ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ノエの元に届いた手紙が、恋に浮かれるパリを醒ます。
ヴァニタスの弟を名乗る蒼き少年は、精算な過去を越えてなお、無邪気に微笑む。
無垢なる残酷は、いったい何を望むのか。
”兄”は未だ、惨劇の渦中に至らず…。
そんな感じのW回想編、やっぱりラブコメ街道なんて夢のまた夢だったね!! な、ヴァニタス第21話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
前回との温度差で悪性の風邪ひきそうであるが、『まぁ、そうなるよな…』という納得もどこかにあり、最後まで手綱を緩めずにゴシック・ルネサンスしてくれそうで、ある意味安心。
前回心配されていたように、ヴァニタスの自暴自棄な自己嫌悪は彼をひどく不安定にしていて、それを生み出した精算な過去を越えない限り、ハッピーエンドは遠かろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
大天使の名を持つ少年はそのために表舞台に上がった、過去からのメッセンジャー…つうには、狂気が強いが。
『アストルフォとは違うタイプのキチショタだー!』と歓喜したけども、ドミちゃんを攫いノエをおびき出した動機は自白通り、兄による父殺しの真相を知る…でいいのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ヴァニタスが血みどろに過去を越えようと、自分の外側にある人間を見て”医者”してるのに対し、弟は子供のまま時が止まってる感じ。
強烈過ぎるトラウマに囚われ、時間が進まない状態はジェヴォーダン編の主題であったけども、クロエが時の檻から開放されて、新しい囚人が出てきたなー、という印象だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
メインキャラ全員傷持ちなので、時の傷跡とその克服は、物語全体の主題なんだと思う。
思えば吸血鬼を生み出しスチームパンクに世界を書き換えたバベル自体が、巨大な過去の傷跡とも取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
それを書き換えうる”ヴァニタスの書”を、前に進むためではなく過去を蘇らせるために使うミハエルは、ヴァニタスの歪んだ鏡…あるいは代用品・もう一つの可能性(Un autre)なのだろう。
ドミちゃんの後悔が増幅され認識が歪んでいるので、シャルラタン系列の能力者かなー…といったん思うが、多分直接の関係はないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ヴァニタスが万能医師で、ミハイルが生体磁気を介した催眠術師だとすると、なかなかにゴシック・ホラーな兄弟だな…。メスメリズムッ!
W過去編である今回、ドミちゃんの記憶も切開されていくわけだが、徹頭徹尾優しく良い子で泣けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ドミニク姉さまが想定の五倍くらいクズ人間で、『やっぱサドの血脈はダメだな!』と言いそうになったが、ドミちゃんもサドだしなぁ。
彼女の後悔は典型的なサバイバーズ・ギルトであり、愛の反射だ
ともに過ごした日々があまりに眩しかったからこそ、ルイの死に責任を感じ、惨劇を止め得なかった己を責める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
そして唯一残ったノエが愛しいからこそ、”誰かの代わり”ではない自分自身を愛して欲しい。
そう願いつつ、失われたルイの代用品として髪を切り、男を装う。
ルイと瓜二つに変貌したドミをみて、幼いノエが泣きじゃくるのも痛ましかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
あの段階で、彼は何がぶっ壊れたかをしっかり把握し、何を護るべきかも覚悟したのだろう。
彼もヴァニタスと同じく、恋とはどんなものか知らない純朴な少年だが、それが恋の形を取ろうと取るまいと、ドミは大事だ。
今回回想された過去はアルシヴィスタの能力で既に暴かれているはずで、ミハイルが弄んだどす黒いもの全部ひっくるめで、ノエは幼馴染を愛し、守ろうとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
全てを知りうる薄汚い能力は、全てを知ってなお手を取る強さと優しさに、確かに繋がっているはずだ。
そういう繊細な人間関係の機微を、トラウマにぶっ壊れた少年はまーったく理解しようとしないので、『オメー兄貴の秘密、土足で踏みにじってこいよ!』とか、言えちゃうわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ドミを釣り餌に使う所といい、登場人物の尊厳を軒並み踏みつけにしてて、ミハイルくんとっても良いです。
『はよう兄貴パンチで素直になーれ!』って感じだが、ノエに名乗った『書だけを継承したただの人間』がホントだとすると、ヴァニタス得意の禍名解きでは、ミハイルは”治療”出来ないんだよな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
過酷な経験と恵まれない環境のあわせ技で、時間が止まって狂ってるだけだから。
厄介だな人間…。
わざわざ”ただの人間”と名乗るからには、蒼の血を分けた眷属が別にいるはずで、ヴァニタスってもしかして半吸血鬼…? などと考えもするけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ここら辺の答え合わせは、次回憤怒の兄貴が遊園地に到達した時行われそうだ。
過去開示を無理なく行えるアルシヴィスタ、優秀な物語装置だねぇ…。
ミハイルの悲惨な境遇と家族への執着を思うと、Drモローの実験室から蒼月の吸血鬼に”攫われた”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
後の時間は、結構幸せだったのだと思う。
でもヴァニタスは父を殺し、弟と縁を切った。
そこに、運命が破断する結節点がある。
ヴァニタスの強い自己嫌悪の源泉も、おそらく。
クソみたいな異性装強要虐待家庭から抜け出した…と思ってたら、サックリ攫われ実験動物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ミハイルくんの人生大激動であり、”狩人”何してんのー! 感は凄いけども。
児童福祉よりも吸血鬼殲滅、教義護持を最優先とする組織なので、うっかり見落とすのもしょうがねぇか。
しょうがなくねーだろ…。
吸血による恍惚を救済と受け止めたミハイルくんの歪みは、人格がまだ柔らかい時期に、剥き出しの性が足跡つけすぎた結果だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
悪意とセックスが覆いをかけられず自分を殴りつけてくる環境で、なんの力も持たない子供はどうにか生き延びるべく、自分だけの教義で世界を理解しなきゃいけなかった。
母が吸われ喘ぎ死ぬストレスを、『悪魔が追い出されたんだ!』と理解することでしか、ミハイルは理不尽で残酷な世界を飲み込み得なかったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
そしてその歪さを正す存在は、彼の世界に存在し得なかった。
…似た境遇にあったヴァニタスは、なんで医師として”正しい”事を為す道に進みえたんだ?
ここら辺を暴くのが、次回の邂逅となりそうだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
歪みの源泉がキャラ登場と同時に描かれたんで、ドミちゃんを弄ぶことに怒りを感じつつ、『コイツもどーにかしてやって…』という憐れみのほうが、ミハイルくんには強い。
アストルフォといい、被虐待体験からの認知の歪みをケアされてない子供、多すぎ。
ヴァニタスが書を用いて行う”治療”って、そういう傷に手を差し伸べる…中で、止まってた時間を動き出し自己の尊厳を取り戻していくジュブナイルな旅も、また含んでるんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
誰かに手を差し出すことで、傷ついた自分が手当される。
そういう、お互い様のサバイバル・ケア。
今までの物語を見ると、傷追い人の生存日記でもあるこのお話、さて狂える弟をどう扱うか…という感じです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
残り話数から考えるとデカい話を回す余裕はないわけで、アニメとしての収まりをどう作るか、シリーズ構成的な意味でも、結構注目ポイントかなー。
ミハイルが母の死に対し示した、生存戦略としての狂気を『可哀想に!』としか受け止められないの、(当時の)ローランの限界点だなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
理性の怪物たる彼は常に強く、揺らがず、己を疑わない。
新たに見えた景色に己を改めることにも柔軟で、とても靭やかな大人の男性だ。
だからこそ、弱い存在が巨大な理不尽に世界を揺るがされて、なお魂を殺されないために選んだ狂気に理解を示せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
上から目線の『可哀想に!』になってしまう。
そういう強さの弊害は、ノエやヴァニタスの顔を見るようになって少し削れてる感じもあるが…今後どうなるやら。
弱さゆえの狂気、血に刻まれた呪いの母であり、狂気それ自体となることで全てを差配しているネーニヤとは対照的な、父権的態度…とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ここら辺、狂気に見えるものの真の名を、自身傷だらけになりつつ探ってるヴァニタスのアプローチと真逆なんね。
まぁ”患者”には優しいヴァニタスも、自身のトラウマに直結し、大事な身内に手出したミハイルくんに、共感的アプローチを出してる余裕があるか、疑問ではあるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
全ては次回、蒼き兄弟が再開する時に暴かれ、新たに動き出すでしょう。
次回も楽しみですね。
追記 ポルノ的な記号消費は随所にあるんだが、その危険性を把握した上で活用する賢さも宿るので、個人的な感性との”ソリ”が合うんだろうな、このお話。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
ミハイルくんがなにかと背徳的でエロいの、ご褒美と気楽に消費するより先に、『やっぱ人格固まってねーガキにセックスとバイオレンス近づけるの、良くねーな…』って気持ちが溢れる。
そういうエグ味をちゃんと出せているのは、性と暴力が必ず顔を出す”吸血鬼”の話として、大事だと思う。
退廃が大事なファクターだからこそ、サド家がメインキャストに入ってると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
だけども、その引力に負けずに人間としてマトモに生きる喜び、その難しさ、そう生きれなかった者の無惨と哀れを切り取ってるの、とても偉いと思うんよね。
過去、狂気、退廃。
暗い場所へと引きずり込む力は、とても強い
それでも鎖を引きちぎり、魂の真の名を取り戻したいと願う心は、人間にはやっぱりあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月12日
そういう倫理的闘争の当事者として、傷だらけの自己否定まみれなヴァニタスを描いて、”医師”でいることを主役のアイデンティティにしているの、やっぱ良いなと思うわけ。