イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ネガポジアングラー:第6話『TAI LOVER』感想ツイートまとめ

 パクチー甘いか塩っぱいか!
 自分とは真逆のエネルギーの塊、タイからやって来た元気爆弾アイス姐さんとの触れ合いを通じて、常宏がもう一歩前に踏み出す、ネガポジアングラー第6話である。
 魚たちの生き生き美しい姿、調理された後のうまそう加減。
 それを皆で食べる特別さを、教えてくれる日常の小さな発見。
 このアニメの良いところがスゲーギッシリしてて、大変良かった。

 目を塞いだ思い込みで全てを判断し、クソネガティブに引きずり込まれてきた常宏が、ようやっと心の底から笑う回だった。
 あの子は笑ってたほうが可愛いので、もっと良いこと沢山あって、沢山笑えると良いなと思う。

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第6話より引用

 そろそろクールも折り返し、作品にも主人公にも愛着が湧いてきて、僕らはエブリマートの皆のことをもっと知りたいと感じている。
 しかし物語の始まり、常宏はアイスさんの接近と自己開示を、「すげー自分のこと喋るじゃん」で切り捨てる。
 シニカルに他人を遠ざけ、無価値だと思い込むことで色んなことに目を塞いできた彼の処世術は、他人が真実(あるいは事実)どういう存在か、素直に見させない。
 偏見と思い込みで誰かを勝手にジャッジできる立場は、安全で快適で…とても淋しい。
 自分とは違う存在から受け取る刺激を遠ざけて得られる、暗闇の心地よさだからだ。

 生粋の陰キャたる常宏の、「イラツクけど理解る、理解るけどイラつく」加減は絶妙で、誰もが多少なりと、アイスさんから溢れ出す元気に当てられ、げんなり顔はするだろう。
 目の前に降って湧いた好機に迷わず飛びつき、異国に足を運んで積極的にコミュニケーションを図り、自分の世界を明るくするためにどんどん前に出ていける、選ばれた人間。
 その輝きと、後ろ向きに目をつぶっている自分を比べて、常宏が勝手にコンプレックスこじらせる気持ちは、まぁ理解る。
 理解るけどイラつくし、偏見と思い込みで勝手に他人ジャッジしてる失礼、マジどうにかしたほうが良いと思う。

 

 そういう反発を、丁寧に的確にすくい上げていくのもこのアニメの良い所で、常宏はアイスさんにノセられ引っ張られる形で、初の船釣りに挑む。
 今までと違って、即座にアタリに合わせたら逆に釣れない辛抱の釣り。
 それはここまでと同じように、常宏が誰かとコミュニケーショを成立させるまでは釣果が出ない。
 船酔いにゲロを吐き、汚い部分弱い部分を見せあって、ようやくお互いの顔を見て話が出来た後に、奇跡のダブルヒットがやってくる。
 このアニメにおける”釣り”は、常に思い込みを乗り越えて誰かの顔をちゃんと見ることと繋がっている。
 その徹底が、俺はかなり好きだ。

 このアニメがかなり好きになっている現状、常宏がノイズと聞いていない「勝手な自分語り」をこそ、僕は聞きたい。
 己の中にわだかまるネガティブに浸るのではなく、胸襟を開いて誰かが曝け出してくれてる言葉にちゃんと耳を傾けていれば、アイスさんが唐突に突き出した”タイ行き”の真意も解ったかもしれない。
 しかし深海をたゆたう生粋のネガとして生きてきた常宏は、そうそう簡単には変われない。
 苦手だったパクチーが、急に美味しく感じられるわけではないのだ。
 しかしアイスさんと触れ合う中で、常宏はパクチーを選んで食べようと、思えるようになった。
 光の側に釣られてみたら、面白い変化は案外多いのだ。

 常宏の主観的な世界と、彼の周囲に広がる客観がズレてる描写は、ここまでも結構多かった。
 大学の友達が親身に彼の心配をしている時も、彼は悪い想像だけを拡げて彼らを”敵”として見て、目を閉じて逃げ出した。
 その自己防衛の必死さ、止めようがない切実さをちゃんと書いた上で、奇跡の善人・躑躅森貴明大師の助けも借りて、生まれついてのネガ人間はちょっとずつ、目を開け生まれ直している。
 水の奥にある誰かの心を読んで、タナを合わせて欲しい餌を用意し、コミュニケーションを成立させて”釣り”をしようとしている。
 そのちっぽけな頑張りが、応援したくなる可愛げに満ちてるのはやっぱり良い。

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第6話より引用

 自分が手渡したコミュニケーションの種を、「いや…そういうの良いんで…」と跳ね除けてくる厄介人間相手に、「なんだコイツ!」と激発もせず、幾度もアプローチしてくれるアイス姐さんの人徳に助けられて、常宏は心の底から笑ってハイタッチする。
 これまでの自分とは無縁に思えた陽キャ仕草が自然と出たのは、アイスさんも酔って吐くのだという、人間的な弱さを見せてくれたから…かもしれない。
 常宏常時後ろ向きの赤ちゃんなので、自分よりパワーある存在は自動的に加害者認定しちゃうの、もったいないけど理解るよ…。
 そんなにオメーの世界、”敵”ばっかじゃねーから!

 …って事を身にしみて解ったからこそ、常宏は美しい夕焼けの中アイスさんに、自分の核心を晒す問いかけも投げたのだろう。
 この人なら、自分が抱えざるを得なくなった陰りを受け止め、光を与えてくれるかもしれない。
 そういう期待と信頼を、ちょっとでも誰かに預けれるようになったのは、常宏の人生…彼に関わってしまった他人の人生に、とてもいいことなのだろう。
 終わってもなお続く、誰かの物語がもう自分の間近にあることを、常宏は否定できない。
 そらー借財返済から財政管理、住居から職場まで全部用意してくれた、最強天使になんもかんもお世話されてっからなぁ!!
 …躑躅森くん、俺は早くキミのハラワタが観たいよ。

 ギャグ頭身から逆作画崩壊まで、ひょいひょい在り方を切り替えるアイス姐さんは、話してみるとかなりコクのある人物だ。
 さばけた態度でコミュニケーションの種を、気さくに根気強く蒔き続けて、ゲロと釣果の助けを受けてハイタッチに成功したら、自然なまんま更に近づく。
 ナチュラルに他人との距離感が図れるし、そうして見定めた場所に自分を迷わず投げ込めるパワーも、自然と備わっている人なのだと思う。
 常宏と好対照な彼女を鏡にすることで、主人公の抱えたどうしようもない難しさと、それをどうにかしていくヒントが、より鮮明になる回であろう。

 

 

 

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第6話より引用

 今回のエピソードは、ありえんほどの幸運にぶつくさ文句言いまくってる主人公が、実は結構己の周りにある幸せに目を向けてる現状を、改めてスケッチしてくれる。
 「オメーマジ、自分に訪れた奇跡の意味ちゃんと考えたほうが良いよッ!」と、常宏がぶつくさ宣う度ツッコミ入れてた視聴者としては、大変ありがたい回である。
 アイス姐さんとの交流がいい感じにまとまり、ここで〆るのかと思った所でもう一歩踏み込んできた。
 前フリとして、”躑躅森”といっしょに釣りするのがもう当たり前になってる常宏が、降って湧いた孤独にモヤモヤ、濁った感情を湿らせるカットが良く効く。

 この主人公、散々他人にガチャガチャ身勝手にほざいておいて、いざ釣り友達が来てくれないとなったらこの顔ですからね!
 無自覚なんだろうけど、かなり魂の奥深い部分まで軽薄装ったお節介人情天使の存在が、ずっぷり侵入(はい)っちまってんだよなぁ…。
 目を塞いで苦しいことに耐えるしかなかった赤ちゃんが、ようやっと瞼開けて隣に誰かいてくれる嬉しさとか、そのありがたさとか、じわじわ腹に落としていく様子を見守るのはマジで良い。
 六話分きっちり積み上げて、主人公と彼の物語を好きになれてんだなぁと、改めて思わせてくれる折り返しである。

 

 

 

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第6話より引用

 俺はこのアニメの”釣り”が、食と関わり続けているのが好きだ。
 今回釣ったのがタチウオとマダイ、生きて海にいる時と釣り上げて死んだ=人間が食べれる形になった後、大きく変わる魚なのが印象的だった。
 タチウオの銀光も、マダイの鮮紅も、人間の世界に釣り上げて美味しくいただく時には、必ず喪われてしまうものだ。
 美しい何かを手前勝手に切り落とすエゴと、心の底から笑い泣く人生の食卓は、いつだって切り離せない。

 釣り上げた魚が食材になるまで、血と臓物をちゃんと写しつづけている描き方も含めて、死ぬまでは別の命を食べ続けなければいけない業を、ポップながらもどっしり受け止め、自分たちなりの筆致で描こうとしているアニメだと思う。

 

 そういう意味では、今目の前にある温かで賑やかな食卓と、ここまでの冷たい孤食の対比はめっちゃ良かったな…。
 常宏は目を塞いで他者と世界への想像力を殺してる部分と、かなり想像力豊かに海の底の魚とか、自分を取り巻くものの意味とか見えてる部分が、共存しているキャラクターだ。
 目を塞いで流されているようにみえて、自分がどんだけ暗く寂しい場所で飯を食ってきたか、思い出して泣ける男なのだ。
 その暗さを思い出せることで、エブリマートの仲間が不意打ちに叩きつけてきた好意を、終わりを内包しながら輝きを増していく日々を、しっかり見つめることも出来る。
 このネガポジの同居と変遷が、肩の力を抜いて楽しめるポップな語り口の中、しっかりと息をしているのは凄く好きだ。

 こうして一人の青年の人生やり直しを、生活臭ムンムンでイラつき共感し見守らせてもらうと、「二年後に死ぬ」という重さもすっかりデカい。
 色々問題ありつつも、必死に笑って泣いて釣って生きようとしてる常宏が、もうその輝きから目を逸らせなくなってしまった、自分の周りの優しい人たちとどう関わっていくのか。
 その一歩目としても、今回描かれたアイス姐さんとの触れ合いは大変良かったです。
 いやまぁ、姐さんの人間力に多大に助けられての結果ではあるんだが、ようやっと常宏が心から笑って泣けたの、ほんと良かったよ。

 

 ”釣り”が導く人間再生物語、楽しい日々は何処へ流れ着くのか。
 次回もめっちゃ楽しみッ!