王様ランキング 第22話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ダイダは鏡の牢獄で、父と魔女の遍歴を覗き見る。
幸せになりたいと誰もが願い、だからこそ道を過つ。
逃れ得ぬ人の業を誰が許し、贖うのか。
その救済も、誰かの身勝手でしかないのか。
精神の牢獄に座し全てを見つめた日々が、王に憧れた少年に齎すのは、一つの決断。
そんな感じの大団円…とはちょっと遠い、まだまだ苦味の残る最終話一個前である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
自分的に難しい(そして面白い)話運びになって、消化するのに時間がかかってこんなタイミングでの感想となってしまった。
例によって例のごとく、書きながら自分の引っ掛かりを言語化し、感想としていきたい。
ミランジョの苦しみも救いを求める心もずっと描かれてきたので、彼女が求めていた居場所を手に入れ新たに歩み直せる終わり方は、全体的に良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ここまでドラマとキャラに付き合ってしまうと、『悪役だから死ねよ』とは言えないからなぁ…。
父の大きな力に憧れ、道を誤ったダイダが長い牢獄暮らしの果て、求めたのが愛だった…というのも、少年の成長を描く形になっていていいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ただ…魔女がお姫様になることで全てが円満に終わったかのようにも思える決着には、正直少し疑念も残る。
無論、最終話を見ないと確たる事は言えないけど。
”一寸法師”や”裸の王様”を上手くオマージュしながら、弱きボッジが強きボッスを乗り越え、王の、父の、男の不自由から敗北を以て開放してあげる展開は、”おとぎ話”に付きまとう古さを上手く解体/再構築し、作品独自の魅力として語り直していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
弱さは強さで、強さは弱さだとちゃんと描けていた。
対して魔女たるミランジョ(を中心に、数多の母≒女たち)の結末が、”おとぎ話”でハッピーエンドを受け取る特権者である”お姫様”になることで決着していくのは、率直に言えば『もうちょい捻ってほしかったなー』という感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
婚礼を経ず魔女のまま、Happy ever after…して欲しかった、つうか。
無論ミランジョは世を呪う魔女になりたくてなったわけではないし、その魂の核は(鏡の牢獄の中、彼女のプリンスチャーミングたるダイダに見せていたように)”お姫様”を夢見る、傷ついた少女だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
だから今回の婚礼宣言は、ミランジョが真実求めていたものを差し出す一手なのだと思う。
それを認めた上で、もう半歩踏み込んだ所にお話を連れてって欲しかったなぁと、正直思っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
少年たるボッジは自分だけの強さを習得して父を乞えていけるが、少女たるミランジョは妻≒母≒后になる/与えられることでしか、自分らしさを再獲得できないのだろうか?
あるいはそれはミランジョとダイダ個人の解決であって、”男/女”という大きな属性を語るわけではないのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ここら辺大変難しくて、凄く良く出来たお話だからこそキャラクター一個人だけでなく、もっと大きく普遍的なものを重ねて、この作品を読んでしまっている自分の問題かな、とも思う。
ダイダが差し出した愛がどのようなもので、ミランジョが確かに犯した罪を贖いうるものなのかは、実際に書かれなければなんとも言えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
プロポーズの言葉だけで何もかも贖われるわけではなく、生活の中で息づく癒やしと許しを具体的に見た上で、物語の決着として納得したい気持ちもある。
このお話は概念をなにかに代理させる象徴劇ではないし、必死に生きているキャラクターに何かが重なるにしても、それは彼ら個人のドラマに血が通い、必死に生きた結果である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
だから”女”なるものの多相を優れて背負うミランジョに、あんまり抽象的な決着を求めすぎる態度も良くないんだろうなと感じる
何より後一話あるわけで、そこで描かれるものを見ないとなーんも判断は出来ないし、するべきではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
この決断が(今まで描かれたモノがそうであったように)現実的なもので、何もかもがそれ一つで決着しない雰囲気は、描画の中に既に漂っている。
このアニメはその難しさの中を、生きていく物語だ。
冥府兄弟と隊長の悲願であるオウケンの開放を、横から窃盗する形になってしまった濁りは、一度は跳ね除けた王様ランキングに救いを求めたですハー王の、不穏にして冥闇なる玉座にしっかり刻まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
誰かの幸福は誰かの不幸となり、生まれた哀しみは新たな哀しみの種になるかもしれない。
その上で、それを超えていく人の強さを信じて紡がれた物語であるし、それを越えられない人の愚かさを、ちゃんと見据えた話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ダイダが果し、ミランジョが受け取った結末がどんな波紋を、新たな物語を生み出すか。
魔女はどんな”お姫様”になるのか。
そこを見届けて、感想をしっかり終えたい。
鏡が砕かれ、ダイダは英雄と魔女が過ごした日々を覗き見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
そこには必死に幼子を護る強さがあり、健やかな成長があり、彼女の王であり父であり男である巨人への慕情があった。
ボッス親父、良いウィンクすんじゃん…。
(画像は”王様ランキング”第22話から引用) pic.twitter.com/hTNNWG5yZl
過酷な運命によって結び付けられた二人は、力を求め敗北によって諦め、そんな諦めを諦めきれない複雑な思いによって、絆の形を変えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
幼子時代を経ずに出会っていれば、ボッスも恋愛対象として見れたんだろうけど、文字通り手のひらに入れて守ってきた子だからなぁ…。
神に破れたボッス王はミランジョとの平穏に逃げ込もうとし、しかし少女はそれが巨人の真の望みではないことを知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
日常を象徴する洗濯柱が、二人の間を阻むレイアウトは、強く優しい巨人だからこそボッスが好きなミランジョの気持ち…それとボッスの乖離を、巧く象徴している。
かくして魔女は、かつての約束を破って魔神に力を希い、巨人は我が子を贄に力を手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
無垢で小さな存在だった魔神が、願いを叶える権能に巻き込まれるほどに、凶悪な外見と魂を食う生き様に落ちていくのが、なんとも哀れである。
かつて美しい森で出逢った二人は、契約で互いを奈落に落とす。
ボッス世代は人間の業を超えきれなかった過ちの世代として描かれていると思うが、悍ましき願望装置になりたくないと泣いていた魔神を知るミランジョが、ボッスを選んで残酷な契約を果たす姿は、今まで描かれたものとはまた違った悲しさがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ミランジョは、魔神を選ばなかったのだ。
自分の魂を苛み力を望む凡百と、同じところに魔女が落ちた姿を見て、魔神は何を思ったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
あるいは願望機として完成した”大人”の彼は、もう哀しみを覚えないかもしれないが、それでも幼い涙は確かにあった。
ボッジの可能性を奪う契約は、ミランジョの無垢を傷つける決断でもあったのだ。
かくして手に入れた力でリベンジを果たしたボッスは、王となり国を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
世界で一番強くなってみて、数多の犠牲の果てに叶えた夢は、どうにも虚しかった。
それでも民を守り、大きな背中が憧れを背負う立派な”男”を演じきって、王は死んだ。
(画像は”王様ランキング”第22話から引用) pic.twitter.com/Dcir5ZdjdF
その心を伝えられなかったから、魔女は彼の王を蘇らせようとあがき、罪を重ねた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
英雄と魔女の愚かしき共犯、その犠牲として身体を奪われた少年は、強さの象徴である棍棒が砕かれた場所で、見届けたもの、託されたものを思う。
自分が為すべきことは何か。
見届けた自分だけに、出来ることは。
体乗っ取られて以来、暗い精神牢獄で膝抱えていたダイダ、久々の見せ場である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
しかし腰を落ち着け闇を見据える時間がなければ、ダイダを縛る力への焦燥は砕かれず、自分がどんな存在で、そこにミランジョがどう関わっているかを識ることも出来なかっただろう。
力に驕った暴力主義者の弟が、牢獄で沈思黙考し弱者に寄り添うことで変わる事と、力なき兄が父の持ち得なかった”力”を獲得し、自分だけの剣を持つことで新たな自分を証明していく姿が、なかなか面白い対比だな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
兄弟はお互いに足らず真に必要なものを、それぞれの修行場で手に入れたのだ。
さて現世では、冥府の軍勢が助力の真の目的を傍さんと、魔神の首を落としていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ここでデスパーさんが我欲に迷い、愛着に苦しむ姿が描かれるの、良いなぁと思う。
あの人聖人なんで、ともすれば人間味の薄い話に便利過ぎるキャラに堕ちかねないんだけど
(画像は”王様ランキング”第22話から引用) pic.twitter.com/hkybCapDvC
重たいシリアスをトンチキ小物ムーヴで空気抜きつつ、弟大事の欲が消えきってないこと、愛弟子すら騙してでも欲しい物があると描かれたことで、巧く”人間”に収まったなぁ、って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ボッジに真理を与える、半ば妖精とか天啓みたいな立ち位置が、こんだけドス汚れてると…”公平”な感じする。
そして巨大な壁に空いた(ボッジが開けてくれた)穴から光を背負い、少年から男へ、暴君から賢王へ成長した少年が降り立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ここで願いを横から簒奪したのは、感想の最初に言ったように是非分かれるところだと思うけど、獄から出て一番最初に為すべきこととして、ダイダはそれを選んだ。
公平に思える決断でも、人間が行う以上必ず我欲が絡む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
それを選び取った責任を自分に引き受け、行いを通じて贖っていくことが、人に出来る唯一なのかもしれない。
そう考えると、ボッスが力の犠牲にした我が子の揺り籠として国を作ったのも、取り返し得ぬものへの贖罪…だったんかな。
数多の呪いと祈りを込めて捧げられる、人の我欲と魂。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
これを内に取り込んで力を世界に蒔く魔神の宿命は、今回の物語では解消されない。
暗い闇の中に小さな子供を置き去りに、光に満ちた幸福に進んでいく後ろめたさは、自分的に結構長く影を引いている。
まぁ残り話数で魔神くんの問題まで解決しちゃうと、取ってつけた完全ハッピーエンドでしかないので、苦さは苦さとして残すのは誠実な描画だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
でもなー…ダイダが闇の牢獄で手を伸ばした少女と、完全に構図が同じなのが皮肉だよな…。
魂の半分を置き去りに、ミランジョは光の側に進み出すのだ。
その罪科も後悔も全部受け取る覚悟で、ダイダは魔女の手を取り婚礼を誓ったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
行動そのものは突飛だが、そこに宿る思いは熱く、嘘のないものだと思う。
英雄と魔女に弄ばれた犠牲者だからこそ、彼らを真っ先に許す特権を持ってる…とも言えるか。
それで収まらねぇのは冥府サイドであり、そらー激怒も激怒大激怒よ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
オウケンのマジでなげーしぶてーバトル描写を通じて、理性なき不死に落ちた哀れさは強く描かれてきたから、団長のこの表情は納得。
しかし賢者は、その業をあえて飲み込む。
(画像は”王様ランキング”第22話から引用) pic.twitter.com/4z8L0uazGr
お金大好き!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
俗欲まみれの”人間”に立ち返ることで、デスパーさんはボッジの師匠として恥じない自分を、もう一度取り戻せるのかもしれない。
都合のいい後回しにも思えるオウケンの微笑みだが、デスパーさんの”感じ入る”力を考えると、それは確かな本心なのだと思う。
デスパーさんが魔神の力を利用し、魔神くんが嫌がっていた怪物へ、強引に近づける一人に落ちかけた所を、言葉なきボッジが必死に止めたことで、ダイダが願いを横取りする隙が生まれる描写があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ボッジ的にも、大好きな師匠が”汚い大人”になってしまうのは、とても嫌だったんだと思う。
負うた子に教えられ…というか、こうなった以上はかかるべし…というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
怒りも失望も腹に落とし込んで、視線を下げて魔女の瞳を真っ直ぐ見据える姿は、正しく僕らが見てきた賢者であった。
デスパーさんを鏡に、無垢から遠い大人でも過ちを正し、新たに始められると書いたのは、凄く好き。
かくして王子は母と再開し、自分が選んだ伴侶を堂々告げ、王として人として『死刑!』の叫びを封じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ヒリングママン…アンタ癇癪持ちで愛が強すぎる人だったけど、メチャクチャ頑張ったので息子が戻ってきて、ホント良かったスね…。
(画像は”王様ランキング”第22話から引用) pic.twitter.com/hPc8LrbhPi
王国存亡の危機、人倫の瀬戸際で正しき決断を果たせるほど大きくなっても、子は子である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ヒリングが背負うシンプルな家族主義は時に苛烈で盲目だが、誤ちだらけの世界の中で確かな導きとなり、温もりをくれるだろう。
魔女を娶ることで、ダイダもまた自分だけの家族を育めるのか。
かつて魔女であった彼の后に、どんな贖罪の道を歩ませ…あるいは共に歩むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
何にも恥じることのない真っ白な生き様ではないが、ダイダもミランジョもさんざん間違えなお立ち上がって、彼らだけの人道をようやく進もうとしている。
その凸凹道が、人間臭くていいなと僕は思う。
ぼんやりした影しか写さない魔鏡は、一度砕かれた上で奇跡(あるいは呪い)を受けて、”お姫様”として再生した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
冥府に下ることで新たな形、自分と世界への明瞭な視座を得て戻ってくる物語は、謀殺されデスパーさんに鍛えられたボッジ、鏡の牢獄に囚われたダイダと、やっぱ共通なんだな。
カゲくんの純朴を浴びたり、冥府でオカン達と対話したり、王様の本心をようやく受け取ったりして、捻じくれた(傷つけられ捻じくれさせられた)ミランジョの心は、ようやくあるべき場所に戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ダイダの求愛は、それを固定する最後の一手…なのかな。
まぁ、愛の話であるからねこのアニメ。
そんな幸福の裏で、冥王は一度手放しかけた棍棒を再び手に取り、暗き旅路へ進み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ランキングシステムを拒絶し、強さから遠い自分だけの”強さ”を獲得仕掛けていたデスハー王が、奇跡の代理として闇に進んでいく。
この不穏さ…誠実で好きだよ。
(画像は”王様ランキング”第22話から引用) pic.twitter.com/GDr1HJlyrN
強さと正しさを求めれば、その代償を支払うことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ボッス王の生涯、ミランジョの苦難を通じて描かれたことが、子供世代の決断にも長く伸びていることが解る描写だ。
新たな家族とミランジョを求めたダイダの決断は、同じく家族を守りたかった冥王の道を変える。
この始末をどう導いて、お話に一旦の幕が下りるかも、大変楽しみなところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
残り一話。
王子様と魔女が婚礼し、子が父を乗り越えた『めでたしめだたし』の先にあるものが何かを見届けて、万雷の拍手とともに終わりを寿ぎたい。
そういう気持ちであります。
大変楽しみですね。
追記 こういう象徴の操作が巧みなのは、自分的にこのアニメの点数高いところだな、やっぱ。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ダイダの横取りが血を流さぬ賠償でギリギリ収まるのは、ミランジョを害した連中を皆殺しにしたボッス、哀れな子鬼の犠牲を大義で埋めてしまったデスハー達の結末を、子の世代が超えた象徴なのかもなー、と思う。
収まりがつかぬものを、どうにか収めるための人の知恵。法と経済。
棍棒以外にも頼りうるものがあり、血塗られた道以外にも進んでいける証明としても、あそこでボッス王国と冥府の問題が”賠償”で解決するのは大事だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月24日
ある意味、皆殺し以外解決策がない自然状態から、契約を通じて物語が近代化した…とも言えるか。