思い出と未来を結びつける約束が、ウルトラオレンジの激しさで東京タワーを照らす。
桜小路きな子と葉月恋…Liella! の物語にぽっかり開いたエアポケットを、見事に埋めていくスパスタ三期第10話である。
「”ここ”が欲しい」つうことは幾度か感想にも書いてきたので、きな子と恋ちゃんの補足がこのタイミングで来てくれたのは、シンプルに嬉しい。
個別エピソードとしては過去の掘り下げを大胆に切り捨て、出会いから続けていく未来に集中した造りになっていたわけだが、偉大なる初代生徒会長を継ぐ少女のエピソードとしては、この”今”っぷりが適切だったかなと思う。
あとまー、凄く”ラブライブ!”でもある。
”てっぺん”獲っても自分に自信を持ちきれない、ふにゃんふにゃんの情けなさは、前回Liella!の”出来ない”代表片割れとして年下のエースにしがみついてきた根性と面白く響き、曲がった背中をデレ期で押すマルガレーテちゃんの姿と合わせて、なかなか面白かった。
うだうだグジグジ悩みつつ、その一生懸命さ、真っ直ぐさが他人を惹きつけ、助けていく。
桜小路きな子がどういう人間で、女の子で、スクールアイドルなのか…彼女の”今”に注力することで、上手く描けていたと思う。
その鮮やかなスケッチが、恋とマルガレーテの顔をよく照らしてくれる横幅の広さは、三期らしいなと感じもした。
きな子の”今”にクローズアップし、悩んだり迷ったりを丁寧に追いかけることで、ふとした閃きや誰かの言葉、手渡される温もりが突破口を生んでいく過程も、しっかり活写できたと思う。
三期は楽曲がどう生まれてくるのか、Liella!なりのクリエイティブ(が、三年からの積極的な禅譲で若い世代に移り変わっていく様子)を頑張って描いていると思うけども、他キャラ個別回に比べそこまで派手にエモーショナルな方向に進まない今回は、自称・ダメダメなきな子が自分とLiella! にどう向き合っていくのか、等身大だからこそ手応えのある姿を見届けられた。
重圧と至らなさに、ワーワー喚いているきな子は可愛かったなぁ…。
そんなフニャフニャ二年生に導きを与えるのが、Liella!一の天然奇人・葉月恋と、遂に素直さを手に入れた無敵のエース・ウィーン・マルガレーテである。
ぶっちゃけどう扱ったもんか持て余していた感じもあった恋ちゃんであるが、三年生として生徒会長として道を走り終えつつある”今”を、きな子の旅に添える形で描いて、どういう子だったのか自分の中で感慨を収める場所を、ようやく見つけれた感じがあった。
一期のゴタゴタで母の怨霊を無事祓い、見えた素顔はむちゃくちゃ純朴で、真っ直ぐで、生真面目で、ヘンテコ。
自分が何となく感じていた葉月恋の肖像が、間違いではなかったと確認する回でもあった…ような。
あんまりにも生真面目だからこそヘンテコになってっちゃう、葉月恋のスタイルを存分に暴れさせつつ(あと久々のチビが延々長い舌を出して、へっへっへっへ荒い息を吐き出しつつ)、ヘンテコな彼女なりスゲー頑張って積み上げてきたものを、継いでくれる後輩を見つけれて、とても良かったなと素直に感じた。
スパスタは美しい風景の中、当たり前の日々が移り変わる景色に照らされ眩しい様子を丁寧に積み上げてくれたわけだが、そんな学園生活を頑張って生み出し、また一つの報酬として見てきただろう、結ケ丘の頑張り生徒会長。
そんな彼女が、桜小路きな子の頑張りにどう向き合い、適切な言葉を手渡せたか。
これを見届けることで、三期らしい逆算でもって葉月恋という少女がどんな青春を送ってきたのか、それが学園に何を生み出し彼女自身をどう育てたかを、不思議な納得とともに噛み締められた。
恋ちゃんがどっかズレた突っ走り方で、色んな人を幸せにしながらたどり着いた場所が、きな子の迷走をしっかり受け止めれるだけの頼もしさと、それ故自分の夢を愛する母校に結びつけてくれるありがたさに満ちているのなら、それは幸せな青春だったのだろう。
そう感じたのだ。
Liella!の物語に、ずーっと欠けてると感じてたピースがそういう感慨とともに埋まるのは、かなり幸せな視聴体験なんじゃないかなと、僕は見終えて思った。
三期は10年分の”ラブライブ!”を引用し反復し、総決算をやりつつ新たな景色を書こうという、明瞭な野望が匂う。
次の10年、”ラブライブ!”が活き続けるためには、ここまでの10年何をやってきたのか、Liella!とは何だったのかを描き切る必要がある。
取りこぼしなく全てを燃やしきるために、何を取りこぼしているのか自作への適切な作内批評を駆動させる。
そういう過去に戻ることで未来へ進む、再帰性の筆致によって四季も夏美もクゥクゥもリバイバルされてきたわけだが、きな子と恋にもそんな筆がしっかり伸びたなぁと、感じるエピソードだった。
ありがたい…待ち望んでいたから…。
そんな二人に比べると、マルガレーテちゃんは三期ほぼ全部を捧げられ、アンチLiella! として必要な”外部”を担当し、積み重なる日常に絆されながら色んなモノを学び、遂に勝ち負けの鎧を外してスクールアイドルの本質へ飛び込む旅を、丁寧に描かれてきた。
弱いからこそ尖っていたガキが、トゲの奥にある柔らかな優しさを表にし、誰かの…それこそ下に見ていた負け犬の手を取ればこそたどり着ける場所へ、自分を導いていく歩み。
これを澁谷かのんと結び合っていく日々に重ねて描かれてしまうと、ウィーン・マルガレーテを好きになるしかない。
それは、つまり三期を好きになっていく歩みだったと思う。
沢山の物語リソースを割り振って、丁寧に勝負論の檻から出ていくまで、誰かを好きになれる自分を抱きしめられるようになるまでを描かれたマルガレーテちゃんにとって、今回きな子に素直な好意を手渡す場面は、一つの立派なゴールだったと思う。
勝つとか負けるとかに呪われて結ヶ丘にやってきたあの子が、きな子”先輩”の事は好きだし尊敬に値すると、助けてあげたいと思える素敵な人なのだと、魔法のように美しい風景の中で告げれれるようになった。
それは、凄く良い到達点だと感じた。
ここに”妹”を引っ張っていくために、澁谷かのんは優しい仮面をつけて走ったのだという、個人的な文脈が深く染みもする。
当然のごとく地区予選を抜け、当たり前のように東京予選を勝ち残るサラッとした描写は、やはりLiella!自身には勝ち負けのダイナミズムがもはや、作品を支える柱たり得ていない現状を切り取っていた。
それでもなお勝つの負けるのに本気で誠実であることが大事だから、マルガレーテちゃんは勝負に呪われ、乗り越えるべき”敵”と見定めたLiella! を好きになっていく自分に素直になれなかった。
そんな凸凹を一歩ずつ、かのんちゃんに背中を支えられ、冬毬にクールに手を取られ、過去と現在と未来を豊かに繋ぎながら進んで、たどり着けた場所。
それが、今回きな子と見つめた夜景だったのだ。
そこも、大変良かった。
というわけで勝負の東京予選、命運は桜小路きな子に託された!
グニャグニャ思い悩む隣で、恋会長の後継者選びも難航し、自分の難題はさておいておせっかい少女は先輩の手助けに奔走する。
恋ときな子、二人の難題が同時進行する構成であるが、思わず他人事に首を突っ込んでしまうきな子の気質が見えて、なかなか良かったと思う。
やっぱこの純朴な人の良さが彼女の魅力であり、しかしそれだけで進めるほど真っ直ぐでもなく、なんとも泥臭い曲がり道を、グネグネ進む姿がかわいい。
あと絵上手いねきな子ちゃん…。
そんな後輩に真っ直ぐ路線は任せた! とばかり、奇人生徒会長の奇人っぷりも思う存分発揮されてて、大変良かった。
「葉月恋ってさ…相当ヘンテコなんだよ!」と、改めて画面が告げてくると「知ってた」より先に納得が来て、クライマックスを目前にして葉月恋と出会い直させてくれるありがたみが、不思議な食感で染みてくる。
俺は恋ちゃんがヘンテコでトンチキな所が好きだったので、最後の最後にこんだけ強く「はい、とびっきりのトンチキ女です」と教えてくれたの、嬉しかったな…。
そういう自分のトンチキ性を、恋ちゃん自身が乗りこなしてる感じとか、周りが受け入れて愛してる感じとかも伝わったしね。
ヘンテコなだけではなく、生徒会長として激務を果たし、後輩の悩みにも極めて真摯に向き合おうとする生真面目さもしっかり描かれてて、そこも良かった。
考えてみりゃ学校設立二年目にして全国優勝、母から継いだスクールポリシーをこれ以上ないほどに形にした超新星なわけで、ちょっと…相当トンチキではあっても、周りからの評価は触れがたいほどに高いよね。
自然発生した壁を越えて、親しみやすい生徒会長にはなりきれてない所が、ウィーンから来た”妹”が自然と過ごせるよう、徹底して環境を作ってやり抜いた澁谷かのんとの、性格と立場の違いだなぁと思ったりする。
どっちが良い悪いじゃなくて、恋ちゃんがトンチキ生徒会長として完璧にやりきってくれたおかげで、結ヶ丘で思う存分青春出来た子たちが沢山いたんだろう。
それこそが彼女の本望であって、しかし自分が消えても結ヶ丘は残る以上、その思いを形を変えつつ継ぐものが必要になる。
目安箱ほっかぶりする奇行もその重大性を理解ればこそ…なんだが、それにしたって奇人すぎるだろう葉月恋。
それが好き。
あとチビが沢山へっへっへっへってしてたのも好き。
ホント俺ラブライブ動物好きなんだけど、三期はあんま出番なくて残念だったなぁ…ゆいがおー君とかも可愛いんで、もう一回二回出番ないスか?
今回ナナミちゃんが恋ちゃんに親身に寄り添って、上手いこと話の交通整理を担当してたけども。
かのんちゃんは副会長なんだし、そのポジションをLiella! に担当させることも出来たはずなのに、あえて真ん中外してきたのが、逆に良かったなと思う。
色んなところにパスを出して、色んな人がクリティカルな仕事を果たせる横幅の広さが三期の魅力だと思うが、恋ちゃんの世界がLiella!だけに閉じてない手触りみたいのが、ナナミちゃんが目立つことで生まれてたと思う。
やっぱ二期は過剰にかのんにボールを集めすぎた、澁谷セントリズムに呪われた作劇だったよなぁ…。
ど真ん中をあえて外す作劇は、きな子が決定的なインスピレーションを掴む場面でも冴える。
美しい夕焼けの彼方に仲間の声を聞き、栞に静かに託されたエールを紐解く。
いないけど確かにそこに在って、時が経ってもいなくなっても、ずっと自分を支えてくれるものの輪郭を、来年も結ケ丘に残るきな子は愛しくなぞる。
卒業を控えた三期は、去りゆく者たちの寂寥と颯爽を丁寧に削り出し続けているが、在校生側からのアンサーがここで見事に突き刺さった感じがあった。
それは夕焼けの向こう側に消えたとしても、無くならないのだ。
ここで実在のLiella!ではなくその残り香を、直接のふれあいではなく栞越しの思いを、きな子青春の起爆剤にしたのは、奥ゆかしくてムードがあるだけではなく、凄く適切な選択だったと感じた。
恋が自分の全部を賭けて作り上げた、みんなが笑顔の結ヶ丘。
その精髄を受け取り、もっとたくさんの歌を生み出していける後継者にきな子が育つ今回、見えないけど確かに残っているものをどう描くかは、凄く大切だ。
きな子は形なく、触れられず、しかし確かにこの校舎と自分の中にあるものを確かめることで、自分らしい思いをノートより大きなモノに広げて、言葉だけでは収まらないヴィジュアルな想像力で羽ばたかせる。
ノートに狭ッ苦しく閉じ込められていたイマジネーションが、決意とともに白墨を握り、制服姿のオペレッタで開放されていくスケールのデカさとか、思わずイラストも書いちゃう思いの奔流の強さとか。
自分を卑下しがちなきな子が、実は相当スケールの大きい創作力を秘めているのだと教える場面としても、凄く良かった。
これは人目がないからこそ飛び立ったイマジネーションであり、他者の視線を鏡にダメダメな自己像を見つけてしまいがちなきな子が、「我を忘れた」からこそ刻まれた彼女らしさなのだろう。
そういうものの発火剤が、誰もいないはずの学園に刻まれたLiella! の残響なの、やっぱ好きだ…”呼応”がある。
こうして炸裂したきな子魂の奔流が、どんだけ素晴らしいかを恋ちゃんが即座に気づいて、目をラブライブ色に輝かせるのも良い。
やっぱこの、瞳にクリンとときめきの光が宿る瞬間こそが”ラブライブ!”って感じがするし、これに突き動かされて全てのスクールアイドルの物語は前に進んできた。
理屈も迷いも飛び越えて、心を揺さぶる感動に出逢えばこそ、歌が生まれ何かが始まっていく。
そういう体験に背中を押されて、青春を終わらせつつある恋ちゃん、最後の初恋。
きな子が夕日色に燃え上がらせるイマジネーションは、それを発火させていく。
と言いつつも、ダメダメっす自信ないっす~~!!でしゃがみ込む。
「奇行も先輩譲りだなッ!」て感じだが、スーパーおしゃれ番長としての風格を私服にまとわせつつ、ウィーンの風が颯爽登場則デレ期!
いやー…前回生まれた絆を即座に最大活用して、ここできな子が真実の自分に出会う契機に使ってくるの、抜け目なくも適切な立ち回りで素晴らしい。
「鉄は熱い内に打て、マル公のデレ期は逃すな」って、手元の格言辞典にも書いてあったからな…。
あ、二枚目はきな子のモニョモニョ口が可愛いからキャプりました。
自分が掴めない自分の形を、自分を愛する誰かを鏡にして見つけていく歩みは、今回だけでなく三期全体…”ラブライブ!”全体に燃えている眼差しだと思う。
前回きな子の真っ直ぐな瞳を照魔鏡として、下に見ていた負け犬がどんだけ真摯な思いを燃やしているのか、”負け”と思っていたものの中にそこ勝利の兆しがあるのかを学んだマルガレーテちゃんは、きな子が自分に果たしてくれた仕事を、適切に手渡し返す。
「ずっと一緒にいたいっすよ」とサラッと言っちゃうきな子もそうだが、いよいよマルガレーテちゃんも愛に素直になる強さを自分のものにし始めてて、無茶苦茶ニヤニヤする。
たどり着いたなぁ…自分が自分でいられる場所に。
きな子自身は自分に頑なで揺るがない芯があることも、当たり前にやってるおせっかいが特別な優しさを含んでいることも、全然自覚がないと思う。
他の三年と同じく経験を積み上げ、大事なものを真っ直ぐ見れる視力を手に入れていた恋がここら辺、自分に引き寄せて上手く言語化しているわけだが、マルガレーテは後輩として手を引っ張られ教えられる立場から、桜小路きな子が思いの外大した人間である事実を、美しい夜景の中に告げていく。
基本高いところから「フンだ!」しか言えなかった二期を知ってると、他人の顔が良く見え、自分の無防備な体温が伝わっちゃう間合いを無防備に明け渡して、きな子の隣りに座ってるのが感慨深い。
マルガレーテちゃんがすごく素直に、自分が桜小路きな子の何に感動し、好きなのか告げてくれることの意味を、きな子”先輩”がちゃんと理解ってる微笑みでもってシーンが終わるのも、とても良かった。
あの子のシビアな頑なさに、自分をぶつけ鍛えられたきな子だからこそ、この柔らかで温かい贈り物がどんだけ頑張って手渡されているのか、しっかり伝わるだろうしね。
そういう人間のあったけぇ大事さを、無碍に出来ない女だからこそLiella!に惹かれ走ってきて、”今”ここにいるわけで。
その歩みはクライマックスを終えても止まらず、ずっと続いていく。
桜小路きな子が、引き継いで鳴り響かせる音楽なのだ。
目に見えぬどこかで、愛する後輩たちがそんな音楽を奏でた事を、多分かのんちゃんとちぃちゃんは聴いている。
だから”ラブライブ!”を終えた後も続く自分たちの未来を、こうも眩しく見上げることが出来るんだと思う。
三期ずーっと頑張ってきた、たこ焼き屋さんのエプロンをちぃちゃんがたたむ仕草は、サラッと描かれればこそ深く刺さった。
色んなことが終わっていく寂しさは、ラブライブ史上最も具体的に「おしまいにした後」に言及しているスパスタ三期だからこそのものだが、そこにあるのは寂しさだけではない。
きな子が自分の手で掴み他人に見せれるサイズにまとめ上げた言葉が、朝焼けに照らされ思い出の写真が、消え去ってなお響く音を、受け継いで残してくれる。
その確かな手応えを目の当たりにしたからこそ、葉月恋は眩しい朝日の中で、泣きながら微笑むのだ。
トンチキ奇人としての側面を分厚く描きつつ、葉月恋が母から受け継いだ思いに急き立てられ走った三年が報われた瞬間、彼女の眦から溢れた感情を真っ直ぐ、力強く切り取ってくれた今回を、俺は凄くありがたく思う。
この子には、ここで後輩が手渡してくれた想いの証を目の当たりにして、泣く心が確かにある。
導き見守るだけじゃない、葉月恋を主役として駆け抜けた物語がある。
この生真面目でピュアで、だからこそトンチキになっちゃうスゲー素直で可愛い子だけの音楽が、ずっとそこに響いていたのだ。
それが確かにあったのだと、マジギリギリのタイミングでラブライブサーガに刻み込むこのシーンが間に合ったのが、良かったなと思った。
トンチキ奇人も頼れる先輩も、葉月恋を構成する大事な要素で嘘なんかじゃないんだけども、ここで涙をこぼし心から笑う少女も、かけがえない葉月恋の本当で。
それを白日のもとに暴いて、自分が受け止められるだけ強くなったのだと言葉で、曲で示せるだけ、桜小路きな子が成長できて良かったなと思った。
俺は自分を育み愛してくれたものにしっかり恩返しする仁義が好きだから、恋ちゃんがあの時感じたトキメキを、マルガレーテちゃんのエールに支えられて、真っ向受け止め押し返すきな子が見れて、本当に良かった。
ずっと、僕はこれが見たかったのだ。
永遠にはならない大きな黒板から、きな子だけの小さく確かなノートへ。
少女の才能とイマジネーションを、他人と共有できる形に整えていく形が、詩的かつ適切に表現されていたのも好きな回です。
あの黒板で溢れさせたものは確かに大事でスゴいんだけど、生徒会長という立場、恋ちゃんが自分を導いてくれた確かさを継ぐには、あまりに不定形で。
それをきな子が(澁谷かのん式直感メソッドを継承しつつ)自分なりのクリエイティブとして、制御できるようになったからこそ、ひみつノートを突き出せる。
そういう変化や成長の形も、確かにあるのだ。
スクールアイドルは助け合い。
土壇場で顔を出した「きな子らしさ」をクールに救い、葉月恋は最後の継承を無事果たす。
黒板→ノート→原稿用紙と、形にならない不安を形にまとめることで自分の輪郭を掴んできたきな子が、原稿用紙に収まらない”今”の思いを自分の言葉で、真っ直ぐ告げに行くことで少女の飛躍を描く演出、マジ良かったです。
人間が自分の形を見つけること、それを他人に手渡せる形にすることを、かなり多彩かつ豊かに描くエピソードだったなぁと思う。
ここでマイクを取り落としかけるきな子は、なんだかんだ自己卑下に値するダメダメではあって、しかしその陰りだけが自分じゃないのだと、マルガレーテとの会話が教えてもくれた。
ツンツン強者ぶっていたあの子が、そういう後ろ向きな弱さにメチャクチャ寄り添えるってことは、「自分を低く見て、卑下しちゃダメだよ!」はきな子だけでなく、マルグレーテ自身に向けたエールなんだろうなと感じた。
敵を作ることで無理くり背筋を伸ばし、自分を負けない存在にしてきた頃だったら、マルガレーテちゃんはきな子が乗り越えるべき己の影を、ちゃんと見れなかっただろう。
それは否定するべき、弱くて情けない不定形だったはずだ。
でもそういう存在が、屈辱にめげず顔を上げて、未来のために必死に戦える強い存在なのだと教えてもらったことで、強さと弱さの背中が繋がっていることを、マルガレーテは学んだ。
だからダメダメで弱いと思い込んで背中を丸めてるきな子が、メチャクチャ強いんだと教えて、この晴れ舞台に立たせた。
きな子がここで原稿用紙には書いてない”今”を、力強く伝えられる存在になれたことで、マルグレーテちゃんが迷って走ってたどり着いた場所の輝きが、同時に照らされてるなぁと思った。
そういう響き合いこそがスクールアイドルの強さだということは、前回ライブ前獣の表情で、マルガレーテちゃんが告げたとおりだ。
これを見届けて即座のアイコンタクト、Liella!の二大巨頭が誰に勝負を預けるのか、キメる描写が頼もしい。
8+3に分断されたからこそ、Liella!がかのちぃホットラインで回ってる様子は分厚く描かれていたし、ここでの即決もその一つだよなー、と思う。
かのちゃんというカリスマと実務に強い嵐部長が、ガッチリ頭を務めるからこそ部活として進路を定め、前人未到の連覇に向けてLiella!が走ってる様子が見れたのも、三期の好きな所だ。
一人じゃないからこそ、鳴り響く音楽がある。
そう確信すればこそ、離れてなお繋がると思えるわけでね…。
ステージを離れた日々の中に掴んだ、スクールアイドルにいちばん大事なこと。
舞台に立つ全ての仲間が、同じ思いで歌い上げる”笑顔のPromise”
雪景色にウルトラオレンジという、”Snow halation”以来の文脈をしっかり踏まえつつ、真ん中を任されたきな子は真っ直ぐ堂々、自分がLiella!を、結ヶ丘を継いでいくのだという証を、楽曲とパフォーマンスに刻み込む。
心が整えば、結果はついてくる。
極めて”ラブライブ!”的なロマンティシズムに背中を押され、さらなる高みへと手を伸ばし、物語は次回へ続く。
かのんと出会ってスクールアイドル始めて、次を委ねても大丈夫なんだと求められてきな子が生み出したこの曲が、三期OP歌い出しの「約束をしよう」に力強くアンサーを返す”Promise”なのが、俺は凄く好きなんですよね。
三年生は寂しさを笑顔の奥にしまい込みながら、ずっと約束を求めている。
自分たちが輝きの向こう側に消えていっても、確かに続き残る音楽があるのだと。
それが響き続ける限り、確かにそこに在った青春は消えないのだと。
それを受け取って鳴り響かせるには、迷いを振り切り真実の自分を見つけ、誰かの手を引き助けられて進んでいく、長い旅が必要になる。
きな子は、確かに今回そこを走った。
約束に足りるだけの自分を見つけて、そうなった自分が色んな人を助けている事実を見つめて、堂々自分の物語の真ん中に立った。
そういう”今”にあの子が立っているのだと、ちゃんと教えてくれるエピソードで、大変良かったです。
三期らしい巧妙さでもって、恋ちゃんやマルガレーテの到達点まで王手飛車取りする手つきも素晴らしく、見たいもん見れてありがたかった…。
せっかく11人いる強みを活かし、多角的に青春を照らしていく事で、色んなスクールアイドルが全員共通で見つめている価値観の核が、立体的に見える構成も良いな、と思います。
バラバラだけど似通っていて、真逆なはずなのに響き合う私達が、見つめる空の先。
残り二話、勝ち負けを越えた景色がどんなモノか描ききった時、僕はLiella!の物語を、”ラブライブ!”を、どう感じているのか。
少しだけ怖くて、とてもワクワクしています。
次回も、とても楽しみです。
そして”リエラのうた”はトマーテ霜月艶姿、仲良し可愛いねぇ…。
序盤戦はあり得るべき未来の予言だった景色が、本編を経て”答え合わせ”になってるの、リアルタイムだからこその快楽があってマジ気持ちいい…。
この可愛い妖精たちが、どういう疾走で彼女たちの物語を駆け抜けるのか。
全霊で見届けるしかねぇぜ…。