イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第6話『いい日旅立ち/お雪/あたるの引退』感想

 ハチャメチャ異次元ラブコメディ、ラムの幼なじみ達がわんさと押し寄せる、新キャララッシュの第6話である。
 前回ラムとの関係性を甘やかに掘り下げてたところで、また横に広がっていく展開も面白いもんだが、第3エピソード”あたるの引退”が早くもメタネタぶっ込んできており、面白ければなんでもアリのバーリトゥード・コメディが新たな領域に入った感じもある。
 どんどん新たな素材が継ぎ足され、カオスな闇鍋感が増す……のは事実なんだが、何でもかんでも飲み込むるーみっくな世界観、ドタバタやかましい中確かに一本通る”青春ラブコメディ”という芯があるので、騒々しいながらも『ああ、”うる星やつら”だなぁ……』という納得感は維持されている。
 今後キャラの顔見世が落ち着いて、とりあえずのパターンをやり尽くし、それでもなお延々と続くハレの日が摩耗しきって出てくる独自の味わいまで、4クールの令和うる星アニメはたどり着けるのか。
 6話にして未だ道1/8であるが、今後どういうお話を奏でてていくのか……なかなか楽しみである。

 

 

画像は”うる星やつら”第6話から引用

 第1エピソードはすき焼きと節分を通じて、ラムとあたるそれぞれの家庭事情が見えてくる、ファミリーテイストなお話である。
 アニメ放送から四十数年、”すき焼き”という料理が当時持っていた威光を未だ放っているのか感触が難しいところであるが、年に一度のごちそうに心踊らせるあたるは年相応の少年で、なかなか可愛い。
 そこから問答無用に異次元拉致キメられ、合戦にビビり新たな美少女に浮かれる調子の良さも、なんだか妙にチャーミングだった。
 冷静に考えると相当無茶苦茶で悲惨な状況でもあるのだが、あたるがバカらしく逞しく後ろを振り返らず、パパパッと状況に適応して笑っていてくれるおかげで、余計な湿り気がコメディに混ざらない効果は大きいと思う。
 その上で何も考えていないわけではなく、”君待てども…”で見せたような甘酸っぱい純情もしっかり持ってるところが、バランスのいい主役である。

 今回はラムの幼なじみがたくさん出てきて、”婿殿”として実家の行事にも参加するお話なので、お互いの家庭事情がにぎやかなお話である。
 第2エピソードのおユキもだが、銀河系美少女軍団は軒並みアクの強いイイ性格しており、とにかくめげずにアタックしてくる主役に当たり負けしない、濃いキャラでぶち当たってくる。
 七福神と鬼が仲良くいがみ合い、平和に喧嘩祭りする節分も、背景設定は宇宙希望なのに程よいご町内感覚が漂って、好みの手触りである。

 ラムの家庭事情に重なる形で、息子の亡霊に涙しつつもすき焼きは食う(しかも二回)諸星家の雰囲気も伝わるのが、なかなか良い感じ。
 一切まばたきをしない怪僧チェリーが、引っ掻き回し役として大変良い感じで、あたるママンのキレたキャラも良く立つ。
 宇宙規模のボンクラ息子を嘆きつつ、なんだかんだフツーの家族らしい情を持ってる”家”があることで、ハチャメチャやってもどっか落ち着いてる、良い感じの小市民感覚が作品に宿ってる感じもある。

 銀河を股にかけてワイワイやりつつ、根っこに”すき焼き”。
 この手触りは押入れワープホールで異次元机をパロった、藤子SFっぽい味付けとも言えるか。
 『超技術をもって日常を楽しくかき回す、異界からの同居人』ていうフレーム、ラムは正統継承者だしな。
 『ひみつ道具出す代わりに、のび太ドラえもんと恋愛すればいいじゃん!』ってのが見事な発想で、そらー新時代と数多のフォロワーも生み出すわなぁ……って感じ。

 

 

 

画像は”うる星やつら”第6話から引用

 第2エピソードは冥王星の雪姫を巡る、不思議な珍道中。
 あたるのドンファンっぷりはいつもどおりとして、惑星規模の男日照りに悩まされてるおユキが超やる気満々で、ダイレクトにエロティックなのが良かった。
 めっちゃ首と腰に手足絡んどるな……冥王星の女は怖いわぁ……。
 B坊の乱入なしでゴロゴロ寝技が転がってった場合、行くとこまで行く可能性が高い状況だったと思うが、純情スケベ諸星くんは果たしてラム以外と寝たのか。
 永遠の謎であろう。
 『ウチがこの手で殺したかった!』と、サラッと強火のヤンデレ力発揮してるラムにぶっ殺されてバッドエンド……かな、寝た場合。

 風邪っ引きなのに銀河雪男に鷲掴みにされ、家を占拠される状況が大々的に新聞で報じられる。
 宇宙人がいるのは最早日常、『友引町の外側も、相当ヘンテコで呑気なんだろうな……』と思えて好きな演出なんだけども、白黒の”キングコング”が1933年、うる星連載開始が1978年、”キングコング:髑髏島の巨神”が2017年、そして令和うる星が2022年と考えると、年表かけるレベルのロングパスである。
 『熱のあるリメイクで息吹を取り戻した古典的名作』ってくくりでみると、ネタにしてる方もネタにされてる方も同じ土俵に乗っかって、長い歴史を泳いで忘却と戦っているわけで、個人的に不思議な呼応がある面白いシーンだった。

 あと面堂くんは太陽系の果てでも、女性に恥をかかせずジェントルな自分で居続けることに全霊を注ぎ続けていて、見栄坊もここまで来ると一つのスタイルだな……って感じ。
 ラムに会うために見舞いに来て、しのぶがいるのにアテが外れた顔してるの、地味に残酷なシーンだったと思うね。
 こういうざっくりしたエゴイズムが時折顔を出すの、キャラが生きてる感じがあって結構好きなんだよな。

 

 

画像は”うる星やつら”第6話から引用

 そしてCパートは最終回オーラ漂う、あたるの引退宣言。
 6話目にして『この話の主役』という言葉が作中人物から飛び出す、メタ領域に半歩踏み出したやりたい放題回である。
 アニメで圧縮率高く見返してみると、思いの外あたるが年相応の一般人であり、やれ宇宙人だ霊能者だ異常金持ちだと濃すぎるメンツに囲まれると、誰が主役か解んなくもなる。
 そこを浮気性とめげないタフさ……そして微かな純情の香気一本で、一応主役の面目を保っているあたる。
 その現状を、既に賑やか過ぎる世界観をおさらいしつつ見せるお話……といった感じ。

 まぁビジュアル的にもキャラ的にも、圧倒的にぶっちぎってるラムの存在感が大きい話ではある。
 だが、イカれた状況にブンブン振り回されタフに適応しつつも、あくまで小市民感覚を忘れないあたるがいてくれるから、カオスな話が飲みやすいってのは、確かにあると思う。
 あたるのドンファンっぷりって、倫理基盤が大きく書き換わったこの40年で結構シャレにならなくなってるけど、アクが強くて何かと直接的暴力に訴えるメンバーで埋もれないためには、必要な個性でもあんのかな……などと、見ながら思う。
 ここの角が不用意に立ちすぎず、笑えるギリギリを維持しているのはリメイクの腕だなー、とも。
 大本は”まんま”でやって原作の味を残しつつ、細かい所でしっかりヤスリがけして”今”流すお話に整えてるのは、相当偉いと思います。

 

 というわけで新キャラ満載、賑やかで楽しい”いつものうる星”でした。
 こうして倉庫に山と眠ってるキャラクターラッシュが落ち着いた後、個別に魅力を掘っていくお話をどう見せてくれるか、先が楽しみでもあります。
 粒が立ったキャラの抱えてる魅力を、度量が深い(深すぎて底が抜けてもいる)世界観で包んで生まれてくる、唯一無二のグルーヴ感と魅力。
 そろそろそれが動き出す頃合いかと思いつつ、来週を楽しみに待ちます。

 

 追記 あのSEって稀代の”発明”だから、使わないのは結構気合の入る決断だったと思う。