時光代理人 第4話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
衝動と決断を込めて放ったボールは、大きすぎる定めの前に些事でしかない。
茜色の夕焼け、甘酸っぱい初恋、母の涙と夕食。
全てが運命に飲み込まれるとしても、一瞬の旅人として全てを見過ごし、触れぬまま”仕事”を果たせ。
それが、時光代理人。
そんな感じの超絶サスペンスの本領発揮、『なーるーほーどーねー!』とデカい声で膝を叩く、技ありの展開であった。なーるーほーどーねー!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
熱血青春バスケの行方、トキの決断に焦点を合わせておいて、ちっぽけな差異など飲み込んでしまう巨大過ぎる運命から目を逸らし、最後に暴く。
新海誠テイストが美しい田舎の情景、やっぱりここにもある家族の食卓の小さく麗しい手触りに注目させることで、四川大地震という史実のトリックが意外な必然として、見事に刺さる話運びである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
フェイクのかけ方、インパクトの作り方…マジでうめーなこのアニメ。
お話としては前後編で、熱血バスケの後始末…とみせて”時光代理人”としてはこっちが本命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
果たすべき”仕事”ってだけではなく、既に終わってしまった過去に確かにある人間の息吹を、否応なく受け取ってしまうトキの人格、異能の切なさを浮き彫りにする上でも、田舎の日々は大事である。
抑圧と解放を繰り返すドラマのリズムに合わせて、主人公は暗い場所と明るい場所を行き来する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
鬱屈の溜まった出口のない体育館から、試合が終わって外に出てみれば、夕暮れの色を宿して雲は茜色、田畑に吹き抜ける風は美しい。
決断が運命を変え得なかった安心感と合わせて、自然息が吐ける。
ミッションをこなし初恋をくぐり抜け、我が家に帰って母の食事に満たされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
愚痴あり、涙あり、複雑な家庭事情あり。
しかしアヒルと魚のありふれた食事は、手を汚して我が子が食べる分を取ってくれる当たり前の情に満ちて、大変旨そうだ。
トキはそれを実際に食べる。
それは味気ない過去ではない。
ピアノの温かい音色でエピソード全体を包み、順当に”仕事”は果たされていく安心感が、運命の日を告げる声に一気に暗転し、トキ自身の記憶が暴かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
リンとの因縁を刻む回想は重たく暗く、今までの暖かな景色が全て嘘のように、出口がなくて重たい。
閉ざされた場所から開かれた場所へ…
そしてまた、閉ざされた場所へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
写真の中の過去と、記憶の中のトラウマを行き来しながら、主人公を取り巻く情景はその色合いを変え、暴かれる真実と転がるドラマに相応しい雰囲気を、ヴィジュアルで伝えてくる。
ここら辺の操作が大変巧みで、気持ちよく転がされてしまった。
伝えるべきメッセージが無音で省略されたり、それなりにデカい改変を行ってるはずなのに順調すぎたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
『ああ…なんか良いな…』と素直に思える、恋と青春と家族愛の情景にチリチリと、不穏なノイズを混ぜる手際もいい。
ここで予感を作っておかないと、真相暴露が不意打ちになりすぎるからね。
かくして暴かれた真実は、たかが田舎のバスケの試合だの、甘酸っぱい思慕だの、母子家庭の小さな愛情だのを全部飲み込む、問答無用の重たさを持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
なるほど、それならば。
意外でありながら納得するしかない、大変巧い話運びである。
今度の決断は、ボール一個で終わらない。
生きるか、死ぬか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
既に定められた巨大な分岐点へ、情に誘われ手を伸ばせば全てが崩れる。
トキは既に、一度感情に身を任せ写真の中の過去に触れる、人間的な決断を果たしている。
おまけに、自分自身この災害に傷つけられた当事者だ。
それでも、二度目の決断は許されない。
この重たさを、果たして飲み下せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
次回に重たい余韻を残す、見事なヒキである。
この展開がいいのは、世界が変わる関わらないかというマクロな視点だけでなく、心臓のトキメキやアヒルの味を否応なく感じてしまう、トキのマクロな感情にまつわる物語でもあるからだ。
ヒカルは心を殺し、過去を問わず未来を変えない”仕事”を望む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
それは限りなく正しくて、しかし限りなく難しい。
写真の中の過去はトキにとっての”今”であり、情の深い彼は他人として触れた人生を、けして無視できない。
ボールを放ってしまう男なのだ。
しかしそんな自分らしさ、人間らしさを押し殺さなければ、”仕事”は果たせないし世界は狂ってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
では愛すべき隣人として、既に失われた家族の匂いを残すあの美しい風景を全て見捨てて、正しい行いを成し遂げれば良いのか。
この小さなジレンマこそが、世界の全てを決めてしまう。
極小の個人的感情、ちっぽけな生活の肌触りこそが、異能を通じて世界全部に、運命という巨大なものに繋がり、揺るがしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
このミクロとマクロの接合を、熱血バスケに巨大災害を隠した話運びが見事に演出し、視聴者に届ける回であった。
このアニメは、こういうモノを扱う。
じわりじわりと、”時光代理人”の仕事ぶりをまどろっこしい説明を省いて描いてきたシャープな描線が、作品の核心を射抜いてきた気持ちよさがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
”じわりじわり”の部分ですら、各エピソードごとに独特の魅力と面白さ、明暗入り乱れる深さがあったが…その下拵えが、一つ決算される気持ちよさである
同時にやっぱ、情なく加速していく都会の暮らしと、未だ残る田舎へのノスタルジーの対比が、作品の大きな核なのかなー、という感触も得れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
暗い体育館でタメた分、情念背景の仕上がりは最高に良くて、その開放感と心地よい香りが、後の暗黒を強烈にぶっ刺しもするというね…。
任務に背かなかった安堵、選択が間違っていなかった気持ちよさを噛み締めながら、進む田園の青春。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
母への想いと合わせて、トキと僕らを包んだそれは嘘ではない。
しかしそれを嘘にしなければ、”仕事”は果たせないし世界は変わってしまうのだ。
重い。
やっぱトキ、サイコダイバー向いてねぇわ!
つくづくそう思わされるが、しかし事実彼は選ばななければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月11日
己の感情か、世界の摂理か。
写真の中の過去か、外側にある現実化。
二度目のシュートは、何処に落ちるのか。
決断を果たした後、トキは果たして運命の重さに耐えられるか。
こりゃあ…次回見なきゃ始まらんよ。
すげーアニメだわ