イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

NieR:Automata Ver1.1a:第2話『city e[S]cape』感想

 謎が謎を呼ぶ鋼鉄の御伽噺、不確かな世界の輪郭をザラリとなぞるニーアアニメ第2話である。
 前半ほぼ丸々セリフ無し、敵であるはずの機械生命体の寡黙なヒューマニティをどっしり追いかける構成に、地球のアンドロイドたちの苦況と赤い血、全てを蹂躙するヨルハ部隊の闘争能力。
 描かれたピースは個別に鋭く研ぎ澄まされていて、しかしそれぞれの繋がりは見えきらず……確かに何かが蠢いている予感(あるいは期待)がじっとり熱い。
 なかなか魅力的な不親切が元気に踊っていて、アニメ初見の身の上をラッキーに思っている自分がいる。
 こういうお話にきりきり舞いさせられるのは、正直嫌いではないッ!!

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第2話より引用

 というわけでアニメのタイムテーブルを少しかき回して、自分の興味と重要なトピック(だと感じる部分)に足場を置いて、エピソードを自分なり咀嚼していく。
 前回錆びついた廃墟に命と魂を燃やしていた2Bと9Sであるが、彼らは月面を根拠地とするヨルハ部隊に属し、記憶をサルベージされて幾度も戦場に投下される……喪服の死天使のような存在だと解ってきた。
 エイリアンの襲来、彼らが生み出した機械生命体の優勢を跳ね返す手段はアンドロイド側には薄く、そもそも”人間”の存在が不在なる中心としてしか描かれていない不穏当な状況の中で、盲目の暴力性は強烈だ。
 地球のアンドロイドがAKでちまちまレジスタンスして、機械生命共相手に死んだり殺したり繰り返す上から、超未来装備でスタイリッシュに圧倒!
 ”主役”に相応しい、爽快感のある暴れっぷりだ。

 しかしその装いや振る舞いには重苦しい雰囲気がつきまとい、人はいなくとも自然が息づく地球の総天然色を見ていると、なおさらその不自由さ、不自然さは際立つ。
 戦闘部隊は眼を、通信部隊は口を。
 それぞれの責務を果たすのに大事だろう部分を覆い隠す衣装が、特別さの象徴として選び取られているのは、なかなか趣味の悪い背景を想像させるには十分なフェティシズムだ。
 ”人間”を看板に掲げて、死んでも終わらない永遠闘争に身を置いているヨルハ部隊は、戦う以外能がないように思える。
 なんらか創造的な……”人間らしい”行いは軒並み機械生命サイドにあって、死の国たる月面のモノトーンの中でも、血なまぐさいフルカラーのレジスタンス活動の中でも、銃弾ぶっ放す以上の実りは、アンドロイドには見られない。
 ”人間”を模して作られ、”人間”を守るために戦い死んでいく機械である以上、そんなモノは不要なのかもしれないが、そんな連中で埋め尽くされている世界はもはやヴァルハラや修羅界と同じに思える。

 戦って殺す以外の何かが、この世界の住人たちに残されているのか。
 封じられた眼で何かを見つけ、封じられた口で湧き上がる思いを言葉にする自由が、覆いを外された司令ユニットにはあるのか。
 あるいは作中唯一、覆われているからこそその美しい瞳を、長いまつげと澄んだ瞳の色を……そこに確かに宿る、誰かに生きることとと死ぬことを握り込まれている現状への怒りを宿す2Bが、何を切り裂いていくのか。
 読めない部分は山ほどあるが、そこら辺が眼目なのかなと個人的には思う。

 

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第2話より引用

 死天使が地上のくず鉄を蹂躙する爽快感の、前座として扱われているレジスタンス達は、赤い血を流し個性のある服を来て、表情も豊かに変わる。
 まるで”人間”みたいだが、機械生命体の攻撃にワクチンプログラムを塗布しなければいけないということは、彼らも機械の擬人であり電子の害毒に存在を脅かされる、鋼鉄の定めから自由ってわけではないらしい。
 機械生命体達が植えた花を踏みにじり、しょっぼい小火器でパンパン襲いかかってはぶっ殺される地球原住機械達は、ヨルハ部隊より人間的で、つまりは特別ではなく、しかし同じく闘争以外の日常を持たない存在として描かれているように感じる。
 彼らが何らか”日常”を営んでいて、それをぶっ殺すオートマティックな殺戮者として機械生命が描かれるのであれば、アンドロイドが奉じる”人間”を無邪気に金看板と信じて、正義と悪との戦いって構図を思い浮かべることも出来た。

 しかし生命感を切り捨てたモノクロの月面とは別の角度から、殺し殺されている時間と、その間の補給期間しか描かれていない地球は、静かに”人間性”ってのを見てる側から遠ざける作りな気がする。
 機械生命体が何を思い、何に目覚め、何を願っていたかが(おそらく意図して)描かれていないので、確たることは言えないけども、ぶっ殺すかぶっ殺されるかしか価値判断のスイッチがない、人間の形をし人間の言葉を喋るた修羅たちからは、”人間性”なるものの穏やかな実りはあまり感じられない。
 ここら辺、ヨルハ部隊と月面の委員会に思う所ありそうな、リリィさんの物語を今後彫り込んでいく中で、見え方が変わっていく部分……になるのかなぁ?
 今回の接触がどう転がっていくかで、”人間”側の内側に光があたって色々見えてくると、面白いなと思う。

 

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第2話より引用

 さて他方、人間の顔はしてねぇわ言葉は発しないわ、”人間性”から遠く思えるデザインの”敵”は殺し殺される宿命から外れて知識のアーカイブを掘り下げ、花とのふれあいの中で感情マトリックスを起動させて赤い瞳の色を変え、同志とともに命を育む歩みを重ねていた。
 彼らに”心”ってのがあるか否か、その真実に触れられない以上外部に現れた行いから判断するしかないのだが、それがかつてあった”人間”の模倣(被造物の宿命たるミメーシス)でしかないのか、それとも個別で特別な何かが湧き上がっての異常行動なのか、現状で答えは出ない。
 しかしヨルハ部隊もレジスタンスも、花を踏みにじったり超爆撃でふっとばしたりすることしかしない中で、定められた役割からはみ出して自分だけの何かをしようと歩いている様子からは、ギシギシ鉄色に軋む”人間性”を勝手に受け取ってしまう。

 なぜ額に傷を刻んだロボットは、興味が赴くままに手を伸ばした花が”死んだ”ことで、致命的なエラーを……感情の芽生えを手に入れたのか。
 それをくず鉄が語ることはないし、表情から憶測しそうにも人形ならぬ彼らの心情(なるものが、プログラムの中にあるとして)は推測できない。
 それでもなんらか、貴いものがそこには残っているのだと考えたくなるベタついた郷愁こそが、ヒューマニティの中心核か。
 遥かなる遠未来、その製造目的や構成要素……あるいは形やコミュニケーション方法が原・人間に近いか否かではなく、行動を規定する根源的なプログラムにこそ”人間”を定める時代にあっては、『何を為すか』にこそ人の在り方が宿る……のかもしれない。

 ある種の肌触りとして、このお話からは人間性(の総和としての”人間”)を解体・再定義していく冷徹な視線を感じるし、人を模して人を守る機械と、人以外に作られて人に漸近していく機械を真ん中においているのも、その異質性でもってHumanityの表面に張り付いた当たり前のサビを、引っ剥がす意図を勝手に見つけてもいる。
 アンドロイドを主題に取ったお話ってのは大概そこをこそえぐり取るものだろうし、ヨルハ部隊のキレたデザインと、盲目の死天使が巻き込まれている巨大過ぎる戦争機械の炎は、謎めいた質感に時折、不可思議な生臭さで”人間”を感じさせる。
 ヒトに見えれば人なのか。
 ヒトであるから人なのか。
 鋼鉄の永遠闘争を追いかける中で、そこら辺に熱く鋭い刃がぶっ刺さってくれると、自分好みで大変嬉しい。

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第2話より引用

 童話めいたナレーションと描線で描かれる、不思議な鋼鉄の心理起源。
 抽象化された機械の神話には現実が重なり合って、向こう傷のポンコツが育んだものがただの徒花ではなく、なにか決定的なものを変えているかのような予感を、確かに与えてくる。
 彼の同志も彼自身も、アンドロイドと赤い瞳の戦闘機械がぶん回す闘争に巻き込まれくず鉄に変わっていくが、しかしその歩みをどっしり追いかける今回、彼が慈悲とか知恵とか友愛とか……”人間”がその証として大事にしてきたものに目覚め、追いかける様子が積み重なる。
 そういうモノに目もくれず、意思疎通不能な”人類の敵”として燃やす以外の歩みを現状、主役たちは得ていない。

 んじゃあ殺戮の赤から疑念の黄色、死に際に奇妙な緑へと、信号機のように瞳の色を変えてきた機械生命体は何を見つけたのか。
 それは誰に継がれ、何を変えていくのか。
 世界の総体をなかなか掴ませてくれない、懐の深い話運びは答えを簡単には教えてくれないが、まーそういう所を探って暴き、ハラワタの奥まで掘り下げて描く話なんだろうな、という予感はある。
 銃弾に穴だらけにされた誰かを慕い、花を共に育てる”日常”を共有していた機械生命も、闘争の宿命に砕かれて終わった。
 この世界ではそういう事がずっと繰り返されているのか、最後に写った謎の集団がその突破口になるのか。
 謎は多く、期待も多い。

 何が悲しくて敵も味方も、延々ぶっ殺し合いしてなきゃいけないのか。
 アクションゲームの存在理由をひっくり返すような問だけども、今回描かれた鋼鉄の聖人譚は、自然そういう疑問を育んでくる。
 理由もわからず死地に追いやられ、そこで芽生えた微かな誇りも、バックアップデータの奔流に押し流されていく、不自由で不透明(だと、僕には感じられる)な2Bの世界。
 刃と銃弾と爆炎で、機械に芽生えた”何か”を遠ざける彼女の物語がどこに転がり、何を暴くか。
 次回も大変楽しみだ。