メイドインアビス 烈日の黄金郷を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
産み落とされた子は、母の胎には還らぬ。
火葬砲が書き換えた法則は、ファプタを復讐の巷へと誘い込む。
成れ果て村に咲く血の花は、必然の末路か。
掠れた約束が蘇る時、少年は何を選ぶのか。
錯綜する過去と未来は、恋歌ではなく惨劇を伴奏に踊る。
そんな感じのクライマックス開演! レグおめーヒデェやつだなぁ!! な、烈日第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
”キネマシトラスの鬼札”小出卓史が満を持しての出陣、麗しき過去と血みどろの現在、それを超えて微かな未来が重なり合うドラマチックな場面を、見事に演出してきた。
このシームレスな感じは、凄く良い。
”ガンジャ”の過去を最初に持ってきて、リコたちの現在と重ねる形で始まった烈日アニメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
その挑戦的で的確な形式が、レグとファプタに役者を変えて、時を越えて呼応するもの、変わり果ててしまった何かを際立たせる。
この話数単品でももちろん素晴らしい表現なのだが、物語全体と呼応して意味が深まる
そういうエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
時が流れ、否応なく変わり果ててしまうもの、忘れ去ってしまうものがある。
同時に確かに残っているものがあり、それは約束や情愛といった綺麗な光だけではなく、母から継がれた赤黒い復讐心、人間の形を失ってなお燃える欲望の形だったりする。
その是非を問える”まとも”な社会は、奈落の底に沈んで溶けてしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
人の形も心も否応なく変わり果てる、地母神の揺り籠の底でなお、残るものは何なのか。
罪深い始原の上に積み重なった文化や生活は、惨殺によって精算されるしか無いものなのか。
記憶が失われてなお、約束に意味はあるのか。
甘く切ないだけでは終わらない、苛烈で暴力的なアクションシーンの切れ味が、そんな問い掛けを激しく打ち据え、真価を試す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
人間の根っこを問うのならば、口先だけでなく牙を見せろ。
思い返せばずっとそういう作風であったし、黄金郷の物語が佳境に差し掛かり、その風は更に強くなっている。
睦み合うように殺し合い、流れる血を愛の証とするしかない、二人の子供。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
彼らの命運がどこに転がっていくのか、そのうねりが罪と祈りの村、その住人をどこに連れて行くのか。
ここまで描かれてきた物語が、運命の至るべき高みへ押し上げられていく時の、心地よき上昇負荷。
それを全身で浴びることの出来る、とても良いエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
過去と現在、愛と死を繋ぎ目なく重ねることで、レグとファプタの複雑すぎ純粋すぎる関係が、ヴィジュアル的体験として受け入れられたのは、優れた演出だったと思う。
勝負回できっちり勝ち切る。つえーアニメだわ。
物語はナナチとベラフの微睡み、その始末から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
病と飢えが、賢者ぶった己の外面を剥ぎ取り、胃の腑に落とした罪に耐えかね、母なる暗黒に食われることを選んだあの日。
ファプタの再来は、賢者に”眼”を取り戻させる。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/mNzlsPH6ur
彼の夢を包んでいた洞窟は崩れ、全てを失う新たな世界が目の前に広がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
ふわふわの柔らかな存在に包まれていたいと願った、逃避であり贖罪でもある眠りはファプタの襲撃によって終わり、捕食器官に堕した眼窩はその本来の役目…真実を見据え未来を探る器官へと戻っている。
異様で魯鈍に見えた蛇の口が、記憶回復とともにベラフの”眼”に戻っていることを、力強く告げてくる描画。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
自分の夢にナナチを凶暴に捉え出さない、檻だったはずの蛇身もまた、柔らかな存在を守る城壁のように描かれ直す。
賢者ベラフは戻った。起きた。夢から覚めた。
しかし悪夢の代償は大きく、彼はもはや探窟家には戻れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
背負った重荷に耐えかね人でなしになったのだから、当然の末路ではある。
村の終わり、ファプタの帰還を前に、都合のいい獣の夢に生き続けることを許さない矜持が、蛇身にも残っていた。
思い出せば恥知らずに、罪に眠ることを許さない。
そういう魂が、瞳を通じて否応なく溢れかえる人間の本質が、末期に燃えるからこその再生なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
崩れた我が家から見える、終末が待つ外界を、ベラフは真っ直ぐ見据える。
ずっと目を背け、何もかも売り渡して見ないようにしていた、己の始原。
上昇負荷を踏み倒し、緑の膜で守られる欲望と価値。
ファプタの襲撃は村の特殊性を破壊し、これを成り立たせていた精算機構が、村それ自体を精算することを促す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
呪いに蝕まれ、永遠などどこにもない奈落のスタンダードが、ようやく悪夢に追いついた。
そういう状況である。
ベラフはそんな現実を真っ直ぐ見るし、ナナチに見せる。
ナナチも涙ながら、夢の終わりを見据え、幾度目か再開した運命の愛子を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
おおミーティー…その無垢なる瞳、甘き声…。
俺ミーティー凄く好きなんで、何度も生き返らして殺して、ナナチも幸福の中で傷つけて、ここら辺の展開ほんっとキツイんだけども。
ここの、宝物の生と死を見つめて視界ぐっしゃぐっしゃになってくナナチの主観が、何より雄弁に感情のデカさ、複雑さ、純粋さを語ってて、こっちの感慨を心地よく押し流してくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
ナナチがそういう気持ちなら、何選んでも”本当”だよ。
そういう場所まで、こっちを押し上げてくれる。ありがたい。
あれだけ”眼”を強調していた作品が、決断のときにはあえて瞳を描かず、背中で語るのが良いなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
ナナチは喪失と旅立ちを選ぶ。
過去よりも未来を選ぶ。
この揺り籠にともに眠った者立ち、皆がそうして終わらせていくのだ。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/tg0BWUBx32
何もかもを優しく包む霧の中、一歩を踏み出したナナチが夢と現実の境目を越えた瞬間を、ちゃんと切り取るレイアウト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
右端の意思は一里塚であり、ここを踏み越えたことで夢は覚め、ミーティは消えていく。
ナナチは旅立ち直し、べしょべしょに泣きじゃくりながら、宝物に二度目のお別れを言う。偉い。
この後ファプタ主演で展開される、赤い烈日。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
それとは違った柔らかな色彩で、ナナチの夢の終わり、二度目の旅立ちが覆われているのが、メリハリ効いてていいと思う。
そこに暴力はなく、決意がある。
眼を描かないからこそ想像…確信できる、溢れんばかりの感情と、人間の証明がある。
ナナチとベラフがたどり着くことが出来た、この白く美しい目覚めへと、ファプタとレグ…罪深き成れ果て村は進み出せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
その先触れとなるべく、ナナチは霧の中を歩み続ける。
その旅立ちに、揺籃の兄弟たちも駆けつけ、晴れ着を渡す。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/nzdQsLAuFR
それが死を意味することを、知りながらあの柔らかな存在達は進んだのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
無力なマスコットとして、ベラフに愛玩されるだけ。
そんな風にナメてた相手が末期に見せた、あまりに強く優しい心意気。
それを受け取り纏う…強く生まれ変わる瞬間も、霧の中あやふやである。
しかとは見えず、しかし確かにその有様を想像できること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
描かれないものと、見えるものの間に橋がかかっていること。
想像力と共感…血みどろの修羅場を越えていくための武器がどんな形をしているか、アバンの描画はよく描いてくれる。
決意に満ちた死は未来に繋がり、そこで思い出は永遠となる。
ナナチが涙を拭って進み、ベラフが蛇の仮面をようやく剥がして見守る物語は、遠くレグとファプタにも投射されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
彼らもまた、この寂しく美しく、強い魂の鍛冶場へと身を投げなければいけない。
憎み、殺し、終わらせる。
その赤の先にある白へと、具象の奥にある抽象へと、自分達を進ませる。
そのための代金は高く、甘っちょろい言葉だけで通れる関ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
ナナチが瞳から流した、透明な血潮。
それと同じものを己が絞り出し、他人に絞り出させて初めて、全てが決算するのだ。
そうしてたどり着いた広い地平に、どんな足跡を刻むのか。
未来へ進む権利を、子供たちは持ちうるか。
試すための激闘は、臓物ぐっちょんぐちょんの超絶ゴア色である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
感動だけでなく、こういう方向にも一切のブレーキないの、最高にアビスのアニメって感じするよねッ!!
太陽が月に食われて生まれる、皆既日食の景色にも似た、闇と光の交雑。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/EYxJeEW5Og
その中心で、ファプタは獣の目をして肉を喰む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
母の怨念を背負い、理由なき復讐へと駆り立てられる自動機械は、最初高い場所に位置している。
レグが闘う、守ることを選び、かつて魂を通じ合わせたロマンスの相手に拳を向けて初めて、姫は大地に降りてくる。
ファプタが高いところに浮っついてる描写はこれまでも幾度かあり、それは彼女の主体性の無さ、特別な高貴、話の通じなさを上手く象徴している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
それを同じ目線に引きずり落とし、暴力的な水平コミュニケーションを成し遂げる権利と義務は、レグにしかない。
記憶がなくなっても、王子様は彼しかいない
血みどろの現在と繋がる形で回想される、甘く暖かな過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
獣の涙は幼子の瞳に繋がり、かわいい可愛いファプタも、恐ろしき虐殺者も、同じ存在であることを教えてくれる。
牙の感触は、出会いの時噛みついた兜が、たしかに同じ硬さだと教える
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/Rb2lfqAR8d
殺戮と平和、約束と忘却は確かに繋がっていて、どれだけ真逆に見えたとしても、同じ存在が引き受けるべき矛盾だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
だからこそそこに尊さが宿るし、嘘のない真実が暴かれていく。
とても大事なものも忘れていってしまうし、それでもなお消え去りはしない。
それは異様な形に成れ果てた”ガンジャ”の夢が、それでもなおあの村に宿り、確かに育まれてきたのと同じ歩みだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
光と闇を明瞭に切り分けられる、奈落の外の分別は、ここにおいて通用しない。
全てが入り混じった魅力的な混沌にこそ、人の人たる証が見える。
旅立ちから、ずっとそういう話であった。
そこでは男女の役割、性と暴力の境目も消え去って、レグは幾度目か”入れられる”役割となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
ほんっと、腹部を内外から攻められる子だねぇキミは…。
でもファプタが支えにしたもの全部忘れちゃったから、必然の精算でもあるよねッ!!
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/CbApcaZ9iU
いやホント、姫と王子とガブーリンおじさんの回想がほんわかハッピーであるほどに、それが行き着いた末路の血みどろが強調され、時と運命の残酷さが際立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
喉笛噛みちぎらんと、折れてもなお再生する牙はかつて、愛しさを伝えるコミュニケーションの器官であった。はーファプタ可愛い…。
獣の姫にとって、牙は何より相手の在り方を確かめる最良の手段であり、それで仇の肉を噛みちぎっているのが現状である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
それは凄惨でありながら正統でもあり、母なるイルミューイの尊厳を回復する唯一の手段である。
しかしそれで引きちぎる相手の罪は、斬刑以外で贖え無いのか。
それを問いただす機能はファプタには与えられておらず、リコのように村の中に入ってその実態を感じ取る機会も、緑の膜に阻まれ得られなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
復讐だけが赤黒く焼き付いた、永遠の幼子。
そんなファプタの歴史に、ガブーリンとレグだけが豊かな色を添える。愛の色である。
そしてそれは今のレグには忘却され、二人を繋ぐ縁は白紙となってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
赤熱した憎悪が天から降り注ぎ、闘争の舞台は赤き地獄へと移り変わる。
ワズキャンは遂に異貌の仮面を引っ剥がし、己の心身を以て故郷を護る。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/Ucl1dwV6xt
これがベラフがナナチに見せたような”眼”なのか、判別は難しかろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
彼のあまりに的確で、的確すぎるゆえに非人間的な決断は、様々な人を壊し、運命を捻じ曲げた。
皆が生き残るための決断であり、同時に神がかりの我欲を形にするための謀略でもあった。
ここでも、善悪是非の境目はあやふやだ。
今降り注ぐ日の雨は、かつて王子と姫が二人で観た景色でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
今殺し合う者たちが、睦み合いの距離で優しく語らった場所。
煉獄のデートスポットに、思い出が浮かび上がっては消えていく。レグくんさぁ…。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/lsOmiGX5E4
脳天に空いた致命の穴を、幼子を乗せる籠で塞いでるガブールンおじが、優しく切なくて好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
失われかけた機能を、彼は姫と王子を見守ることで繋いでいる。
半ば死に体の忠臣なのだ。
かつて育まれた愛を覚えてるガブールンにとって、ファプタだけでなくレグも守るべき家族なのが”萌え”。
決意に旅立ちを見守り、塒に時間と虚無だけが積み重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
皆既日食のモチーフはここでも激しく燃えて、石塔は孤独の闇に、眩く屹立する。
それを確かめる問、獣の姫は牙を使う。
食べるという行為。
信念と親愛を確かめる器官。
ベラフにとっての”眼”が、ファプタにとっての”口”なのだ。
同時にファプタは牙だけを持つ獣ではなく、意志と魂を持つ人間でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
だから瞳は通じ合う。
プルシュカの支援を受けて白い修羅となった自分をあえて捨てて、涙ながら蘇る記憶の断片に従うことを告げる涙の色を、見つめることも出来る。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第10話から引用) pic.twitter.com/eCFDJ3y7QC
その涙は今馬乗りに、命を取れるのに取らないあまちゃん王子を思って流した涙であり、消え去ってなお蘇る情念の雫である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
村の外側に産み捨てられることでのみ可能な、母の復讐。
それを宿命づけられた存在が、あまりにも人間であることを間近に知り、忘れ果ててなお今、思い知っている男の涙。
それを頬に受けた時、長い孤独と怨念は半ば晴れているのだと、ファプタの透明な瞳は語っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
過去と現在、そして未来にはたしかに橋がかかる。
しかしそれは愛だけでなく、呪いによっても造られた橋だ。
自分が生まれ落ちた意味。
血みどろの凄惨を、ファプタは簡単には捨てされない。
ファプタの引き返せぬ自動性、村で育まれる営みへの残酷な切断は、ロボットであるレグの忘却と呼応しているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
彼もまた起源を知らず、掠れた記憶に導かれるように地上へと上がり、母なる奈落…ライザの聖骸が眠る場所へと戻っていく存在だ。
形なきものに、王子も姫も突き動かされている。
それは理由なき初期衝動…烈日の如く全てを焼き尽くす憧れとなって、冒険の背中を押していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
理由なきカルマに押し流されて、そこに行き着くしかなかった存在なのは、リコもナナチもベラフもワズキャンも、皆同じである。
その眩い光の中に、優しい闇がある。
意志という闇、決意という影。
あるいはたしかに人を繋ぐ、運命の縁が。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
これを振りちぎることで人はその尊厳に向けて、哀しくも美しい一歩を踏み出すのだということは、冒頭のナナチが示した。
笛の音に突き動かされる自動的なロボットであることを捨て去り、思いと涙を獣の姫に伝えたレグも、人道を己の意志で踏破していく。
では、ファプタはどうなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
この血みどろの殺戮は確かに、運命の必然、正義の行使である。
成れ果て村があんな風に生まれてしまった以上、こうなるしか無い一つの終わりだろう。
同時に無情なる無惨の極みであり、ファプタ自身の尊厳を傷つける行為でもある。
この凶暴な混沌、荒れ狂う運命の嵐に対し、ようやく母なる場所へ帰り来た幼子は何を選ぶのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
復讐を果たした後の未来に、何を見出すのか。
レグの涙を受け取り牙を納めるのではなく、獣であり続けることを選んで華麗に舞ったファプタの物語の眼目は、正にそこにあるだろう。
濁流の中、選び取る。
忘却や変貌に流され、色んなものを忘れ果ててなお、人は選ぶことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
ベラフが”眼”に価値を見出していたのも、そこから放たれる光だけが、決断の輝きを闇の中浮かび上がらせるからだろう。
ここまでの旅路、様々な人が様々な道を選んだ。
その果てに死に、死んでなお続いてきた。
その連祷の果てに、今ファプタは立っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
地母神の末娘、復讐の端末。
よく笑いよく泣きよく齧る、とても可愛い女の子。
そのどちらもが真実であり、だからこそ彼女の瞳は獣と人の色、両方に染まる。
その口は愛するものに触れ、仇を喰らい裂く。
光と闇は、血みどろに今混ざり合っているのだ。
そんな極限に、闘い殺さぬことを選んだレグが、ファプタを連れてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
かつて大事な約束を交わした王子様には、当然戻れない。忘れ去っているのだから。
しかし今、他でもない自分が間近に触れ合った愛しさと哀しさを、レグはどうしても裏切れなかった。
今戦っている相手は、あまりに切ない。
そう感じた己の心を裏切ることなく、涙と言葉で思いを伝え、共に進める未来を掴もうと願った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年9月8日
それはファプタを支え縛った、あまりに美しく残酷なかつての約束と同じくらい、強い決意だ。
これを受けて、獣の姫は何を選ぶのか。
物語は続く。
苛烈なる試練こそが、人の人たる証を暴く。
次回も楽しみ