ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
アルシヴィストの牙が、大天使の名を持つ少年の過去を暴く。
狂科学の牢獄を打ち破ったのは、美しく蒼き鬼。
蒼月の吸血鬼との思い出は、笑顔とぬくもりに満ちていた。
ならば何故蒼の兄弟は別れ、憎悪を込めて再び出逢うのか?
運命が呼びあい、決戦が始まる。
そんな感じの蒼月兄弟過去開示な、ヴァニタスアニメ第22話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
ずっと伏せ札だった蒼月の吸血鬼との関係、後にヴァニタスの名を継ぐ少年の過去が分かるエピソード。
まこと凄惨であったし、それ故三人の繋がりの暖かさがよく伝わる仕上がりだった。
それが取り換えしようもないほど歪んだ事も。
あのまま優しき蒼月父さんに見守られ、平和に生きれたならこのお話始まっていないわけで、三人の幸福が決定的に壊れる瞬間が、蒼月殺人事件の真相としてあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
それをミハイルは知らないから、ドミとノエを乱雑に使って暴こうとして、ヴァニタスは必死に隠す。
ここら辺の真相が次回明らかになるか、ならないか…って所だが、今回は今に至る過去、崩れる前の幸福の描画である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
その前景として、ダイレクトに描かれなかった実験動物時代の悲惨が、猛烈な痛みで立ち上がってくる。
堂坂晃三の怪演が大変良く、『モロー死ねッ!』って気持ちが湧き上がるよ…。
ヴァニタスはミハイルの泣き声に己を差し出し、世界のどん底で兄弟はお互いをかばい合って生きていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
その傷だらけで優しい生き方は、父が自分を庇って死んだ体験に由来しているようだ。
実父も”医者”だったわけで、蒼月さんと合わせて過去に愛され、呪われてる子供だねぇ…。
実験動物扱いされてる時も、自身の絶望に飲まれて終わりじゃなく、仇敵と憎んでいた吸血鬼の哀れさ、人間の怖さに思いを馳せる余裕…余裕ではないか、”業”みたいなものがあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
優しくあること、賢くあること。
善き医師であるための資質は、どんな状況でもヴァニタスを手放さない。
母親を殺して世に生まれてきた負い目、それが原因で父に憎まれているのではないかという恐怖。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
モローの実験体、蒼月の眷属になる前段階から、ヴァニタスは傷追い人だった。
吸血鬼に絡んだ事件でその傷跡には塩が刷り込まれ、憎悪に燃えて”狩人”となり、実験体として人の醜さを思い知らされた。
それでもなお、幼きミハイルを背中に庇える”人間”であり続けたのだから、蒼月さんの『優しい子』評価はあまりにも正しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
そう言ってくれた人を自分の手で殺したのならば、そらー荒むし歪むし自己評価もどん底だわなぁ…。
その上で、彼は”ヴァニタス”を名乗り、医師として鬼を救っている。
どんな愛憎が、その魂を留めているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
ミハイルならずとも知りたくなる所だが…そのために他人を踏みにじったり、過去を覗き見したりするのは良くねーな…。
ヴァニタスが反モロー的なヒューマニストに育ったのに対し、ミハイルが擬モロー的なロクでなしに停滞してるのは、皮肉な対比だ。
兄弟が囚われていたモローの領域は、徹底して人工的で狭苦しい牢獄として描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
蒼月の乱入により、それまで存在が描写されていなかった天窓が砕かれ、青い空が見える。
実験動物の定めから開放され、たどり着いた夜は、不思議な青色をして綺麗だ。
(画像は”ヴァニタスの手記”第22話から引用) pic.twitter.com/Y7I9aRx2fv
キャラクターを取り巻く情景が、彼らを拘束するもの、それを打ち壊してたどり着いた場所を上手くスケッチしていて、この作品らしい語り口だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
蒼月の吸血鬼は人間の業が詰まった科学の拷問具から子供を開放し、人の力が及ばぬ不思議で美しい場所へと導く存在なのだ。
この童話めいた美しい夜は、モローが追求する近代的領域から逆行した、中世の匂いのする景色だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
夜は完全な闇ではなく、不可思議な叡智が青く照らす魔術の領分。
”ヴァニタス”が世界を書き換え、傷ついた患者を救う象徴色。
そう考えると、この夜空が魔術書展開のシーケンスに似てるのも得心である
蒼月の吸血鬼は夜の不思議だけでなく、傷ついた子供たちに必要な屋根、灯火、癒やしと安らぎも与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
激情を迸らせた後にたどり着いた寝床は、とても暖かな場所として描かれている。
モローの牢獄にあった非人間的な冷たさとは、真逆の人間的な家庭の匂い。
それが血を分けた家族からは与えられなかったことは、ミハイルとヴァニタスの述懐から鮮明である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
売春窟のどん底で、情緒虐待を受けながら育ったミハイル。
常に罪悪感に苛まれ、父の愛を確かめることも出来ず別れていったヴァニタス。
彼らはこの暖かな家で、ようやく求めていたものを得る。
家はただ理想的に美しいだけでなく、日常の埃にまみれ、デス料理も差し出される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
秘していた過去を語り、己の弱さを預け、弟たるミハイルの前ではけして見せられなかった子供の顔で泣きじゃくったヴァニタスは、夢から醒めて現実へと進み出る。
その、コミカルな味も良かった。
家族として共に生きていくのならば、ホームコメディめいたドタバタも楽しく受け入れ、いがみ合ったり笑ったりするもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
ここまでノエやジャンヌ相手に演じられ、僕らを楽しませてくれたのと同じ朗らかさが、蒼月の兄弟にもちゃんとあったのだと、描く筆は誠実で…残酷でもある。
第20話で、ジャンヌ相手のラブコメが残酷に断ち切られたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
永遠に続いて欲しい平和な時間こそが短く終わり、宿命と痛みに向き合う過酷さは、すぐさま牙を剥く。
それもこの作品のルールであって、楽しかった時間は実験動物の定めと、荒れ狂う運命によって、無情に砕かれる。
それでもその時間が、求めていた温もりを得れた唯一の思い出だからこそ、ミハイルは狂的に兄を求め、時を巻き戻そうとするのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
自分を『優しい子』と認め、医師としての知恵も授けてくれただろう父との日々を、ヴァニタス自身はどう思っているのだろうか?
そこら辺を暴くだろう決戦が、子供が子供でいることを場の前提とする”遊園地”で行われるのは、大変ゴシックで善い趣向だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
吸血鬼的な悪趣味…とも言えるか。
かつて父の腕に優しく抱かれた青い空は、もはや兄弟を覆わない。
(画像は”ヴァニタスの手記”第22話から引用) pic.twitter.com/iW6Zzw0gS7
紫紺と白光に塗り分けられた、グロテスクな子供の遊び場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
そこに釣り出されて、さて次回、どうなるか。
…過去のヴァニタス/ミハイルと、現在の二人の瞳の色が違っているので、やっぱ”書”を継承すると蒼月に近しい存在に変貌するんだろうな。
そもそもこの世界ではどうやって、吸血鬼に”為る”んだ?
そこら辺も含め、様々な色の夜を越えてきた運命の兄弟がバチバチ言いそうなクライマックス、大変楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月18日
吸血鬼テーマのこのお話が、すごく繊細に多彩な顔の夜を描いてきて、そこにキャラクターや世界観をしっかり載せれたのは、作品として強く、また良いことだったな、と再確認する話数でした。