ダンス・ダンス・ダンスールを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
全てを絞り出した舞台は酷評され、スクールにも波乱が吹き荒れる。
潤平は陶酔と衝動の責任を取るべく、己を否定した”生川”のサマースクールへと、流鶯を連れて進み出る。
己を否定され叩き直される、新たな試練。
少年たちの夏が始まる。
そんな感じの洋舞青春譚新章、新たなステージは波乱万丈な、ダンスール第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
潤平の煌めく才能に魅せられ、見出してしまった責任を果たそうとする千鶴さんとはまた違う、数多の才を飲み込む巨大組織だからこその指導。
そこに潤平と流鶯が飛び込んでいくお話である。
おばあちゃん先生が正確に評するように、音とドラマに陶酔できるのは、潤平の稀有な資質である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
しかし目の前で爆ぜる星を制御し、自分が感じたものだけで終わらず、共演者や演出家、観客が見るもの…見せたいものを冷静に追う視点は、バレエ初心者であり子供でもある彼には、まだない。
ここでは死ねない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
その衝動にただ素直に、振り付けも予定も蹴っ飛ばして踊った舞いは、潤平を最高に気持ちよくする。
しかしそれはバレエ界の実力者に酷評され、千鶴の立場を危うくする。
飛び、闘い、殺された時、潤平はそんな結末を当然予想していない。
自分の決断には、必ず結果と責任がつきまとう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
今回の顛末で潤平は初めて、そんな世間のルールを思い知った。
横紙破りを詰め寄る保護者を前に、千鶴さんが防波堤になって”大人の事情”から遠ざけようとしてるのが、僕は好きだ。
ババァと罵られ、ガミガミ言い合いながら。
教え子として一児童として、バレエに出会い直してしまった潤平を守り導く気持ちが、やっぱ在るのだと理解るシーンだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
そんな情に感じ入らないヤツが、父を失って自分が”男”にならなければ家族を守れないと、バレエを封印するわけもなく。
自分がしでかしたことの重さは、ずっしり両肩に伸し掛かる。
それは総身が震えるほどの重責なはずで、しかし潤平は自分で考え、感性に素直に、友との語らいに何かを学んで、自発的に未来に飛び出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
兵ちゃんはそこに並べない。
噴水、階段。
境界線は分厚く引かれ、潤平は上がって兵ちゃんは下がる
(画像は"ダンス・ダンス・ダンスール"第6話から引用) pic.twitter.com/2aaIiVIMEs
この階段がどんな奈落に通じてて、あの舞台を見てなお髪の毛が視線を閉ざしてる兵ちゃんがどこに行き着くかは、アニメの範疇だと書いてる余裕が無いかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
潤平は道を違えたはずの友人にも、ヘラヘラと明るく話しかけ、最後の手向けのような言葉に背中を押される。
流鶯の舞に目を見開き、流れる涙を拭おうともせず、心揺るがす感動に率直に進めた少年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
それと同じ道を歩めない者もいて、しかしここで一瞬、確かに道は交わる。
ここで受け取ったものが確かにあって、だから潤平は新しいステージへと進んでいく。
この交錯と別離を見落とさないのは、作家の眼と思う
主役として新たな未来に伸び上がる潤平の道と、脇役として人生の奈落に沈んでいく兵ちゃんの歩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
これが完全に隔たれたものではなく、複雑な迷い道と個別の尊厳を保って、再び交わっていく人生の不可思議もまた、アニメで描けたら最高だなぁ…と、兵ちゃんファンの僕は思うわけだが、さて。
ともあれ本筋は、潤平少年なりの責任感と大暴走を追っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
ここで『俺とお前で、あのアートおばさんに認めさせんだよッ!』と流鶯の腕引っ掴むところが、潤平のピュアなところだなー、と思う。
滅茶苦茶やってるようで、一人じゃ怖いのね…
(画像は"ダンス・ダンス・ダンスール"第6話から引用) pic.twitter.com/mQ9vSUsXEw
潤平の無茶苦茶をすんなり綾子さんが受けたのは、(千鶴さんと同じく)初見で潤平の才を見抜き、惹かれたからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
同時に『それはバレエじゃない』と否定せざるをえない矜持と理想もあって、これを両立させるには、自分の手の中でキッチリ育てきるのが理想である。
同時に(千鶴さんと違って)見出した才に酔わない冷徹さ、どんな才能も簡単に潰れる運命の重さもよく知っていて、定められた試練を自力で超えてこないなら、目をかける理由もないと距離を取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
優しいんだか冷たいんだか、その両方なんだか。
アートババァは大変複雑で、魅力的なキャラだ。
ここら辺の思惑を潤平はさっぱり理解なんぞしてなくて、結構な特別扱いを平然と受け流し、”生川”のレッスンを受けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
そこは初心者にして異端児を冷たく突き放す、権威主義の巣窟…というわけではない。
講師陣はかなりシビアな眼で才能を見つつ、段階に応じた適切な指導を心がけている。
超モブ顔に子安の声帯、不思議なデビューを果たしたバンダ中村大先生であるが、この後教育者の鑑として大化けするので、強いCV選定には納得である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
彼はサマースクールの管理者として、熱心で公平な指導を丁寧に行っている。
突然の乱入者がどんな資質を持っているか、しっかり見る。
お父さんにしても千鶴さんにしても、ちゃんと見てくれる大人が周囲にいた事は潤平の幸運だし、見守られる関係が安泰とはいかないのは、彼の不幸でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
しかし飛び込んだ先には誠実に子供の可能性を見守り、自分に差し出せるものを手渡ししてくれる人が、必ずいる。
理不尽な不幸とか才能の有無とか、揺らぐ心とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
人生の暗い部分を真っ直ぐ睨みつける作品なのだが、夢を追う子供たちを善き出会いが待ってくれている希望には、結構ぶ厚めの信頼を置いて話が進む。
そこが好きである。
ただいい人で終わらず、コクも苦味も在る”自分”を保ったまま、隣り合ってくれる
そういう大人の書き方が、潤平たち子供の眩い青春と同じくらい大事にされているのは、やっぱ良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
潤平も年相応のクソガキっぷりを残しつつ、出会いと教えに対してかなり率直に開かれていて、自意識の中で導きを腐らせるってことが無いんよね。
適切に悩んで、立ち止まらず動く。
その結果揺り動かされたり崩されたりした跡地に、凹まず新しくて高い志を立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
それが出来るのは、やっぱよく導かれ手渡しされる結果だと思う。
”生川”に舞台を移すことで、作品は教えるということ、学ぶということがどんなものか、ドラマを通じて力強く語っていくことになる。
破天荒なステージが生み出したものは波乱だけではなく、流鶯と潤平の距離が縮まったのは、微笑ましくもありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
バレエ以外の全てを剥奪された流鶯は、漢字も読めないし電車も乗れない。
千鶴さんの掌を離れて、他人と向き合いながら自分を主張するのも難しい。
そんな彼がビビりつつブツクサ文句たれつつ、”外”に出ていけるのはやっぱり、潤平が隣にいればこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
『こいつとなら…』
そう思える信頼感は、魔王と王子が高め合いながら舞ったあのステージあってこそ育まれた。
性格捻くれきっているので、流鶯はけして認めないわけだがな…そこも可愛い。
潤平にーちゃんの背中に隠れつつ、新しく楽しいことに出会っていく流鶯坊や…って構図が、やっぱ良いのよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
潤平もまた、後に流鶯がいてくれるからこそ前に出れる。
自分の現在地を図り、為すべきことを探していく。
(画像は"ダンス・ダンス・ダンスール"第6話から引用) pic.twitter.com/Uucthv4vdo
流鶯の仕上がり方…他の生徒の仕上がらなさを書き分けるバレエ作画が、残酷かつ適切だな、などと思いつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
中村先生は潤平に、音の感情を感じ取り陶酔することよりも、カウントに従って踊ることを要求する。
『お前はまだ、その段階ではない』と。
つまり、潤平の感性は過ちではないのだ。
しかし体内にメトロノームを作る前から、感じたものを野放図に表現するだけでは、”バレエ”にならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
潤平が魅せられる星の数々は、”美”を心魂削って追求し生まれた規範に乗っかって初めて、他人に届く形になる。
潤平の豊か過ぎる感性は、その足元が整うより早く、彼を高みに飛ばしてしまう。
凡人が地面這いつくばって届かない場所へと、自分を押し上げれる可能性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
これに魅入られて、千鶴さんも綾子さんも潤平を側に置きたがる。
正しいカウント、正しい姿勢、正しい動き。
”バレエ”の基礎にして正解とされるものを、潤平の中に叩き込もうとする。
それがないと、高く美しくは翔べないからだ
自分が感じたものと、先達が見ているもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
この調整が潤平にはなかなか上手くいかなくて、自分が何を求められているか納得できず、悶々とレッスンを過ごす。
他人が定められた正解をなぞって、素直な感性を殺す。
そんなやり方を、彼はもう飲み込めない。
この煩悶を老いたるピアニストに導かれて、潤平は規範の美に出会う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
正しく美しい姿勢を追求し、無駄を省いた結果全員がたどり着く、たった1つの動き。
それが正しいからではなくただただ美しいから、自発的に生まれていく秩序。
(画像は"ダンス・ダンス・ダンスール"第6話から引用) pic.twitter.com/p3vBCy7VRy
あるいはそれを生み出すために、莫大な時間と熱意を飲み込んで生まれたクラシックの規範。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
その真髄に、潤平は打ちのめされる。
潤平の豊かな感性を否定せず、しかしそれがどう”バレエ”ではないのか…なり得ていないのか、一番刺さる形で指導できたおばあちゃん先生は、優秀な教師だよなー。
正確な基礎の上に、独自の感性を炸裂させることで生まれる説得力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
潤平は”バレエ”の正解を前に、自分の中でわだかまっていた疑問…答えだと思い込もうとしたものを打ち砕かれる。
ここでエゴにしがみつかず、新しく出会った衝撃こそが正解なんだと、飲み込めるのが凄いと思う。
クソ中坊なんだから、もっと”自分”にしがみついて自己防衛して良さそうなもんだけど、潤平は自分が出会っちゃった残酷な答えと、正面対峙しようとすんのよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
それはそう感じる感性を封じて、ヘラヘラ周りと合わせて生きてきた反動なのかもしれない。
それを駆動させたのは、あの流鶯の舞だ。
自分を鑑み、無邪気から抜けろ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
盗み見たSSクラスの衝撃は、”バレエ”に留まらず潤平の人生と人格を揺るがしていく。
他人の事情も知らず、陶酔に身を任せ甘えていた。
子供でしかなかった自分を、弱い部分も沢山あるライバルを見つめながら、潤平は涙を流す。
ここで流鶯に謝れてしまうのが、潤平という少年の優しく強いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
お互いの魂をぶつけ合った間柄、恥も外聞もない…というには、彼らは幼すぎ、もう幼くはないだろう。
それでも自分を揺り動かした相手に嘘なく向き合いたいから、怖さも弱さもむき出しに、二つの影は明日もレッスンに進む。
そういう相手が、隣りにいてくれること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
衝動に突き動かされた舞を通じて、お互いの魂にお互いを突き刺したこと。
それは、色々苦くて小っ恥ずかしいこともあるけど、良いことなんだなぁ…と思えるエピソードでした。
あれだけ輝いたから、あの舞台が最高で正解なんだと、潤平は当然思いたいだろう。
でもその独覚に満足してしまえば、成長も変化も、より強い輝きとの出会いも無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
先を行く人が与えてくれた機会に感じ入り、涙混じりに過去の己を噛み砕いて、より善く進む道を震えながら探す。
それが出来るのは、もう無邪気でも勝手でもないわけです。
言葉の真の意味で、”大人”に近づいている。
そんな潤平の一歩一歩が感じられて、とても良いエピソードだと思いました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
主役の激しく揺れる思春期だけでなく、それを取り巻く大人、手を惹かれ同じ嵐に揺らぐ流鶯もしっかり描かれてるのが、群像劇としてよかった。
殻の外に連れ出された流鶯の変化も、今後の楽しみだわな。
バレエが定めた”正しい美しさ”に、向き合う厳しさと意義を噛み締めながら、潤平と流鶯のサマーレッスンは続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
野放図な感性と窮屈な規範が手を取り合った時、生まれる美の真髄とはいかなるものか。
潤平がそれを舞ってくれる瞬間を楽しみに、次回を待ちたい。
やっぱ良いなぁ、このアニメ。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
自分が好き放題やった結果千鶴さんの教室が揺れて、『お、俺しらねーし!』じゃなく『俺が認めさせます!』で”生川”に飛び込む潤平、幼いしバカだが責務を果たそうとする誠実があって、やっぱLOVEよ…。
流されるのではなく、自分でなんとかしたい。
そう思い、行動するようになった結果でもある
父を亡くしバレエを諦めて以来、感じたまま動くよりヘラヘラ周りを伺う生き方してたわけだが、それと決別した以上、大人が解決してるのを待ってるのは『俺じゃない』と感じたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
その結果の大暴走なわけだが、じっとしてるより巻き込む道を選んだのが兵ちゃんの言葉キッカケなの、救いを感じる
兵ちゃんは潤平の巨大な質量に魅入られ、釣り合わない自分に絶望して、潤平に向き合わないまま沈んでいくわけだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
色々衝突もありつつ、そこまで潤平を思う兵ちゃんの言葉は、潤平にとっても大きな変化を生み出した。
だから、色々ありすぎるほど色々あった末、もう一度逢うのだろう。
こういう感情の釣り合いと不均衡、出会って別れて迷って沈んでまた出会う人生の不思議が、色んなキャラとドラマで描かれてるところが好きなんだよなー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
眩い星もドス黒い闇も人生には満ちているが、それでも踊るには値する。
そう言ってくれるお話は、元気が出て好きだ。
追記 テーマと選んだものが世間一般の視線で、社会の中でどう受け止められ、扱われているかって視線がシャープだと、適切な客観視が為されて作品から湿り気が抜けていくので、お話のクオリティとしても大事な部分だと思う。
ダンスール追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
千鶴さんの”お教室”だと潤平の溢れる才への庇護は反感を買う依怙贔屓になってしまうが、”生川”くらいのスケールがあるとあって当然の区別、拾わない方がおかしい話に収まってしまう。
ここら辺、それぞれの規模と立場が生み出す違いで、社会の中のバレエを書いてんなー、と思う。
僕は潤平と都がちびっ子の面倒見てんのホント好きなので、千鶴さんの教室から巣立っていくのは寂しくもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月15日
が”生川”に舞台が移るのは、街レベルではもう囲いきれない眩さが、潤平から出ちゃってる結果だよなー、とも感じる。
才にはそれぞれに相応しい器があって、問われるものもそれぞれ違う…て話
追記 一緒に一つ映画を見終わるごとに、失われた父の影を感じていたのかと思うと、そらー兵ちゃんの潤平コンプレックスも肥大してくよなー、と思う。
ダンスール追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年5月16日
生ピアノでのレッスンの中、潤平が”ピアノ・レッスン”の曲だと理解る描写が彼のシネフィルっぷり、映画を見る中で父を追ってきた個人史を感じさせて、可愛くも少し切ない。
あの雑多な部屋の中で、父の遺品を再生しながら得たものは、確かに潤平の血肉になっってバレエに活きるのだな。