びてきた男の心を、ジャンヌの存在は激しくノックする。
それは彼自信が、ジャンヌの心を叩いた木霊でもある。
ジャンヌもまた、ヴァニタスの存在に心を揺るがされ、大きく空いた窓から入る甘やかな風を全身に浴びる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
ヴァニタスと違うのは、幸せになって良い自分を一足早く肯定し、恋を満喫する気バリバリってことだ。
ここで幸福を前に当惑せず、”往く”選択ができるのは強いなー、と思う。
ルカにはご愁傷さまであるが、恋するジャンヌは大変可愛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
それは雪の城で運命を書き換え、自分がただ翻弄されるだけの無力な存在だと、諦めなくていい事実を確認したからだろう。
愛されても良い自分、幸福になっても良い自分、世界を変えられるほどに強い自分。
そういう自分を、ジャンヌはヴァニタスの助けを借りて捕まえたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
それはけして揺るがない、他者と自身と世界への信頼である。
これを手に入れた人を大人というのであれば、ジェヴォーダンの勝利はジャンヌにとって、大事なイニシエーションだったのだろう。
彼女をそんな人生の春に連れ出したヴァニタスは、目の前の幸福に怯え、戸惑っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
ここでノエが孤独な猫のような青年に寄り添い、『ありがとう』を伝えるのが、やっぱいいな、と思う。
この友情も、ジャンヌへの恋と同じく大事な、人生の宝石だ。
(画像は”ヴァニタスの手記”第20話から引用) pic.twitter.com/O4GNCope98
複雑に捻れた運命に苛まれつつ、それでも吸血鬼の敵対者ではなく、禍名の癒やし手としてあるヴァニタスに…そう流れた宿命に、ノエは感謝を告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
この時ヴァニタスはノエより高く暗く危うい場所にいて、ノエは明るく広く安定した場所を専位している。
非常に示唆的で、綺麗な構図だ。
ノエはヴァニタスが世界改竄者、魂の医師でいてくれることで、一度は諦めた禍名からの救済を諦めずにすむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
自分がただ運命に流されるだけの子供なのだと、膝を抱えて扉を閉ざさなくて済む。
そうさせてくれた奇妙な友人に、彼は強い感謝と信頼を寄せている。
『俺はアンタが好きじゃないけど』と、自分嫌いのダチに合わせて、受け入れやすい言葉を選んで愛を伝えているのが、ノエの優しいところだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
幸せになってはいけない自分、幸せに戸惑う自分。
医者の不養生…ヴァニタス自身より、ノエのほうが病状がよく見えている。
そんな信頼に身を寄せて、ヴァニタスは幸福に浸り、孤独で自罰的な生き方から抜け出すことが出来るのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
光の中に身を投げ、高く暗い場所から降りることが出来るのだろうか?
春の気配は、恋の色をして確かにそこに在る。
しかし、それだけが世界の形ではない。
謎めいた少年が糸を引く、パリの吸血事件。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
血みどろのドミは一体、何を犠牲に夜を駆けていたのか。
散々ラブコメ味で腹筋を緩ませておいて、全力で悲劇の予感で殴りつけてくる辺り、振幅の激しいアニメである。
吸血鬼に関わる以上、安易なハッピーエンドなんざぁ来るわけねぇだろ。知ってたよ!
ドミの歪さが、ノエへの愛…それ故の不安とジャンヌへの嫉妬に裏打ちされてると示して新たな物語が始まるのが、なかなか上手いなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
甘酸っぱく描かれた、人生生き直し赤ちゃん達の恋。
それと同じものが形を変えれば、心を狂わす毒にもなる。
『恋煩いは不治の病』と、微笑ましく見守っていた柔らかな幸福と同じ場所から、ドミの血まみれは伸びている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
それもまた、愛と恋の顔の一つだ。
幸福と悲惨の間に立つヤヌスが、新たな始まりを見つめる夜。
あの妖しい少年は、一体誰だ?
そんな感じの可愛らしいインターミッションであり、悲劇の序章でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
ヴァニタスの回想に出てた、蒼月もう一人の眷属…なんかなぁあの子。
これまで話を牽引してたネーニヤに囁かれたかな? と思わせておいて、新たな黒幕が顔出すのは大変いい感じ。ハラハラするね。
まー僕ァドミちゃんが好きなんで、あんまひどい目には合わせんで欲しいけども、吸血鬼である以上エゴと狂気は付きまとうものであり、祝福と幸福だけでは生きていけない呪われた種族の本懐が、彼女をキャンバスに残酷に描かれそうでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月5日
さて夜と血の新たな手記は、どんな色合いか。
次回も楽しみ。