イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ガールズバンドクライ:第7話『名前をつけてやる』感想ツイートまとめ

 上諏訪イイトコ一度はおいで、名産品は蕎麦とロックと巨大感情!
 ガールズバンドクライ 第7話である。

 智ちゃんとルパを加え、五人になった名前のないバンド。
 諏訪への遠征を通じてお互いの暗い過去を暴いたり、桃香さんが抱え込んでた爆弾が破裂したり、昔の女に怯えてみたり、それに背中を押されて全力で飛び出してみたり。
 『まー、お前は”そう”だよな井芹仁菜…』と、すばるちゃんとシンクロして『あちゃー』言いつつも納得の爆弾発言を最後に投げ込みつつ、色々あった長野回だった。
 最年長の強キャラ・ルパがニコニコ不動の安定感を示してくれるので、桃香さんが大人の椅子から織りれるようになったなぁ…。

 

 というわけで、ファイブピースバンド”トゲアリトゲナシ”初披露の上諏訪ライブであり、ここまでロック赤ちゃんの面倒をよく見てくれた桃香さん脱退の大ピンチである。
 仁菜の受験生ドロップアウトは…まぁレールの上に乗っかった生き方が出来ない生物であることは既に知っているので、来るべき時瞬間が当然来た(わりとタイミング的には最悪)という感じではある。
 何かが壊れて何かが生まれ、何かが終わって何かが始まる、ゴールとスタートが背中合わさせ張り付いたような矛盾超越の瞬間にこそ、ロックンロールは鳴り響く。
 常時転がり続ける未来がどっちに行くか、さっぱり見えない気持ちよさは、オリジナルアニメの醍醐味だ。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 かくして冒頭から、仁菜と桃香の冷戦状態が切り取られていく。
 一人だけ色合いの違う場所に佇み、何かを抱え込んだ風情の桃香に、仁菜は遠くから見つめつつ踏み込めない。
 相変わらず物理的に真ん中に立ち続けるすばるちゃん(とヘビくん)を潤滑油にしつつ、新入り達とかなりいい感じの空気を作れているのとは、好対照な構図だと言える。

 親が投げ捨てた熊本の情動爆弾を、桃香さんが受け入れ肯定しロックを教えてくれたからこそ、この物語は始まり駆動してきた。
 しかし桃香さん自身も、挫折と屈折を抱え込んだ青春の主役であり、そんな自分と向き合う頃合いが来たのだ。

 かつて治安最悪の川崎水と一緒に、ぶっかけられた真っ直ぐな情熱。
 『私はお前の歌に救われてしまったのだから、永遠に輝く神様で居続けろ』という仁菜の願いは、傷つき間違える生身の人間にとっては純粋さの凶器であり、そんな青春ナイフを見失ってしまったから、桃香さんは一度バンドを辞めた。
 それでも燃え盛る何かを井芹仁菜に見出したから、故郷へ向かう足を止めて川崎にしがみついて、仲間が増えた今またグダグダと、自分の歌を信じきれず足を止めようとしている。
 今回はその逡巡を遠目に睨みつつ、進み出せなかった仁菜が諏訪湖の花火に祝福されて、黒い棘全開で思いっきり飛び出すまでのエピソードである。

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 飛びたいと願うのは縛られているからこそで、バンドに集った皆が過去を抱えつつ、どこかを目指して走っている。
 ドーナツの甘い壁で姉と距離を取ると思いきや、まさかの膝枕ポジションまで一気に詰めてきた”妹”井芹仁菜の立ち回り…やはり全く油断できない。
 甘やかしつつも言うべきことは言う、井芹姉の距離感は大変いい感じで、メンバーの柔らかい場所を掘り下げるための絵筆として、しっかり機能している。
 加入まで一話で一気に駆け抜けつつ、それぞれの原点と傷をドタバタ諏訪旅行で距離縮めて開示していく手際と合わせて、知りたかったモノが見えてくる回だ。

 本来なら抱きしめてもらえるはずの相手に、体面重視で投げ捨てられた。
 いじめと不登校を巡る仁菜の傷には、カリスマ教師である父への反発と不満が膿んでいて、そんな父権への反逆が彼女をロックをやる理由の一つとして、自分の中にスポッとハマった。
 自分を大事にしてくれない保護者から切り離されたいのに、結局紐付きの立場に自分を置くしかなくて、黒い棘ばかりが体内に貯まる日々を、ロックンロールはぶっ壊してくれた。
 だから、今度は自分がロックに成る。

 至極当然の思考回路であり、これはそれぞれ個別の鬱屈を抱えてバンドになった、他のメンバーにも共通する。
 ルパは両親の死、智ちゃんは最悪な不倫目撃。
 ”親”なる存在に置き去りにされたり傷つけられたりしながら、家から遠い場所に流れ着いた少女たちは、それぞれ別々の痛みを抱えたまま運命に惹かれ合い、バンドになっていく。
 すばるちゃんを間に挟まない車内で、姉の温もりと冷たさで刺激されたナイーブな感情を真っ直ぐ突きつけ、智ちゃんにシリアスな解答を貰えた場面は、仁菜なりに相手の顔を見る眼、見えている断絶を飛び越えようとする勇気を、ロックやりながら育てているのだと理解って良かった。
 最初の暴れっぷりがあんまりに凄かったので、フツー以下のコミュニケーションで感激してしまうわけだが、ロック保護者の助けなしで向き合おうとしてるのは、マジ偉い。

 自分の足で立って、自分の意志で踏み込んで、自分の言葉で伝えて、自分の耳で聞く。
 そういう、本当のロックンロールが生まれてくる場所に仁菜が近づいているのは、メチャクチャ傷ついて川崎に流れ着き、メチャクチャになってる心を殴りつけ受け止めてもらえた時間が、確かにあったからだ。
 それを生み出してくれた恩人は、なにか重たい隔意を抱えて距離を取り、重く思い悩んで打ち明けてくれない。
 無敵のカミサマなんかじゃなくて、胸に鳴り響く音楽に出会って夢を見て、現実に傷つけられて地に落ちて、空を見上げるクソガキなんだと、預けられる距離感まではまだ遠い。
 遠いが、確かに近づいてきている。

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 桃香さんをロック赤ちゃんの世話役から下ろす今回、彼女がかつての仁菜と同じく特別な音楽と出会い、それで人生歪んじゃった現役のロックガールであると、示す鏡が必要になる。
 自分の知らない過去を共有する、沢城みゆき声の大人の女にビビってる仁菜を、斜めに走る二つの境界線がきっちりスケッチするなか、ミネさんが奏でる音楽がその壁を壊していく。
 『ロックンロールのアニメなんだから、弾いて聞いちまえば全部わかる』は最高に良い。

 人見知りで強がりで根暗で最悪な青春に、唯一光を灯すもの。
 時間も屈折も飛び越えて、世界の答えをくれるもの。
 仁菜が”空の箱”に出逢ってしまって、真っ暗な放送室に光を灯して笑ったように、桃香さんもミネさんの音楽に出逢ってしまって、ロックンローラーを志した。
 そんな音楽が持ってる力は色褪せず現役で、弱っちい癖に攻撃的な川崎チワワは、曲一つでそこにある輝きを聞き届けて、過去の桃香と同じ顔をする。
 言葉では伝わらないもの、日常生活やってても爆破できない壁を、一瞬で超越するパワーが音楽にはあり、それを繊細に聞き取る感受性は、一話からずっと井芹仁菜の武器だ。

 瑞々しい耳の良さは、挫折にコスれた桃香さんにも全然残っているはずで、でも飛び込む声を聞かなかったふりをして、これ以上痛くないよう諦めようとしてる。
 仁菜が自分のロックを見つけて暴れまくるのと反比例して、彼女をそこに導いた桃香さんの煮えきらない逡巡は、より鮮明に描かれるようになってきた。
 クセの強い主人公を愛されるべき怪物として僕らに差し出してくれた、桃香さんの頼りがいに憧れを置く視聴者としては、極めてダサくて許しがたい。
 しかしその煮えきらなさは、敗北を知った20歳の飾らない生身であり、それが音楽と出逢ってしまった時の眩しさと地続きであること…仁菜がミネさんの音を聞いた”今”の輝きと、それが繋がっていることを、このファーストコンタクトは良く語っている。
 バラバラなのにどこかが似た者同士だから、強く響き合うのだ。

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 まぁそういう共鳴を遠くに置き去りに、桃香さんは仁菜の世界をぶっ壊す衝撃の脱退宣言をぶっカマスわけだが。
 世界が灰色に染まり、壊れて罅が入る演出は、仁菜の受けた衝撃を見事に描いていて素晴らしかった。
 それでも音楽は続き、バンドは曲を弾かなきゃいけない。
 抱えるには重たすぎる荷物に、大先輩がするりと距離を縮めてくる。
 仁菜の保護者として一面的だった桃香さんのキャラ造形に、奥行きを出す今回、ミネさんの余裕と存在感が大変いい仕事をしている。
 人見知りな仁菜が、身内以外との距離を縮める力をつけてきていると示すうえでも、大変いい感じだ。

 河原木桃香極限強火ファンである仁菜にとって、ミネさんは警戒するべき過去の女であり、いい音楽で心を殴ってくる本物の音楽家であり、ずーっと自分の面倒見てくれた先輩よりもっと大人な、失われた母だ。
 親父の最悪ムーヴを止めてくれなかった母をも怨みつつ、どっかで甘えられる場所を探している感じを姉の膝枕に匂わせていた仁菜が、親身にされてチョロっと行っちゃうのも、まー納得ではある。
 というかミネさんの飾らない人間性、歳関係なく真っ直ぐ向き合う爽やかさが力強くて、桃香と仁菜の間に立って、拗れた思いをつなぐ仕事をするのにベストな造形をしてくれている印象。
 こういうキャラがいてくれると、奥行き出るね。

 仁菜は熊本でメチャクチャにされた経験から学んで、自分を守るべく大変警戒心が強い。
 しかしバンドメンバーに優しくしてもらったり本音でぶつかったり、思いを叩きつけたボーカルに最高の演奏でレスポンスを貰ったり、ロックを通じて対人関係をリハビリしている感じがある。
 音楽以外で他人と繋がれない、川崎の大暴れ天童は裏を返せば、音楽を介すれば見知らぬ誰かの隣りに座って、自分には見通せないから不安な思いを手渡し、二カッと笑顔にヒントを貰える存在でもある。
 隔意と警戒から始まったミネさんとのコミュニケーションは、そういう仁菜なりの社会的エコーロケーションを上手く削り出してくれる。
 そらー、予備校行ってらんないわ。

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 ルパとミネさん、二人の大人にグデングデンに酔い潰されロック赤ん坊の本性を晒した桃香さんを置き去りに、ミネさんはクールに去る。
 そんな風に、大人になってもロックに生きている諏訪の女(ひと)に答えを貰って、仁菜は弾む自分を抑えきれずに駆け出す。
 その決断が間違っていないと、祝福するような…あるいは人生ネジ曲がる呪いを更にブーストするような、美しい花火が大変印象的だ。
 いやまぁ傍から見てりゃ大間違いなんだが、井芹仁菜が”そう”としか生きられないことはここまで、山盛り描いてきたわけでね。
 思い立ったが天中殺、駆け出す心は止められない!

 俺は情緒赤ちゃんな仁菜が、キツい家庭と地元から逃げ延びた川崎で桃香さんに甘やかされ、ワーワー喚きつつ無条件の信頼を預けていく様子が好きだったので、桃香さんにとってそういう存在だったろうミネさんと、小指の暗号で微笑める距離感を一話で作ったのは、大変良かった。
 いわばロック・グランマである彼女を通じて、桃香さんも自分と同じく特別な光に出会い、ロックに突き進み…自分が知らない失敗と挫折を叩きつけられて、自分には理解できない迷いと痛みにうずくまっている現状を、仁菜は自分の中に引き入れていく。
 そうやって他人のことを分かろうとするのは、自分のことも解ってない仁菜に、凄く大事なことだと思う。

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 かくして運命は色々なものを抱え込んだバンドをステージに引っ張り上げ、あんだけ悩んだ名前はその場のノリで一気に決まっていってしまう。
 そのテキトーな勢い任せは、桃香さんが抱え込んだ荷物もそうやって爆破されそうな期待感を、ちょっと抱かせる。
 川崎では『このダセー名前だったら辞めるからな!』だった智ちゃんが、諏訪への旅を経て『ダセー名前でも、まぁ良いか…』になってるのは、あまりにも可愛い。
 少なくとも効果的な手数で、新メンバーがバンドに帰属意識を持ってる様子、関係が深まってる様子をしっかり刻んできてるのは、このアニメの優れた描画力だろう。

 毎回毎回角度を変えて、ステージに上る前、曲が始まる前含めて鮮烈で的確な楽曲表現を叩きつけているこのアニメだが、今回もそこら辺の切れ味は鋭い。
 仁菜が勝手に走り出してバンドに名前をつけた時、パッとライトが灯って暗闇が切り裂かれるのが、僕は凄く好きだ。
 自分たちがどんな存在なのか、見えなくなるような体験に投げ出されてなお、運命の引力に結び合わされ集ったバンド。
 そんな連中が”名前”を得る行為には、自分の在り方を確認する内向きの視点と、外側に向かって己を吠える視点が両立している。
 トゲがあんだかないんだか、良く解んないまんまにトゲトゲである不思議な虫が、自分たちの形なんだ。

 ノリで駆け出した結果、そういう事になってしまうベストチョイスが、少女たちをどう結びつけていくのか。
 極めて内向的に、客の顔を見ずに河原木桃香一人に対して紡がれる”自分語り”が、ステージを内破させる寸前でルパのデカいケツがぶっ飛ばすありがたさに、仁菜は微笑む。
 自分の内側にこもった熱に中毒してしまう、狭くて若い仁菜の気質を理解したうえで、笑えるパフォーマンスとしてチャーミングに正気に戻す逞しさ…やはり、ルパは強キャラ。
 今までこのポジションにいた桃香さんが、今回”鎧”外して生身見せてきたので、放送終わるまでにルパにもそういう話が欲しい。
 でも今は、この揺らがなさと微笑みがありがたい。
 こっから大波乱必至だしなッ!!

 

 

 

 

画像は”ガールズバンドクライ”第7話より引用

 青く炸裂する音楽は客席を飲み込み、仁菜はどす黒いトゲを嵐のように沸き立たせていく。
 出会い、導かれ、ムカつき、叫ぶ。
 河原木桃香にロックンロールで殴られたから始まってしまった自分の物語は、フラストレーションと矛盾まみれでフラフラしてて、だからこそ今ここで歌っている。
 今までの全部を思い出しながら、これからの全部に繋がるように、キーボードとベースが加わった新しいバンドの音に、自分の叫びを乗せている。
 仁菜があまり客席を見ず、内向的なスタンスで歌声を絞り出している描写が、この話数らしくて凄く良い。

 仁菜は学校で傷つけられ家庭で放り投げられ、自分の形がグチャグチャに見定められないまま、川崎に逃げ出してきた。
 話も折り返しを過ぎた今、桃香への憧れと彼女が教えてくれたロックの戦闘法でもって、仁菜は不定形な自分をトゲだらけのまま誰かに届ける道を、自分の生き方として選びつつある。
 そういうロックの学校で学び取ったものがあるから、ちょっとずつでも仁菜の社会は広がって、知らない女と仲良くなって、音楽で自分を世界に解らせて、一曲終えたら観客が自分の名前を呼ぶところまで、否応なく認めさせることが出来る。
 そういうパワーと賢さが、井芹仁菜には確かにあるのだ。

 でもだからこそ、学歴なんぞ見えやしね~~~~~!
 激烈予備校脱退宣言を叩きつけ、現実見えてる…強制的に見せられている桃香さんの、ロック赤ちゃんへの苛立ちは最高潮だッ!
 誰にも打ち明けぬまま諏訪湖ダッシュで心に決めて、相談もなしにライブでぶっ放すあたり、ロックンロール・モンスターの破壊力は全然衰えていないが、まー仁菜なりに傷も考えも欲望もあったうえで、今吠えなきゃ嘘になる決断だったことは良く分かる。
 分かるが…いかさま無茶苦茶が過ぎるだろ!
 だからこそ面白いってアニメであることは、ここまで見てきた僕らには良く解っている。
 さーどうなるかなぁ…獣に手綱は付けれないねぇ、つくづく。

 

 5人勢揃いまですげースピードで駆け抜けたお話が、一応の形を整えたタイミングでメンバーの過去も照らされ、それぞれの荷物が見えたのは良かった。
 仁菜が背負っているものも想定より重たかったが、お姉ちゃんが甘やかしつつ甘やかさすぎず、程よい間合いで膝枕してくれる人だったのは、なんか安心した。
 …この”姉力”を桃香さんとの関係構築前に出すと、関係性がブレるからこのタイミングまでタメてたな、おそらく。

 出逢っちまった魂の姉貴が、ダセえ撤退戦捨てねぇなら、アタシが土壇場に身を投げる。
 川崎のロック爆弾・妹が投げつけた覚悟に、河原木桃香はどう答えるか。
 さらなる過去が共鳴する次回、マジ楽しみッ!

 

 

・追記 representaionはヒップホップだけの専売特許ではない、という話でもある。