イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アキバ冥途戦争:第9話『秋葉生態系狂騒曲!メイドの萌え登り!!』感想

 情け無用の喧嘩祭りと、踊ってみるも渡世の仁義、序列段取りご意見無用、地獄の豚もおだてりゃ登る、アキバメイドの女意気。
 エイリアンを駆逐し天下布武の気概を示すはずの祭りを、真下からひっくり返す”とんとことん”の勇姿は、果たして昇竜の気概か丘に上がった鯉の末路か。
 獣王の逆鱗に遂に触れ、背中合わせの栄光と破滅が迫る冥途戦争第9話である。

 

 

画像は”アキバ冥途戦争”第9話から引用

 見よ、ケダモノグループ総帥凪様の、この圧倒的顔面力。
 見よ、さんざんコミカルに笑いを作ってくれた取り立て屋の、メンツを潰した血の代償。
 事ここに至ってマトモに収まるはずがねぇ、嵐の前の大勝利。
 さてなごみ達の運命はいったい如何に……という、狂乱の喧嘩祭りである。

 

 冒頭唐突に、明治初期から綿々と続くメイド喫茶偽史が堂々綴られ、こういう開き直りが大好物な自分は大変興奮した。
 メイドリアンとの抗争、その後始末も野球で一段落付いて、大概的にこの世界のメイドがどういう塩梅なのか、あるいは内部的な集団秩序がどうなってるのか、地獄のクライマックスを前に確認するような祭である。
 汚れ仕事を切り抜ける暴力、稼いだ金を上に流し込む財力、上層との縁を繋ぐ人脈という、社会のあらゆる場所で活用され、欲望剥き出しのヤクザ稼業では特に物を言う三代パワーを持たぬ”とんとことん”は、メイド秩序の底辺に押し込まれている。

 仕切りはテキトーだし、道理は飲まないし、稼ぎは悪いし、その癖暴力沙汰を切り抜ける能力は人並み外れてるという、組織運営から見れば最悪のイレギュラーは、今回もフツーのヤクザならすんなり飲み込むはずのダンドリを読みもせず、好き勝手絶頂の横紙破りである。

 なんもかんも大人が脚本整えて、対外的にメンツが整うよう苦労している筋道なんぞ、アタシたちには関係ねぇ。
 そんな野放図な反逆が、アキバ一帯を支配した組織暴力に意地を通せるのか、否か。
 祭りを通して、最終局面の足場が組まれていく。

 

画像は”アキバ冥途戦争”第9話から引用

 とにっかくアタマである店長のテキトーさがヤバくて、上流に鎮座ます他の組は苦労して読み解き飲み込んでる大人のダンドリを、ダリーからって全部無視してゴミに出す。
 これまでもそうだったように、一事が万事このテキトー加減が命取りになっとるわけだが、アウトローを縛る掟の窮屈さにド底辺から一発かます物語は、こういう大きな穴が空いてないと上手く回らない……という話だろう。
 ヤクザやるにはあまりにズボラなその振る舞いは、しかしチャーミングな人間味となっていい味出しており……おんなじ味わいだしてた取り立て屋がああいう始末だと、いい加減ギャグキャラ補正、クズ特有の生存能力でどうにかなる局面も、終わりかけてる感じがある。

 命を守る序列も伝えず、祭りの現場からも逃げ出し、本気で逃げる算段も決めきれない半端モンは、日が暮れるまで釣り堀に竿垂らして、ようやく鯉を釣り上げる。
 黄河の急流を登りきった鯉は龍に変わるという故事成語から、事を成し遂げ出世の階段を登る事を意味するようになった『鯉の滝登り』(ヤクザが背負う入れ墨の画題としても、良く選ばれたりする)に、店長はなごみの死を幻視する。
 お萌え様上りは表向きアキバ最強のメイドを決める誉れの舞台だが、その実凪のアキバ制覇を飾る出来レースで、その栄光を受取る直系は決まっていた。
 そんなヌルい釣り堀から飛び出せば、龍に変じるどころか命懸け、水からはじき出されれば魚は死んでしまう。
 それでも黙って釣り上げられる訳にはいかない意地が、半端な店長率いる”とんとことん”には萌えていて、さて女意地六尺花火玉、伸るか反るかの大勝負は次回以降……といったところか。
 『最初の一匹釣ったら逃げる』とウダウダほざいていたはずなのに、結局アキバに戻ってきちゃう所が、この愛すべきろくでなしの魅力なんだろうなぁ。

 

 

画像は”アキバ冥途戦争”第9話から引用

 ルール無用のド底辺アウトロー集団は、大人しく順番待ちなんぞしておらず、車道に躍り出て勝ちに突き進む。
 土下座かまして頭を踏まれ、『流れに逆らっても良いこと無いし』と諦めていた同僚も、なごみの熱に当てられ大暴走である。
 この『狂わす』って天性はなごみ特有のもので、メイドやるにしてもヤクザのてっぺん狙うにしても、強力な武器なんだと思う。
 ねるらちゃんの死、紅い超新星との激戦を経て、開花した才能……と言えるだろうか。

 数多の実戦をくぐり抜けてきた”とんとことん”、とにかくゴロが強くて、縄張り争いでアタマ踏みつけて悦に入ってた上役たちとは、魂の熱さが違う。
 時代も空気も読めない武闘派の末路は、愛美が咲かせた赤い薔薇が既に物語っているが、しかしイケイケドンドンのときは昇竜の勢い、止めれるものは誰もいねぇ。
 つーか格闘シーンの作画が異様に良くて、メイド稼業のてっぺん勝負がなんぼのもんか、”絵”でしっかり語ってくれたのは良かった。
 序盤は”とんとことん”の暴力一番星として、たった一人暴れ狂ってた嵐子がアシストに回り、ゆめちの踏み砕かれた意地をなごみが継いでてっぺんにハタ突き刺す展開は、狂走の暴力集団が今どんな塩梅か、良く語っていた。
 ダンドリ乱されて血が流れる未来にビビってる他の組の連中と、なーんも知らねぇで栄光に向かって突っ走る豚たちの対比が、ヤクザっても力で支配されたヒエラルキーの檻に縮こまるしか無い現状と、それを壊すかもしれない野放図を教える。
 つーか嵐子さん、マウント取ってからフックで黙らす”速度”が圧倒的で、やっぱアンタが暴力一番星だぁ……。
 でも『なごみに託して自分は堕ちる』描写は、未来を暗示してるようで少し怖いな……。

 

 推しの出走と乱闘に熱狂する一般参加者の顔から、この世界のメイドがどんな塩梅で受け止められるのかを感じ取りつつ、表向きは想定外のサプライズを受け止める度量を凪が見せて、祭りは終わる。
 しかし真の”祭り”は側近の不始末を命で償わせ、阿修羅の形相を見せたこの後にこそ始まる。
 最高なはずの私たちがアタマを押さえつけられ、豚に甘んじるしか無い現状をひっくり返す序列破り、アキバ制覇の勲章を実力で横取りしたメンツ潰しが、”とんとことん”の終わりを告げる火種となるのか。
 抑えきれない純情がその手につかんだ栄光の御旗が、世の中ひっくり返す力をなごみに与えるのか。
 全く先が読めない展開で、オリジナルアニメの醍醐味をゲップが出るほど味わっている。
 取り立て屋無惨にぶっ殺したの、作品盛り上げた優秀な道化だろうがギャグ補正引っ剥がして殺す気合を上手く焼き付けて、先行き不明の面白さを際立たせてくれたな……色んな意味で、人の殺し方が巧いアニメだ……。

 踏まれた頭を跳ね上げて、堂々吠えた女意気、桜と咲くか嵐に散るか、一天地六賽の目次第。
 次回も、大変楽しみです。