リコリス・リコイルを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
リコリコに持ち込まれた依頼は、ALS患者の東京観光案内!?
明るく楽しい時間の裏で、銃弾は残酷な牙を研ぐ…というエピソード。
時に完璧に思える千束の、年相応の弱さと悲しさがジンワリ滲んで、個人的にとても寂しい、綺麗なお話と感じた。
今回のお話は依頼人の大きな不幸…に思えるものをフェイクに、作中のキャラクターと見てる視聴者両方をハメてくるお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
余命幾ばくもない重病人の、最期の願いを助けてあげたい。
そう思えるお人好しほど、キレイに引っかかるエグいトラップである。
冒頭の異様な(そしていつもどおりの)ハイテンションは、千束が依頼人の実態を目撃し、呼吸補助機の音、合成音声、車いすの駆動音を、弄ぶべきフィクションではなく目の前のリアルとして認識した瞬間、鳴りを潜める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
『あ、舞い上がっちゃダメだな』という、一般的で気のいい感覚が、そこにある。
それは千束と同時に、ここまでの物語で彼女を好きになり、シンクロ率を上げている僕らにも及ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
”そういう人”をネタに盛り上がることへの罪悪感、それを打ち消すようになにかいいことを手伝いとたいと思う代償心理。
相変わらずの手際で、そういうモノがしっかり切り取られる。
心音があろうがなかろうが、千束はそんな当たり前の感覚をしっかり持っていて、それ故悪辣な罠に頭から突っ込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
彼女がフツーにいい子だからこそ、殺しの天才を発揮して血みどろの沼に沈んではいけない存在だからこそ、それを逆手に取ろうとする思惑には、徹底的に弱い。
前半の東京観光部分は、この物語の”東京”が僕らの現実とほぼ変わりなく、平和な日常と楽しい時間、蓄積された歴史を含有していることを教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
その裏側にリコリスと、彼女たちが殺す者たちの血がべっとり染み付いてて、何もかもを封じて成り立っている、優しき東京。
車いすに乗った死にかけの老人を見て、浮かれてた己を改める千束はそこにあまりに適応していて、あまりに普通だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
何度も言うが、それは好ましい。
DA以外に親を持たず、そこから捨てられ傷ついたたきなが、新しい居場所と希望を掴めたのも、そういうバランスの良い人格故だろう。
ぱんつ見えるか全く気にせず、人前で胸に…その奥の心音に触れようとするたきなは、一般的な成熟(千束的感覚)を置き去りにしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
当たり前に性別を持ち、セックスの対象になりうる/それを選びうる自由と権利というものを、最もリコリス的な少女は認識していない。
幼い…ともまた違う、一途な不器用はもはや嘲笑の対象ではなく、チャーミングな長所であり、それを生かしたままより善く育ってほしいと願う可愛げに、僕の中でなっているが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
たきなはひどく無防備に、千束の心臓に触れたがる。
そこに、今の彼女を活かすものがあるからだ。
ここまで5話、かなり高圧縮ハイペースで人間の物語を駆け抜けてきたたきなにとって、千束の存在は大きい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
ただの友達、あるいはライバルという区切りでは扱いきれないくらい大きなものを、千束はたきなに…そしてたきな以外の沢山の人に手渡してきた。
影響力が大きく、人格が強い人だ。
その引力に、巣を追い出され寄る辺ない自分を癒やしてもらったからこそ、たきなは千束の心音を確かめたいと願う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それは性愛以前の、もっと不定形で切実な、自分と相手の生存確認に思える。
自分を生かしてくれたものが、もしそこになかったのなら、とても辛く悲しいから。
そういう気持ちで、たきなは千束のおっぱいに手を伸ばしているように、僕には見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それは…目も開かぬ子犬が母の乳房を、必死に探り当て口に含むような強さがあって、とても良かった。
そして痛ましかった。
そうして乳房を探られている相手は、全てを与えられる女神では、けしてない。
千束の心臓に至る道を、誓いのように呪いのように塞ぐふくろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
アラン機関のマーキングは、自分の命を救ってくれた存在を、顔も名前も知らないままずっと信じ続け、生きる導きだ。
その奥に、千束の才能を”殺し”と定め、それを発揮させるべく闇に引きずり込む手があっても。
千束のなかで、それは暗い場所に光を告げてくる黎明の鳥であり、辛いことが沢山あるこの世界でも、人を殺さず生きていくための知恵を与えてくれる存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
そうやって凄く大きな信頼を寄せ、生きる杖と信奉するものこそが、千束を騙し、彼女が厭う”殺し”を連れてくる。
そういう皮肉で残酷で危険な現状を、今回のビズはよく語ってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
クルミちゃんをナビゲーターにくわえ、チーム・リコリコはかなりいい感じに機能している。
しかし凄腕暗殺者のサイレントと、その善意を逆手に取る依頼者を相手取ると、厳しい窮地へと追い込まれていく。
ここはこれまでの語り口がよく効いているところで、千束たちの優秀さを説得力込めて描けたからこそ、そのピンチが敵の優秀さを、新たなドラマの展開を際立たしてもくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
誠実さも能力もある存在が、必死に挑んでなお届かない、厳しい試練。
それは、とてもワクワクする物語要素だ。
チーム・リコリコへの期待と好感を、かなりいいペースで積み上げたからこそ、彼女たちがダマサれ追い込まれていく物語は、楽しく届く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
たきなと千束が触れ合い生まれていく、瑞々しい喜びに満ちた日々が綺麗だからこそ、それをぶち壊しにかかる悪意…ではない、純粋な狂熱は真に迫る。
状況の中心に座るシンジが、天才支援者集団のエージェントとして、稀代の殺し屋を愛してて、だからこそ今回悪辣な罠を仕掛けその真意を確かめるのが、通り一遍ではなく面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
シンジは千束を、もちろん愛している。
だからこそその才能が発揮されるには、平和ではなく混乱と残酷が必要と考える。
天才ヴァイオリニストにストラディバリウスを与えるように、シンジはたきなに銃弾を…それ以外が突破できない状況を与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
千束がたきなに、たきなが千束にお互い抱く”愛”なるものが、反転し牙を剥くからこそ生まれる、皮肉で凶暴で真実な愁嘆場。
嵐が迫っている予感。
これを逆方向から裏打ちするのが、真島のリコリス狩りである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
制服という都市型迷彩で銃口を隠し、”平和”のために人を狩る。
今まで何事もなく動いてきた、東京のスタンダードが逆さになる瞬間は、ブレーキを一切かけず凶暴に襲いかかってくる。
狩るものが狩られるものとなり、欺瞞が爆炎によって暴かれる、凶暴な相転移。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
そこに宿る熱量が、凶悪な殺人兵器でも、無敵の天才でもない千束が愛する世界を、突き崩していくだろう。
電波塔事件への細かいクスグリによって、この変化が過去の再演だと示しているのは、上手い話運びだ。
元々東京は欺瞞と殺戮に満ちてて、今回観光したような”平和”は、倒れて当然の嘘っぱちでしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それでも千束はその嘘を愛してて、止まってるはずの彼女の心臓は、その愛で駆動を続けている。
それが壊れてしまったら…あるいは壊してしまったら、千束の心音はどうなってしまうのだろうか?
アラン機関という悪魔と、何も知らないまま契約して止まった心臓の代わりを手に入れたから、千束は今ここにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
これから彼女を襲う嵐は、ある意味で過去の精算であり、無邪気でいられた子供時代との決別にもなるだろう。
厳しい試練の中で、善良過ぎる彼女が一人立つのは難しい。
だから彼女に救われたたきなが、体を張って千束を守るのだ、という未来もまた、今回のエピソードで上手く示される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
赤い不殺の銃弾は、千束の天才を持っても命中率が悪い。
『殺したくない』という甘い夢は、嘘の街ではあまりに高く付くのだ。
『赤い銃弾は当たらない』ってのを事前に描いておいたことで、バンバン打ち合ってるのに致命打がないガンアクションに一応の説明がついて、物語の都合が優先される不思議空間から上手く遠ざかってるの、いい運びだなと感心するけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
わざわざあの弾丸を選んだ千束の生き方は、あまりに厳しい。
だからこそ、『殺したくない』という決意は輝いて見えるし、日常を愛し思うがまま振る舞うことで、殺しの人形であることを拒絶している生き様が、もう一人の少女を救う説得力も出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
千束は卓越した才能、軽薄な態度の奥の優れた人格という”強さ”と、脆く不安定な”弱さ”が同居したキャラだ。
そのアンバランスな人間臭さが、歪な殺戮機械として育てられ、打ち捨てられたたきなに染み込んで、彼女を人にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
でもリコリスが咲くことを許されているのは殺しの園だけで、銃を握る限り彼女たちの大事なものは、幾度も散らされる。
それでも、銃を手放さず。
それでも、生きるのを諦めない。
そういう靭やかな決意に、凄く当たり前に年頃の少女である(と、優れた技法で見事に演出されている)主役たちが、果たしてたどり着けるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
そういう物語の主柱を、残酷なミッションを通じて浮き彫りにするエピソードかと思った。
今回の解答を受けて、シンジはより厳しい問いを千束に投げるだろう。
天才を磨き上げるには試練が必要で、アラン機関に属するシンジは、それをこそ存在義とするからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それは千束を神様の高みに押し上げる動きで、だからアラン機関は彼女から心音を…人間が人間である証明を予め奪っていたのかな、とか思ったりもする。
だが物理的な鼓動のあるなしが、人の優しさを証明しないのは、自分の聖痕をたきなに預けて『スゲーだろ』と、たとえ強がりであっても叫べる千束が、既に証明している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
機械の心臓で動く最高の殺戮人形は、誰よりも魅力的な人間だ。
そんなわかりきった事実を、物語は試練を通じ証明しなければいけない
目の前に立ち現れた半死人のリアリティを前に、浮かれた気持ちを飲み込み、自分自身に引き寄せて親身に受け取る、千束の当たり前な誠実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それがとても揺らぎやすく脆い、少女がここまで生き延びこれから戦っていく上で最も大事な、彼女の心臓である事を、今回の依頼はよく暴く。
『いい殺し屋』ではなく『いいガイド』と褒められたい千束は、誰かを幸せにして自分も幸せになりたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それは凄く普通で、大事で、でもリコリスに罪悪をアクとソースすることで成り立っているこの東京では、とても難しい道だ。
しかしそれを諦めない千束にこそ、たきなは救われている。
とても自然な揺らぎを込めて描かれる、少女が少女を、人間が人間を求める繊細な指先。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
それが物言わぬ乳房の奥に届いた今回から、二人の物語はどう転がっていくのか。
千束が年相応の危うさ、人間ゆえの脆さを見せるほどに、たきなが隣りにいる必然も高まっていく。
底なしのお人好しの危うさを、組織に育てられたクールな現実主義が補う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
そういう感じのバディ感も見えてきて、大変良いエピソードでした。
千束ほど殺しの才がないたきなでも、その生命を自分だけが守れる瞬間は必ず来るし、殺しが下手だからこその強さもあるだろう。
こういう感じで、”救う/救われる”という関係性が見た目ほど一方通行ではなく、強く正しく思えるものが実は脆く弱くて、彼女が救ったものにこそ救われなければいけない必然が薫ってくるのは、凄く良いと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月1日
その言葉の真の意味で、平等な物語が動き出してる感じがある。
次回も楽しみです。