イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

デリシャスパーティ♡プリキュア ベストエピソード7選

 先日無事完結を迎えた”デリシャスパーティ♡プリキュア”、自分なりのベストエピソード7つを選ばせていただきます。

 

 

 ・第12話『小さじ一杯の希望! ジェントルーの本当の心』

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 序盤を支えてくれたジェントルー最後の戦いであり、ゆいちゃんの主人公力があまね会長を救う回。
 ”ご飯”がメインテーマであることは事前に伝えられ、ワイワイ賑やかに日常を転がしつつ、食べることの意味と価値に関して結構生真面目に描いてきたデパプリが、実は”言葉”と”継承”をもう一つ柱としているのではないか……? と思わされる回である。
 言葉を使って好きを守り、奪われたものを取り返していく強さはゆいちゃんがお祖母ちゃんから引き継ぎ育んだもので、たくさんのキャラを救った大事な武器だ。
 この段階ではその包容力と逞しさに目が行っているが、一年かけて受け継いだものの裏にある危うさ、ゆいちゃんだけの言葉を見つける難しさを掘りに行って、別角度から主役の光と影を照らしたこと含め、”言葉”をどう使うか、使わせるか、かなり考えていたシリーズだったと思う。

 

 

・第18話『わたし、パフェになりたい!輝け!キュアフィナーレ!』

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 あらゆるプリキュアがそうであるように、デパプリも既存の”プリキュア”という枠組みからあえて己を逸脱させて、新しい挑戦でもって自作をかき回す試みを頑張っていた。
 それを二文字でまとめると”ヘン”になるのが、このアニメの面白いところだと個人的には考えている。
 せっかく助けた敵幹部が日常生活に戻ってくるまで自宅でしばらく寝込んでいたり、この話数のタイトルにもある奇妙な言語感覚とペーソスは、しかし(多分)一番作品世界を見る視線が低く土臭いプリキュアが、描こうとしたモノにしっくり来ていたように感じる。
 大人びたあまね会長からは出そうにない『パフェになりたい!』という幼い願いを、ゆいちゃんが取り戻させることで彼女はプリキュアとなり、一足先に人生の凸凹を良く知ってる頼れる先輩として、大いに仲間の力になっていく。
 そんな彼女の正しさに頼りつつも、その裏にある規範意識の危うさ、ドス黒く燃える憎悪の炎にもちゃんと向き直させて、同じ立場である幹部連中が自分を見つめ直す助けもさせていたのは、菓彩あまねという人を良くみた話数の使い方だったと思う。
 個人的には分かりやすいポンコツにそこまで貶さず、気品と強度を保ったまま親しみやすさと可愛げを作れたあまねの描き方は、相当に好きである。

 

 

・第21話『この味を守りたい…!らんの和菓子大作戦』

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 このヘンなアニメで最も明瞭に”ヘン”なのだと描かれ、ヘンでバカだからこそ感じる劣等感や戸惑い、規範から外れてしまっている自己認識と自分らしさを彫り込んでいったらんちゃん。
 横並びの一般性からははみ出しているけども、だからこその個性を仲間や縁ができた人に認めてもらいながら、一歩ずつ世界を知り自分を作っていった彼女の足取りは、デカい話をあえてやらなかったこのアニメ”らしさ”を、一番濃く体現するキャラかもしれない。
 この話数での彼女は世間知らずで頑なで、けして物分かりの良い”イイコ”ではないが、商店街の栄枯盛衰に仮託された滅びの宿命と、それを超えてなお生きていける人間のあり方に、地味ーなところから生真面目に取り込む姿勢もまた、大変に”らしい”。
 人間解らないからこそ解っていけるものであり、今はなにも解らない自分に、時に拒絶反応で強く反発を見せながらも向き合って、一個ずつ何かを掴むことが大事なんだと思う。
 SNS要素を背負って今っぽさを担当したこと含め、”ヘン”ならんちゃんの発展途上を一個ずつ丁寧に積み上げていった物語は、とても好きである。

 

 

・第23話『ここねのわがまま? 思い出のボールドーナツ』

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 らんらんが察しと物わかりが”悪い子”担当だとすると、一見賢く物わかり良く、その分物凄い強い力で自分を押し殺している”良い子”なここねちゃんは、かなり生々しい難しさの機能不全家族にメインで切り込む、これまた挑戦的なキャラクターだったと思う。
 誰も悪気はないんだけども歯車が噛み合わなくなって、気づけばどん詰まりまで追い込まれてしまった芙羽家のドラマは、大人を万能無敵でもなんでもなく、ときに間違いときに悩み、それを改めるからこそより正しくあろうと頑張ることが出来る、当たり前の人間として描くことを可能にした。
 これをヤダ味少なく描き切るのは相当難しかったと思うが、食べて生きて死んでいく、人間の当たり前を話しの真ん中に据えたデパが選んだ地道な語り口が、プリキュアらしい楽しさを維持したまま、土の匂いがする問題を身近な手触りのまま扱うことを可能にしていたと思う。
 出来るからこそ放って置かれ、良い子の檻に閉じ込められる切なさ、苦しさをここねちゃんはしっかり物語の真ん中にもってきたし、創り手たちはその繊細な難しさを投げ出すことなく、家族がもう一度ひとまとまりになって自分たちの形を探し作っていく、手作りの再生物語をちゃんと走った。
 それは”作って、共に食べる”というデパプリのテーマを、芙羽家を素材に力強く描く妙手だったように思う。
 色んなものが失われ壊れかけるが、それを見つけ直し自分なり作り変え共有することは、無理でも無駄でも無意味でもないのだ。

 

 

・第27話『コメコメ大変化!?らんのハッピー計画』

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 中盤の個別回は圧倒的な切れ味でもって、青春に悩む少女たちのあり方を力強く切開し、彼女たちに深い悩みと輝く答えを手渡した。
 つまり青春群像劇としての物語のポテンシャルはある程度落ち着いてしまったわけだが、そこに赤ん坊から少女へとすくすく育ったコメコメが、たくさんの懊悩と健気を抱えて前に出てくる。
 メイン視聴者層にとってプリキュアとは憧れのお姉さんであり、等身大の自分は無力で可愛いマスコットに投影されている構造だと思うが、今作ではそんな定番に一歩踏み込み、すくすく身の丈が伸びている子供だからこその悩みや難しさを、話の真ん中に取り込んできた。
 そんなエピソード群の中でもこの話数を選ぶのは、おバカ担当で誰かを背負う立場になかったらんらんが、物語を通じてどう自分を成長させたかとてもクリアに見える話だからだ。
 このお話は『人も世界も生まれて死んで、なにもかもが一定ではありえない』という、大変プリキュアらしからぬ無常観を前提に進んでいると思うけど、それは終わっていく悲しさだけを意味しない。
 時が前に進んでいってくれるからこそ少女たちは一歩ずつ大人に近づいていって、子どもは眩しく憧れに手を伸ばし、あるいは今まで見えなかった難しさに悩んだりする。
 その全部に意味があるのだと、結構な話数を使ってコメコメ主演でしっかり書けたのは、やっぱデカいファンタジーよりもメシ食うリアルを大事に、土っぽく自分なりの語り口を選んでいったこのお話の強さかな、と思う。

 

 

・第37話『ひそむ怪しい影… あまねの文化祭フィナーレ!』

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 優れた悪役は優れた英雄譚には必要不可欠で、このアニメでその仕事を果たしたのは、間違いなくナルシストルーだった。
 土っぽい作風に相応しく、人間が踏みつけにしちゃいけないところを全速力でもって土足で踏み荒らす配慮のなさは、非情に切実な怒りを見ている側に生み出してくれた。
 そんな彼は元同僚のあまねに結構執心していて、善良の実在を自分の中にも世界の外にも信じないことで悪党やってたナルシストルーとしては、あまねのおすまし顔は”嘘”に見えていたのだと思う。
 一足早くハロウィンに、そんな欺瞞をバチボコ殴って乗り越えていたあまねの個別回最終ラップ、話の半分以上はナルシストルーに向けられる。
 生まれつきの悪と定められた闇の一族は特に出てこず、世界規模のデカい闘いまで話が膨らんでいかないデパプリにおいて、悪もまたおしなべて人間の匂いがする。
 完璧さの檻に閉じ込められて迷ったり、愛ゆえの独善と独占に押し流されてしまう

人の弱さと過ちを、上から真っ二つに”正しく”切り分ける筆はこのへんてこなプリキュア当然持ってなくて、悪党は悪党なり迷っていた自分と向き合い、普遍的な社会的手続きを通じて、当たり前に何かを取り戻していく。
 ”懲役”というシステムをこれほど前向きに描いたプリキュアも珍しく、それは古い時代から受け継がれている人間の当たり前を、まだまだ諦めきってないこのお話らしい視線だなと思う。
 意固地に”悪”である自分に立ち止まり、その事でアイデンティティを守ろうとしていたナルシストルーが、自分の弱さや歪さも全部ひっくるめで向き合い直し、軽やかに未来へと歩みを進めたジェントルー=あまねに追い抜かれて手を引かれる構図も、風通しよく心地いい。

 

 

・第42話『ゴーダッツのたくらみ プレシャス vs. ブラックペッパー』

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 この話数というよりは、終盤戦一連のゆいちゃん掘り下げ回……であるけども。
 思い返すと”良い子”なここねちゃんよりも、ゆいちゃんは遥かに不自由に物語にとらわれて、自分だけの弱さや脆さを掘り下げられない立場に置かれていたな、と感じる。
 物語が始まる以前、ロールモデルであり保護者でもあった祖母を喪失したゆいちゃんは、それを自分なりに咀嚼し、受け取ったものを生かし直す道を既に見つけてお話に登場していた。
 ”答え”を既に見つけている彼女の信念は揺るぎなく、怪物的フィジカルにも支えられて強く正しく美しく、けして迷わない話の主軸として、ある意味便利に使われてきた。
 デパプリはそんな自分たちの筆致にかなり自覚的に、彼女の言葉が借り物でしかない脆さとか、真実暴力と悪意に横から殴りつけられた時夢がどうひび割れるかを、終盤しっかり掘り下げに来た。
 たっくんの明瞭な恋心と、博愛故に個人的感情にうといゆいちゃんのすれ違いもまた、その思いにまだ名前はつかないとしても特別に大切である事実を、子供のように泣きじゃくりながら抱きしめ、家族への愛ゆえに憎悪に滾る拳を止めるのは自分なのだと、理想を掲げて対峙もさせた。
 隣りにいるのが当たり前で、でもたしかに変わりつつある二人の距離感は、分かりやすい決着には至らない。
 しかしゴーダッツが叩きつけた暴力と裏切りのど真ん中、この次の話数でどっぷり暗い感情に沈み込ませたからこそ浮かび上がった強い気持ちは、間違いなく和実ゆいだけの人生の武器になっていく。
 それを握りしめていればたどり着くべき場所には(ときに当たり前に迷いながらも)行き着くだろうし、プリキュアとブラックペッパーとして共に闘ったこの日々が教えてくれたものは、普通じゃないからこその強さで二人を導いていくだろう。
 そんな幼なじみ二人の普通の物語に、特別な力で当たり前を護る一年の物語がピタッとハマるよう、終盤戦を徹底的に主役に回した選択が、俺は凄い良いなと思う。

もういっぽん!:第4話『3人いるから、大丈夫』感想

 遂に始まったインターハイ予選、交錯する視線と汗は少女たちをどこへ連れて行くのか! という、もういっぽん! アニメ第4話である。
 これまで未知中心の引力で回ってきた作品であるが、今回は天音パイセンと永遠の拗れた関係性が激しくぶつかり合い、不本意な別れの後お互いが積み重ねたものを、必死にぶつけ合う熱量が凄かった。
 ”敵”である天音が迷いの中にいて弱いわけではなく、彼女も彼女なり霞ヶ丘の先輩・後輩と築いてきたものが支えとなり、強く立てるようになっている。
 むしろ割り切れない過去に迷った隙を突かれるのは主役サイドの永遠であり、後ろ向きになった気持ちを前に向かせてくれる仲間に励まされ、忘れ物を取りに行くために目の前の相手にぶつかっていく。
 そうやって”敵”とすら心を繋げてくれる柔道の懐を、誰もが青春に必死な群像劇のまばゆさに照らして教えてくれる、熱のあるエピソードとなった。
 何かとビビりな早苗の戸惑いと意地、霞ヶ丘にも強く宿る友情など、横幅広い描写も良かったね。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 というわけで青葉西高校女子柔道部先鋒、滝川早苗往きますッ! からお話は開始する。
 散々トイレに飛び込むあがり症、周りも自分も見えていない時は眼鏡がオデコにONしてて、未知の一言で自分を取り戻した後はそれが戻るというのは、分かりやすい描写だ。
 後に永遠と天音のエース対決で描かれるように、みっちり鍛え上げた身体と技術に万全な心が乗っかって初めて”柔道”出来るわけで、今自分がどこにいるのか、周りに誰がいるのかを確認できる視力は、とても大事だ。
 今回は(今回も)誰が誰を見ているのか、”眼”の描写が強い作品でもあるので、早苗を主役に演じられる『高校部活によくある風景』は、メインテーマに選んだ競技で何が大事かを、よく切り取ってくれる。

 周りに流されない不動心が常に備わっているのなら、それは既に達人の領域なわけで、早苗は雰囲気に飲まれ、(これまで何度もそうだったように)未知に助けられて勝負の場に戻ってくる。
 前回描かれた『空気を読まず、空気を変える』未知の美質は相手も場所も選ばず、むしろピリついた試合の現場だからこそ、部にとって得難い強さになっていく。
 ここらへんをちゃんと見守ってから、顧問として大人としてメガネを戻した早苗に声をかけ、万全で勝負に挑めるよう声をかける夏目先生は、やっぱ良くできてるなぁ、と思う。

 三人だから、負けても大丈夫。
 そんな言葉をありがたく思いつつも、早苗は泥臭く相手にしがみつき、ポイントを取られてなお勝ちを狙う貪欲さで、一本をもぎ取る。
 未知の野放図な存在感はとても大きく、それを主軸に回っている話であるけども、彼女に惹かれる者たちが”脇役”なのかと言われれば、けしてそうではない。
 ゲロ吐きそうになりながら相手と取っ組み合っているのは他でもない早苗自身であり、自分を支えてくれるものが良く見えるからこそ、一本で勝ちたいと強く願う。
 そういう切実さが誰にでもあって、それでも叶わない現実があって、なおかつ負けてなお立ち上がる強さも、少女たちの中にはある。
 早苗の迷いと奮戦は、そんなお話の芯をよく伝えてくれる。
 つーか未知……その”距離”へ無自覚に侵入できる、お前が怖いよ……。

 

 

画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 早苗が一本取るまでの20秒は泥臭くて長く、天才・氷浦永遠は瞬きを許さないほどの速さで勝ちをもぎ取る。
 ある意味残酷な対比であり、永遠が無自覚に振り回してしまう”才”の刃でぶった切られた結果、天音は狭い携帯電話の画面に捉えた女に、一生思いを縛られている。
 そしてその視線は一方通行で、永遠の”今”は情熱赴くままに跳ね回る未知へと向けられ、思いは噛み合わない。


画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 っていう地獄の一方通行感情多角形を想起させておいて、『霞ヶ丘にだって”ある”んだぞッ!』と、風通し良くぶち抜いてくるのがこの作品である。
 見よ、亜美先輩の菩薩の笑み。
 見よ、天然ちびっ子へのあま姉ーさんの面倒見。
 ”敵”にも主役と同じ等身大の青春がしっかりあって、何かにとらわれていたとしても共に汗をながす日々の中で強張りは緩んで、自分を支えてくれる大事な人の顔を、ちゃんと見られる時間が蘇っている。
 強い思いが生み出す等別な強さを、ありきたりで大切な尊さを主役の専売特許にせず、『みんなそれぞれ、どデケェ宝物を抱えとるんだッ!!』と描いてくれるのは、贅沢であり誠実でもある。
 そらそーだ、みんな必死に柔道やって生きてんだもんなぁ……書割じゃねーのよ。

 長縄まりあボイスも最高な妹尾後輩、もぐもぐWバナナでマスコットな可愛さをアピールし、青西にはキツい顔ばかり見せる天音の可愛げを引き出し、大変良い仕事をしてました。
 ここで過去に呪われ時間を止めた”思い出の死人”として天音を描くのではなく、永遠と同じく心にわだかまりを抱えつつ、自分なりの逞しさで自分だけの物語を、新しい仲間とちゃんと積み上げてきた一人物として立ててる所が、”人間”に敬意があって良い。
 そうやって横に視野が広がること……広げてくれる存在と出会えたありがたみを噛み締めつつ、だからこそ自分の真ん中を占拠してしまっている誰かとぶつかり、思いをほぐしていける特別な競技。
 描かれる感情と関係が、しっかり畳の上に集約して爆裂するよう話が組まれているのは、スポーツを題材にするお話としていい作りだな、と思う。

 

 

画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 かくして迎えた先鋒戦、引き気味に闘いたい早苗の弱気を、とにかく前に出続ける妹尾の勢いが飲み込み、合わせ一本で決着。
 一回戦では諦めずに粘ること、ポイントを取った相手の心の隙間に滑り込むことで一本掴んだ早苗が、ここでは圧力に押されて後ろに下がりたい気持ちを狙われて、敗北を喫することになる。
 心のないロボットが戦っているわけではなく、揺れる思いを抱えて挑めばこそあっけなく負けることも、思いがけず奮戦することもある”柔道”の面白さが、怪力の小兵・妹尾緑子独特の勝ち筋にうまく映える場面だ。
 『とにかく前に出て、あま姉さんに繋げる』という敬慕が、圧倒的な推進力を与えていた。
 慕われてるねぇ天音さん……。

 身体の小ささをハンディとせず、下に入り込んで崩す独自のへスタイルと、それを支える筋力で磨き上げた妹尾の闘い方には、気合いとプライドが宿っていた。
 これを真正面から受け止め飲み込み返すタフさは、今の早苗にはまだない……ということだろう。
 つまりもっと強くなれるということで、こういう”余白”を勝負の只中、さらっと描ける筆は強いなと思う。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 修羅の形相で打ち込みに励む先輩を、夜がふけるまで見つめた瞬間があった。
 そんな相手だからこそ負けたくないと……あの時ねじ曲がって伝わってしまったものを、組み手で伝え直したいと願って、二人は試合場に向き合う。
 叫ぶように伸びる速くて強い組手争い、並の相手なら即倒されている渾身の投げ。
 第1回戦で永遠の強さをあっさりと描いたからこそ、それに並びせめぎ合う天音の強さ……その裏にある感情の太さも、よく伝わる。

 この闘いは才能に恵まれた両校エースのぶつかり合いでもあって、未知や早苗がなかなか到達できない高みで競り合うと、”柔道”がどういう激しさを宿すかも描いてくれる。
 会心の一撃を狙って激しく動き回り、渾身の技を飲み込んで押し返す。
 その速さと圧力がしっかり作画に宿って、別格の熱量が生まれていたのは大変良かった。

 視線のすれ違い、食い違いをここまで積み重ねていたからこそ、二人の始まりを描く筆……そこで確かに交わっていた思いと瞳には、『おっ!』と思わされる衝撃がある。
 天音も永遠もお互いをしっかり見つめて、支え合って前に進んでいた時間を忘れてはいなくて、しかし気づけばまっすぐ向き合えないネジレに巻き込まれて、ようやくここまでたどり着いた。
 相手を油断なく見据え、本気で仕掛けなければ勝負にならない、青春の試練場。
 ここでなら普段伝えられないものを伝え、見つめられないものを見つめられると信じたからこそ、天音は『てめー中堅で来いよ! 逃げんなよ!』とあらくれたこと言ってたわけで、ぶつかり合う形でしか素直になれない乙女たちに、”柔道”は良い告白場所を提供してくれる。
 二人は恋をするように、お互いの首を狙い合うのだ。

 

 

 

画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 そういう土壇場では、心が後ろに下がったほうが死んでいく。
 大好きな先輩との絆を断ち割ってしまった背負に入る時、永遠の心には青い影がよぎって、天音はその一瞬を見逃さない。
 自分なり決着を付ける土台を、霞ヶ丘の仲間と整えたからこそ決着を挑んできた女の前に、陰りはない。
 その強さに飲まれてしまいそうな時、光の方へと向き直るきっかけをくれるのはやはり仲間の頼もしさであり、特に園田未知である。
 やっぱ人間が太ぇなぁ、この主人公……。

 前回車中で南雲と向き合った時は”光”担当だった永遠が、ここでは”影”に入るの面白いな、などと思うが。
 ここで彼女を捉えたのは変えられない過去であり、救ったのは変わっていく今そのものだろう。
 なかなかうまく行かないことも、変わってくれない自分も確かにある中で、それでも動き出して掴んだ新しい可能性が、自分だけの喜びが目の前にはある。
 そんな事実を思い出すことで、永遠の眼を塞いでいた闇は払われて、この勝負で伝え生み出したいものや、それを求める自分自身と向き合う事ができる。
 そういう自我の足場を整えることで、ようやっと目の前の他人と等身大、全力で組み合うことが出来るようになる。
 様々な思いが交錯しつつ、ネットリとしたその湿度を弾き飛ばして身体が躍動するこの勝負は、心と体がどう繋がって少女達を突き動かすのか、その周りをどんな光が生き生きと輝いているかを、丁寧に描いてくれる。

 

 

画像は”もういっぽん!”第4話から引用

 次回決着へと温度を上げていく勝負の中で、投下された思いではあんまりにも火力が高くて、全てを焼け野原に燃やし尽くしていく。
 『柔道着を着ると勇気が出てくる』も『後輩のための大事なパフェ』も、冷たく壊れてしまったかのように思われていた二人の思い出の仲、既に描かれた物語だった。
 それが大事だから手放さず、新たに進みだした場所でもう一度繰り返すその隣に、もう貴方はいない。
 それでも、だからこそ。
 溢れてくる心に潤む瞳は同じで、しかし少女たちは感傷に溺れて戦いを止めはしない。
 柔道家だからだ。

 やっぱねー……終わり果て悲しい結末になってしまったのだと一回受け止めたものを、ひっくり返して氷の奥のマグマが未だ燃えている様子を、敵味方に分かれてなお繋がっていて、断ち切れなくて、しかし結び直せていない未完成の思いをドガンと叩きつけられちゃうと、まーやっぱ染みるわけ。
 かたや引っ込み思案、かたや当たりの強い意固地と、素直な心根がなかなか表に出ない二人だからこそ、大好きな柔道を通じ本気でぶつかり合うことでしか、お互いの”今”を伝えられない。

 そんな拗れた関係性を汗まみれでほどき、もう一度繋げてくれる特別な手助けとして、”柔道”という競技は凄いもんだなと、試合に宿るど濃厚なエモだけでなく、エース同士の激しいぶつかり合いから教えてくれるのは、大変素晴らしい。
 凄く湿って柔らかな感情を抱えつつ、試合自体は鬼の形相汗まみれ、一切緩まずバチバチにぶつかってる所に、彼女たちがどんだけ柔道好きで、相手が大事か見える感じなんだよな。
 試合描写の切れ味を、キャラクターとテーマを鋭く削り出す刃として生かせてる感じがある。

 この筆を引き継いで次回の決着、未知と亜美先輩の大将戦、情念の爆心地から芽生える新たな思い……と、次も間違いなく良いもん描いてくれると思います。
 大変楽しみです。

TRIGUN STAMPEDE:第4話『HUNGRY!』感想

 壮絶なる惨劇の果てに続く旅路、第二章開幕の令和トライガン第4話は、待ってましたのウルフウッド&ザジ颯爽登場回である。
 やっぱりデザインバッチリ決まりまくりで、変えるところは大胆に変えて”今”刺さる話を作っていく、STAMPEDEのやり方が大正解だと確認できる話数となった。
 まさかパニッシャーからビームとはね……やられたな。
 原作のエッセンスをしっかり受け継ぎ、ド派手にケレン効かせて正当進化させてる作風が、旅の道連れを手に入れてどう転がっていくか。
 食えない男の素足な魅力がたっぷり描かれ、”こっから”がまた楽しみになる良い号砲でした。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 『腹減った!』のタイトル(よりにもよって、”デリシャスパーティ♡プリキュア”最終回にこのネタ株るの、個人的に無茶苦茶面白いけど)どおり、『食べる/食べない』を通じてキャラを表現していく今回。
 プラント飯を夢見る野の民は、タフにワムズを口に運んで命をつなぎ、砂漠の厳しい暮らしを生き延びている。
 お嬢様育ちのメリルは虫を口に入れようとはしないし、罪悪感に苛まれたヴァッシュは命の糧を拒んで、後部座席にプラプラ揺れている。
 何を食べて何を食べないか、どう食べてどう命の糧を粗末にするかは、キャラクターとドラマを語る優秀な鏡だ。

 そんな一行が拾った、怪しさ満点裸足の葬儀屋。
 聖句もうろ覚えな業突く張り、砂漠で貴重な水をテキトーに撒き散らすウルフウッドの底は、出逢ったときからさっぱり見えない。
 一人惨劇を生き延びた少年に飴を与える優しさは、それが影絵芝居でしかないと伝えるかのようにダイレクトには描かれない。
 栄養どころか毒なタバコばかりプカプカ吹かして、煙のようにとらえどころのないキャラクターが、なかなかいい感じに刻み込まれていく。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 巨大ワムズの襲撃でもって、ドタバタ漫才は命がけのサバイバルへと幕を変えるわけだが、前回ナイヴズが凄みを暴れさせた煙ったホラーの表現力は健在で、映像の力で一気に雰囲気を切り替えてくる。
 古代遺跡めいた体内のスケール感、大気に舞い散るパーティクルの活かし方と、初期リドリー・スコット的な演出を3Dアニメでやりきっているのは、なかなかに凄いことだ。
 第一章の3話で、惑星ノーマンズランドでどんな風に人間が生きていて、それを許さぬ宿敵がどんだけ規格外かを描いたので、街の外側にあるもう一つの景色を、活劇を通じてしっかり見せてくれる回……ともいえるか。
 危険極まるワムズが砂漠の風物詩で終わらず、それを自在に操るザジのヤバさに繋がっていく所とかも、手際よくて好きだな。

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 虫のハラワタの中でウルフウッドは、誰かを殺してでも生き延びる人間の……あるいは生物の業を丸呑みして、挑発的にヴァッシュに突きつける。
 生まれつき人類を遥かに超えた異能を背負い、この星に生きる人達の苦悩全部に責任を感じる、赤いコートの聖人。
 断食の苦行のように、頑なに糧を口に入れないそのあり方にムカついているのは、あながち煙幕とは言い切れないだろう。
 サングラスの奥にある本音がジリジリと発火する中で、二人は砂に汚れながら背中を預け、肩を並べて共に歩き始める。
 ヴァッシュが光を持って、ウルフウッドが闇の濃い場所に立つ距離感は、二人がこの後の物語で描く軌跡を、象徴的に先取りしている感じがある。

 殺し殺されが当たり前の人間模様……そうせざるをえない、この星の厳しい環境。
 ウルフウッドはその只中を、罪の重たい十字架引きずってなんとか生きてきて、偶然を装ってヴァッシュと邂逅した。
 運命の相手がメシも食わない腰抜けヘラヘラの助だった憤りが、ヒリついた態度の奥によく薫っていて、いい出会いの書き方だなぁ、と思う。
 つーかメリルがいないとメインの絵面が『兄ちゃん・兄ちゃん・オッサン』で激渋になりすぎるの、新しい味わいながら最高に最高にしっくり来て良いですね。
 めっちゃ”トライガン”っぽいわぁ……。

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 かくして本性を暴いたザジ・ザ・ビーストに突き付ける、断罪機銃パニッシャーの大立ち回り。
 無駄にヒュンヒュン振り回すケレンとか、『え!!? ビーム!!!!?』の驚きとか、スペクタクルを描き切る実力の高さをどう活かすか、よく考えて使ってる感じがある。
 ”食えない男”がぶっ放す閃光は巨大なワムズを内側から解体し、その実力を余すところなく教えてくれる……と思わせておいて、これが打ち合わせ済みの茶番劇だって話数内部で示すの、面白い圧縮率だよなー。
 ヴァッシュの原罪を第1話冒頭から描いたように、ウルフウッドの嘘も早い段階で暴いてしまって、ある程度以上手札を晒した上で”トライガン”を再構築していく試みが、スタンピードでは元気だね。

 メリルたちを助けるべく再びワムズに飲まれたヴァッシュだけど、ザジを撃つでなしワムズを倒すでなし、前回に引き続き無力な善意が空回りしている感じが強調されている。
 それは罪と罰に怯える逃避であり、生きることと死ぬことの意味を重く受け止めているからこその足踏みだが、殺して食わなきゃ普通の人間は生きていけない。
 ウルフウッドは”それ”が出来ないヴァッシュの代理として、巨大な虫を解体して糧に変えていく。
 しっかし新ザジたん、声もデザインも最高にいいな……TARAKOさんのこういうシリアスな演技は最高に嬉しいので、このアニメ以外でもみたいよね。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 パニッシャーによる巨蟲解体ショーはただの遊びではなく、ウルフウッドはそれをガツガツと食う。
 命の糧になるものを口に運ぶ、当たり前の信頼できる人間性を見せることで、ヴァッシュの喉につっかえていた罪悪感を飲み込ませていく。
 旅の仲間を新たに加え、賑やかに楽しく転がっていく荒野の日常は暖かなオレンジ色に輝き、未来を示すかのようにまばゆい星が空を照らしている。
 これは、多分信じて良い。

 そういう手触りがあるシーンを自分たちの手で作った上で、サクッと青く裏切ってひっくり返してくる。
 栄養にはならないタバコを山ほど踏み潰して、冷たい寒色/感触に包囲されながら、生命の取り合いをしたはずの相手と語らう夜。
 どちらが本当で、どちらが嘘か。
 そんな問い掛け自体が無化されるような、魅力的な複雑さが煤けた優男にしっかり宿っている。
 画面のカラートーンを雰囲気ごとに変化させて、統一した味わいで演出してくる手法は、このアニメに特徴的だよなー……見せたい場面ごとに色を決めて、それに染めて見せてくる感じ。
 似た方向性を探すと……内海紘子の”BANANA FISH”とかかなぁ。

 暖かな光のなか差し出され、結びあった手のひらの奥に隠したものは、未だ見えない。
 倫理と善意をストッパーに、自分の中の怪物を押し留めているヴァッシュもまた、ウルフウッドに負けず劣らず”食えない”。
 なら強引に噛み砕いて、自分と同じ中身をむき出しにしてやる……とヤバ兄さんが息巻いた所で、今回は終了である。
 STAMPEDEのナイヴズ、弟が好きすぎて頭がおかしい感がより強調されてて、大変いい感じですね。
 魔人が長く伸ばす凶刃が赤く光る中で、四人のドタバタ珍道中はどこに向かうのか。
 次回も楽しみです……え、モネヴ出んのマジでッ!?

デリシャスパーティ♡プリキュア:第45話『デリシャスマイル~! みんなあつまれ!いただきます!!』感想

 食って笑って戦って!
 ローカルな手触りで一年を駆け抜けたデリシャスパーティ♡プリキュアも、遂に最終回。
 大仰に構えた所なくどっしり丁寧、一話まるまるエピローグに使って、別れと出会いの先にある風景に元気よく進んでいく、このお話らしいフィナーレとなりました。
 ブンドル団幹部たちがガチで牢屋にブチ込まれ、司法制度の更生効果を体現するかのような前向きさで刑務に励んでいる姿とか、おそらくこのプリキュア以外では見られないだろう……。
 ファンタジックな題材を扱いつつも、地に足ついた雰囲気を大事に話を進めてきた一年間の、集大成となる最終回だったと思います。

 

 カメラは最終話だからって焦ることなく、おいしーなタウンとクッキングダムに戻った日常を追いかけていきます。
 そこにはなにかの終わりがあって、しかしそれは永遠の別れではなくて、魔法の国に行き来もできれば、離れていても連絡は付く。
 あくまで”隣国”くらいの距離感で描かれる異世界の手触りは、なんともこのアニメらしいなぁ、と思った。

 そんな風に流れる時間を、プリキュア全員がそれぞれに掴んだ未来へのステップをマリちゃんは見守って、来るべき別れに備えていく。
 これまでそうだったように、彼は見ているものの代弁者として、あるいは物語上必要な行為を真っ先に行う代表者として、この最後のチャンスにプリキュアに言ってほしいこと、やってあげて欲しいことを形にしてくれた。

 あなた達こそが、私だけのプリキュア

 それは20年を迎える一大コンテンツに足を乗っけつつ、かなり”変”なアニメとして独特の角度から、自分たちが描くべきものをしっかり描ききったこのお話に手向ける、一番誠実な言葉かなと思った。
 人間の一番根本的なところを育む食事を大事に、分け合い共に笑って時折迷って進んできた先に、待っている景色。
 伝説の戦士である以上に等身大の少女だったゆいちゃん達が、待ち望んでいた未来に近づけたのはやっぱ、マリちゃんが時に前に出時に後ろに下がり、物語が一番いい形に収まるよう生き生きと動いてくれた結果だなと、この最終話に思いました。

 そんなマリちゃんがあくまで個人的に、獄にブチ込まれてるフェンネルに向き合い、間違えきった過去とそれでも確かに共有した時間を噛み締めながら、罪の行く先に寄り添う思いを吐露する時間があったのも、凄く良かった。
 親友として、その独善が歪んでいく気配を感じ取れなかった無力な存在として、マリちゃんはこの結末に色々思うところがあると思うし、その切なさは大人だろうが子供だろうが変わりがない。
 なまじっか背負う荷物が増えて、自分の限界を知っている分、正しい大人の方がたどり着いた結末に思うものは多いのかもしれない。

 その上で、間違えたものもまた歩き直せるかもしれない現実的な希望の1つとして、”懲役”がめっちゃポジティブに描かれてるの、俺は本当に好きなんだよな……。
 完璧への強迫観念に支配されてたセクレトルーも、人妻への憧れで獄中生活にゴリゴリ勤しんでるし、ナルシストルーも何かを味わう楽しさを広げて、自分が身に着けた技術の精髄であるスピリットルーを、他人を助ける優しい機械として作り直すことも出来た。
 彼らの牢獄ぐらしは懲罰であると同時に、制度に期待されている通りの生き直しのチャンスとして機能してて、プリキュアらしい理想主義が”懲役”にすら及んでいるのが、俺はとてもいいことだな、と思う。
 生まれつき闇の存在として宿命に縛られ、けして覆せない運命に突き動かされて悪事を働く存在がいなかった、あくまで人間の物語としてのデパプリで”悪”を描く以上、それがいつか笑顔に包まれるのだと信じられる足場が、特別な魔法ではなく人間界にもありふれている法制度に宿ってるのは、僕は希望だと感じた。

 

 ここら辺の特別ではないものを大事にする手付きは、最後の変身を巨大ケーキのキャンドル点火に使った展開からも感じられた。
 プリキュアは伝説の戦士であるが、メシばっか作ってたデパプリは闘いばっかやっていたわけではなく、その特別な力は誰かを殴るためではなく、誰かを笑顔にするために使われてきた。
 お話に幕が下りるこのタイミングで、そのど真ん中に火を灯すように一年お世話になった変身バンクと合体必殺技が使われて、祭りを楽しむ人々だけでなく、ムショで頑張る元悪人どもにもケーキが振る舞われるのは、デパらしい絵だなと思った。
 やっぱ間違いなく”ヘン”なプリキュアで、だからこそ好きだなぁ、デリシャスパーティ♡プリキュア……。

 一年かけてバブちゃんから体も心もデカくなったコメコメが、ゆい達とともに過ごした日々を強さに変えて、別れを前に堂々と独り立ちしようとしている姿も、また良かった。
 メイン顧客層の愛玩願望の受け皿になるためには、ずーっと赤ちゃんでいたほうが色々都合が良かったかもしれないが、コメコメは自分なりの物語をしっかり背負って、何も出来ない無力な子供であることに悩んだり、自分なりに出来ることに背伸びしながら飛びついたりして、元気に頑張ってきた。
 その成果を彼女なり示す上で、"継承"ってテーマを背負った主人公が何を伝え得たかを描く上で、あの強がり笑顔はとても良かったと思う。
 その尊い震えを全霊で受け止められる和実ゆいのデカさが、一年の物語……特に後半の厳しい試練を通じて美質をそのままに、より靭やかで優しいものになったと解る描き方も、また良い。

 ゆいちゃんとたっくんの未来も、彼女たちの今に全く嘘がない柔らかさと暖かさで未来に繋がっていて、焦りがなかった。
 それが恋という形にまとまっていくかは不定形の未来の中だが、激しい戦いの中でゆいちゃんは品田拓海という少年が自分にとって特別な存在であり、大事なものだということを実感した。
 あんまり自分の願いを告げず、誰かが夢に向かうためのエナジーを分け与えてきたゆいちゃんが、『世界中の招き猫を見てみたい』というわがままを、たっくんにまず告げる。
 それが今の二人の現在地なのだ……という納得が、これまた終盤戦の物語を経た上でこの最終回にはしっかりあった。

 

 おいしーなタウンというローカルな場所、そこに漂う少しノスタルジックな共同体理想主義を柱に進んできた物語は、あまり大きなモノをカメラに切り取らず、メシを食って必死に生きてそれでも死んでしまう、人間の生身を大事に進んできたと思う。
 ヨネさんは物語が始まる前に当たり前に死んでいて、ゆいちゃんはその小さく切実な衝撃を噛み締め受け止めたところから、物語に飛び込んでいる。
 彼女の人生で一番大事だったはずの決断は、既に果たされたところから物語は展開し、”答え”を既に見つけているゆいちゃんに助けられる形で、他の子達も世界の命運もいい方向へと進んでいった。
 あくまで人間基準、当たり前の営為を大事に手の届く夢を積み重ねていくその筆致は、派手さがなくて実直で、時にへんてこで……やっぱり好きだ。

 画角を思いっきり地面に近づけた結果、”人は死ぬ”という事実を作品の真ん中に据えた上で、それを受け止めて前に進む力に変えたゆいちゃんと、愛と独善に呪われてしまったフェンネルとの最終決戦には、なにか異様な生っぽさが宿ったように思う。
 作品で大事にされた”食べる”という命の営為に比べ、あまり堂々前に出ることは少なかったが確かに、このお話における死と断絶は相当、色が濃かったように思う。
 死によって隔てられてなお受け継がれるものの意味と、それを糧にした上で自分だけの今を必死に走っていく尊さと、ゆいちゃんが賢明に助けた人たちとゆいちゃん自身が、向き合った物語。
 死別の悲しみと孤独に向き合いきれず、間違えてしまった魂を諦めず手を伸ばして、握り飯食わせた最終話のゆいちゃんは、物語が幕を閉じた後も一歩ずつ、日々を生きていく。

 それは独占と独善の危うさが、いつでも悲しみを世界に広げてしまう場所を進む、ということだ。
 ファンタジックな現代版御伽噺の中で、ゴリッと硬い質感で見据えられていた反・共有主義への抗議。
 土っぽい匂いの書き味と並ぶくらい、断絶と孤立が加速し続けるモニターの向こう側の世界に向けて、今言うべきこととしてそれを選び取った意味は、もしかするとこのお話を受け取った人たちがどう生きて行くかで、値札が付く部分かなと思う。
 主役を特別にする力に”Sharing”を冠したこのお話は、パッと見の感触よりも結構シリアスで重たいものを扱いつつ、あくまで明るく朗らかに、自分たちらしい語り口を最後まで徹底して、自分たちが積み上げた物語を走りきった。
 一年、大きなアクシデントに見舞われつつもこの終わりまで、キャラクターとドラマ送り届け、描くべきものを描けた。
 それはやっぱり、特別に凄いことだ。

 デリシャスパーティ♡プリキュア、とても面白かったです。
 僕は”食べる”という行為が人間存在にどういう影響を及ぼし、意味を持っているかに結構な興味があって、そこに響き合うこのプリキュアを、とても楽しく見続けることが出来ました。
 人間の一番根本にふれるテーマを扱うのに相応しい、身近な手触りを大事にお話を作り上げていったこと。
 だからこそ描ける、ちっぽけで大事な少女と少年達の青春の歩みを、生き生きと描いてくれたこと。
 その先陣を力強く走った少女の危うさを、最終コーナーを回りきるタイミングでしっかりと削り出し、和実結という存在が何に支えられ、何を作っていけるのか刻みつけてくれたこと。
 好きになれるポイントが沢山ある、良いアニメ、良いプリキュアでした。
 お疲れ様でした、ありがとう。
 楽しかったです!!

シュガーアップル・フェアリーテイル:第4話『王家勲章の行方』感想

 砂糖乙女の生き様は、暴走乱入ビンタに涙……何でもありだかかってこいッ!
 綺麗な包み紙に迸る野蛮を詰め込んだ、今一番アツい(当社比)少女青春物語、第一章完結の第4話である。
 前回ジョナス・ザ・ゴミクズキングが点火してくれたお話の勢いそのままに、アンちゃんが泣いて笑ってまた泣いて、人生の手綱をシャルの存在を暖かく感じることでしっかり掴んで、明るい空へと歩みを進めていく様子が力強く描かれていた。
 振られた腹いせに植えた狼の大群をけしかける、倫理のブレーキが確実にぶっ壊れてるヤバ人間をビンタ一発で許すあたり、度量もデカいと良く理解った。
 ……いやアイツはやっぱり、消しておいたほうが枕を高くして寝れるタイプの動物だよアンちゃん……。

 

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第4話より引用

 そんな”地獄の屍肉漁り(ヘル・スカベンジャー)”が全てを奪っていった後、降りしきる涙雨に濡れる少女と見守る妖精。
 るれない態度ばかりとっていたシャルは旅路の中、アンの優しい気持ちに触れて静かに距離を縮めて、雨に濡れることもいとわず面倒を見てくれる。
 ここで降っている雨は物理的な天候現象であると同時に、ドス黒い闇に飲み込まれかけているアンの心の具現でもあるので、それを拭わず共に濡れるシャルは、アンを取り巻く嵐を共に闘っていく覚悟と優しさを、具体的な姿勢で良く教えてくれる。
 細やかな心象を切り取るクローズアップの多様が目立つ作品だが、こういう感じのクッションかけた演出もたいへん上手く、正調ジュブナイルに必要な文学的奥行き優れた美術とともに、豊かに踊っている感じがある。

 どれだけ雨が降り注いでも太陽は昇り直し、世界には美しいものが満ちている。
 新たな妖精を宿した青い木の実は、絶望を超えて立ち上がっていく可能性の大きさを示すように、強い存在感を宿して画面に切り取られる。
 どんだけ世界が差別と暴力に満ちていても、確かに生まれ出る美と可能性。
 雨上がりの世界で妖精という神秘にアンが出会い、その誕生に手を添えていく様子は、銀砂糖職人という職業に必要な美との出会いが、アンの前に豊かに開けていることを教えてくれる。

 あとまー、現実に煤けた妖精奴隷の姿ばっかり見せられてきたので、それが世に生み出される時どんな姿なのか、この目でちゃんと確認したかったてのもある。
 現代の倫理観に縛られてる読者としては、世間のゴミカスっぷりよりもアンの平等と博愛を信じたくなるわけで。
 今回ルスルの神秘的生誕を目にしたことで、アンが理由もなく大事にしてる信念が、間違いではありえないことが良く理解った。
 この『妖精って、綺麗で良いものだね……』というしみじみした実感は、シャルとの(困難山盛りだろう)恋路の正しさも裏打ちしてくれる描写なわけで、ファンタジックに美々しく描けていたのはとても良かった。

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第4話より引用

  血と涙に濡れた装束を脱ぎ捨て、飾り気のない職人の衣装を身にまとったアンは、美と出会った感動を指先に込めて、たった一人のために砂糖細工を仕上げていく。
 シャルのために、シャルが笑顔になってくれるように、シャルのように美しく。
 乙女の心は運命が出逢わせてくれた彼女の妖精騎士でいっぱいであり、そこから溢れるものは美しい砂糖菓子を通じて、人間の醜さに疲れ果てていた妖精に伝わっていく。
 母の思いを引き継ぎ導かれ、クソゴミ人間の裏切りでそれを奪われてしまったアンの心に、一体何が残っているのか。
 ルスルをモチーフとしつつ、アン自身の面影も率直に反映された小さな砂糖菓子には、彼女の赤心と現状が力強く反射している。

 美術家として彼女の指が作り上げたモノが、あれだけ頑なだったシャルの心を溶かし、羽根に触ることを許す決め手になるのは、手仕事を話しの真ん中に据えた物語として凄く大事なことだと思う。
 言葉では動ききらない大きく重たいものも、心の奥底から湧き上がる気持ちを指先に込め、美しい形にまとめ上げていく営為は、アンのいちばん大切な……大切になった人に触れ、身近に近づく何よりの助けになっていく。
 そうやって生み出されたモノが彼女の夢を形にして、得られた変化と成長がアンをもっと素敵な人にしていくだろう。
 具体的なモノが生み出されることによる、ポジティブな人生のサイクルがここではしっかり回っていて、略奪と殺意でそれを逆に回したジョナスの後だけに、この前向きな手応えはよく効く。
 カスに全部を奪われたように見えても、アンが母の遺志を継いで磨き上げた技術と、出会った”美”を形にしたい情熱と、恋に震える柔らかな心は消えない。
 そして彼女の騎士はその思いをしっかり見つめて微笑み、暖かな信頼を預けて守ってもくれる。
 凸凹色々あった二人の気持ちが、嵐を経て素直につながっていくロマンスの質感も滑らかで、大変良い夕暮れだ。

 

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第4話より引用

 『泣き寝入りはゴメンだ……退きな、運命を切り開く馬車が通るぜッ!! 』とばかり、試験会場に特攻(ブッコミ)かける主役達。
 もともと作品に眠っていたあらくれポテンシャルが、ジョナスのヤバ行動を契機に一気にハジけた感じがあり、この勢いは大変よろしい。
 ミスリル・リッド・ポッドの戯けた謀略も良く効いて、衝動で激ヤバ行動取るわりに脇が甘いゴミ人間は、本性をさらけ出すことに。
 『ザマァああああ!』って手応えと同時に、こんだけ悪辣に振る舞いつつ肝心な所がテキトーな楽観主義で穴だらけなの、生々しいソシオパスの手触りが濃厚でやっぱスゲェな……ってなる。
  盗作野郎がお目々泳ぎまくりの浮ついた姿勢でフラフラしているのに対し、アンは目の前の細工に一意専心、強い集中力で砂糖菓子を作り上げていく姿が描かれているのも、彼女が仕事に掛ける思いの強さ、職人としての才覚を感じ取ることが出来たなー。
 勝負どころで三昧出来ねぇヤツは、やっぱダメだわ。
 あとミスリルの道化芝居、正調妖精物語の味わいがあって、個人的に味わい深いわな。

 前回アンの砂糖菓子を酷評したヒューは、マイナス点だったオリジナリティのなさが既に克服され、アンだけの芸術品が既に形になっていることを見抜く。
 それを生み出したのはやっぱりシャルへの恋心であり、職人としての技術と社会的評価が、ロマンスと心地よいダンスを踊っている物語の構造を、うまく可視化してくれる。
 ここの連動がうまく行ってるの、『キャッキャは良いから仕事しろよ……』って気持ちが少なくなってくれるし、このカスみたいな世界で確かに何かが上手くいく手応えを生んでもくれるので、凄く良いと思うな。
 そうやって生まれた変化に、アンの柔らかな心がどう反応するか、繊細に切り取る表情の芝居も力強いし。

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第4話より引用

 まぁそういうヒロイン力高い評定した直後に、ビンタというには腰が入りすぎている掌底フックがジョナスの顎を砕き、スカッと異世界完了! なんだけどね。
 あんだけの仕打ちブチ込まれて、殴打一閃で終わらせるあたりアンちゃんには危機感センサーが搭載されていないのか、とんでもない度量の持ち主なのか。
 善良すぎて危なっかしい部分もあるので、シャルにしっかり見守って欲しい心持ちである。
 ひでー御面相であるがまったくやり過ぎ感がなく、むしろ『もうちょいキッチリツメておいたほうが、後顧の憂いが断ち切れる!』と思わせるのが、ジョナスくんの”才”である。
 やっぱ、頼むから死んでくれ……。

 

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第4話より引用

 まぁカスのことはスカッと忘れて、今は明日につながるロマンティックを、エモい夕日に溶かす時間だッ!
 ド直球に強い場面を衒いなく全力で叩きつけ、一年後の成長に、続いていく物語にときめきを高めてくれる一連のシーケンス……大変良かったです。
 国の上の方の人たちが、アンのさらなる成長とオリジナリティに期待してる様子と、明日は昨日よりも善くなっていける歩みに、黒髪の美丈夫が優しく……時にちょっと意地悪に寄り添ってくれる距離感が、マージで凄い。
 つーか抱き寄せるだけで終わるかと思いきや、更にゼロ距離へと躊躇いなく踏み込み、夢を生み出す魔法の指にささめき口づけまで届けに来るとは……強すぎるよシャル・フェン・シャル……。

 乙女心を翻弄する軽やかな足取りと、柔らかな部分へ本当に触って欲しいタイミングを見逃さない選球眼の強さを併せ持ち、この後のドキドキ☆砂糖菓子ライフを牽引するのに十分なパワーを教えてくれて、大変に良い。
 なんだかんだ根っこが優しくて強く、アンを通じて世界に確かにある希望を見落とさない前向きさもあって、主人公を預けるに足りる信頼感がキャラ造形にあるのが、大変良い。
 そういうシャルの良い部分を引き出せたのは、かわいいかわいいカカシちゃんの純粋で真っ直ぐな心根……それを育んでくれた母との思い出だと思うわけで、そういう善なるものの価値が時に厳しく試されつつも、しっかり信じられてドラマと恋路が進んでいくのは好みだ。
 想い人の一挙手一投足に、体温上げられ瞳が潤むアンちゃんの純情が、色彩豊かに細かく切り取られ続けるのも、独特の温度感を生み出してて良いわ。

 

 

 

画像は”シュガーアップル・フェアリーテイル”第4話より引用

 かくして頼もしい仲間とともに、アンは自分の人生の手綱を握って、夕焼け色の未来へと進みだしていく。
 この試験会場まではシャルに手綱を握ってもらった(信頼して預け、受け取ってくれるまで関係を作り上げてきた)馬車が、あえて勲章を与えられなかったアン自らの歩みを助けるように、彼女の制御下に入る。
 それはこのお話の主人公がただロマンスに憧れ、運命に翻弄されて被害者面をするだけでなく、母から受け継いだ手仕事と誇りを武器に自分の腕で、未来を切り開く意思と可能性を持っていることを教えてくれる。
 シャルとの王道ロマンスを色彩豊かに織りなしつつも、アンが一人の人間としてポジティブに母の影から巣立ち、自分だけの恋と仕事に突き進んでいく足取りが鮮明なのも、このお話を好きになれる大事な足場だと思う。
 やっぱなー、まっすぐ応援できる主役が成長物語の真ん中に立っているのは、とってもいい感じだ。

 

 というわけで悲しみの雨から雨上がりの希望、白昼の決戦に夕日の旅立ちまで、情感豊かに少女の心を風景に刻んで描かれる、第一章最終回でした。
 大変良かったです。
 人間としての伸びしろを期待して、あえて勲章を与えず未来へお話が伸びていく決着も、遂にアンの純情が心に届いて持ち前の優しさを素直に使えるようになったシャルの立ち姿も、納得と見ごたえに満ちていました。
 クソカスに一発叩き込んでケジメ仕上げて、さぁ希望の未来へレディーゴー!
 次回からどんなお話が紡がれていくか、大変楽しみです。