加熱していくモラトリアムの熱情、宇崎ちゃん二期第6話である。
一期でかなりダラダラやってたのが嘘のように、ジムで外堀が埋まり宇崎が焦り、いい具合に加熱していく恋愛足踏み劇。
”卒業”という明確なリミットを意識して、さて宇崎花どう動く……というセカンドシーズン折り返し点である。
Aパートはジムで先輩と宇崎父がすれ違いコミュニケーションを繰り広げ、いい塩梅に好感度が埋まって、お互い気づかない間に外堀が埋まるお話。
宇崎父をウザくて面白くて面倒くさい人間に設定したので、素性がバレてから間を詰めているとかなりややこしいことになりそうなので、余人が立ち入らないジムで足固めをやってる印象。
あえてナレーションでのツッコミを省き、矢印だけで『コイツですよコイツッ!!』って強調してくる笑いの作り方は、視聴者の介入で笑いが完成する自由度と信頼を感じて、大変良かった。
ジム仲間のおじさんたち、ネームドの脂っこいキャラ性を省かれているせいかちゃちゃ入れがサッパリしてて、宇崎父のギトギトな立ち回りを上手く中和してくれているの、なかなかいいバランスだなと思う。
ボッチ時代の鬱屈が宇崎とイチャイチャしている間に剥げたのと、喫茶アジアでの経験値が生きて、ジムの先輩は素直な好青年だ。
お互いがターゲットだと知らぬ間に良い距離感が生まれていくのも納得な、素直な良さがあのジムには漂っている。
そこで『年だけ食ってても、態度が伴わなきゃ大人じゃない』つう先輩の大人感が表に出たわけだが……やっぱこれ、自分の家族を見て生まれたもんなのかな?
二期はキャラ増やし話の舞台を広げつつ、宇崎と先輩が行き着くべきところへとお話全体で結構グイグイ引っ張ってる感じもあって、その一環としてお互いの家庭にも踏み込んでる印象を受ける。
となれば、先輩の家庭環境、そこをベースに生まれた人生観がどんだけ恋路の邪魔しているかも、今後彫り込むのか。
そこら辺も気になっていたりする。
そこは先の話として、Bパートは愉快な宇崎家の彫り込み。
ここにフォーカスが当たるほどに、愛すべき夫との充実したナイトライフを過ごしつつ、なお満たされぬ宇崎月という怪物の底知れなさが暴かれても行くが。
この人が怖いのは、自分の性欲に自分を溺れさせるのに飽き足らず、娘とその想い人まで同等のニンフォマニアだと仮定して世界をショッキングピンクに塗りたくる所だ。
あの血の繋がった臆病な小動物のこと、どんだけ淫乱だと思ってるのか……マジこええ。
つーか『自分が席を外して娘と先輩がまとまってくれないと、勝手に作り上げた妄想の引力に引剥られて過ちを犯しそう』っていう発想自体が、普通の生物からは滅多に出て来ない”質量”宿してて凄い。
結果、先輩とネコちゃんの微笑ましいふれあいはエロティックファンタジーに侵食され、言葉尻を捕まえての『親子丼を狙う危険人物』扱いは続くのであった。
……ホント無礼だなこのアマ。
んで、娘の方はいつもどおりの純情臆病で、榊をヘロヘロにしていた。
この期に及んで誕生日も知らねぇ有様に、そらーヘロヘロにもなるが。
”卒業”っていうわかりやすいタイムリミットが表になったことで、榊の危機感をついに宇崎が共有した感じもある。
宇崎なりの歩み寄りで手に入れた、先輩一日独り占めやりたい事全部盛りの最高誕生日は大変幸せそうで、悲しいほどにいつも通りで、満たされてしまうからこそ先に進めない現状をよく語っていた。
幸せは幸せなんだがこのぬるま湯、否応なく進んでいく時間の中、環境が変わった時も耐えれるほど強い間柄なのかと問われると、なかなか難しい。
卒業に伴う変化で自然消滅……てのが容易に想像できる、確かなものが何もない繋がりだと良くわかったからこそ、宇崎が焦って何かを進めたがるのも納得ではある。
しかしあの根性なしから出てきたのは、モラトリアムを永遠に続ける『留年しませんか?』であって、ドラスティックに自己と関係を変えざるを得ない『好きです』ではない。
まだそこに踏み込めるほどヤバさを感じてないからこういう発言も出るし、(先輩限定で)図太くうぜー顔しつつも根っこが弱い宇崎花の、人生修行が足りない結果だとも言える。
こっからどういう体験を経て、どういう決意を積み重ねていけば、全てをより善く変えていく言葉を素直に口に出せるのか。
二期の進め方を見てると、永遠のモラトリアムに足踏みし続けるというより、その先に宇崎ちゃんを持っていってくれそうな気配は濃い。
そのために宇崎家で先輩の話題をよく出して、家族への認知と好感を深めているんだろうしね。
僕はこの話の心地よいモラトリアムの書き方、そこに留まりたいと願いつつ体も心も社会的立場も変わっていってしまう”流れ”の刻み方が、結構好きだ。
宇崎の身体が豊かで、否応なく性を意識しなければならないこと。
セックスしてその結果生まれる感情や環境の変化を、受け止められる大学生という立場であること。
これも結構独特な味を付けていて、濃いめのオタク味の奥に不思議としっかりした質感でもって、青年たちの歩みが書かれている感じがする。
閉ざされた時の中で永遠に同じ場所を回り続けるのではなく、物語によって生まれた変化を自分に引き受けて、他人や世界との関わり……それを通じて自分自身を変えていける人間として、萌え記号満載のキャラクターを扱っているのは好きなのだ。
そんなバロックで誠実な足取りは、二期で凄く濃くなっている感じがある。
その果てにどんな決意と変化が待っているか、見ていくのは愉快だ。
次回はどんなもどかしさとすれ違いを味わえるか、楽しみです。