イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-:第6話『DIYって、どうでも・いいもの・やくにたつ!』感想

 居場所も夢も自分で作る、ハンドメイドな青春物語。
 DIY第6話、初夏の海に弾ける笑顔のサイダーである。
 『このアニメ、水着回とかやんの!?』という驚きもあったが、蓋を開けてみれば五人となったDIY部の朗らかな現状、ぷりんがせるふにむける感情の質感、情感を優しく包むDIY活動の手触りと、大変このアニメらしいエピソードとなった。
 特に大きなミッションなく、とにかく気楽に楽しく日々を過ごす少女たちが見れて、強みである洗練されたゆったりまったり感がパワフルにブン回されてた感じもある。
 このリズムと呼吸で青春見守れるの、やっぱつえーし有り難ぇわな。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 物語は冒頭からテンポ良く転がっていって、年下の同居人に巻き込まれる形でぷりんは海へと向かう。
 やっぱ本丸であるせるふ以外にも、ジョブ子としーちゃんにガッチリ縁を繋いで、素直になれない複雑ガール攻略戦に向けて状況を整えてあるのは、話が早くて良い。
 彼女たちの内面に切り込んだ第3話・第5話がすごく面白かったので、一つの物語を終えた後世界をどう楽しんでいるのか、そこにぷりんがどう位置しているのかを見せてくれる描写があると、とても嬉しい。
 凄く近い距離で生活を共有するジョブ子との間合いが、構えたところのない心地よいものであると教えてくれると、彼女たちの寂しさを見せてもらった視聴者としては安心もするしね。
 楽しくはしゃげるハレの場としてのDIY部と、一人抱え込んだ重たい荷物の対比が効いているからこそ、その中間地点としての私室が一人ぼっちと書かれないのが嬉しい……というか。
 そういうナイーブな描写の上手さは、後々散々に暴れることとなる。
 つーか湯女高専、高1の授業で量子優越性取り扱ってんのか……怖ッ!!

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 いわゆる水着回なれど、メインテーマであるDIYをおろそかにしないのはこのアニメの良いところ。
 砂浜に打ち上げられた漂流物をゴミにするか新たな命を吹き込むかは、扱う人のイマジネーション次第……というわけで、資材集めに勤しむ。
 ”DIY”というくくりには色んなモノが含まれていて、そこで表現される良さには個性を反射して様々な形があってよいのだと、ガラクタからお宝を夢見る描写で伝えてくるのはとても良い。

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 やっぱくれい部長の書き方が大変に良くて、後輩のイマジネーションをいい方向に導いたり、初めて出会ったツンツンガールに手ほどきをしたり、教えすぎず放置しすぎずのちょうどいい塩梅で、理想の”先輩”してくれている。
 幼なじみが自分の知らないせるふになっていってしまう戸惑い、揺れる心を頑なに守るぷりんの幼気にも、カラッとした態度といい距離感でファーストコンタクト成功。
 『何よこんなもの!』と遠ざけていたDIYに触れ、手を動かして何かを作る過程はすなわち、同じく遠ざけていた『せるふと仲良くしたい自分』と仲良くなる歩みにシンクロしていくわけで、その二歩目をさり気なく優しく、初対面のくれい部長が助けてくれているのは良い感じだ。

 なかなか上手くいかない初期状態から、縁が繋がって世界が広がって、自分の手で自体を変えていける状況が整うまでの歩みはこのアニメ、結構丁寧に積み上げてくれる。
 同居人の手伝いという形で、楽しいDIY……その一歩目を一緒に進んでくれたジョブ子との距離感も、すっかり気の置けないものになっている。
 この変化は二人が屋根を共にし同じ釜の飯を食い、当たり前の日常を共有したからこそジワジワ育まれたもので、『日常系』の一番強い所ブン回ってるな、と思う。
 ああいう呼吸、ああいう間合いで毎日顔を合わせ言葉を交わしていれば、そらーなかよしにもなるでしょうよ……というね。

 

 

 画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 かくして資材集めが始まった時には五本しか上がっていなかった腕は、Aパート終わりには六本になって、ぷりんは戸惑いながらもDIY部になじんでいく。
 ベタな表現ながら、5が6になる過程を丁寧に追いかけたことで、納得感とグッとくる感慨に満ちた前半まとめになっていた。
 ハタから見てりゃ既に完落ちなんだけども、ぷりんがDIYも部の仲間もせるふも大好きな自分を素直に認めるのが難しい年頃なのだと書く筆もまた元気で、じっくり段階を踏み、色んな人と仲良くなってようやく、彼女が本当に行きたい場所への道が拓けるってのは理解る。
 見え透いている結末にたどり着くのに、白々しいダンドリ感ではなく確かに青春の必然として、ちょっとずつ心の鎧を外し、溢れる楽しさに頑なさを溶かしていく様子が追いかけられていくのは、ありがたい筆運びだ。
 素直になりたいけど、なかなかなれない。
 ありふれて当たり前で、だからこそ大事なぷりんの思春期をこの焦らない筆致、強く尊重してくれてる感じがあるんだよな……。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 というわけで水着完備の浮かれポンチ人間どもの仲良しを、明るく楽しく横幅広く切り取りつつ、Bパートは濃厚な青春大相撲5月場所である。
 とにかくせるふとぷりんの間にある感情、それが微細に震え形を変えていく様子が細やかに切り取られていて、コンテ演出安藤尚也の『ナメてんじゃねぇぞ……俺は”アイカツ!”やってきてんだぞ!!』という吠え声を俺は確かに聞いた。(幻聴です)
 幸福な喧騒を遠目に見守りつつ、既に二人の領域に入っている、水着姿のぷりんとせるふ。
 無邪気な子どもではいられない自分たちを否応なく認識して、でもどこへ進んで良いのか戸惑っているぷりんと、ナマコをお土産にしようとポワポワ妄想するせるふの幼さには、たしかに隔たりがある。
 しかしそれを埋めてしまう強さが、曇りなき青空のような笑顔と遠く佐渡を望む潮騒には宿っていて、制服に身を包んでいては見せられない気持ちも、ゆっくり表に出てくる。

 

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 情感たっぷりの夕景はクローズアップの使い方、緊密でしっとりした時間の切り取り方が大変良く、ぷりんの複雑に屈折した純情と、せるふの真っ直ぐ過ぎる思いが良く宿っていた。
 潮に濡れた幼なじみの髪の毛をまとめ上げる指先、フラフラと元気に幼く揺れるせるふの足と、そこまで自由にはなれないぷりんの気持ち。
 差し出された手と言葉に何かを言いかけて、まだ踏み出せない戸惑いと切なさ。
 ぷりんの心に宿ったとても柔らかで暖かなものに、しっかりカメラを寄せて一つずつ切り取る気概が、みっしり滲む演出である。

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 彷徨ったり、目を奪われたり、伏せて逃げてみたり、穏やかに見つめてみたり。
 ぷりんの視線は心を映すプリズムのように複雑な色合いで惑うが、彼女がじっと見つめ続けているせるふは眼差しを揺らすことなく、素直にまっすぐに好意をぶつけてくる。
 そうして差し出された手を取るのか、取らないのか。
 波間に笑うキミは、ほかでもない私だからこそ手を差し出してくれたのか。
 賢い……賢くなってしまったぷりんが戸惑う不定形な自我に、せるふは向き合っていないような気すらする、ある意味残酷な視野差。
 それが愛おしさ故に生まれ、とても難しいバランスでフラフラ彷徨っているということが、丁寧な筆運びでしっかり伝わってくる。
 今、この時間は変化の種子を孕みつつ、それはまだ発芽していない。
 須理出未来は結愛せるふの手を、今はまだ取れないのだ。
 そんな未達の現状を、上から目線で導くでなし、あるがまま優しく見つめる視線がありがたい場面である。

 なかなか素直になれないぷりんが見つめるサンドグラスは、つまり彼女の心そのものだ。
 時の流れに揉まれてちょっと傷が付いて、でもそれがかけがえない眩しさにもなっている。
 どうにもならない自分を持て余しつつ、ぷりんが身を浸している思いの複雑さを、もうお二人きりではいられないのに特別な一人でいたいという矛盾を、せるふは見ない。
 預けるのに勇気がいるフラジャイルを美しく飾り、真心を込めて手渡せた時、ぷりんは自分が何を見落としていたのか、自分たちが人生のどんな場所に立っているかをようやく、見通すことが出来るのかもしれない。
 この初夏の一日ぷりんが拾い上げたものは、彼女がずっと見ている……瞳を奪われるのにそらしてもしまう特別な女の子と共有する世界を、変えていくレンズにもなるのだろう。

 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 『それを扱う手付きを、俺たちは全く粗略にはしねぇぜ!』と教えてくれるのが、たくみんの丁寧なDIYなのが大変良い。
 手仕事を丁寧に切り取る作画は、メインテーマに本腰入れて描く気合を感じられて大変良いが、ぷりんがどんな気持ちでサンドグラスを拾い上げ、自室に持ち帰ったか……その青春のドラマを思えば、より豊かな意味が宿る。
 細やかなことに気を配り、美しいものを形にできる匠の指先。
 巻き込まれる形でDIY部と海に行き、仲間やDIYそのものと親しくなったこの休日が、どんなふうに少女の青春を扱うのか。
 信頼しかない。

 プンプン文句を言いつつも、部長から譲り受けた流木を帽子掛けにDIYしたぷりん。
 その窓辺からどんだけ切ない視線を、幼なじみに向けて放っていたか幾度も描いてきたからこそ、それが空白を埋めてくれるありがたさは強まる。
 せるふに向ける複雑で濃厚な感情を幾重にも重ねつつ、そこで閉じるのではなくむしろ世界が広がってる爽やかさがあるのは、”部活”のど真ん中って感じで大変良い。
 

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第6話より引用

 夢の中なら、かつてのように寄り添えて……今はまだ、夢の中でしかできない。
 そんな二人の距離感を、丁寧に描く初夏のエピソードでした。
 こういうスケッチがあると、移ろいゆく心がどんな戸惑いと熱情で動いているのか、その物語的力学に強く納得できるわけで、大変良かったです。

 はたしてぷりんは、海で拾って渡しそこねた彼女のサンドグラスを、自分の手で形にして、手渡すことが出来るのか。
 『ぜってー出来る。彼女がいるのは居場所も夢もみんなでDIY出来る、最高の世界だから』と、力強く未来を指し示してくれるお話、素晴らしかったです。
 一人だとどうしてもツンツンしちゃうぷりんが、出会いを通じて頼れる人を増やしていく描写、ホント良いんだよな。
 青春、頑張ってほしい。
 そう思える物語も折り返し、季節は梅雨へと移っていきます。
 どんなお話が見れるか、次回も楽しみです。

 

 追記 貴方も一歩、私も一歩。歩み寄って、ミルク・コーヒー・ダンス。