奇人だらけのオモシロ青春、一皮剥けば感情のジャングルッ!
笑いと切なさが今まで以上に押し寄せてくる、霧尾ファンクラブ第6話である。
つーわけで折り返しまでやってきたが、トンチキ人間の気楽なギャグの奥に、複雑怪奇な相関図と生身の感情がたっぷり秘められている事が、改めて確認できる回だった。
藍美ちゃんの思いが大笑いしつつ茶化しちゃいけないマジさだと解ってきて、他人をコンテンツ化し消費する軽やかさを担当しにくくなったところで、恋情絡まないドオタクの星羅が道化役を勝って出るの、選手層が分厚い。
そして星羅も星羅なり、関係性消費に大マジであり、安全圏に閉じこもってはいない。
その結果バイトねじ込んで砂かぶり特等席確保するあたり、まー作品相応のクレイジーではあるんだけども、皆が皆それぞれの痛みを抱えつつ、誰かが大事でだから嘘つきで…たまんねぇなマジッ!
ハチクロみてーな味がする一方通行巨大感情物語としての地金と、それはそれとして色んな場所が狂ってる奇人コメディとしての腕力が相まって、作品独自の魅力がギュンギュン加速しているのは、大変いいと思う。
登場するキャラが全員、それぞれの良さと難しさを抱えて青春やっとるのだと、ちゃんと伝わる描き方をしてくれていることで、振り幅の激しい物語にガッチリ爪を食い込ませ、一緒に疾走れているのはありがたい限りだ。
霧尾くんを遠くから見て好き勝手絶頂ほざいてるだけの間合いから、当たり前に友達として…その延長線上に恋愛を睨みつつ転がる、トンチキな触れ合いの距離感へ。
霧尾くんが抱え込んでいるシリアスな痛み、それが縛り付けてる生の感情を知るほどに、「藍美ちゃん…勝手に湧き上がるの、危ないかもしんないよ?」という気持ちにもなるわけだが、好きな人眼の前にするとおもわず奇行ぶっ放しちゃう、彼女のチャーミングな不器用さを壊すことなく、だんだん距離が縮まっているのが良い。
そうやってお互いが近くなってきても、顕に出来ない思いと秘密が胸の中にあって、さー踏み込むか遠ざけるか、青春の間合いはバチバチ火花まみれよッ!
このお話が真ん中に据えているものは凄く普遍的で、人の心を打つパワーがある、かなりピュアで柔らかな想いだ。
そういうモンが、イカレ人間の奇行を遠巻きに笑うコメディの力強さとぶつかった時、真っ向から語るには気恥ずかしい人間のド真ん中が、緩んだ腹筋にズドンと突き刺さっても来る。
人間、笑わして楽しい気持ちにしてくれるやつを嫌いにはなれないわけで、藍美ちゃん達のドタバタ青春奇行を見守る内、「コイツラなりの青春、なんか上手くいってほしいぜ!」と、気づけば自分に近いところに物語を置くようにもなる。
その接近が、霧尾ファンクラブが生身の霧尾くんに近づいていく歩みと、強くシンクロしているのも良い。
何も解んねぇまま、遠巻きに霧尾くんで盛り上がっている(それをダシに、本当の目的を窃盗している)状況には、笑いで消しきれないヤダ味があったと思う。
そういうズルさをずっと維持したまま、限界オタク発熱コメディを続けていっても良さそうだったのに、霧尾くんがなぜ笑わなくて、藍美ちゃんがなぜ笑ってもらいたいのか、物語はその体温をしっかり告げてくる。
そうなってみると、ぶっ飛んだ奇行をパナし続ける珍獣も、当たり前以上に心を持った人間であり、悲しみと喜びが背中合わせで踊り狂う、極めて瑞々しい場所で必死に生きてることが、こっちに伝わっても来る。
この悲喜こもごもの実感が、作品の独自性であり魅力だろう。
霧尾くんに深く突き刺さった、旧友の死という重すぎる楔。
捨て去って気楽に生きてりゃ幸せかと問われれば、狂騒の後お母さんとの会話を聞き届け、「んなことねぇよ!」と、思わず声もデカくなる。
しかし返ってこないメッセージを送り続け、確かに一緒に笑えた誰かを否定して死人に寄り添う生き方は、高校生のガキにはあまりに重たく、悲しすぎる。
んじゃあ霧尾くんがもう一度笑うために、バカで不器用な藍美ちゃんに何が出来るのか…って話になってくる。
涙ナメナメソングをぶっ放し、波ちゃんと一緒に妄想爆裂で盛り上がり、直接言葉を交わせばダダ滑りで、でも当たり前の青春みたいに笑いあえもする。
ラストに霧尾くんの足踏みが描かれたのでそっちに意識が引っ張られるけど、ドタバタ狂った大暴れをぶっこきつつも、藍美ちゃん体当たりの恋は確かに、霧尾くんの凍りついた時間を揺すぶれている。
コトがコトだけに、かなり慎重な踏み込みを必要とする領域ではあるんだけども、桃瀬や皐月が友達の心を慮ればこそ踏み込めない領域に、クレイジーな勢いで思わずぶっ込めるのが、藍美ちゃんの強み…なのかもしれない。
何が正解か、教科書が教えてくれない凄く難しい課題だから、どうあがいても藍美ちゃんらしい大暴れで、死と悲しみの国に囚われてしまった少年を、生と笑いの世界へ引っ張り直す道が、これから待っているのだろう。
…待っててくれなきゃ困るんだよ!
ガキが一人であんな泣き方しちゃいけないんだよ!
その一歩目として、遠巻きに霧尾くんを消費する間合いから、ダイレクトに顔を合わせ言葉をかわす距離感に…”友達”になった今回は、とても良かったと思う。
そっから色恋のゼロ距離へと移り変わっていくのか…霧尾くんを縛る望が同性だと解ったことで、より複雑な色が感情錯綜絵巻に加わった感じもある。
波ちゃんの想いを加味すると、友情と恋慕を切り分けるナイフとして、性別を使えない世界ではあって、望と霧尾くんをどんな思いが繋げていたのか、まだ不鮮明なのが悩ましく、とても良い。
「必ずしも全てにラベルを貼り付け、切り分けなくてもいい」という不鮮明な可能性も含め、色んな星たちが青春の空に瞬き出した気がする。




つーわけで想い人に邂逅して即座に限界になっちゃう藍美ちゃんと、かなりスン…ッてしてる波ちゃんなわけよ!
ワーワーテンション上げて、光の方へと己を突っ走らせる藍美ちゃんが、波ちゃんを引っ張る手を、霧尾ファンクラブ二号は握り返していない。
関係性消費に呪われた限界オタクの限界オタクが、下唇噛み締めて状況の変化にヤバい顔する奥で、自分の手のひらを離れて転がりだした現実が、波ちゃんの思いを置き去りにしていく。
本心を見つけるヒントを巧妙に蒔きつつ、ハイテンションコメディの力強さでそれを覆い隠す手法が、ずーっと巧いアニメだ。
自分の気持ちも霧尾くんへの熱狂も、嘘で包んで永遠を望む、波ちゃんの幸せな日々。
藍美ちゃんと霧尾くん…そこに関わる様々な人達が、何も願わず傷つかないお人形だったら、それも永遠に続いただろう。
でも波ちゃんが身を置いている青春は、平等に誰かが誰かを思うことを許していて、その気持が触れ合った時、世界は時に望まない方向へと転がっていく。
無縁だからこそ騒いでいられた憧れが、等身大の手を伸ばしてきて自分たちに触れ、当たり前に友達として会話したり、もしかしたら恋になっていったりするかもしれない、生きた現実が波ちゃんにも迫ってくる。
何もかもが書き換えられていく、現在進行系の場所に彼女は立ってる
霧尾くんへの熱狂を縁に、ずーっと藍美ちゃんの隣を独占できる、ズルくて特別な二人きり。
それが恋であり、悲しみに呪われた少年をもう一度笑わせたいという、誰にも文句言わせねぇ純情に突き動かされている以上、色んなモノが動いて変わっていく。
この相互干渉を拒絶して、藍美ちゃんとの幸せな嘘を続けようと願うことは、つまり霧尾くんを望の死にずっと囚われた、泣きつづける子どもに押し込めることにもなる。
自分の静止した幸せと、好きな人と一緒にいるためのダシ生身の悲しみ…それを拭ってあげたいという藍美ちゃんの祈りは、なかなかうまく釣り合わず、永遠でいてはくれない。
さー染谷波、何を選ぶ…永遠を望むエゴと指切りすると、藍美ちゃんを好きでいていい、誠実な自分を手放すことになるぞ…。
ここで桃瀬くんから波ちゃんへの思い、皐月ちゃんから桃瀬くんへの願いが今回顕になって、トンチキ相関図はさらにややこしいことになってきた。
桃瀬くんの側にいるために、霧尾くんを便利に使っている皐月ちゃんの罪悪感と心地よさは、波ちゃんと藍美ちゃんと霧尾くんが作る、三角形の鏡写しなのだろう。
お互いズルい秘密と、凄くピュアな思いを両方抱えたまま、元気で騒がしい日常を演じ、維持し、ずっと続けばいいと思いつつ、何かが壊れ変わっていく瞬間を望んでもいる。
そういう生のドラマが目の前で演じられて、関係性のオタクは絶頂寸前だッ!
…星羅は特に、”こづかい万歳”レルムの住人力が高いよなぁ…。
波ちゃんから藍美ちゃんへの思いは、ここまで丁寧に描写を積み重ね暗示されているわけで、霧尾くんとの距離を縮める起爆剤になった、桃瀬くんの思いが報われなさそうなオーラも、自動的にムンムン匂う。
そこに皐月ちゃんのズルさと純情が絡んで、ぜーんぜん関係ない場所に友達を望んでいた満田の青春も瞬いていて、こりゃあなかなか複雑な綺羅星だ!
今回は絡み合う恋色模様にフォーカスしたのでサラッとした描写だったが、仏頂面ながら藍美ちゃんとの奇妙な触れ合いに、満田が救われてる様子書いてくれるの嬉しいんだよな…。
お前が一番、消しゴムのおまじないが叶ってるポジションだぜ、化学室の呪詛師…。




外野で賑やかに関係性を消費し、その意味と価値をがなり立てる星羅がいてくれることで、藍美ちゃん達の複雑かつ眩しい日々は、コメディの形を保っていられる。
これで星羅が非・当事者としてカウンターに立ってくれていないと、かなり切ない青春のどまんなかに飛び込んでって、笑うどころじゃなくなっていくからな…。
そういう意味では、ドラゴン霧尾に興味津々なただのオッサンを、面白ポジションにしっかり配置したのは、つくづく妙手である。
音量でけー大騒ぎも、切ない青春模様も、両方本当だと描き続けてくれないと、色んなモノが混ざり合うグルーヴが消えて面白くねぇからな!
店長の勇み足やら、藍美ちゃん覚悟の踏み込みからのドン滑りやら色々あったけど、なんだかんだ当たり前に楽しい放課後を一緒に過ごせた、掛け替えない時間。
霧尾くんは死せる友に操を立てるために、そこで思わず浮かんだ微笑みを噛み殺し、「友達なんていない」と告げる。
胸の奥に秘めた恋、ズルさを隠して繋がる関係。
青春のありふれた眩さとは、すこし重さの違う命がけの嘘は、霧尾くんには涙が出るほどに痛くて重い。
こんなモン…ガキが一人で抱え込んで良いもんじゃねぇよ!
心模様を反射した曇天を、「今日は星が綺麗だよ」と告げる”かくしごと”が、あまりに痛いぜ…。
藍美ちゃんと霧尾くんの距離が縮まるほどに、笑ってらんない普遍的シリアスが彼の背中に食い込み、それをアホバカ超絶テンション人間がマジで救ってやりてぇと願う事情も、ドンドン解ってきた。
藍美ちゃんが憧れの人と顔つき合わせて喋る、大事なきっかけになったメッセージアプリが、霧尾くんと望の間では停滞した永遠の象徴になっているのが、なんとも上手い。
現世でも冥界でも、携帯電話ごしのコミュニケーション・ツールは色んなものを繋げてくれる…ようでいて、もう繋がっていない事実を、生の岸に取り残されてしまった少年に突き刺す、残酷な凶器にもなる。
笑いと切なさ、恋とバカ騒ぎ、青春と死。
一見混ざり合わない二面性が、実は背中合わせ凄く近い場所にあるのだと教える面白さは、この物語の大きな武器だろう。
その一環として、「嘘と本当」つーもんが群像劇の当事者全員を、深く強く切なく貫通していることを、良く教えてくれるエピソードでした。
キラキラピカピカフツーに青春できちまう連中も、そっから外れたトンチキが溢れ出す輩も、皆何かを秘密にせざるを得ない切実さを抱えて、抱腹絶倒のコメディを演じている。
何かがホントで、何かがウソだと単純に切り分けられない、人間味の濃い奇妙な日々に、早急にどげんかせんといかん喪失の残響が、深く長く伸びている。
波ちゃんも皐月ちゃんも、都合のいい嘘で自分の欲望を満たしてるズルい子なんだけども、その奥にはすげーピュアな気持ちが確かにあって。
自分に不都合な真実に誠実に向き合って、拗れた関係性の整理に飛び込んでいくのか、はたまた優しい嘘を貫いて心地よい夢を守っていくのか。
嘘つきピエロ共がみーんな、何かを選べるけど選んでいない保留の季節に身を置いていると、良く分かる回でした。
このモラトリアムへの眼差し…やっぱド直球にジュブナイルである。
この折り返しの現在地から、皆が何を選んでいくのか。
こっからの後半戦も、とても楽しみになって来ました。
皆幸せになって欲しいよホント!