イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

D4DJ All Mix:第4話『ハルノアラシ』感想

 桜舞う季節……吹き荒れる嵐は夜の扉を叩くのか!? という、輪舞曲メインのAllMIx第4話。
 ひな祭りライブを意味深に見つめていた葵くんが望んだのは、会員制クラブ”アルターエゴ”の開放。
 伝統と向き合い自分なりにもがく歩みの中で、”輪舞曲”が結構な仲良しオモシロ集団であることが解って良かったです。
 ナイトクラブという、ともすれば明るい地域振興から”なかったこと”にされかねない場所も街の大事な一部であり、時代に応じた変化を積み重ねつつ自分だけの伝統と矜持を積み上げてきたとまとめてきたのは、なかなか面白い視点だった。
 成人メンバーで構成されてる”輪舞曲”が、DJ文化のアダルトな一面を背負う以上、その閉鎖性とか扱いの難しさをちゃんと扱うこと、自分たちなりの答えを出すことは大事だったと思うし、そこをしっかりやった回だったと思います。

 

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第4話より引用

 このアニメ、冒頭季節感強め叙情性濃いめで始めて、真ん中をポップに風通しよく駆け抜けてクライマックスでまとめる……みたいな構成が多いわけだが、今回もそんな感じ。
 春の嵐の予感を高めておいて、蓋を開けてみたらちょにおニ号が暴れ倒し、いつものステージが使えなくなって、前々から考えていたアルターエゴ解放作戦のスイッチが押される……という流れ。
 野良猫と同レベルの胡桃ちゃん、とっても可愛いねぇ……。

 メインメンバーが作る輪の外側にいるミチルちゃんをどう使ってくるか、初見で彼女を気に入ったアニメ勢としては結構気になっていたのだが、同接9000人超のバズ力を活かし、招き猫作戦を世論と繋ぐメディアを担当してきたのは、凄く面白かった。
 新聞やテレビより機動性があり、ハンディにダイレクトにローカルな話題を提供できる個人チャンネルは、このアニメが書いてるものとかみ合わせが良い。
 ホワイトボードと見せかけてデジタルサイネージな会議室の機材とか、土っぽい匂いを大事にしつつも描いているのは、あくまで近未来と接続された現代だもんねぇ。
 話の真ん中で描かれているものがどういう波紋を生み出しているか確認する飢えでも、外部の視点があるってのは大事だと思うので、そこを元気で可愛いメディアスターが担当するのはなかなか良いな、と思う。

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第4話より引用

  かくしてより開かれた可能性に向けて、輪舞曲の頑張り道中が描かれるわけだが……おかしい、なんでピキピキのセンターの可愛い所が大公開されとるんだッ!
 いや、仲間といると逆にこういう部分見せないわけで、大変ありがたいわけですが……。
 愛莉さんとの古い縁といい、感じやすくセンチメンタルな椿の人柄をボーカル修行に重ねて彫り込みつつ、All Mixらしい横幅で色々書いてくれたのは、なかなか良かった。

 つーか”授業参観”にウキウキな緋彩さんといい、もっと張り詰めたバキバキ世界観系ユニットかと思ってたけど、良い意味で裏切られたな。
 All Mixは肩肘張らないリラックスした空気と、とにかくハッピーで前向きな明るさを大事に転がしてるアニメだと思うので、”輪舞曲”もそういう部分を主に照らして描写されてる……つう話なのかもしれない。
 ここら辺はアプリで展開されてる(だろう)物語と相補関係にあって、メインディッシュをあっちで頂いて、『アニメでは贅沢で甘く有り難いデザートを、たらふく喰わせてファンを満足させるぜ!』という構成なのかもしれない。
 この砕けた表情も”輪舞曲”の素顔であり、色んな顔を持てる、見せれる関係性がユニットにあると分かったのは、大変良かった。
 ぶっちゃけ顔で惹かれてた椿さんの、結構ぽよぽよ揺れ動いてる面倒くさそうな(褒め言葉)内面もたっぷり堪能できたし。

 

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第4話より引用

 『葵クン……そのヘッドフォンは†世界観†宿りすぎでしょ……』と小物にビビったりしつつ、輪舞曲はミチルチャンネルを活用して世論に変革を問う。
 閉ざされていた門を開け、新しい風を背に受けて高く飛ぼうとするその思いを、”伝統”側も無碍にはしない。
 というか”伝統”は最初からこの形だったわけではなく、キャバレーからディスコ、クラブへと時代に応じ、様々な調整を重ねて街の一部として、生きた施設としてその形を変化させてきた。
 葵が望んだアルターエゴの変化は、彼女がある意味怯えていた”伝統”が既に果たしていた、自然な流れでもあったのだ。

 この落着のさせ方は、どうしても『明るい地域振興』から切り離されてしまいがちな街の影の部分にも、地域とともに進んできた歴史があり、生物として時代の空気を呼吸し、革新を繰り返して生き延びてきたプライドがあった。
 華やかで享楽的と切り捨てられてしまいがちな部分も、人の営み全体を見ればあって当然自然の営みであって、DJ文化が間違いなくそういう要素を燃料にして前に進んでいると考えるからこそ、”輪舞曲”はクラブのレジデントDJを担当して、作品の主題の大事な部分を自分たちのドラマとして、体現しているのだと思う。
 その業態から『良く分かんなくて怖そう……だから面白そう!』という、箱の中の秘密だったアルターエゴは風営法とか風紀とかいろんな部分を調整して、明るい場所へと扉を開ける。
 その決断は”伝統”の魅力を損なうのではなく、若い世代の志をまっすぐ受け止め、そこから生まれる風に乗っかって自分たちを未来へと羽ばたかせていく、前向きな野心に満ちている。
 そういう風通しと明るさを、ナイトクラブという場所も持ってて良いし、持っているし、もっているべきなんだ! てのは、僕には凄く良いメッセージだなと感じられた。

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第4話より引用

 アルターエゴと”輪舞曲”が求めた未来のカタチは、新曲”ARCANA”にしっかり宿り、フロアをノンアルコールで熱狂させていく。
 話の真ん中ではふんわり面白もちもち集団としてゆるーく描かれていたが、流石にステージではバッチリキメて、自分たちが作るべき舞台を演じきっていたのは素晴らしい。
 椿さんが想定以上に歌に思いをたっぷり載せて観客を引き込む系の歌い方をするので、大変ドキドキしました。
 こういうスタイルだと感受性豊かにグラグラ揺れてたほうが、アーティストとしての伸び代あるだろうなー、という納得もあったね。
 個人の性格が、ユニットの方向性、雇用するハコが求める世界観と体験と上手く重なってんだろうな、みたいな。
 ステージ見ただけでは何も言えないのかもしれないけど、椿さんが輪舞曲やアルターエゴと出会えたこと、彼女のユニットとホームが青柳椿というシンガーと出会えたことは、お互いにとって相当幸運で幸福なことだったんだろうなと、勝手に感じてしまった。
 そういう感慨を、”輪舞曲”メイン回で受け取れたのはとても良かった。

 

 というわけで4月の嵐は誰も傷つけることなく、自分たちの背中を支える”伝統”の分厚さと、貪欲に未来を求める力強さへ目を拓かせたのでした……というエピソードでした。
 ”地域”というAll Mixのメインテーマと正直食い合わせ悪そうだった”輪舞曲”を真ん中に据えて、どういうお話編んでくるか楽しみだったんですが、アルターエゴが地域の一角として歩んできた歴史と絡めて、時代の空気を呼吸して変わりながら生きる力でまとめてきたのは、意外かつ納得でした。
 あまり光が当たらない部分ながら、確かに街と人間の真実を背負っている施設に向き合ったことで、”地域振興”つうテーマもより風通し良くなった気がする。
 この心地よい春の風を受けて、来週はMerm4id回。
 どんだけ陽気なお気楽地獄が暴れ倒すか、大変楽しみであります。