よふかしのうた を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
不意打ちのキスに高鳴る心は、果たして恋なのか。
吸血鬼になる。
面白くもない人間のしがらみを、超越した存在になる。
夢叶う瞬間にうかれる少年に、真実という名の冷水がぶっかかる。
”それ”が性欲でしかないのなら、恋とは一体どんなもの?
そんな感じの真夜中散歩、嫐な同衾回なのに奇妙な爽やかさが宿る第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
キスをしても特別な恋は訪れず、一緒に寝てもエロティックな匂いは遠い。
コウくんとナズナちゃんの夜は、性欲と”三人目”を交えて相変わらず、独特の色合いで転がっていく。
世間一般に、恋とされているもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
大多数の人間たちが、それが恋ってことで納得している、キスとキスの先にある生殖行為の輪郭だけなぞっても、コウくんは夜種にはならない。
彼は彼とナズナちゃんだけが生み出しうる、オーダーメイドの恋をお互い手探り、転がっていかなければいけない。
普通なら落ち物人外ヒロインに翻弄され嫉妬するポジションを占めそうな幼なじみも、奇妙な恋物語に合わせて、かなり独特の立ち回りをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
昼に適合した優等生に見えて、アキラを取り巻く世界は白けている…コウくんと同じに。
(画像は”よふかしのうた”第4話から引用) pic.twitter.com/nvg3a2TLLc
何かが特別に始まるかもしれない予感に雨宿りし、何故か男と女と女、同じ布団で寝た後。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
たしかにそこにいるコウくんの顔を、学校よりも楽しそうな息吹を確かめ、エロティックな感触抜きで触れ合うことを許した後、アキラの世界には光が満ちていく。
彼女も、九時に寝るのはなんか嫌な子供なのだ。
真夜中を舞台に選ぶのにふさわしい、エロティックな艶はこのアニメの随所に出てくるが、同時にそれが尋常な…あるいはありきたりで面白くないセックスへと結びつく気配は、慎重に遠ざけられていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
ナズナちゃんは演じているほどには大人のおねーさんではなく、エロネタは純情を隠す煙幕だ。
恋をして、セックスして、子供が出来て、家庭を作って。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
伴侶、あるいは同族となるための一般的手続きが通用しない、性交によっては増殖しない吸血鬼という動物。
ナズナちゃんと夜遊びし、吸血鬼になる”ために”本当の恋をする転倒は、恋と性の関係性にも及んでいる。
食事でありまぐわいでもある吸血行為は、特別な親密さを二人に与えはするけども、それが相手を恋人…セックスを互いに許可する存在へと、ありきたりに変えはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
キスしても恋の免状は降りず、どうやら相手をモノ化しかねない性的興奮は、吸血鬼へと変じる特別さを宿していないらしい。
粘膜で相互直結しさえすれば、相手の特別になれる恋のルール。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
ラブコメのゴールとして設定されがちな、大人の証明はしかし、コウくんが求めているものとは異なっていた。
ではなにが、自分を特別にするのか。
家とか親とか学校とか、当たり前でうざったい、白けた昼から逃げる魔法は、どう手に入るか
僕はコウくんのツルンと草食系に見えて、その実結構エゴイストで他人をツール化している活き方が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
彼にとって、良くわかんないまま求められたナズナちゃんへの”恋”ってのは、己の心から湧き上がる真実ではない。
何しろ、良くわかんないんだから。
それが原因で、学校も行けないんだから。
吸血鬼になるのもそれ自体が目的なのではなく、自分がドロップアウトした昼の面倒くささを、超越して別の存在に飛躍するための、人間廃業のためのツールである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
目の前にあるモノそれ自体ではなく、それを利して何かを成し遂げる道具主義が、この可愛い顔した少年のコアにある。
まったく人間らしい。
それは恋ということ、吸血鬼になるということ、人間であり続けるということを深く考えない、思春期の浅薄が生み出してる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
とても普遍的な、絞れば青汁出るほどの青臭い千鳥足だ。
フラフラと、おもしれー女と特別な夜に酔っ払って、大事なものを見据えない。
そういう酩酊も、コウくんにはある。
これはナズナちゃんも同じで、なんで性をネタに軽口で煽るのは余裕で、そこからズズイと恋の話になると赤面身悶えなのか、深く考えはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
それは多分…コウくんと遊んで吸って寝る夜が、とても楽しいからだ。
吸血鬼も、少年と出会い過ごす夜に浮かれ、酩酊しているのだ。
この幸福な嘘が冷水ぶっかけられ、ウジウジ悩む展開がはよう来てくれねぇかな…と、正直思ってもいるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
このお話、パッと見で感じる人外美少女思春期ラブコメ力とは違う、登場人物のアイデンティティをガツガツ揺るがす容赦のない部分があって、そこが好きなんだが…まだ寝てんだよな、この段階だと
ぶっ飛んで可愛くて特別な女の子と冴えない青年が踊る、奇妙な恋のワルツ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
それこそ”だがしかし”的な、永遠の日常を繰り返す物語と思わせておいて、そことは違う夜ゆえの深み、恋ゆえの難しさ、吸血鬼という怪物性に踏み込み、化けていく。
思い込みが堕天し、転倒していく様が僕は好きだ。
そうなるべき奇妙さは随所に埋め込まれていて、主役二人だけでなくアキラもまた、十分奇妙な存在として描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
常識世界の白々しさに、適応しているふりでよく眠れない少女。
早朝彷徨うのは彼女が優等生だからではなく、浅い眠りに耐えきれず、無人の領域へと彷徨いでるからだ。
コウくんが(常識的に)体温を上げる、異性と至近距離で共に眠る時間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
そこには(未だ)恋もセックスも介在しえず、確かに相手を思う気持ちと、へんてこな現状を飲み込もうとする鷹揚さがある。
それは優等生の世界観では異質であり、排除されるべき悪徳なのだけども。
しかしアキラは、へんてこな怪物女に誘われ雨の中目覚めた時、かつてないほどの充足を覚える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
その色合いを否定せず、自分の性向と実感を新たに取り込んで認めていく器のデカさが、アキラにはある。
彼女はずっと、コウくんと繋がっていた自分、その先にあるコウくんの幸福のことを、心の底で考えてた
うざってぇ思春期の荷物を捨てる道具として、恋と吸血鬼に焦がれているコウくんは、そんなアキラの内心を知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
アキラが感覚し、考慮し続けているものは、思い人に共有されていないのだ。
このアンバランスは、主役の浅薄を大人びた優等生で浮き上がらせる作りで、なかなか残酷だ。
新しい世界に出会い広がったように思える、コウくんの認識と器量。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
でもそれは結構、ノリと勢いとエゴにまみれて浅はかで、分かってないことも、見えていないものも山ほどある。
夜に適応していない優等生のほうが、その本質を強く感得し、許容し、摂取して己を変貌させてもいる。
アキラは夜に酔った幼なじみも、やべー怪物女も責めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
勢いに飲まれての初めての夜更かしから目覚めて、世界についた色に戸惑いつつも、しっかりと見据えている。
彼女は、コウくんが見るギラついた夜を主観しない
(画像は”よふかしのうた”第4話から引用) pic.twitter.com/5ic4k8TtFD
この浮かれた極彩色、淫蕩でありながら清純でもある、翻弄されているのに主導権を握ってもいる、特別で素敵な真夜中とは違うものを、アキラの静かな成熟は見据えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
このギャップが…あるいはこの断絶と無見識にコウくんが気づいていないことが、今後どう生きるか。
生かしてくるか。
そこに興味が深まる、奇妙な再会と出会いの幕引きであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
アキラは吸血鬼になろうとはしないが、白けた昼のつまらなさを知り、そこからドロップアウトした幼なじみを、丸ごと飲み込む。
男と女でありながら、隣り合って寝て手を繋ぎ、それでおしまいで良い関係性も。
そこには恋なるもの、性なるものの輪郭だけを飲み込んで、分かった気になっては否定され、夜と昼、人間と怪物の狭間をウロウロしている少年との、成熟度の裂け目がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
それが決定的な断絶とならず、ナズナちゃんが差し出す魅力的な夜を中間媒介にして、たしかに繋がり得る現状。
コミュニケーションを求めて、ひっそり保全していたトランシーバーがもう一度鳴り響いて、遠くから気にかけていた異性の幼なじみとの友情が、もう一度動き直す音。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
優等生の仮面の奥で、夜の音楽を求めている自分へと、目を開いて踏み込んでいく時、広がっていく眩くリアルな色。
そういうモンが幻想的なリアリティで描かれる、奇妙なジュブナイルでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月4日
世慣れたお姉さんぶってるなずなちゃんが、一番頑是ないのがキモだよなー。
手を引いているのは、本当は誰なのか、と…。
そんな問いが牙を剥くのは、ちょい先か。
それまではこの楽しいだけの夜を、存分に。
次回も楽しみ