頃は秋、ドッタンバッタン大騒ぎな宮女文化祭を1-Aメインで切り取っていくエピソードである。
暴走太陽小町、芯強い小動物、サバサバカッコいい系と、三者三様の味わいを持つ少女たちがそれぞれの強みを活かし、降って湧いたハプニングに振り回されつつ、青春の1ページを刻むお話であった。
宮女の他メンバーも多数登場し、お祭りらしい賑やかさの中に、学外ユニット活動で得た経験値がどう、学校生活に生きているかを丁寧に確認する視点が宿ってて『本当に進級すんだな~』って気持ちになった。
こはねが内気なだけで終わらない前向きな積極性を見せたり、みのりが顧客目線でイベントを組み立てていく企画力を活かしたり、一匹狼だった志歩がクラスメイトと上手くやれる社交性を手に入れてたり。
このタイミングで、物語開始時点からここまでで得た変化と成長を見せるのは、ここまでの歩みを賑やかな日常の中でしっかり確認して、手応えとさらなる前進の余地をユーザーに見せる意味がある……気がする。
志歩自身は書き上げたあと『ヤッバ、浮いてんな……』と客観視するリアルな筆致も、むしろそのギャップを活かすような受け止め方を周囲がしてくれて、個性がより良く噛み合って回ってる現状が良く書かれていた。
プロセカは全ユニット学校の外側で動いているので、ダイレクトにユニット活動がそこでの日常に波紋を広げることはないけども、本気で夢に挑みだからこそ実りも多い日々の中で、確かに何かが変わってきている。
その手触りを確かめるのに、何かと忙しい”文化祭”は良いキャンバスだったのだろう。
あ、急にNEKO-MIMIで爆弾投げ込んでくる元アイドルのてっぺんと、その輝きで焼かれて一瞬で限界を迎える腐れアイドルオタクは大変良かったです。
大好きな杏ちゃんが暴走ピンチに陥ってしまって、校内新聞に張り出されるほどの意外性で全力疾走した、こはね・ザ・狼ゾンビ。
しかし彼女が青春を賭けてるビビバスは、世間の思い込みをパフォーマンスでぶん殴るストリートカルチャーであり、ハチャメチャやって注目浴びてナンボ、という部分もある。
そういう文化に馴染む……そこを超えて頭角を現す適性が、控えめ小動物の中にはしっかりあって、そんな可能性が杏ちゃんLOVEと一緒に溢れ出たような、賑やかで微笑ましいイベントだった。
杏とこはね、あんまりにもお互いを大事にしあって尊重しあっているので、こういうハプニングくらいしか事件を引き起こすファクターなくなりつつあるの、なかなか面白いな……。
宮女箱イベともいうべきお話だったので、色んな子が個性豊かなクラT着て、他ではなかなか見えない繋がりの中で楽しく過ごしてて、そういうバラエティの豊かさも良かった。
狼ゾンビ乱入のハプニングを、むしろ劇のリアルな完成度に繋げてまとめていくえむちゃんのアドリブ力、さーすがに銭貰ってステージに上る経験値を積んでるだけはあったね。
何でもかんでもわんだほーいでハッピーに過ごしてるように見えて、メチャクチャ周りを良くみて気にかけている子なので、物語全体の運び、客席の温度感とかをどうコントロールするかは、ちゃんと見据えて板に立ってるんだと思う。
あと桃井パイセンが相変わらず人間力太すぎたり、雫のシスコン力が久々に見れたりしたのも、肌潤ってよかったな。
朝比奈は……その取って付けた完成度、そろそろ外したほうが人生にとって良いだろ……。
という感じのハプニング山盛り成長てんこ盛りな、宮女文化祭バラエティパックでした。
肩の力が抜けたハッピー&チャーミングなお話なんですが、そういうリラックス出来る話にこそ二年+αの足跡をしっかり確かめて、新たな変化の足場を着実に刻んでるの、プロセカらしい筆だと思います。
ここで確かめたそれぞれの成長、その先にある新たな波乱と可能性を今後どう書いていくのか……大変楽しみです!