SPY×FAMILYを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
ユーリの詰問に応えるべく、敢行される仮面夫婦のキス。
恥ずかしさを誤魔化すために流し込んだワインが惨劇を呼び、血みどろの決着で疑念は有耶無耶となった。
紅い夜の残滓はフォージャー家に長く響き、ロイドはヨルの真意を確かめるべく一計を案じる…。
てなことをコメディ味強めにお送りする、ロマンス味強めな第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
WITの秀英、片桐崇のコンテ&演出が冴え、この作品らしいクオリティの高さが、エピソード全体を押し上げる形となった。
やっぱこういう”質を浴びる”話来ると、『SPY×FAMILYのアニメ喰ってるな…』って感じ出るね。
お話の構成としては前回から引き続いてのユーリ襲撃を決着させて、その後フォージャー家の天気予報は疑念のちイチャコラな話がやってくる感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
こういう時間の使い方結構珍しいな~、という印象だが、上手くユーリが揺るがした関係性を活かして、甘やかなロマンスを奏でていた。
冒頭、口づけ為るや為らざるやのサスペンスからして大変艷やかで、作画にめっちゃ気合が入る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
キスに挑むヨルさんのハンサム顔、思わぬ反撃に乙女な顔晒すロイドさんもいいが、手刀一閃コルク刎ねる”いばら姫”が、一番こえー。
(画像は”SPY×FAMILY”第9話から引用) pic.twitter.com/0wxuNiSxQh
サラッと流してもいいコミカルなドタバタであるが、細やかに表情を作って艶を付け、キャラクターの魅力を引き出していく演出は、濃厚な喉越しを与えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
眼の前で繰り広げられる憧れの人の痴態に、ユーリの脳が焼かれていく様子も、じっくり丁寧に積み上げていくしな…。
まぁ言うたかて、姉は殺人弟は弾圧、キスするのセックスするのを遥か彼方にぶっ飛ばすヤバ案件を、毎日の仕事でやっとるわけだがな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
ここら辺の価値観のぶっ壊れ方が、”東”の権威主義社会の産物なのか、ブライア家がイカレてんのか、それぞれの人格なのかは、笑いの奥に秘された謎である。
お互いの”仕事”のシリアスなシャレになんなさと、私人になったとたん軽いドタバタが暴れるギャップが、笑いの土台にもなってるわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
ここら辺のバランス感覚って難しいところだと思うが、自分はギリギリのところで成立してるかな、って印象。
いや、薄氷の上の均衡だとは思うけどね…東西平和の如く
さておき、運命のキスは酒の勢いもあって、かわいいデンプシーロールからの鬼ビンタで全てが吹っ飛び、義弟の疑いは持ち越しということに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
やり過ぎ感溢れてた沢山の薔薇を、惨劇の暗喩として活かす(しかも二回)演出は大好き。
(画像は”SPY×FAMILY”第9話から引用) pic.twitter.com/mEZFBvgoI9
『あー、映像コード上シャレになる表現ですんでるけど、”いばら姫”の一撃でユーリくんはかなり気まずい姿になっとるわけか…』などと邪推も広がる、良い見せ方だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
この人中の獅子相手に、極度のシスコンでいられるあたり、やっぱユーリくん壊れとるわなぁ…。
異様な状況に動じず、”普通”の仮面を作るの<黄昏>の得意なわけで、ロイドさんはサラリと異様な超暴力を受け流し、いい感じの姉弟愛として羨みすらする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
コレを『良いなぁ、家族…』と思えるあたり、ロイド・フォージャー”、いばら姫”の夫に為るべきして為った男でもあろう。
ロイドさんたしかに超凄腕なんだが、凄すぎてどっかボケた部分があって、それがコメディを成立させてもいるのは面白い構造だなぁ、と感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
実はフォージャー家全員ボケ、ツッコミ不在のまま異様な状況を加速させて笑いを作るのが、この話の基本形かもしれん。
義弟もボケボケだしなぁ…。
同時に何もかも嘘まみれで異様な”家族”を、それでも愛しいと思える人情味でまとめてる話でもあって、ここのバランスが丁度いいから、笑った後に良く染みるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
つうわけで、嵐のごとく義弟が去った後は始まるのは、小さな疑念と愛の確認である。
スゲー! ”SPY×FAMILY”っぽいぞ!
深く踏み込んだらロイドさんが想像すらしていない、血みどろの地獄絵図が飛び出してくる妻の秘密。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
ここに接近しつつ、上手く”家族”に立ち戻って嘘を続けるまでの歩みが、画面を丁寧に使って不安を煽りつつ進んでいく。
(画像は”SPY×FAMILY”第9話から引用) pic.twitter.com/HJ8ObNjn4S
かしいだレイアウト、極端なパース、反射で歪むアーニャの像。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
パステルカラーの平和な日常は、ふとスパイの胸に湧き上がった疑念でかき回されて、見ている側は上手く落ち着かない気持ちを引き出されていく。
ここら辺の映像言語の作り方、使い方は流石のクオリティ。
たかだか家族の疑念にブッこむには塩味キツい演出とも言えるが、オペレーション<梟>に東西平和が乗っかっているのも嘘ではないし、この大仰で力んだ感じが、小さな家族の幸福との対比でいい味出しもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
同時にここまでバキバキの演出は油の乗ったスタジオならではで、作品の醍醐味といえる。
エスパーであるアーニャが、ちちははが笑顔の奥に隠す不穏を審査する、可愛い裁判官の仕事を担っているのも面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
アーニャに真実が見えてしまっていることを大人は知らないが、”家族”の一員として彼女が不安に思わぬよう、嘘の奥にある真実、その先にある真実との距離を探っていく。
状況を俯瞰で見れてる視聴者は、<黄昏>あるいは”いばら姫”の真実まで踏み込んでしまえば、この家族が一瞬でぶっ壊れてしまうことを知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
やや過剰な不安の演出は、”そこ”までロイドさんの調査が行ってしまうのか、まさかと思いつつもしやと感じさせるための、良いスパイスでもあろう。
というわけでいろんな思惑を交えつつ、本職が本気で演じる茶番劇が開始される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
偽尋問が行われる路地はみっしりと狭く、息苦しさを強調する逆三角形に空が切り取らている。
天井にカメラを置いた異様な構図も、サスペンスを盛り上げていい感じだ。
(画像は”SPY×FAMILY”第9話から引用) pic.twitter.com/Al5ykvSk7U
ヨルさんは弟の真実を知らないので、裏取引で状況を乗り切ろうとはしない
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
フォージャー家の妻として操と家族を守るべく、瞳に”獣”を宿す。
…ここで手刀一本国家権力に牙突き立てるの、あんまりに己の”暴”を信じすぎてて、やっぱ人間サイズの猛獣だよなー、と思う。
”いばら姫”の真実という社会的爆弾も、小指一つで人体破壊余裕な物理的脅威も、ニアミスしつつ上手く乗り越える、<黄昏>の幸運。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
大義のためには家族を疑い、友を利用するスパイの宿命に、従わなくてよかった安堵が、ロイドさんが作った仮面から滲む。
というわけで家族崩壊の危機は去り、窮屈で不安定な世界に温もりが灯る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
物語を支配する雰囲気が切り替わるスイッチとして、街灯や青信号を上手く使ってる演出はとても好き。
やっぱこういう、”サイン”が濃い目に出てるアニメが好きだなぁ…。
(画像は”SPY×FAMILY”第9話から引用) pic.twitter.com/VLGVMH0oZz
もし盗聴器をつけっぱなしにしていれば、”いばら姫”が日常の裏で積み上げている血みどろを、思わず聞いてしまっていたかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
青信号はロイドさんの疑いが晴れて、”家族”を利用する苦しさから開放された証拠…と同時に、危ういバランスで成立してる”家族”が、一時の安定を掴んだ象徴でもある。
ぽけけーっとしてるヨルさんを、プロのスパイであるロイドさんが疑い探りを入れる(そして危ういところで疑念をはらし、”家族”を続ける)構図が多いから、ちち方向から壊れるのを想像しがちだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
実は爆弾の量としては、無邪気なぶんだけ”いばら姫”の方が多いかなー、とも思う。
流れる血の量もなッ!
ともあれバラ色の夕焼けの中、キスもしなけりゃ褥も共にしない仮面夫婦は、最高の笑顔で惹かれ合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
足元すぐに秘密が埋まり、いつ壊れてもおかしくない日常は、しかしこんなにも美しく愛おしい。
そんなフォージャー家の”今”を、上手く切り取る美術の冴えである。
アニメの全領域がマジでつええ作品なんだが、やっぱ美術は特に凄くて、毎回感心する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
色んな天候や風景を、ドラマの展開絡めて様々に美しく書き上げてくれて、メチャクチャ眼福体験ありがたい…って感じよ。
この美術力に支えられて、いい話成分がよう染みる、つう話でもある。
というわけで、アーニャ裁判長もニッコリの仲良しっぷりで、嘘まみれの家族は日々を続けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
ユーリ編のラストでも確認したが、3つのカップが同じ方向を向き、違う色合いでも同居している様子が、上手く一家の現状を浮かび上がらせている。
(画像は”SPY×FAMILY”第9話から引用) pic.twitter.com/tSgMd8hl7d
『3つのカップ』という象徴はエピソードをまたいだ演出で、過去にも幾度か顔を見せている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
話数を重ね絆を高め、嘘を嘘と知らないまま”家族”としての真心を重ねてきた結果が、こうして可視化されていくのは上手いなー、と思った。https://t.co/GxzekawFw5
スパイに暗殺者にエスパー、トンチキで非常識なキャラの物語だが、”家族”である以上、絆は当たり前の日々を紡いで作られていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
毎日使うカップを通じて、その手触りが視聴者にも伝わるよう、統一感ある演出を続けていられるのは、監督の手綱さばきが相当いいんだろうなー。
やっぱスゲーよこのアニメ
小物のデザイン、家具調度の設定が優れているので、フォージャー家が絆を深める場所と時間が”善いもの”として、頭で考えるのではなく肌で感じるように描かれ続けているのも、このロングパスを成立させる大事な要件なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
崩れぬハイ・クオリティだけが為し得る演出で、そこもスゲェ。
つーわけで、強襲! ヤバ義弟!!の決着と、それがもたらした波紋の始末でありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
色んな瞬間作画が元気で、艶やかさから人情味まで、色んな味で楽しませてくれる話数となり、大変良かったです。
この多彩な輝きは、多ジャンルを行き来する作風と噛み合って、このアニメの強みよね。
<黄昏>として妻に付けた盗聴器を、”ロイド・フォージャー”として握りつぶす穏やかなエンディングの足元で、軋むお互いの秘密。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
その危うさが心地よいスパイスになって、楽しいフォージャー家の日々が終わることなく続いてほしいなぁと、見てる側に思わせる回でもありました。
色んな場所がイカレてるんだが、それを含めて平和で幸せであって欲しいと思えるよう、主役たちを書けているのがやっぱつえーな、と思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
質の高さも気合の作画も、結局”そこ”を支えるための足場だからな…。
物語の核が太くて強いお話も、そろそろ一旦の幕。
次回何が描かれるか、楽しみですね!
追記 スパイらしからぬロイドさんだからこそ、スパイとして果たすべき真の任務に背くことなく、紳士として善人として生きていける……ていう矛盾(あるいは順接)ね。
しかしロイドさんは自分の妻が”獣”であり、不誠実で邪悪な…いかにも”スパイ”らしい対応したら即座に引き裂かれてると知らないまま、持ち前の善性で家族を尊重し、虎の尾を踏まずにすんでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
ここの無自覚な善意が報われ危機を逃れている感じも、見てて楽しいポイントなんだろうな。
ロイドさん、男で夫で国家権力の走狗であるという、多重の意味で家庭内権力を握ってる立場のように見えて、ヨルさんの卓越した”暴”一個で全部ひっくり返るポジションで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日
そのスイッチを横暴で押さず、”いばら姫”を眠ったままにさせてる(スパイらしからぬ)善良さが、主役の資質という構造なのね。
”家族”って構造が自動的に持ちうる前時代的なヤダ味を、背景世界を後ろにズラしたり、その良さを前面に出したりして巧妙に回避しつつ、『いざとなったら殺せるしなぁ…圧倒的暴力の前に、夫婦も男女も人間皆平等!』という薄暗い確信で裏打ちしてるの、考えてみるとスゲー作りだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月6日