よふかしのうた を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
まともな昼間からドロップアウトし、夜に魅入られた夜守コウは、今日も吸血鬼との楽しい時を過ごすのだった…というお話。
コウくんがワクワクと夜を歩き、ナズナさんにハマっていく様子と、それが世間一般の”恋”とはちょっと違う事実が、落ち着いたテンポで描かれていく。
不老にして不死なる種族と歩く、特別な色をした無人の街。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
コウくんは”夜”というテーマパークに夢中であるが、同時にそれはずっと続く日常でもある(はず)で、発生するイベントにはどこか暖かで懐かしい手触りがある。
エロネタ擦るくせに恋には照れる、エロい服着たウブな夜種。
ナズナさんの幼い気配を間近に感じ取って、コウくんは”さん”から”ちゃん”へと呼び名を変える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
けして描かれることのない、退屈で違和感だらけの昼の世界、当たり前の常識では微笑みの形に死んでた表情筋が、心からの楽しさとか、嫉妬とか、当惑とか、一言で言えない入り混じり方で動いていく。
コウくんは夜とナズナさんに”堕ちる”ことで、マトモな顔の奥でどこか壊れ、全然マトモじゃなかった自分と出会い直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
夜の街を歩くこと、ナズナさんと共にあること、吸血鬼になろうと恋を目指すこと。
どれもなんにもマトモじゃなくて、昼より遥かにしっくり来る。
非常に青臭い表現を使えば、コウくんは夜と出会うことで真実”青春”し始めたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
シックリこない恋を押し付けられて、柔らかく拒絶したら排除されて、そんな『学生生活には良くある風景』を飲み込めない異物感。
『恋をして吸血鬼になる』という、奇妙で真剣な目標も手に入れて、コウくんは充実する。
しかし考えてみれば、恋とは”落ちる”ものであって”為る”ものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
吸血鬼化という目的(当たり前からの真の逸脱)のため、好きになれるように頑張る、というのも、ずいぶんおかしな話である。
それでもコウくんは輝ける夢のために、恋するべき相手の顔をよく見て、たくさんいい所を見つける。
セックスの代用行為として吸血があることは、ナズナさんが冗談めかして語っているとおりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
恋慕が伴う吸血は相手を変容させ、つまり恋がなければ吸血鬼は生まれない。
この作品における吸血鬼は、凄く根本的な部分でロマンティックな動物だ。
夜の種族の生殖は、まず心があって現象が生まれる。
気持ちがあろうとなかろうと、ズコズコビューってカマして十月十日経てば新世代が生まれてくる、昼の動物とはワケが違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
そんな清潔で情熱的な新生に、どんな業と暴力が付きまとうのか。
コウくんは夜というテーマパークに夢中で、当然付きまとうはずの厄介に目が行ってない。
あるいは無視している
中学二年生にふさわしく、コウくんは世界のすべてを公平に見れるわけじゃないし、その視界はシニカルでクリアに見えて、未熟と我欲でフィルターされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
今描かれている『ただただ楽しい夜』がその実、見えている(見たいと思う)とおりではないと、話が転がる内幾度も解ってくるわけだが…
アニメが原作にある魅力的な変容を、どんくらい取り上げて描いてくれるかは、まだまだ分からない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
OPの少なめなヒントから推察すると、結構コウくんが見落としているもの、見たくないと無意識に目をそらしていたものが、暴かれ”夜”が新たになっていく様子も見れそう…かなぁ。
さておき。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
ひどく歪で真剣な、恋という名の義務に訳のわからぬままかじりつき、コウくんは生真面目に夜を楽しむ。
この浮かれた喜びが闇の奥を隠してしまってはいるが、同時にマトモなレールから落ちるほどに、吸血鬼との出会い、彼女と過ごす時間は楽しい。
それは、譲れない事実だ。
昼の間は活動しない吸血鬼を、眩く見上げるフツーの中学生。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
コウくんは光のそばに居てしかし、暗い影に囚われ動けないキャラクターとして演出されていく。
憧憬、焦燥、青臭い青春の心象風景。
眩いものはとても遠くて、だから惹かれる。
(画像は”よふかしのうた”第2話から引用) pic.twitter.com/1ZP3k5SetT
アニメは己の特権である色彩と輝きを、コウくんが”夜”に抱く期待感、ファンタジーへ変貌した日常を描くために使っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
様々な色と輝きに満ちた世界で、ふと薄暗い憂鬱にとらわれている自分を思い出すたびに、光の中に女が見える。
恋の相手とはまだ思えない、好きにならなければいけない女。
吸血鬼のくせに、ナズナさんは常時光を連れてくるものとして描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
暗いはずの夜の中、底光りする不思議な魅力。
それはエロティシズムと危険性、危ないからこそ面白い誘惑に満ちた”大人の女”…に見えるよう、結構必死に演じているものだ。
防壁のように露骨に、張り巡らせる卑俗な話題。
その奥にあるモノ…セックスを求める感情の源泉がどんな透明度と熱量なのか、ナズナさんは踏み込めるほどに成熟していない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
歳経ず、死なず、子孫を当たり前の形では作らない、ロマンティックで歪な怪物の中でも、ナズナさんはとびきり変だ。
変だからこそ、面白い。
ガッついた直線的性欲に実感がわかないから、こんな真夜中に迷ってるコウくんだけども、それでもエッチな雰囲気になるのは嫌いじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
恥ずかしいけど…恥ずかしいから特別で、心躍る悦楽。
”夜”はセックスをする時間のはずで、しかしコウくんとナズナさんは、そんなシンプルな答えに収まらない
エロティックな風味を吸血に、あるいは同衾に宿しつつも、中学生とエロい格好した幼女の触れ合いは、性分化以前のあどけなさに満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
受動的な女の性を、吸血”される”立場に背負って、コウくんはハンサムで大人なナズナさんに抱かれ、リードされる…
(画像は”よふかしのうた”第2話から引用) pic.twitter.com/LdezfqBgu9
と見えて、真夜中の王子様(女)と誘惑するお姫様(男)の関係性の奥には、もっと幼く柔らかいものがあることを、二人は知っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
なんか”恋”なるものをしないと吸血鬼にはなれず、つまり夢は叶わず、だから恋の先にあるセックスにも触れなければならない。
そういう形体に急いた足取りを、とても楽しくおしゃべりしながら転がっていく夜の散歩が、そっと押し留める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
今目の前にあるものは、なんか…”そういう”んじゃないのでは?
そういう手触りを、奇妙に出会って、何よりもまず”友だち”になった二人は、彼らだけの逢瀬のなかで撫ぞって確かめていく。
なんとなく自分のものだと思っていた”普通”が、全く噛み合わないと思い知らされて、コウくんの”吸血鬼に恋をするまで”のお話は始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
エッチな雰囲気になれば”恋”なのか。
一緒に寝ればときめくのか。
流れに身を任せ、初めての体験に頬を染めつつ、『あれ…なんか違うな…』という実感を得ていく
そんな発見が違和感ではなく、自分とナズナさんだけに適応できる奇妙で嘘のない答えなのだと、思いの外ぶっ壊れてた自分の欠落を満たすように、笑いながら確かめていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
そんな一つ一つが実はとてもかけがいのない、夜守コウが自分を見つけていく旅路なのだ。
だから、変な女と一緒にいるのは楽しい。
そこにすぐさま”恋”とラベルを付けたがる、世間一般の恋愛中心主義(ロマンセントリズム)にこのお話は静かに、朗らかに楽しく異議申し立てをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
エロく思えるもの、エロいとされてるものが実は相当に幼かったり。
まっとうなレールから外れた先に、輝く夜闇が舞っていたり。
既存の価値観を逆さまに転倒させた先にこそ、人間にとっての…つまりは個別の一人ひとりと、その総体たる普遍人類にとっての正解があるのではないか、と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
(ここら辺の、”恋”に対する世間一般のお仕着せを疑い、物語の全霊をかけて問い殺しに行く姿勢は”やがて恋になる”とも似てる気がする)
そんな疑問点が表に出てくるのはまだまだ先の…運命が否応なく現実の難しさ、夜闇の深さを教えてからの話になるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
その前段階であるこの楽しい夜、自分とナズナさんのことがちょっとずつ分かっていく夜にも、本当のことは沢山ある。
だからこそコウくんはもう、夜から戻れない。
携帯電話という実用のツールでなく、おもちゃのトランシーバーという遊戯のメディアを使って、二人は遠く離れてなお繋がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
それは今まで得難かった体験で、知らないからこそ心躍る、楽しい遊びだ。
遊ぶこと。
人が為すべきと定められたことから逃げること
(画像は”よふかしのうた”第2話から引用) pic.twitter.com/85svQmb3eT
食事である生殖でもある吸血行為に耽溺して、エロティックなはずのその瞬間をあえて映さないこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
吸血鬼との真夜中の恋…になるのか、さっぱり解らないけど楽しい時間は、恋愛のスタンダードを切り取る一般的なカメラとは違う場所を、マトモな人ならやらないことを切り取る。
いい年しておもちゃで遊ぶことは、吸血鬼と不登校児、二重のアウトサイダーになりかけてる今のコウくんにとって楽しいことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
同時にナズナさんと楽しい時間を過ごすべく、過去の痛い思い出を投げ捨てるのではなく新たに作り直す歩みは、子供時代への再帰でもある。
恋をするのが当たり前、告白拒否れば村八分。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
気づけばそんな年頃に流されてしまったコウくんが、思いの外子供である現実と真実。
そこに立ち戻る時、ナズナさんもまた頑是ない素顔を、寝床で一緒に眠ったときとように見せる。
ぱっと見のエロさとは真逆に、全くもってガキであること。
これがコウくんがナズナさんを知る上でも、作品が未だ伏せているミステリの手がかりとしても、結構大事なことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
お互い、くだらないおもちゃでこんなに笑える。
心の底から、楽しいと思える。
そういうピュアで幼い共鳴が、二人の夜を満たしている。
同時にそれは『遠くに声を届ける道具』を使った遊びであり、それが成立するのは『繋がりたい』と願うからこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
触れ合い、分け入り、相手を通じて自分を、自分を預けて相手を知りたいと願う。
その願望は、男女なら必ず恋になってしまうものなのだろうか?
罪も重さもないただの遊びは、恋がわからない二人、吸血鬼になりきれない二人の現状を、上手く描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
そこは無邪気な楽園であり、ただただ楽しいことだけがある永遠の夜だ。
ずっとこの調子で、現実なるものから離脱/逃避した浮かれ騒ぎが続くのか。
ふとした疑問に、画面が答えていく。
否応なく夜は明けて、ナズナさんと繋がれる時間は終わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
面白くもなく白けた現実が近づくほどに、コウくんを取り巻く世界はリアリティを増して行って、真夜中の魔法は解けていく。
過去があり、それなりの人間関係がある夜守コウ。
(画像は”よふかしのうた”第2話から引用) pic.twitter.com/EOKiqvkXh1
過去に置き去りにして、もう鳴るはずのない赤いトランシーバーを持っていった、古馴染みの少女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
吸血鬼でもなく、胸ときめく夜にも住んでいないアキラと出会う時、街はナズナさんと過ごした時と、全く違う色をしている。
それはコウくんが追い出された場所、見限りをつけた場所だ。
風景のタッチを大胆に切り替えて、まさに”心象”として演出の助けにしていく表現は、正しくロマン主義的で面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
世界はあるがままにあるのではなく、それを見て溺れるものの認識に左右されて、形を変えていくのだ。
ならばあれ程輝いて見える夜も、色あせてどす黒く染まる瞬間が、いつか来るのか?
あるいはあの眩さの奥にあるものを知ってなお、確かに見つめた美しい色彩を諦めきれずに、もう一度夜に進んでいくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
そんな方向転換と問いかけの一歩目が、幼馴染の顔で迫る。
ひどく現実的な朝焼けを引き連れて、コウくんの過去を知る少女が、作品に顔を出す。
そこから、どんな物語が拡がるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
夜の美しさを知ってしまい、普通じゃ満足できない自分を分かったコウくんに、当たり前のリアルはもう、かつて身を置いたのとは違う景色だ。
その変容と逸脱を、周囲は、アキラは、コウくん自身はどう受け止めていくのか。
コウくんが知らなきゃいけないのは吸血鬼への恋の仕方だけでなく、本当に色んなことを自分だけのやり方で、答え合わせしてかなきゃいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
そんなありふれた青春の物語を、凄く奇妙で純粋な、捻くれて真っ直ぐな描き方で一歩ずつ書いてるのが、やっぱ好きである。
結構、変な話なのだ。
ナズナさんと過ごす、楽しみに溢れたテーマパークのような夜を、丁寧に追いかけた今回の第二話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
こっから先運命が転がっていく中で、その楽しさは否定されても行く。
しかし僕らが感じたように、それは嘘じゃない。
白々しい昼間には得れない喜びと、それを分かち合う大事な人。
そこに本当に、恋人というラベルを、吸血鬼という未来だけを貼り付けるべきなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
それを知るためには、もっと夜と恋に潜らなければいけない。
恋なるもの、性なるものを世間一般のドグマから解体・再構築する物語装置として、作品独自の”吸血鬼”を活用しているのは大変良いわな。
真夜中の散歩は、まだまだ続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
まずはコウくんの”昼”を知る幼馴染と、どんな物語を編むか…である。
トランシーバーを持っている時点で、コウくんの歪な世界に割り込む特権を、ナズナさんと同様アキラも持ち得ていると示せてるのは、巧い象徴の使い方だ。
それは未来ではなく、過去に繋がっている。
これは全く異質な…見知らぬからこそ心惹かれる存在としてコウくんと出会ったナズナさんが、持ち得ない属性だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月18日
夜ではなく昼、未来ではなく過去、吸血鬼ではなく人間。
アキラが照らす”夜守コウ”の顔は、どんな表情をしているのか。
今までとちょい違うものが見れそうで、次回も楽しみ。