時光代理人 -LINK CLICK- 第1話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
世評と友人の感想が大変高く、見たいと思って機を逃していた異能力サスペンスアニメを、1クール遅れで見ていくことにする。
写真を通じて過去を覗き込めるトキとヒカリの、不思議で切ない事件簿…といった感じのスタートとなった。
まずアニメを構成する全要素がスタイリッシュに磨き上げられ、大変現代的な味わいを宿している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
キャラクターデザインから美術設計、ヴィジュアルデザインにBGMまで、モダンで垢抜けたセンスが緩むこと無く、話の最初から最後まで続いていく。
このルックの良さが、最初にバツンと良いの入れてきた。
作品が視聴者に挨拶する第一話はとても大事だと思うが、主役たちの人格、作品のムード、全体的な空気と匂いを、しっかり教えてくれるまとまりもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
トキがダイバー、ヒカリがナビゲーターとなって、条理を捻じ曲げ禁断の知識を得る、制約の多い異能による裏仕事。
そこには人間の悲喜こもごもと、それを共有しつつ触ってはいけない禁忌があり、ほのめかされつつも語られない過去の痛みと、己を制する枷の軋みがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
トキはあからさまに、過去に潜り現代だけを回収してくるプロの仕事に向いていない、情の豊かな人物だ。
それは好感と危うさの源泉である。
都会と地方、親世代と子供世代、権力者と下っ端、男と女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
場所は違えど、トキが潜りエマが翻弄される苦しみはとても現代的で、その生々しい薫りをスタイリッシュなヴィジュアルが巧く脱臭し、また切実に伝えても来る。
トキはエマの悲しみに共感し、辛さを自分に引き受けてしまう。
触ってしまえば矛盾が起きて、クールに仕事だけこなすしか許されていない非情なビジネス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
それをこなすには、このお話の主役は優しすぎるし、写真に封じられた12時間は辛いことが多すぎる。
過去を問わず、未来を聞くな。
目を塞いだ獣のように活きることだけが、異能で現実を壊さないルールだ。
トキはこの第一話で既に、エマが過去に置き去りにしたはずの父母の温もりに触れ、彼女が始末される未来を知らぬまま、仕事を終えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
情と非情が交錯する浮き世の波風を、器用に渡るのは難しそうな主人公だが、バカ野郎と蔑むには優しさの書き方が巧すぎる。
一話で、かなり好きになっちゃったな…。
写真館という根城の設定も良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
過去に潜るのに必要なフェティッシュとして選ばれた写真は、切断された過去だ。
本来その一枚からは他人の人生は覗き込めないが、ヒカリの異能はそれを可能にし、トキの能力はそれを自分に引き寄せ、改変の危険を抱えたまま追体験させる。
戻らないはずの時が戻り、動かないはずのものが動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
この異様な不思議さを、時折カット・インする時計のイメージと絡めながら、シャープに演出してくる筆が良かった。
トキ≒エマの過ぎ去った12時間は、ヒカリの現在と並走しながら、分け隔たれてもいる。
ナビゲーターであるヒカリは、エマの孤独な寝室に隣り合い、その現実に潜るトキの肩を、優しく抱いてやることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
しかしその共感は何処か遠いもので、トキが共感の苦しみと引き換えに写真の中の過去を変えうるのに対し、ヒカリはただそれを見つめ、知ることしか出来ない。
黒と白の主役コンビは、行動と観察、危うい実行力と冷静な理性の巧く塗り分けられつつ、現状支え合って仕事をこなしているように思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
その結末はダイブ対象の死であり、これが携帯電話に届いた母の言葉に触れる、トキの小さな優しさの結果なのか、それとも既に定まった未来なのか、第1話は教えない
エマが人知れず消される衝撃は、このお話が綴る物語がけして甘いものではないことを、巧く教えてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
こんなに厳しい世界で、あんなに優しい男が世界を…あるいは自分を壊すこと無く、生きていけるのか?
ヒカリはその危うさを見て、触れること無く導くことが出来るのか?
そういう疑念が、巧く湧き上がってくる構成と演出だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
二人が歪な比翼の鳥であり、写真の中と外、二つの現実と共感に引き裂かれながらも確かに触れ合っていることは、虚実の境界を軽やかに飛び越える寝室のシーンで、鮮明に描画されている。
分断されつつ繋がる、奇妙な実感のある12時間。
今回は世界の残酷さを知ること無く、父母の温もり、春巻きの味わいに情を乗せて、トキは任務を泳ぎきった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
3つのルールを守り、残酷な未来から巧く目を逸らして(ヒカリの誘導で逸らされて)、深入りしすぎず仕事をこなした。
じゃあ次は? その次は?
疑問と期待は尽きない。
ややアップテンポに状況が転がり、説明ではなく描画の中で能力や成約、キャラが置かれた状況や人格が見えてくる豊かな語り口は、こちらの肩をグイと掴んで作品に引き込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
アナログな写真と、最新ゲーム会社のハラスメント、不正経理、地方差別…彼の国の”現在”の薫り。
この対比も良かったし、謎の蒔き方も手際が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
シャープな世界観は感触ベースの色彩と、線の細い白けた輪郭で巧く描画されて、独自の匂いがある。
過去作に似通ったものを探すと…”DARKER THAN BLACK(一期)”、”Pet”、あるいは”刻刻”といった雰囲気…だが、そのどれでもない独自性がある。
それが異国の現実に向けられる鋭い批評眼によるものなのか、優れたクリエイターが有するセンスのたまものなのか、作品が宿す只者ではないオーラなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
多分その全部だと思うが、それを確かめるべくしっかり、この先も楽しみたいと思った。
時の傍観者を気取るには、あまりに情がありすぎる主人公。
彼の前にどんな事件が立ち塞がり、どんな決断をしていくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年4月21日
そこに見て語りかけるだけのヒカリが、どれだけ深く食い込めるか。
スタイリッシュに冷えた冷酷を、印象的に伝えてきたお話がどんな風に転がるのか、さっぱり読めないのがとても気持ちがいい。
次回も楽しみである。