であいもん を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
暦も新たに、”緑松”は正月休み。
訪ねた客を門前に追い返すには、抱えた仏花が心に刺さる。
未熟を知りつつ差し出した、花びら餅に綻ぶ人情。
そうして流れた年月が、思い出開いて薫る梅香。
今はしわしわの老梅にも、華やぎの季節が確かにあったと、語る二月の未開紅…。
そんな感じの年始の二編、であいもん第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
しっとり落ち着いた、香気のある人情噺が二つ繋がって、冬の話なのにほんのりと暖かい、梅の花綻ぶ頃合いにちょうどいいエピソードだったと思う。
こういう手触りの掌編を作らせると、このアニメはやっぱ強いなぁ…。
前編は花びら餅と正月のお話で、和が菓子職人として人間として、今どんな感じをスケッチしてくれるエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
ふわふわ頼りないように見えて、現状の腕と見せでの立場、人として為すべきことをしっかり見据えて立ち回る姿には、一本芯が入っている。
このクニャクニャとしゃっきりのバランスが良い。
正月というのに特に浮かれず、実家感満載でどっしり休む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
地に足の付いた年始の過ごし方が丁寧に描かれたことで、そこに根を張り出した一果の視線が、よく見える回でもあった。
父に捨てられた寂しさをじんわり埋めて、ようやく手に入れた安住の家。
そこに腰を下ろせばこそ、見えてくるもの。
和は一果の”親”として、ええもん見せようと花びら餅を手渡したわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
なんも構えないまま、客の顔をしっかり見て、自分に差し出せるものを素直に差し出しただけである。
しかしその行いこそが、優等生の仮面を突き破って、まだ冬の嵐が吹いてる一果の心に、大事なものを伝えていく。
そういう二人の距離感と、そこを大きく包む親父さんの視線が重なり合って、時機を逸したお客さんの小さな幸せに、和菓子が寄り添う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
”緑松”がどういう商売をして、どんな風に社会に貢献してるかを、商売していないときにこそ各エピソードで、なかなか洒脱だったと思う。
思いを供える花びら餅は、親父さんのツンデレがあって成り立ってるもので、なかなか言葉にも態度にもしづらいが、常に父は子を思っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
この関係が和と一果にも延長して、血よりも濃い想いでもって二人が繋がり、ほっこり良い関係だと解った。
…次回以降の終盤戦で、大事な所だしね!
んで少し時が進んでBパート、名前に宿る微かな思いのお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
お鶴さんの意外な過去が、梅の花と道真の歌を道糸にするする解かれて、名前に宿った思いが微かに薫っていくエピソードである。
枯れたと思うた梅の花に、宿る戻りの色と香。
悲恋に終わった思い出が、未だ後引く年寄りの花。
なかなかシンプルには割り切れない人情と、否応なく流れていく時間を、梅干しになった元小梅と、元気に幼女してる今の小梅の照応で見せる、いい香りのするエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
時の狭間に流されて、もう手が届かない思い出はしかし、新たな世代に名前を継いで、もう一度帰ってくることがある。
道真公を追いかけた飛梅の如く、時間と距離を超えてかつての恋が戻ってきて、色香がすっかり抜けたと思ってたお婆さんに微かな紅を戻すのが、とても良い色合いだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
このお話、”和菓子”というテーマ、京都という舞台もあってか、年寄が結構目立って、話に良いダシ足してくれるのがありがたい。
和周辺で渦を巻く、現在進行系の恋嵐。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
その行く末がどう転がるにしても、時の河は痛みの角を取って、丸く仕上げてくれる。
お鶴さんが飛梅の再来を微笑んで受け止められるのは、お互い孫が出来るまでなんとか生き延び、恋が思い出になるまで風雪を耐え忍んだからこそ。
そういう人生の滋味が描けるのも、この話の強みだなぁ、と感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
ジジババの『もう終わった話』が、若い世代の今にしっかり響いて、でもそれぞれ個別の物語として活き活き、個性のある書かれ方をしてるのは良いことだ。
それぞれに、それぞれの辛さと花がある。
名前を無神経にイジられた小梅ちゃんの痛みも、あの年頃の子供だからこそのもので、当人にとっては真剣な辛さだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
そこを茶化さず軽く見ず、どうにかならんかと真摯に向き合ってる大人たちの姿が、色んな画角で人生を切り取る物語に、奥行きを足していたと思う。
というわけで、このアニメらしくよくまとまっていい匂いのする、正月景色二編でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年6月8日
しっとり手触りのある人生模様を描きつつ、どこか洒脱で軽やかな筆が、やっぱこの作品の強みと感じる。
この”味”を確認した所で、来週は一果と父のお話。
善哉と 古傷撫でて 笑えるか 春桜
次回も楽しみです。