イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第3話『ぶつかり合わないと』感想

 穏やかに熱く転がっていく少年たちの思いの記録、第3話は先輩ユニットと仲良くなろうッ!
 2話かけてじっくり煮込んだお話の足場が、稀代のオモシロバカ・ニ条瑛士郎という爆弾を得て一気に高みに登っていくような、良いノリと勢いのあるエピソードでした。
 クールな真顔でメチャクチャアホいこと吐かす瑛士郎パイセンの、いつの間にか覚めていた心に熱い火を灯す可愛い後輩。
 前回PROTSTARちゃんの出会いを可愛く演出したのが良く効いてて、出会ったばかりで既になかよし三人組と、縁が深いからこそぶつかり合う年上の二人(を穏やかに見守る二十歳)の対比が、なかなかいい感じでした。
 ぼんやり系主人公明良くんが憧れと邂逅(であ)ってしまう瞬間もいい塩梅で描かれ、ややスロースタートだったお話が暖気を終え、独自の強みをブン回してきた実感を得ることが出来ました。
 このアニメ、もしかしたら”龍”かもしれん……。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第3話より引用

 というわけで初手濃いめのレトロリバイバル作画で、劇中作がバリバリ動いて度肝を抜かれる。
 この段階だと『おー、リッチな時間と作画の使い方してんなぁ……』くらいの感じだったけども、後に人生に大事なことは全部”クロスファイアー”から学んだ明良くんが、瑛士郎パイセンの心を動かす展開を考えると、ここでそういう力を持った作品が具体的にどんな手触りか、ちゃんと描いておいたのは妙手だったと思う。
 リキ入った熱い展開には、創作物を通じて良く知らねぇ先輩の人生事情に身を乗り出すための説得力がノッてたし、普段と異質なアニメがゴリッと自己主張することで、いい感じの奥行きがお話の中に生まれてもいた。
 体格も種族もバラバラなチームが、時にぶつかりあいながら信頼を育み熱く未来をつかんでいく様子は、この後展開される物語の預言でもあるんだろうなぁ……。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第3話より引用

 というわけで動き出す新しい日常……靴箱の消えかけた名札が、”アイドル”やってない明良くんの現状を密かに語ってる所とか、めっちゃこのアニメらしい表現ね。
 ツンツン当たりの厳しい先輩に距離を感じつつ、裸の付き合いで絆を深めた三人は基本ひとかたまり、おそるおそる新しい環境になじんでいく。
 瑛士郎くんと大毅くんが常時バチバチやってるので、基本棘が少なく朗らかに過ごしてる主役三人と良い対比になって、今回初お目見えとなる”LEGIT”のキャラクター性が良く見えるのは、巧い構図だなと思う。
 この前であったばかりの三色信号機がキャッキャ仲良くやってる姿は大変微笑ましいし、そうやってなにかが変わって動き出していく様子には、パワフルなうねりが確かにある。

 良くわかんない方い感じから、そろりそろりと足を踏み入れて中身が分かっていく。
 第2話までもそういう空気の変わり方、煮込まれ方の肌感覚を切り取っていくのが巧いアニメだったが、ストリート感覚を前に出して売ってるLEGITの、本気だからこそぶつかり合う雰囲気にビビる新人も、やはり上手く描かれていた。
 僕らも彼らと同じ顔でおそるおそる、新キャラの個性や関係性を覗き込みながら手を伸ばしていくわけで、こういう呼吸を適度に測って、丁寧に作ってくれるのは大変嬉しい。

 そんな明良くん達の歩みに乗っかる形で、怖い先輩の素顔を覗き込んでみたら……想像よりもバカだったッ!
 『おっす、むっつり理論派効率主義です。クールに生きてます』って顔と態度で主張しておいて、『目指すはアイドル大統領!』はオモシロすぎるだろ……しかも真顔で。
 瑛士郎くんは自分がバカだと気づいていないタイプのバカで、だからこそバカやるのに迷いがないというか、一切嘘がつけない大真面目な可愛さがある……ってのを、彼と出逢うこのエピソードでしっかり教えてくれたのは嬉しい。
 俺は好きだなぁ……こういうタイプのバカ(バカって言いすぎで、ファンに怒られるんじゃないかと思い始めた)
 先輩が思わず見せたバカっぷりに、ヒソヒソ内緒話する明良くんと千紘くん、すっかり仲良くなったねぇ……。

 ”アイドル”まだ良く分かんねぇけど新しい友達と過ごす時間は楽しくなってきて、明良くんも抑えてたバカが表に出始める。
 急に男児アニメのリキ入った早口ブッカマして、『人生で大事なことは、全部クロスファイアーで学びました!』って顔しだすの、あんまりに強火で煮込まれたオタク過ぎて最高。
 万里くんもオタク特有の共鳴暴れさせて、早口トークに乗っかってる場合じゃないでしょッ!!!
 こういう隙だらけの姿勢を思わず出しちゃうくらいには、三人の距離感があのお風呂でしっかり縮まって、一緒にいる時間が楽しくなってきてんだなぁ……と思える場面で、大変良かったです。
 あと創作物を人生の教科書と勘違いしている頭のオカシイスタンスには、オタクとして大変共感するものがあり彼らが好きになった。
 そういう”狂”こそが、面白くもねぇ灰色の川を渡っていく唯一の舵になってくれる瞬間が、必ずあるわけよ……。

 

 

画像は”UniteUp!”第3話より引用

 先輩後輩の垣根を超え、クソバカ共が魂を通い合わせた後は、男が男にたった一人、思い出を背負って向き合う夜が来る。
 芸事と人生の先輩として色々背負うものがある瑛士郎先輩の重荷を、明良くんの無邪気なバカが上手くぶっ壊したことで、自分がどこから来てどこへ行くのか思い返せる展開は、主役たちが先輩から学ぶだけでなく、新入りが先輩に何かを与えられる可能性を、上手く燃やしていた。
 今後も事務所を一つの家として、個性バラバラ性格真逆だからこその面白さを繋げていくだろうお話において、一方通行な傾斜が関係性に乗っかってると、いかさま風通しよくない。
 なので新入り共との出会いが、先輩ユニットがぶち当たった壁を壊す発破になってる展開は凄く良かった。

 そしてその勢いを殺さず、バキバキにエモーショナルな思い出ボムで叩きつけるのも素晴らしい。
 やっぱねぇ……人間と人間が激しくぶつかり合う裏には、人生を捻じ曲げてしまうような特別で巨大な”質量”との出会いがあってほしくて、それが確かに高尾大毅と二条瑛士郎のあいだにあったのだと、理解らせてくれる場面があるのは良い。
 ガラス越しトロフィーを見つめるだけ、天才の努力も知らず羨んでいた時には大毅の顔がよく見えず、この孤独な夜の果てでお互いの本気に向き合った時、初めて顔が見えてくる書き方とか、すごーく良い。

 街の明かりはちょっと幻想的なぼやけ方をしてて、それだけ特別な輝きがこの瞬間から動きだしたこと……それが今も続いていたのに、賢くなった瑛士郎は忘れてしまっていたことを、上手く語ってもいる。
 ウィンドーに反射するあいつの背中に、オレの本気を否定しなかったその瞳に、惹かれたからこそ”アイドル”やっていた。
 遠くから見つめていたはずの背中が横に並んで、ようやくここまで来た。
 そのはずだったのに、忘れていた。

 

 

画像は”UniteUp!”第3話より引用

 そんな二人の距離感が! 時を経て再び同じ夜に燃え上がっていくーーッ!!
 回想からシームレスに現実に帰還し、瑛士郎が大人びた賢さを投げ捨てて大毅に歩み寄る時、窓辺には何が反射しているのか。
 ”人気のない夜”という特別な時間だけが生み出す、ウィンドーの鏡を凄く上手く活用して、青年たちのナイーブな心と関係をしっかり絵にしているのが素晴らしい。
 なかなか素直になれず答えも見えない、間違いだらけの実像を追い抜くように、鏡に写った心と思い出がお互いを見つめ合って、本当に大事なもの、置き去りにしていた気持ちと絆が繋がっていく瞬間、世界を彩る美しい光。
 これよ……俺ァこういうのが見たいんよアニメでッ!!!

 アニメに夢中になるバカな後輩に、教えられた幼くバカな原点。
 そこに立ち返ることで、大毅はあの時から何も変わらず不器用なまま真っすぐ進んでいたこと、それを見つめて運命が始まったことを、瑛士郎は思い出す。
 根本的にバカなんだから、賢くバランスがどーの効率がこーのほざいてるより、及第点以上の完璧を目指して突っ走るバカに戻ったほうが、良い結果出るわけでねぇ……。
 そういう答えが、思い出の中にこそあって大毅がそこで一人、一足先に大人になりかけてたダチを待ってる”夜”にあるのが、大変良い。
 こういうロマンティックの使い方、やっぱ好きだな……。

 

 

画像は”UniteUp!”第3話より引用

 不器用にぶつかる2つの魂をしっかり描いたからこそ、それを少し離れた所で見守ってる年上の兄貴分も、上手く本気だからこその緊張を抜いてくれる3つ目のユニットの顔も見えてくる。
 楓雅さんのどっしり構えて、若造共が好き勝手暴れまわった後まとめに来る感じ、頼もしさと賢さがあって好きだなぁ……。
 幼い友達感覚のPROTSTAR、バチバチのストリート感で魅せるLEGITと来てJAXX/JAXXは肩の力が程よく抜けた、個性が元気に混ざり合う感じのユニット。
 あえてのイタズラでピリ付きを壊して、晴れ舞台に全力で挑めるよう気を使ってくれてる感じは、ユニットの空気と人間力をしっかり教えてくれる。
 この楽翔くんの見せ場は、新入りがなんとも出来ない張り詰めた空気……それを生み出すに足りる”本気”がしっかり書けてるからこそ活きるシーンで、作中作った物語資源を活用していると感じた。
 ”クロスファイアー”の使い方もそうだけど、要素要素が孤立して存在するのではなく、響き合ってお話を有機的に分厚くしていくよう転がしていく手際は、このアニメの武器かもしれない。

 

画像は”UniteUp!”第3話より引用

 それはLEGITのライブにも言えて、及第点を越えた完璧を目指した先にある独自の表現をステージに焼きつけるだけで終わらず、その熱量が明良くんに憧れを教える所まで描いていた。
 ダルい感じをスタイリッシュに踊り切り、低く構えた路上の立ち姿を舞台に乗っけるLEGITの存在感は、なかなかに独特でいい。
 私生活だけでなく、表現者としても個性が際立ってちゃんと届くのは、初登場回の挨拶としては大事なことよね。

 フツーのアイドルアニメなら、主役が物語を突き進んでいくモチベーションはもっと早い段階で与えるもんなんだろう。
 けど明確に瞳の中に炎が宿るのがこのタイミングってのは、やっぱ独特な呼吸持ってるよね、このアニメ。
 そのゆったり丁寧な筆運びが何を描けるかは、前回・前々回積み上げた物語資源をイイイ感じに生かして、主役が変わっていく様子、動いた先変化していく世界を切り取れているこのエピソードからも、強く感じることが出来る。

 憧れと出会い、約束をサイン用紙に刻んでもらった明良くんが、どんな未来と出会っていくのか。
 それがとても楽しみになる、良い第3話でした。
 イグニッションを早くかけすぎず、じっくり世界と人間と物語を煮込んでからギアを上げていく語り口を、最大限活かして先輩の顔を彫り込む。
 そういう手際を確認する回にもなってて、次回以降の話運びに期待が膨らみます。
 本気すぎるバカと同じ屋根の下、”アイドル”やってく少年の物語の続き……次回も大変楽しみです。