イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第9話『翔ばないと』感想

  令和に轟く新たなアイドル交響曲、第9話は待望のJAXX/JAXX回!!!!! ……と、”!”異様に増やすテンションではもちろんなく、このお話らしい抑えめな筆致で丁寧に、シェアハウスの生活を追いかけつつ、ユニット最年長・香椎一澄の鬱屈した煮えきらなさにどっしり向き合う回となった。
 この内向的な雰囲気俺は好きなんだが、世間様に新たにアピールするには”尖り”が足りないとも感じられて、一体どういうポジションのアニメなのか、見てて時折迷う。
 各ユニット生身の演者さんのファンになっていたり、アニメが動き出す前にプロジェクトに気づいたりして、既に共犯者になっている人たちが『ああ、私達の好きな男の子たちはこういう子だよね。こういう事があったんだね』と納得し確認するアニメとしては良い味わいなんだろうけど、未見の人をグッと掴んで理解らせるには押しが弱い感じが、今回のエピソードにも正直漂う。
 BGM抑えめに、爽やかな街の情景の中生っぽく泳いでいく手触りを生かして、もう半歩キャラの体温に見ている側を近づけてくれる押し込みがあると、なお嬉しかったかな?
 ここら辺話数ごとにブレがある印象で、第3話とか第7話とかは雰囲気の良さとお話の盛り上がりがしっかり噛み合って、欲しい所にタマ来てた。
 残り3話、ビシッと僕のストライクゾーンに入れて終わってくれるか、なかなか予断を許さない感じです。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第9話より引用

 というわけで堂々全国ツアーの看板背負うまでに成長したJAXX/JAXX、その修行時代を追いかける今回。
 とにかく一澄の周辺に漂う空気が湿ってて重いッ!
 年齢差のあるメンバーが一箇所に集い、お互いの個性をぶつけながら味を出していくユニットとして、年少組にフォーカスしたLEGITとは別の角度から彫りに行った形……かな?
 背丈も人生の経験値もデカい分余計なものが見えてしまって、足を止めて考え過ぎる年上の苦しさを表す、屈折して重たい感じの画面づくりはとても良かった。
 この重荷を吹き飛ばすのが新加入の楽翔くんになるわけで、既にある程度出来上がった四人の関係性に、いい意味で空気読まずに割り込んでかき回してくるトリックスターとの化学反応が、なかなかいい塩梅ではあった。
 ここまでのJAXX/JAXX先輩は既に”五人”での関係が仕上がった後だったので、それが生まれた瞬間どういう感じだったのか、事務所を追い出され出口も見えず八方塞がりな重たさと、それを打ち破る”バンド”という可能性を教える過去回である。

 

 

画像は”UniteUp!”第9話より引用

 未来を見据えた……というには鬱屈が強いバイト探しを、仲間に隠せる気遣いがあるほど大人でもなく、がむしゃらに夢を追えるほど若くもなく。
 ひどく半端な所に自分を置いていた一澄は、”新参者”である楽翔との対話を通じてバンドアイドルにもう一度夢を賭ける決意を固める。
 明暗とその象徴性がクッキリした画作りとか大変良い感じなんだが、決断のシーンはダイレクトにモノローグさせるよりも絵の強さを信じて、もうちょい汲み取らせる見せ方でも良かったかなー、という感じ。
 一澄がたどり着いた答えを全部口で言ってしまうより、作中の描写から見ているものが自力で感じ取る(ように、的確な補助線を静かに引く)方が、アニメで初めてJAXX/JAXXに、香椎一澄に出会う立場としては、彼のことをより分かった気になれる。
 ここら辺は好みの問題なんだが、自分はこのアニメの落ち着いて内省的な所が好きで、地味な描写から”コレ!”って要素を拾い上げて食らいついていく手応えを楽しんでいる。
 第3話における瑛士郎さんの、真っ直ぐすぎるバカっぷりとかね。

 ので、正直今回は”コレ”!”って手がかりが薄めで、香椎一澄とJAXX/JAXXのコトイマイチ分かんないな……と思ってたら、最後の最後でしっかり解らされた。
 とにかく曲が良かった。
  masaさんのボーカルの強さと、ロックバンドとしてのサウンドの良さに支えられて、良いステージをするから二年間で這い上がったJAXX/JAXXの力強さを、問答無用で叩きつけられるラストだった。
 こういう形でユニットの物語に説得力が出せるのは、仮想の物語と現実の人物が重なり合って存在している、UniteUPプロジェクト特有の強みだと思う。

 

 というわけで香椎一澄二年前の鬱屈を軸に、JAXX/JAXXを描くエピソードでした。
 ぶっちゃけ『もうちょっと早くやっておけや!』とは思うし、もう半歩見ている側(つうか僕)を引き寄せる力強さが欲しくもあるが、今まさに出会い関係を作っているPROTOSTARとも、ワイルドな熱量で前に進んでいるLEGITとも違う、同じ屋根の下互いを引っ張りながら進んでいくJAXX/JAXXの”空気”は、確認できるエピソードでした。
 制作上のアレソレもあって、作品が奏でているビートに上手くノリきれてない感覚もありますが、さてはて残りの後半戦どうなるか。
 楽しみですね。