イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ネガポジアングラー:第5話『散財アングラー』感想ツイートまとめ

 人生どん底ダメ人間、外付け倫理装置により居場所と趣味を確保す!
 ちょっと足場が定まった主役が、ようやっと腰を据えて釣りと恋に目を向け始めるマッタリエピソード…と思いきや、思わぬ所に潜んでいた”牙”が俺を刺しにくる、ネガポジアングラー第5話である。

 いやだってさぁ…いかにも勘違い製造機ラブコメ要因だと思ってたこずえちゃんが、釣りする理由がアレだとは思わないじゃない…。
 深海に潜む愛の魚の真実を釣り上げていくのも、今後の道糸の一つになりそうな感じですが、貴明が「釣りにも愛にも理由なし!」と堂々ブチ上げたわけで、ココにも堂々と爽やかな描写が続いていくと良いなぁ、と思う。
 前回ハナちゃんの善さをじっくり煮出しておいたことで、彼女のためならコマセが臭いのもイソメに噛まれるのも我慢できちゃう、こずえちゃんの”好き”に説得力でてるの、良い組み立てだなと思う。

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第5話より引用

 というわけで、目を閉じて暗い絶望と孤独に閉じこもっていた常宏クンの、人生に釣りと恋が光を差し込ませるエピソードである…のかッ!?
 とにかくこずえちゃんの書き方が絶妙で、主役といっしょにたっぷり翻弄され、どういう角度で体重を預けていうのか思い悩み、もっと探りたくなった。

 ココまで主役の足場を丁寧に整えてきたこのお話、そろそろ描写を横に広げ、奇人たち個別の面白さに手を伸ばしてもいい頃合いではある。
 そんなタイミングで、もう絶対目を離せない角度にこずえちゃんを差し込む!!
 いい書き方だったなぁ…。

 

 チョロくかわい子ちゃんに釣られて、借金肩代わりして屋根まで借りてる状況で散在ぶっかます、常宏のダメっぷりが目立つ今回。
 つまりは金も釣りもポジティブも、彼に足りてない部分を全部補ってくれる貴明とどんだけ切れない縁で繋がっているのかを、改めて明らかにする回でもある。
 常宏一人ではどうしても沈んでいってしまう、不運と孤独と自堕落の暗い海から、お人好しとマトモさの釣り竿で引っ張り上げてくれる、特別なアングラー。
 貴明がガミガミ厳しい/正しいこと告げる隣で、こずえちゃんはとにかく常宏を甘やかし、消費に駆り立て、煽るだけ煽って自分はハナちゃん相手にゴロニャンする。

 正直期待込みで、こずえちゃんの”好き”は恋の”好き”であってほしい気持ちが強いが、そこら辺を外野が勝手に決め込んでしまうのは不遜かつ有害で、どっしり描写が深まるのを待ちたい。
 散財癖がある常宏にストップかけるどころか、ガンガン背中を押すこずえちゃんの真意がどこにあるのかも含め、作品を牽引するミステリーとしてとても良いポジションに付けたと思う。
 分かりやすくパクっと行きたくなる、人当たりのいい全自動勘違い発生装置は、彼女に引っ張られて釣りにハマっていくガイドラインとしても、非常にいい仕事をしている。
 道具に魅せられ恋に引っ張られ、そういう始まりでもいいじゃないか。

 

 いつでも不満たらたら、自制の効かない俗物である常宏が主役であることで、釣りのキツいトコロをちゃんと書いた上で、それでも釣りをする理由を嘘なく削り出せるのは、このお話のとても良いところだと思う。
 彼を釣りに誘っていくこずえちゃん自身が、「釣りが好きなハナちゃんが好きだから好き」だからな…。
 ただただ純粋に釣りに狂っているハナちゃんも、おそらくどこかで断ち切られている過去との絆ゆえに釣りを間近に置いているだろう貴明も、それぞれ別の”好き”がある。
 そこには貴賤も上下もなく、横並びで同じ海に糸をたれていいのだ。
 ここら辺の多彩な書き方は、やっぱ好きだ。

 常宏の転落人生が不運と自業自得のあわせ技であり、大概自分に問題あってお先真っ暗なことは、今回こずえちゃんにチョロく乗っけられ、スーパー機材揃えてる様子からも見て取れる。
 モノとカネと薄っすら煮込まれた性欲以外に、自分を突き動かすものを正しく持てないフニャフニャ野郎は、貴明という外付け倫理装置によってちったぁ、キッチリ伸びた背骨を手に入れられるのか?
 ダメダメっぷりが描かれるほどに、未来が不安にもなり、不思議な期待も高まっていく。
 この等身大を見せる鏡として、純情青年をデロンデロンの骨抜きにしてくるこずえちゃんは、大変いい人材であった。
 見てみたい…小悪魔の真意ッ!!!

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第5話より引用

 常広の未来が沼にハマろうがガンガンに甘やかすこずえちゃんとは真逆に、貴明は口うるさく金の使い道を縛り、愛用の釣り竿を貸し、新アイテムの試し切りに付き合う。
 彼がなんでここまで、赤の他人の人生やり直しに親身に付き合ってくれるのか。
 その原点はこずえちゃんの”好き”と同じように水の奥に伏せられていて、しかしチラホラ魚影が見える。
 …ぜってー弟絡みで、キツい過去があるヤツだこれ…。
 回想に描かれる自宅が、めっちゃリッチなのが逆に不穏なんだよなぁ。
 なぜこの恵まれた家を出て、貴明は今一人なんだ?

 欲望を抑えきれず、最強の釣り竿まで含めて17万ぶっこんだ新兵器に興奮する時、常宏が口にしている言葉。
 それはCMの惹句と、一言一句変わらない。
 長い釣り歴でじっくり道具を揃え、一つ一つに思い出が染み込んでいる貴明に比べて、その物腰はいかにも軽い。

 そのクセ貴明が気軽…を装って貸してくれたいい竿の恩も忘れ、最強釣り竿を恩人(と、まだ思えていない恩人)に手渡すことは出来ない。
 人生の波風を経て竿を握り、ただ目の前に海があるから釣りをするのだと嘯く男の、過去も内面も覗き込もうとはしない。
 その浅はかさは、こずえちゃんに振り回されてる恋愛雑魚っぷり、現状顧みずモノに踊らされるヤバさと多分、根っこが同じだ。

 

 常宏の釣果には一つのルールがあることに、第5話にしてようやく気づいた。
 他人と上手くコミュニケーションが成立し、無自覚でも心がつながって助け合えた時に、彼の竿には魚がかかる。
 貴明が歴史のこもった釣り竿を手渡してくれる意味を、この軽薄ボーイはなーんも解っていないけども、しかし家の面倒もカネの管理もわざわざ身を乗り出してやってくれる超善人のレクチャーを受けた時、道が拓けて成果が生まれる。
 それぞれ別個の”好き”を抱えて、一人で楽しむものではあるけども。
 隣に立って同じ海に糸をたれ、釣れるの釣れないの、喋りながら魚を待つ行為は、一緒のほうが絶対楽しい。

 隣りにいる誰かの顔を、目を開けてちゃんと見て、自分の”好き”を投げかけ、誰かの”好き”を引っ掛けること。
 目を閉じて孤独と不安から逃げる赤ん坊である、常宏にとっての”釣り”の真価は多分そこにあって、しかしそういう人間の深甚から極めて遠い、岡惚れと道具狂いを入口に、彼は”釣り”に入っていく。
 それでも良いじゃないかと、コミカルな人生の浮き沈みをじっくり見守りながら、この作品は静かに語りかけてくる。
 常宏の無軌道人生が、トホホながらもちゃんと笑えるものとして、一歩一歩明るい方へ進む旅として見てられるのは、とても大事なことだし、良いことだと思う。

 

 貴明が苦笑と苦言を織り交ぜて、放っておけばダメダメな方向へネジ曲がっていく常宏の人生をぶっ叩いてくれるからこそ、彼のダメダメもシャレになっとるわけでね…。
 逆に言えば相当苦労も背負い込むこの立ち位置を、袖スリ合っただけの他人にわざわざ手渡してる貴明を、突き動かすものは何なのか…是非にも釣り上げたいねぇ。

 常宏、冷静に考えてみると絶縁レベルのヤバ行動を安易にぶっこむ超ヤバ人間なんだが、それを「しょーがねーなー!」で見守ってくれる貴明の人徳で、上手くバランス取れてるアニメだと思う。
 文字通り崖っぷちの所で、ギリギリ拾ってもらった幸運の大きさ、自覚してないからこの有り様だしな…。

 

 ちうわけで、恋でも銭でも大事なもん何も解んないままフーラフラ、ヤバい餌にすぐ食いついちゃいそうなダメダメ主役の現状と、彼を取り巻く人々を描く第5話でした。
 こずえちゃんの陰影が深まり、彼女の”好き”を追っていくお話も面白そうだと思えたのは、大変良かったです。
 頼む…恋であってくれッ!!

 最強ギアを道糸に、主役も”釣り”の深みへズッぱまりルートが開けた所で、そこを踏み外しそうなら管財人が一発入れる体制も整った。
 押し付けられるだけだった”釣り”を自分の人生に引き寄せて、さて主役はそこから何を引き上げていくのか。
 水の底見えなかった魚は、どれだけ大きくヤバいか。
 次回も楽しみッ!