メダリスト 第5巻(つるまいかだ、アフターヌーンKC)を読む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
6級に合格し、中部ブロックノービス予選に挑むいのり。
これまでの全てを一瞬に賭けるライバルたちの奮戦が、鮮烈に描かれる新章開幕である。
マージで最高に面白いので、みんなも読もうッ!https://t.co/3ED4g1KqS1
これまでいのりちゃんがフィギュア競技者の入り口に立つまでを描いてきたお話が、コンペティターとしての最前線で”善戦”するためではなく、”勝利”するためにどうしたら良いかにかじりつく方向へと、舵を切り替えてきた感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
バチバチ度が上がった感じであるが、丁寧な筆致は変わらない。
ここで言う”丁寧”は15人のノービスA参加者全員の衣装と私服をキッチリデザインしてくる執念だけを意味するのではなく、競技に挑む選手やコーチがどれだけの思いを抱えているか、それを全部飲み込むフィギュアという競技がどれだけのものかを、しっかり刻んでくる事も含む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
物語としてのピークはやはり最終ページ、司コーチ渾身の誓いなんだけども、漫画としてのテクネーは第18話、第2-第5滑走までを一気に圧縮してみせる、カットアップシーケンスにあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
それはダイジェストではなく、血の滲む決意と努力のパッチワークだ。
勝つものも負けるものも、皆とんでもない熱を溜め込み、不安定な氷の上に全てを賭けて、それが砕けてなお滑り切る気高さを持った戦士だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
本気でないものはこの領域まで上がってこれないし、それぞれ必死に勝ちきるべく、戦略と意志の限りを尽くして、懸命に挑んでいる。
その本気と真剣だけで、ジジイはダバダバ泣いてしまうのだが。みんな本当に立派だよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
転倒し鼻血を流し、負けが見えてなお”これまで”を嘘にしないために立ち上がる姿は、勝つの負けるののワクワク感を超えた、競技者と競技への敬意を濃厚に宿す。
その上で、勝負にワクワクも出来るのがスゲ~が。
メチャクチャ沢山の人数を捌きつつ、一人も”モブ”にせず、むしろ皆が対等な土俵の中それぞれの限界に挑む姿を、並列で見せていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
その”数”が、主人公が挑む場所の厳しさと輝きを大きく広げて、つるま先生が見ている”フィギュア”の輪郭を、僕らにも共有させてくれる。
このくらい、皆が本気の競技。
そう思ってるから、残酷なイス取りゲームから落ちるものの誇りとか、恵まれない環境でなお戦う少女の涙を、コンパクトながら鮮烈にページに刻もうと思っているのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
全員主役。
言うは容易いモットーだが、実際に作品に焼き付けるには、技量と熱が山といる。
フィギュア素人の加藤親子を観客席に配置し、瀬古間さんを解説役とすることで、ガチの競技シーンへと画角を変えたこのタイミングで、”フィギュア”の見方を改めて解説する工夫も、また良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
カードゲームに例えられた戦略と力点は分かりやすく、選手の凄みが手早く伝わる。
べらべら長尺で喋りすぎると熱が冷めるし、説明がないと(めぇめぇ可愛い羊ちゃんみたいに)置いてけぼりで分かんないしで、塩梅が大変六香良いところだと思うが、ここら辺は巧妙に圧縮され、的確にドラマと噛み合いながら、知識を深めてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
セリフでの状況説明も含め、物語の圧縮力が高い。
競技者達が挑む高みが見えやすくなったので、いのりちゃんがやろうとしていることの難しさ、尊さもより鮮明になって、いつも以上に彼女を尊敬できる話になってるのが、まースゲェなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
ギザ歯可愛い鯱のおねーさんも出てきて、世界観がギュッンと広がる第5巻だなー。
ノービス世代が戦国武将と動物モチーフで名前付いてるのに対し、クリオネにイルカにシャチと、シニア世代が海の生物なの、別格感があってかなり好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
いい人オーラ出してたクリオネさんも、競技になるとバッカルコーン露出させて、流氷の捕食者たる凶暴さを顕にしてくんのかな…。
あとワリとサラッとした態度なんだけども、妻の死にうずくまって動けなかった加藤パパが、司コーチがいのりさんと出会って未来に進みだした熱に当てられて、自分を前に進めていいかなと思えたと告白するシーンは、大変に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
人間が生き直す重さを、涙でしっかり受け取る司くんが良い。
自己評価が極端に低いので、なかなか自分を信じきれない(事が、誠実に教え子と競技に向き合うストイシズムに繋がってる)司くんだけど、その生き様を通じて他人を動かす、感動の熱量はやっぱ凄くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
ムキムキ憑依させてたいのりちゃんと合わせて、影響力はデカい人だなと思う。
でもそういう主役の引力圏以外にも、色んな人々が強く共鳴して、本気で挑み本気を賭けて滑っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
理鳳くんの指導を通じて、名港FSCに対する共感が強まってた所で、四葉ちゃんと夕凪ちゃんがグンと存在感ましてくるの、良い運びだなぁ、と思う。
追い抜かれる恐怖、食らいつく決意。
夕凪ちゃんは『遅れてやってきた、驚異の新人』であるいのりちゃんでは絶対に描けない真実を、強く作品に刻めるいいキャラだなー、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
他のキャラも良くて、ロバちゃんのコーチも、クラゲちゃんの先生も、みんなメチャクチャ真摯に子供に向き合い、その夢を共に滑っていると、しっかり理解る。
P54での加護パパの描き方が僕は好きで、どっか遠い所に自分の感情を置きつつ、司くんを通じて心を動かさせてくれたいのりさんへの感謝をしっかり言葉にして、目線を合わせて向き合ってる姿が、優しく誠実だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
子供がリンクに賭けるものがそう描かれるように、大人たちの個性もまた、多彩に描かれる
色んな人がこのリンクに集っていて、その思いや意地の現れ方は別々なんだけども、競技や他者、自分自身に向き合う誠実さは、分厚い岩盤のように共通して、キャラクターを支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
その個性と普遍の描き方が、骨太でありながら爽やかで、僕は好きだ。
敬意とはなにかっつーことを、よく見てる漫画だ
皆が譲れないほど尊いものを捧げて、なお勝敗がつく残酷な舞台。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
そこに挑むいのりちゃんは、一体何を翼にして翔ぶのか。
光ちゃんとの直接対決が全国に持ち越された以上、メタ読みすれば勝つのが当然の中部ブロックであるが、そんな軟弱な読み方をけして許さないシビアな視線が、リンクを貫いている。
勝ち負けを超えた価値と、勝ち負けがあればこそ生まれる意味両方をしっかり見据えて、お話は最強のヒキで第6巻に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
いやー…あの終わり方は、続きを待ち望むしか無いでしょ…。
こんだけ主役以外を魅力的に描いた上で、それを追い風に主役を更に高く飛ばすの、本当に凄い。
というわけで、大満足の第5巻であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年3月30日
新キャラちゃん達もみ~~~~んな可愛くて、つるま先生がどんだけ児童に”本気”か、徹底的に理解らされたのもありがたい。
本物のリアルが、今ココにある…ッ!
そういう作家への畏怖と敬意も味わいつつ、次回も大変楽しみです。マジおもしれぇ。