東京24区を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
加熱する争乱の中で、RGBの三人は”コルヌ・コピア”で眠るアスミに会いに、街を駆ける。
人一人には耐えられない過酷な選別を越えて、それぞれが納得できる未来を掴むべく。
何かを諦め、何かを切り捨てる以外の、”大人”のなり方を探すべく。
その一歩は、きっと未来に続いてるから。
そんな感じの東京24区最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
うーむ…やっぱ最後まで、自分には難しい作品だった、という感想になるかな。
テーマと着眼点は良いものの、それを物語とエンタメの形に整形する筆に波長が合わない所があって、完全にノリきれないまま見終える形となった。
同時にRGBの迷える青春…特にシュウタが自分の愛と死を、自分の目で真っ直ぐ見据えるようになれるまでの歩みとしては、手触りがあって結構好きでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
おそらく”あえて”であろう親しみやすさを宿そうとしたダサさが、扱うネタのスタイリッシュさといまいち噛み合わない感覚は、最後まで残る。
アスミの涙が生前の彼女を知る小さく個人的で、人縁・地縁に結び付けられたサークルを越えて、24区全体の意思決定を導いていく所は、かなり説得力がなかったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
そういう小さなサークルを超えた”公”に、ピントを合わせて進めてきた話が、私的感情の炸裂で決着してしまう違和感。
『大好きです』という個人的肯定で動かないところに、冷厳と様々な問題があればこそ、自由と秩序は対立し続け、融和を求めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
人造的に発火させられた暴動に至る感情は、逆位相の感情をぶつけることで引くので、落ち着いた人たちは公的決断を冷静に果たせた…とも取れるけど。
それは結局、”公”を担う私人一人ひとりの尊厳をナメた、選良に導かれるべき衆愚として見下してしまう視線なのではないか、と感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
アスミの囁きを受け、人間の限界点を超える力を付与された特別な存在だから、RGBは”正しい”選択を果たすことが出来た…とも、ロジックが繋がりかねない。
そうではなくて、もっと純朴で前向きなものを信じてお話を進めてきたからこそこのクライマックス…なんだろうけども、その素朴さが難しい…あまりにも現在進行系で難しすぎる問題を扱う作品には、その根幹を切り開いて、解りやすい物語として提示する時の障害になってたのかな、とも思わされた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
一般受けを切り捨ててよりディープな方向に踏み込むか、あるいはもっと道具立てを工夫して、ポップでありながら鮮烈な問題意識を宿した仕上がりが必要だったんじゃないかな、と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
12話見終わった今は感じている。
皆で話し合えば、道は開ける。
たしかにそれだけが唯一の答えだって、皆も知ってる。
しかし情報技術の発展に(悲しくも)反比例して対話のコストは上がり、作中群衆の背中を押した様々な情報工作と同じく、束で扱われる個々人の意志はあまりに不定形のまま、誰かの利益と欲望に…”公”を廃した/狭く規定された”公”という、小さなサークルに集約されてしまう状況がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
世に正しい価値観とされる民主主義も人権主義も、加速する技術の中でクラックされる現状にテコを入れるには、創作とは言え今回のクライマックス、問題解決が素朴に過ぎる感じはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
同時にこの率直さは、RGBを始めとするキャラクターを描く作品の筆に、素直に出した答えでもあろう。
あるいは高騰する意思疎通のコストを補うのが、亡霊一人に神様を担わせるのではなく、責任と権利を分散して世界を把握していくカナエシステムVer2…ということなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
それはシュウタが身にまとった、真のヒーローギアと同じく、技術革新が齎す新たな希望だろう。
それが最も安易に、経済と社会という角度からクラッキングされることも例えばクナイの物語を通じて描いてはいたが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
そういう間違いきっていて否定もできない”現実”にどう抗していくか。
作中で答えが出たと描かれても、自分の中には未だ疑念が残る。
残ったほうが良い、難しい問いでもあろう。
RGBが得た異能を、シュウタはトラックとガイケイ相手の大立ち回りで、ランちゃんは畏友の遺した人格デジタル化プログラムで、それぞれ最終決戦に生かしたわけだが、コウキは”説得”という自分だけの牙を、クライマックスに巧く噛みつかせられなかった感じも受けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
ようやく再結成なったRGBの、三人揃えば無敵な感じは大変に良かったが、ならコウキも例えば父親の頑なな心をほぐすとか、手に入れた力に相応しい見せ場があっても良かったんじゃないかな、と感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
まぁやること多い最終回なので、そういう尺がなかった…て話なのかもしれんが。
万能の女神だったアスミを泣きじゃくる子供に戻し、お互いの気持を率直に伝えて、愛と死を超えてシュウタがようやく”大人”になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
少年の成長物語としての導線は、かなり綺麗にまとめられたと思う。
アスミを高いところに置き、それを引っかかりにヒーローに自分を引き上げるシュウタの視線。
それはシステムの中核に囚われ、”公”を既存から一段階高いレベルに引っ張り上げる生贄になった現状と、複雑に絡んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
悲劇を演出し支持率を上げる、区長の冷たい計算含め、アスミはアスミ個人から遠く離れた、怪物的に巨大なものに祭り上げられ、閉じ込められてしまっていた。
その重責から少女を開放し、死者にあるべき尊厳を取り戻す形で少年の幼年期が終わるのは、結構良いお話だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
到底納得できない理不尽な現実、その最たる”死”の居場所を、シュウタが自分の心に作るまでの物語。
このお話は、そういう側面もある。
というか、その側面が強い。
その私人としての成熟が、あまりに巨大で複雑な社会システムに連結するのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
その”繋ぎ目”を上手く示せなかったお話であったかなと、今の僕は思っている。
もうちょい、お話を構成する各パーツパーツの仕上がり、それが連動する方法を、適切に磨き上げた上で追うべきテーマだった気がする。
ランちゃんが背負うアート・アクティビティ、先進テクノロジーにしても、コウキが見据える公権と決断の重荷にしても、シュウタが担当する手触りのある生活の実感にしても、半歩踏み込みが足りきらず、噛み砕きが甘くて、現実にあるテーマが硬いまま届ききらない感触があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
もう少し現実離れしたギミックを活用し、難しい問題をフィクショナルに砕いて視聴者に届けるか、よりハンディな形で問題に触りに行って、伝わりやすい表現を試みるか…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
どちらにしても、貪欲に広げた掌から溢れたものが、かなり多く思えた。
それは逆に言えば、視野に捉えた現代的な難問が多数あって、それを届けたいという志が確かに存在していた…ということでもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
その視線と思いは意義あるものだと感じるが、それを扱う手付き、表現を通じて形になるものは、もう少し他のやり方があったのではないか。
そんな風に思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
世論誘導、選択の重さ、自由と秩序、生命倫理。
色んなモノを俎上に載せようとして、ソレを捌き切る創作のナイフを十分、研ぎ澄ましも数を用意も仕切れなかった感じだ。
戯画として扱うにしても、もう一つの現実を描くにしても、少々半端だった印象を拭いきれない。
同時に薄暗い未来予測を捕らえつつ、ニヒリズムに飲み込まれず前向きな結論へとお話を引っ張れたのは、とても良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
こういう重たいネタを扱う時、素材の重力に負けて”現実的”なオチに雪崩落ちていくことも多々あって、その度にガッカリなのだが。
そうはならず、力強く思いを吠えた。
ままならない現実をロクでもない方向に捻じ曲げる引力に逆らい、未来を信じられる足場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
それがキャラクター間の”私”を飛び出しえず、作品が輪郭をなぞってきた”公”に(僕にとっては)説得力ある形でアプローチしきれなかった事が、その叫び声を弱くはしているけども。
兎にも角にも、吠えたのだ。
そうしようと思ったことには大きな意味があると思うし、青年たちの個人的な問題の描き方には、無骨な真っ直ぐさと熱いエネルギーが宿って、かなり好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
諸手を挙げて称賛は正直出来ないが、嫌いではない…というか、結構好きな作品になってもくれた。
その事に感謝しつつ、視聴と感想を終える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月7日
現実的で重たいテーマは、物語の形に整形する時別格の難しさがあり、選び取った表現法こそがテーマが何処まで響くかを決める。
色々首をひねる部分も、納得して膝を叩く部分もあったが、見終えて後悔する作品ではなかった。
お疲れ様、ありがとう。