イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

らんま1/2:第10話『死の接吻』感想ツイートまとめ

 リンクをぶち砕く恋の鞘当ては、彼の国からの刺客を交えて更に熱を帯びていく!
 待ってましたのシャンプー参戦で、一期クライマックスの鐘が鳴る、令和らんま第10話である。

 

 というわけでさっくり格闘ペアスケートに決着つけて、このあと長いお付き合いになる大人気ヒロインの颯爽登場である。
 あかねと乱馬の関係性が「素直になれない一目惚れ」にまとまってきた所で、そこを更に引っ掻き回す良牙とシャンプーとの四角関係で、簡単に話を落ち着かせない。
 38巻の長きに渡って連載を続ける、人気の土台が整うあたりで一つの幕…という、令和らんまの形が見えてくる回でもあったか。

 令和らんまの良いところは沢山あるが、その一つであるアクションの冴え…特に中国武術らしい動きの軽やかさと力強さ、足関節のピタッとした捻りと止め、止め絵として見た時のキメの良さが今回は良く冴えていて、大変見ごたえがあった。
 これがAパートで格闘ペアスケートが決着する構成上、三千院&あずさへの手向けというより、シャンプー登場への花道になっている所が、1エピソード使い切りキャラと大人気レギュラーの差だな…って感じはあるが。
 まーあの二人、令和の空気感でメインとして扱うにはエグい人格しすぎてて、真ん中に居座るには可愛げがないから、退場で正しいんだが。
 …シリーズ続いてたら、八宝菜の扱いどうなるんだろね。

 

 さておきこうもサックリ敵役が退場してみると、格闘ペアスケートは勝負それ自体やら三千院達との対峙より、シャンプー登場に向けて乱馬とあかね、良牙の関係性や感情を照らしておく仕事のほうが大きかったのかな、って感じがある。
 シャンプーという極めて魅力的で積極的なライバルが登場する前に、傷だらけになっても乱馬くんが誰を守りたいのか、本当のトコロを描いておかないと話の軸が見えにくくなり、恋の鞘当てを安心して楽しめなくもなる。

 お互い答えは見えているのに素直になる勇気がないという、甘酸っぱい未熟を核に展開していく、格闘恋愛ジュブナイル
 そこに宿る”揺れ”を38巻分温存して物語を続けたお話の、一番大事な部分が本格的に始動する前に、行き着くべき答えを視聴者に可視化しておくエピソードだったのかなぁと、アニメで見返させてもらって思った。
 乱馬らしからぬ泥臭さでもってあかねを庇い(それ故彼女を、闘士としては無力な檻の中に閉じ込めることにもなる)、我を忘れてマジになれるのはどういう状況なのか。
 他人のことなんぞ歯牙にもかけない、エゴのバケモノを鏡にすることで、このお話の主役たちがどんだけ純情なのか、しっかり示すためにこの戦いはあったのだろう。
 なので、それが描ききれてしまうとサクッと終わる。

 

 乱馬くんとあかねの関係を不安定に揺らし続けるためには、そこにちょっかいかけ続けるライバルが必ず必要なわけで、良牙があかねに向ける気持ちの強さと、その危うさも氷上に刻まれていく。
 乱馬くんは我を忘れることであかねを背中にかばう真っ直ぐな情熱を顕にするわけだが、投げつけた暗器であかねの初恋を切り飛ばした時と同じく、良牙くんは怒りにかられてあかねを窮地に追い込んでしまう。
 この無自覚の加害性が、既に四角関係の決着を予見している感じもあって、今見返すとなかなか面白いなぁとも思った。
 本性を知られぬPちゃんに為ることで、男の形を簒奪されることで、良牙は怒りに駆られ想い人を氷海に叩き落とす過ちを、ようやく許される(あるいは誤魔化す)。

 対戦相手そっちのけの大乱闘になった結果、乱馬くんが格闘ペアスケートで見せた一途な本音は有耶無耶になり、作品が”答え”にたどり着いてしまって終わるまでの寿命も伸びていくわけだが、そういうアップテンポなドタバタ感の中に、良牙が運命に選ばれないヒントが忍ばせてあるのは、中々エグいなぁと思う。
 すべてが終わった後に振り返ってみてみると、ガサツだの色気がねぇだの散々な言われようのあかねの扱いはメチャクチャ姫ってて、過保護なまでに愛される特権的立ち位置に、優しく閉じ込められてる感じがある。

 男勝りながら強い少女性を秘めて、チャイナ服の王子様に優しく守られることを望みつつ、同時に対等に殴り合える戦士としての平等さも求める、複雑な距離感。
 でけー氷塊をぶん投げ、ひしゃげたロッカーをこじ開ける腕力を見せつけつつも、ポジションとしては少年拳士達が我を忘れて追い求める、ある種のトロフィーでもあるあかねの姿は、今見ると結構時代性を帯びてる(と同時に、そういうの貫通して今なお響くモノを秘めている)と感じる。
 ここら辺、女らんまとシャンプーのこじれた関係に色恋の気配を感じ取らない(取らせない)ヘテロ・セントリズムな視線とかとも重なるとは思う。
 主役がポップに性別をスイッチするお話、今だと当然”意味”乗るなぁ…。

 

 

 

 

 

 

画像は”らんま1/2”第10話より引用

 というわけでサクッとデコピン一発で用済みな敵役に決着を付け、物語の軸足は奇妙な三角関係(後に四角関係に発展)へと移っていく。
 良牙が悋気に取り憑かれた時、異様な存在感のある作画に情感が匂い立って大変いい感じだが、ガラスの檻に遠ざけられたあかねの視線はあくまで乱馬の窮地にあって、良牙くんがあんま視界に入ってないの、残酷だなぁ…と思う。
 ゴングが鳴ってもなお続く、ドッタンバッタンな意地の張り合い、恋の奪い合いの中心に立ってるはずなのに、あかねは誰を巡って嵐が巻き起こっているのか、鈍感に自覚がない。

 この鈍感さと、許嫁の窮地に目を見開く思いの強さが両立してこそ、(ラムとしのぶ、あたると面堂くんで成立し得なかった)永遠の恋の鞘当てが形になるわけだけども。
 こうして序盤を、素晴らしいクオリティで丁寧にアニメ化してもらうと、やっぱこの段階で行き着くべき答え、キャラクター同士を繋ぐ(あるいは繋がっていない)特別さというのは、既に描写されてたんだなぁ…という感じがある。
 乱馬くんが体を張って傷を追うのはあかねのためだけだし、あかねが常に目で追っている(夕焼け色の初恋の葬列を共有して以来、目で追うようになった)のは、やっぱり乱馬だけなのだ。

 

 

 

 

 

画像は”らんま1/2”第10話より引用

 らんまがライバル相手に、三千院とやり合ってた時よりガチった空気感で一撃を叩き込む所とか、りに我を忘れた良牙くんの指先が、尋常じゃない握力でもって氷塊を握りつぶす描写とか、なかなかに力が入っていてよかったが。
 頭に血が上った一撃は、仲裁に入ろうとしたあかねを水深くに沈めてしまって、それを”響良牙”として…対等に恋愛可能な男として助けに行くことは、彼には許されない。
 水に入れば”Pちゃん”になってしまう宿命に、正体を知られぬ捻れた関係性を保ったまま、あくまで可愛いペットとして向かい合い、繋がるのが彼の居場所である。

 初登場のときもそうだったけど、良牙くんの”武”って凄く攻撃的で、守るものを背負った時に強くなる乱馬のそれと、かなり真逆の色合いだと思う。
 これが好対照の名ライバルを成り立たせてもいるんだけど、ことあかねとの関係においては、魂の地金を怒りで炙られた時、守るより壊す方に進んでしまう性質ってのが、決定的に溝を作るなぁと感じる。
 優しい自分を認めきれないから、素直になれずツンツン距離ができてしまう乱馬と、奥底にある攻撃性を肝心なタイミングで制御できず、優しさのガワを貫ききれない良牙…て対比の構図がある…かなぁ?
 ここら辺の過剰な”男”を殺すべく、かわいい小豚にされてる気配もあるな。

 あるいはどっちが強いのか確かめなきゃ気がすまない、真っ直ぐなガキ共の戦いに決着が付いてしまうのを、保留するためのスイッチとしてあかねの窮地が用意されているか。
 ここら辺、極めて古典的な”けんかをやめて 二人をとめて 私のために争わないで”構図でもあり、ショートカットの活発でマスキュリンな装いに反して(あるいはそれによって強調される形で)、あかねって”姫”だよなぁ、とも思う。
 「おれは男だ!」が定型句な、男らしさと女らしさの間で(主に身体的に)フラフラする主人公のダンスパートナーとして、一見女らしくないからこそ一番”女”なヒロインで釣り合いを取る構図…かなぁ?

 

 

 

 

 

 

画像は”らんま1/2”第10話より引用

 ここら辺のバランス(あるいは延々と見守り続けたくなる、絶妙に揺れるアンバランス)は、勝負の余韻もそこそこに壁を割って現れた、異国からの刺客によってさらに加熱していく。
 武器術の達人らしい眼力を強調しつつ、紫蘭の如き可憐さも残したシャンプーのデザイン、やはり神だな…。
 女性拳士という枠でくくるには、一撃が破壊的で重たいシャンプーの腕前を、上手く印象付けてくれるアクションが今回多めで、大変良かった。
 そこにサクッと勝ってしまうらんまの技量も、初撃をふわっと避ける時の軽やかさで描かれてて、今回はアクションがキャラクターを良く語る回だったと思う。

 軽薄で相手の感情を見ない三千院が、乱馬くんがあかねに寄せる真心の歪な鏡になっていたように、シャンプーの存在はあかねが許嫁に寄せる思いを可視化する、良い反響材になっている。
 庇ったり問い詰めたり、いつも通り仲良く過激にじゃれ合いながらも、乱馬くんに強めの矢印出てる同性を前にして、普段とちょっと違う熱量があかねの態度に宿ってくる。
 ここら辺、素直にヒロインやるにはアクが強すぎる小太刀では醸し出せなかった味わいで、今後話をこじらせるのに必要な圧倒的ポテンシャルを、既にバリバリ撒き散らしてる感じがある。
 キャラクターの感情を暴き立てる仕事は、極めて大事だからなぁ…。

 

 

 

 

 

 

画像は”らんま1/2”第10話より引用

 というわけでシャンプーも登場早々に、早乙女家のお茶の間を舞台としたファミリー・コメディに上がり込む権利を得て、ワイワイガヤガヤ感情と拳が入り交じるメインステージへと踊りだしていく。
 シャンプーの一撃を弾いた乱馬の蹴りが、キッチリ関節入れて発力してるの好きだなぁ…。

 あと眼の前で女の子が鈍器に頭ぶつけて失神してんのに、ニコニコ笑いながら「誇れ、勝者の権利だ」と言ってくるかすみお姉ちゃん、記憶の中より遥かに”武道の家の人”してて面白い。
 あと玄馬はすっかり人間形態でいる時間がない、食い意地張った禽獣に堕していて、扱いの難しさを感じる。

 

 眼の前で許嫁の唇を奪われ、あかねも思わず般若を背負うわけだが、これって三千院にファーストキスを奪われてキレた乱馬の鏡写しだよなぁ…などと思う。
 シャンプーという魅力的な鏡を得ることで、あかねから乱馬くんへの思いがどんなモノか、改めて問われることにもなるだろう。

 すんごい真っ直ぐ熱烈に、乱馬に好き好きしてくれる超絶かわいい子を跳ね除けて、色気も可愛げもねぇ許嫁を選ぶことで、メインヒロインの値段も上がるしな…。(ラブコメ経済学の算盤を弾く)
 幾度かの戦いを経て、あかねへの慕情を顕にした良牙も交えて、加速していくドタバタな関係性。
 それが物語をどこへ導いていくのか、次回も楽しみ!