イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン:第19話『「緑色」の誕生』感想

 暗黒風水の使い手をぶっ倒しても、特別監獄の戦いは終わらない!
 異様なテンションで加熱していく現代伝奇バトルロマン、さらに良く分かんねぇ方向にぶっ飛んでいく第19話である。
 空条親子の切ない絆を描い方と思ったら、ヤバ人間アナスイのヤバ求愛漫才が急に始まり、かと思えば人体が”咲く”異様なるグロテスクが絢爛に暴れまくって、かっぺー声のヤバスタンドが卑屈な態度に忍び寄るッ!! という、振り幅の大きい盛りだくさん回だった。
 血しぶき飛び交う肉弾戦から、奇妙な理屈をテンションで押し切る暗黒風水バトル、そして明らかに異様な”骨”との遭遇と、特別監獄の戦いもドンドン摩訶不思議な方向に加速して行ってて、まさに”奇妙な冒険”の面目躍如、といった所。
 ここらへんから読者置いてけぼり気味に奇想をブン回し、荒木先生の発想のスケールに振り回される感覚が結構好きなのだが、アニメはどう描いてくれるか。
 休憩無しでラスト第3クール放送も決定し、クライマックスへ加速していく物語の今後が、より楽しみになった。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第19話から引用

 ケンゾーとの死闘を終え、F・Fの治療を受ける徐倫は、記憶を奪われた承太郎と同じ姿勢で階段に横たわっている。
 精神のヴィジョンであるスタンドが白紙の承太郎に刻んだ魂の名前は、常理を飛び越えて奇妙な共鳴を呼び、徐倫の身体に己を呼ぶ父の声が刻まれる。
 プッチ神父が最早亡き彼のDIOを思いながら手のひらに刻んだ聖痕と、奇妙な対象関係をなす親子の共鳴。
 イタリアを舞台とした五部から……特にブチャラティの死あたりから既に漂っていたが、犠牲と聖性が絡み合ったキリスト教的な意識が、六部は色濃い気がする。
 ジョースターの血と親子の絆が生むこの不思議な共鳴は、果たして”血”を絶対的価値として特権化するものなのか、それとも最も気高き人の証はどこか別の場所に宿るのか。
 後に待つ物語の決着……それが描く新たな”ジョジョ”を思う時、ここで描かれている血みどろの神秘体験は、結構大事な描写なのかな、と思った。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第19話から引用

 そんな天上の不可思議を後目に、アナスイはF・Fをドン引きさせつつ珍妙なロマンスを企て、勝手に吹き上がった激ヤバ求婚男をガン無視して未来へ突き進む徐倫に、更に惚れ込むこととなるのだった。
 父との絆を身体で確かめ、全霊を使命に注ぐ今回の徐倫、本当にハンサム。
 今回の作画は全体的にキリッと美麗で、アナスイの顔面の良さ、徐倫の気高き心、そして奇人のトンチキ行動にうろたえるF・Fちゃんと、三者三様に面白く描き分けてくれた。
 プランクトン人間をワケの分からない理屈で圧倒し、メチャクチャな恋のキューピッドに仕立て上げようとするアナスイの笑える奇人っぷりは、後にグッチョへの仕打ちでどす黒く反転する。
 さっきまでオモシロ漫才やってたはずなのに、一瞬で超絶グロテスクな異常状況に飛び込み、刺客を人間サイズの罠に書き換える冷酷な闘争へと身を投げる。
 元々ジョジョは笑ってる場合じゃないのに思わず微笑み、日常が一瞬にして惨状に飲み込まれる不思議さを、人間の面白さとして大事にしてる作品だと思うが、今回は特に落差が激しい気がした。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第19話から引用

 ここから”緑の赤ん坊”によって人体が芽吹く、異様でグロテスクな状況へと物語が転がっていく。
 光に近づくほど徐倫に埋め込まれた致死の種は芽吹くが、卑劣な吸血鬼ではない彼女は太陽を恐れず、堂々踏み込んで”緑の赤ん坊”を……父を救うための手がかりを掴み取っていく。
 安全のために闇に潜るか、気高き未来のために危険な光の中に飛び込むか。
 常理を越えた状況であるけども、試されているのはとても普遍的な人のあり方な気がする。
 徐倫は脇目も振らず危機に飛び込み、父への愛のために命を賭ける。
 それは堂々と光の中で行われ、隠すことなど何もない。

 一方、想い人を苛む危険な”芽”に口づけしたアナスイは、徐倫達の知らぬ所でグッチョに”ダイバーダウン”の力を潜伏させ、刺客を襲う罠へと変える。
 花嫁(候補……ですらないか現状)に口づける色男(ロメオ)の横顔と、卑劣で残忍な凶器に人間を貶める所業は、全て一つの行動原理……『愛する徐倫の保護』から生まれている。
 この単機能で凶暴な生き様は、光を恐れぬ徐倫の気高さと対照し、また呼応もしている。
 おもしろ求愛漫才とか、ヤバいながらも愛だけは本気なのだと判る鮮烈な行動を見ているとうっかり『いい人』なのだと思いたくなるが、アナスイは刑務所暮らしが当然の、危険極まりない男だ。
 そんな猛獣に首輪をつけるのも、徐倫が父に向けるのと同じ”愛”と呼ばれる行動であり、残虐非道なプッチ神父を突き動かしているのもまた、失われたDIOへの”愛”なのだろう。
 様々な色形に変化し、人を癒やし守る事もできれば、誰かを殺し貶めることも出来る”愛”の行く末が、アナスイという危険な求婚者の登場で大きなテーマとして、作品の中で顔を持ち始めた感じもある。
 明らか超危険人物なのだが、奇妙な可愛げとバツグンの顔面を兼ね備え、一筋縄ではいかない面白さを宿してキャラが元気なのは、大変良い感じだ。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第19話から引用

 そんな一行の前に現れた最後の刺客、自動操縦スタンド”ヨーヨーマッ”。
 ぶん殴っても死なないわ、腐れドMだわ、カエル絞って勝手に飲むは、全く異様な油断ならぬ召使い……その毒牙にF・Fが下顎ふっとばされた所で、次回に続く! である。
 ”ドラゴンズ・ドリーム”相手には脳天たたっ切られて、再生能力が高いプランクトン人間だからって、F・Fちゃんも全く災難である。
 山口勝平の怪演がビシッとキマり、卑屈な態度では覆い隠せない”ヨーヨーマッ”の不気味な異様さは、新たな激闘の予感を見事に掻き立ててくれた。
 覚悟も新たに勇壮な表情を見せる徐倫と、危険極まりない愛で武装したアナスイの二人が、この窮地にどう立ち向かうか。
 なかなかワクワク出来る引きで、次回が大変楽しみである。
 ……『可愛げも面白さもあるが、それを笑っていると即座に殺されそうな珍妙存在』って意味じゃ、アナスイと””ヨーヨーマッ”は同じ穴のムジナなんだろうな……。