イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

らんま1/2:第9話『この手ははなさない』感想ツイートまとめ

 遂に幕を開けた氷上格闘はルール無用…なんでもアリのハチャメチャだ!
 顔が良いだけのドクズを相手に、主役カップルが意地と純情を示す…と思いきや、思わぬ方向にぶっ飛んでいく、令和らんま第9話である。

 前フリが終わっていよいよ格闘ペアスケート本番なのだが、記憶より三千院がクズ過ぎて面白かった。
 徹底的に他人の行動を、自分の都合の良いように解釈しまくる、顔が良いだけのエゴイストを鏡にすることで、乱馬くんの純情と可愛い意地っ張りが映える…という構図なのだが、単なる噛ませ犬で終わらない徹底したアクの強さが、作品独自の味わいを生んで面白い。
 つーか令和に見ると、色んな意味でエグいなアイツラ…。

 

 初のペアバトルということで、対戦相手がガンッガンに圧力をかけてきて、シャイな拳法少年が本当に大事にしたいものこそ、汚い手で蹂躙してくるこの展開。
 前回に引き続き、乱馬くんが思いの外あかねにゾッコンであり、泥臭い意地を張って背中に許嫁をかばう様子が色濃く描かれていた。
 自分の土俵で戦う三千院が洗練された美しい仕草なのに対し、アウェイな乱馬はややドタドタイモっぽくて、そこが嘘がつけない実直なピュアさ
を表していて、なかなか面白い。
 ここら辺、ここまで乱馬らしさとして描かれていた軽妙さ≒軽薄さを、地面に足をつけて描き直す感じの筆致だと感じるね。

 乱馬くんは誰に対してでも体を張るわけではなく、やっぱあかねが危機にさらされクソイヤなヤツの餌食になりそうだからこそ、地べたを這いずり意地を張って、許嫁を守ろうとしている。
 アプローチかける相手の顔も不鮮明な、脳内ポンチ絵のプレイボーイとはちょっと違う男の子なのだ。
 この熱量を受けてあかねも、格闘小町の本領発揮…と思いきや、良牙の思い込みが暴走した挙げ句にペアを入れ替えさせられて、ガラスで囲まれた安全圏に遠ざけられていく。
 男のことも対等に張り合い、拳で守られるだけじゃない自分を証明するチャンスは、あかねから剥奪されていく。

 

 現代的な感覚からすると、激化するバトルについていけないあかねの弱さ…それをカウンターウェイトにすることで成立する”守られるべきお姫様”としてのポジションは、やや男尊女卑の薫りもある。
 ここら辺、極めてポップなやり方とはいえ男女の垣根を気軽に越えて、男らしさ/女らしさに翻弄される主人公が、それでもなお「俺は男だ!」という自認(と、そう叫ぶことで成立する、自分らしさを巡る青春コメディの味わい)を保つため、あかねが”女らしさ”の極に閉じ込められていく運動とも取れる。
 後により加速していくハチャメチャバトルの中で、最前線に立ちきれないあかねの、闘技者としてのアイデンティティ

 その危うさは今回、喧嘩するほど仲が良いらん良コンビに押しのけられて、安全で優しいガラスの檻に追いやられた時点で、既に始まっていたのかなぁ…などとも感じる。
 これも連載終わった”今”の感覚なんだが、時に一切の手加減なく本気で殴り合い、時に性別を取り替えて男女カップルとしての掛け合いもやれる、らんまと良牙の関係性って、エッジ立ってんなぁ…と思う。
 あかね相手にはなかなか表に出来ない素直さが、良牙くん相手には(時に過激な暴力を交えて)暴れていて、”答え”にたどり着いてしまえば終わりなラブコメ青春迷走劇の中で、わざと迷わず間違えず、ずっと同じ調子で走れる強さを感じもする。

 

 

 

 

画像は”らんま1/2”第9話より引用

 というわけで遂に火蓋を切った格闘ペアスケート、前半戦は堂々許嫁宣言をぶちかまし、体を張ってあかねを守る乱馬くんの泥臭い奮闘が、なかなかに熱い。
 アクションシーンへの力の入れ方がいい仕事をしているのは令和らんまのとても良いところだが、華麗とはとてもいえないズッコケで入場してきて、バトルの方もそこまで流麗ではないらんまペアと、勝手知ったる自分の土俵、スイスイと淀みなくスケートと暴力を組み合わせて踊る三千院ペアの対比が、上手くキャラクターの性根を見せてくれる。

 外見だけ良くて絆のないカスどもと、泥臭い衝突の奥に本当の真心を抱えた二人。
 そういうバトルを通じて、乱馬くんが本当は何を大事にしているかが熱量込めて削り出されてくる、二度目の無差別格闘である。
 あかねも足手まといとは言えないいい動きをしているのだが、乱馬くんが惚れた相手にとにかく過保護で、なおかつ弱みも見せたくない意地っ張りなため、対等に危機に立ち向かうというより、守られるべきお姫様的ポジションに収まってしまう。
 東風先生への恋を通じて、そういう自分にはなれない事を思い知らされているあかねちゃんは、元気でパワフルな自分らしさをこの戦いでも発揮したいのだが、乱馬くんは(そういうところこそが好きなのに)それを認められない。

 

 コミカルでパワフルな戦いの中、あるいは華麗なる汚濁を叩きつけてくるクズカススケートコンビを見ていると、そこら辺の捻れた関係性がじんわり伝わっても来る。
 スケートしながら殴り合い、文字にすると完全にギャグなのに妙な熱が宿り、少年少女の心根も戦いの熱気の中で明らかになってくる、奇妙で魅力的な味わい。
 作品の持つ”らんまらしさ”が結構出るよう、考えて組み立てられてるバトルだなーとも感じた。
 そこら辺が最高潮に達するのが、異形の必殺技”別れのメリーゴーランド”がお目見えした時なのが、これまたらんまらしいわけだが。
 いやー…三人分のリフトキメる三千院の力み顔含めて、メチャクチャ変な技だなアレ…。

 今回は色んな縛りもあって、乱馬くんは今までの余裕が奪われダメージ受ける描写も多い。
 あかねを背中に庇って窮地に立ってみると、彼の性根がピュアな熱血野郎であり、思いの外汗臭く泥臭い男であることが見えてくる。
 重力から解き放たれ、フツーの歩き方をしない(出来ない)空中殺法な少年と思われていた彼の素顔が見えてくることで、意外なギャップが魅力的に立ち上がってきて、主人公により惹きつけられるエピソードでもある。
 やっぱクール気取ってる乱馬が、イザという時は熱く真っ直ぐ生きようとする少年だってのが、彼を好きになる一番の足場だからなぁ…。
 その熱量が、あかねへのLOVEから来ているのも好きだ。

 

 

 

 

 

画像は”らんま1/2”第9話より引用

 こういう誠実な泥臭さを照らす鏡として、三千院の脳内ポンチ絵は極めて適切な表現であり、「やっぱ他人をこういう目線でしか見れねーヤツはダメだなッ!」となる。
 表面薄皮一枚だけ自分と似てて、だからこそ真逆で許せないゴミに一番大事なものを奪われそうになってる状況は、乱馬くんの闘志をかき立て、あかねを安全な無菌室へと隔離する。
 ここで肩を並べて対等に戦うのではなく、ショートヘアの格闘小町をお姫様の檻に閉じ込めるのが時代性かなー、という気もする。
 (ここら辺、未履修の”犬夜叉”においてかごめがどういう位置に居たかで、見えてくるものがありそうではある)

 過保護で意固地なきらいはあるけど、乱馬くんは生身のあかねちゃんを誰よりも大事に感じて、だからこそズタボロになっても彼女を守り切る。
 こういう不器用な誠実さが三千院にはなく、良牙くんには響き合うおバカさがあるので、レギュラーキャラと使い捨て戦闘要員の命運も別れていく。
 「全裸での豚バレ」という、考えられる限り最大のリスクを猛然と背負って、男女を入れ替え衣装も唐突に着替えてのバトル第二幕が、いよいよ幕を開けることになる。
 ここら辺、小太刀戦で掘りきれなかった悪友コンビの温度感を、バトルの中に削り出していく展開でもあるんだな…。

 

 こうして改めて、いい感じのクオリティでアニメになってみると…そしてペアバトルという形式を描かれてみると、日常シーンでは中々見えないキャラの性根が、バトルという非日常に顕になっていくという、格闘モノに大事な要素をしっかり踏まえた作品なのだなと感じた。

 あかねと同じ戦場に放り込まれる、守るべきものがある戦いだからこそ、乱馬くんはここまでの余裕を投げ捨てて泥っぽく熱い本性を、むき出しにして傷ついていく。
 その痛みを強がり隠す、チャーミングな男の子っぽさがあればこそ、一番大事なあかねちゃんを、自分たちの本当を顕にする戦いから遠ざけて、モヤモヤ不鮮明な距離感に遠ざかっていってもしまうわけだが。

 まーバチバチ一緒に殴り合って、心の奥底まで分かりきってしまうと、絶妙なバランスと危うさで成立している格闘ラブコメ世界が、あっという間に決着してしまうんだけどね。

 

 答えは既に見えているのに、すぐさま飛び込むわけには行かないお話の都合やら、なかなか素直になれない青い心に阻まれて、格闘ペアスケートは思わぬ方向へとぶっ飛んでいく。
 流氷の戦場へと様相を変えたリンクで、良牙くんとらんまちゃんはどんなバトルを繰り広げるのか。
 次回暴かれる二人の関係性に、自分でも予期してなかったワクワクを感じつつ次回を待ちます。

株式会社マジルミエ:第9話『仲間』感想ツイートまとめ

 魔法エキスポを襲った危機を前に、ギークボーイが殻を破る!
 マジルミエの技術担当、二子山くんをメインに据えて送る、マジルミエ第9話である。

 話の作りとしてはカナちゃんの社外研修を角度と当事者変えて積み重ねていく感じで、魔法プログラミングに取り憑かれた青年が社長に見出され、信頼を手渡され、自分の外側がどうなっているのか、目を向けてを伸ばすまでの物語…という感じ。
 性別も専門も異なる二子山くんから見えてる世界、そこに自分を前のめり押し出していく足場を描いたことで、カナちゃん主役だと描けないモノが形になっていて、群像劇の良い所が出た回だったかなと思う。

 

 二子山くん憧れのテックウィザードたちを通じて、マジルミエ(つうか社長)の卓越した技術力を改めて際立たせる感じのエピソードでもあり、アスト古賀社長が重本社長に投げる重めの感情と合わせて、”15年前”への興味が更に掻きたてられる回でもあった。
 業界全体としては新しい現象である変異種怪異は、社長たちにとっては15年封印してた厄種であり、これが過剰な浪漫主義と実利主義に道が分かれるに至った原点…って感じなのかな?
 あのイカれたどピンク衣装も、その時失われたものへの”喪”だとすると結構納得がいくんだよな…アニメで描かれるかな?

 社会から浮き上がるほどに魔法プログラムにのめり込み、それ故それを生業にしては生きていけないと自分を縛っていた二子山くんは、仕事を仲間との協業と見る重本社長に導かれ、マジルミエに居場所を見出した。
 実際あの少人数で、社長が求める水準のクオリティをやるのは相当無茶苦茶なはずで、社交性に問題があろうと就業に後ろ向きだろうと、飛び抜けた才能と情熱を持ったエンジニアを一本釣りしにいくのは良く分かる。
 結果二子山くんがほんとに欲しかったものをドンピシャ手渡し、いい感じの関係を気づいたからこそ今回、凄腕共が自分を助けてくれる経験に踏み出せたわけで、いい出会いだったんだなぁ…という感じ。

 現場のニーズに合わせて適切にプログラミングを手捻りし、機動力と即応性のあるバックアップユニットとして機能する二子山くんの仕事ぶりは、社長がデザインした優秀な作業環境あってこそ成り立っている。
 最高の仕事を成り立たせるための仕事を、腕前一つで作り上げられる能力が重本社長には確かにあって、しかしやってるのは業界最底辺のどベンチャー…そこでは、何かがネジレているわけだ。

 

 ここに重本くんにだけ外向きじゃない、むき出しの露悪と当てこすりを叩きつけてくる(そしてスルーされる)古賀社長との因縁が、どうヒリツイているのか。
 臭う…関係性の獣達が巣食うジャングルの薫りが!

 変異種怪異問題への先見性とか、マジルミエの特殊な立ち位置が顕になる回でもあったのだが、これも社長の秘めたる過去に多分繋がっているわけで。
 煮出すと一気に濃厚なコクが出そうな要素が、今は”社長”になってしまった男たちの過去にギッシリ詰まっている気配があるが、メインフォーカスは今まさに仕事を通じて己を学び、世界を知っている若人にあるんだよな…。
 カナちゃんや二子山くんの物語ももちろん面白いんだけども、その受け皿として設定されてる年上世代の物語が、異様に面白そうにチリチリしてんの、良いのか悪いのか…。
 マンガで”そこ”が必ず見れるって、保証があるなら最高のクスグリなんだけどなぁ…。

 社長の異性装って、間違いなく最初笑って後で泣きながら謝るタイプのフックだろうし、そこら辺ひっくるめて是非にもアニメで見てみたい気持ちではある。
 15年前に変異種発生が予見できていたってのなら、どベンチャーが抱え込むより適切な対応ってのがあったはずで、しかしそれは形にならなかった。
 だからこエキスポでの事故も起きたわけだが、ではなぜ先進的技術とヴィジョンを持っていた重本社長は、業界のトップではなくボトムに甘んじ、怪異問題は「最先端の重要課題」になっているのか。
 大変気になるネジレだ。
 変異種問題には表沙汰に出来ない複雑なアレソレがあって、結果こういう形になった…つう話かな?

 

 まーそれは次回以降へのヒキではあって、今回のエピソードは魔法プログラミングだけが世界の全部だったナードが、そこに耽溺すればこそ手に入れた実力を、新たな未来へ繋げれた話として喉越しが良かった。
 こうして少し世界を広げた二子山くんが、今後どういう”仕事”をしていくのかも気になる所である。
 社外研修で世間の広さを知ったカナちゃんと合わせて、外側から手に入れた素材がマジルミエをどう発展させていくのか、変化と発展の描写に繋がっていくとより面白いかなー、って感じ。

 二子山くんをエピソードの主役に据えたことで、魔法少女稼業の裏方がどういう苦労してるかの、見え方もクリアになったしね。
 何かと呑気にキーボード叩いて、成果がわかりやすい形になりやすいプログラミングを、今怪異災害に対応するために現場要因が必要としている”魔法”に結びつけることで、安全圏で楽な仕事してる感じが薄くなっているのは、設定を活かした良い描写だわな。

 

 というわけで、ギークボーイの一念発起で危機を乗り越え、新たな世界が広がるエピソードでした。
 現役世代が自分なり何かを見つけていくお話をしっかりやりつつ、その背後にある社長…に今やなってしまった男たちの悲哀や激情にも、結構力を入れて種まいてくれてる印象。
 そっから伸びる感情と関係性の果実こそが好物な自分としては、是非”マジルミエ・ゼロ”が見たい気持ちであります。

 あまり多いとはいえない残り話数をどう使って、どういう風にアニメとしてまとめていくか。
 そこも含めて、次回も大変楽しみです!

魔王2099:第8話『電脳魔導都市・秋葉原』感想ツイートまとめ

 社長も焚べたし景気はイイぜ…行くぜ魔王のアキバ旅!
 サイバーパンクファンタジーのド本命を駆け抜け、魔法学園の転校生物語が始まる、新章突入の魔王2099第8話である。

 作品の特徴である小気味の良いテンポの良さを、新展開のアタマっから発揮し、とっとと新たなスプロールへと足を運び、地元の有力者に渡りをつけ、潜入先に飛び込む所まで話が進んでいった。
 この停滞感のなさはやっぱ見ていて気持ちが良く、魔王様のちょいポンコツな勢いの良さと相まって、気持ちよく展開に乗っかれる。
 昔馴染みの手がかりとなる秘宝を求め学園潜入…てのが今の枠組みだが、こっから同変化していくかも楽しみだ。

 

 

 

画像は”魔王2099”第8話より引用

 というわけでアバンでフックの強い制服姿の魔王様を先取りしつつ、新宿事変を乗り越えた一行がアキバに赴くまでがサクサク転がっていく。
 間取りは狭くとも愛があった四畳半から、300万登録者を誇る人気ストリーマーに相応しいいい家に引っ越し、マキナとイチャコラぶっこいてる魔王様をじっくり見せてくれて、大変にありがたい。
 高橋もレギュラーとしてアキバに付いてってくれる感じだし、マキナも制服着込んで一緒に過ごすし、既に愛着湧いたメンバーが元気なのはいい。
 勇者もなんか意味深顔で、青とオレンジに塗り分けられたアキバの境目に立つしな!

 状況事態は小気味よく転がっているが、話の温度感としてはややじっくり温めてる感じで、その分作品世界が良く見えて良かった。
 社会のゴミ溜めからのし上がり、裏切りの上にアグラかいてるクソカスをぶっ飛ばすまでを描いた新宿編に比べて、秋葉原編は街の雰囲気も舞台となる場所の治安も落ち着いていて、かなりテイストの違う話になってく予感。
 ここら辺の変化を、雪の北新宿駅から電車乗ってアキバまで行く、明らかに現代日本の地理とは異なるサイズ感をしっかり描写して見せてくれたのは、世界混交ファンタジーとしての面白さが良く出ていたと思う。

 

 魔王様が懐かしさを感じていたアキバのサイバー・バザールも、バキバキにサイバーしてた新宿にはなかったファンタジー味があり、しかし魔導サイボーグやらが闊歩する地続き感もあり、新たな物語の舞台がどんなところか、期待感を高める見せ方が出来ていたと思う。
 ぶっちゃけ魔法学校の転校生が秘めたる才能で無双キメる系物語には、治安の悪いサイバーファンタジーより物語分解酵素が全然なくて、新宿編より乗れるか心配だったが、今ん所ちゃんとワクワク出来てありがたい。
 魔法学園モノはド素人でも、魔力計測水晶がぶっ壊れるのは定番展開だってのは理解るぜッ!

 俺はマキナと魔王様のマッタリ仲良しな所とか、スゲェスピードで物分かりよく現代に適応したように見えて、どっかズレてるところがある魔王様のキャラが好きなんで、そういうのがたっぷりと味わえたのもありがたかった。
 複数ヒロインを巡ってのラブコメドタバタをやるには、あんまりにもマキナが仕上がり過ぎているわけだが、「まぁマキナだけいりゃ良いな…」と思える見事なヒロインなので、何の問題もない。
 74時間ぶっ通しで配信をやり切り、お上品に拍手する場面とか大変良かった。
 こういう細かい萌えクスグリが上手いの、あんま目立たないがこのアニメの良いところだなぁと思う。

 

 アキバでどういう物語が展開していくかに関しては、追うべき聖杯として露骨に設定された御三家のレガリアと、ヒソヒソプークスクスされてた緋月さんのキャラ次第かなと思う。
 勇者が最後に意味深に話のタネ、高いところから蒔いてもいたが、どうも見た目通りに魔法学園転入生無双をぶっこいて終わる…ってわけでもなさそうだ。
 社長が死に際、「俺が死んでもシリーズは続くんだから、世界がこうなってしまった理由を追えよ!」と言っとったが、その一端が地下の宝物を追う冒険から見えてくんのかなー…。
 現状六魔侯の手がかり、社長ほど分かりやすく牽引力のあるクライマックス装置って感じはないので、今後どう駆動していくか。

 アキバを三分する大物相手に、天然なのか思慮深いのか分かんねぇ大物っぷりをブン回し、とっとと全部バラして協力体制作っていく流れは、このお話らしいテンポの良さと地ならしの手際だった。
 いい意味で常識的な高橋が、色々気をもんでたのを大股で飛び越えて、真正面から権力者のお墨付きで潜入調査可能な状況を整えてしまえる、魔王様の器のデカさが鮮明だ。
 「不要なストレスをサクサク回避する」のは、このアニメの特徴的な作劇法だと思うが、厄介ごとの正門を人間力でこじ開け、足場整えてから現場に入っていく流れは、スッキリしてて大変良い。

 

 

 つーわけで、アキバ魔法学園での冒険に向けて、一話で状況を整えるエピソードでした。
 手際よく話の準備を進めつつ、マジカルサイバー世界の新しい風景とか、魔王様とマキナの仲良しっぷりとか、見たいものいい感じに見させてくれて、大変良かったです。

 こっからどういう話が転がっていくのか、サッパリ読めないのもむしろ楽しさの苗床。
 魔導技術華やかなりし新天地で、我が道を行く魔王様がどんな騒動と出会いを巻き起こしていくのか。
 魔王2099新章、大変に楽しみです!

魔法使いになれなかった女の子の話。:第9話『私、魔法使いになれちゃう!?』感想ツイートまとめ

 魔法使いになれなかった女の子の話。 第9話を見る。

 マ組転入か普通科いっぱなしか、少女たちの未来に関わる決断はなお担任不在!
 やる気と才能に満ち溢れた奇人共が学園祭に向けて吹き上がる隣で、編入試験のためにシコシコ頑張る主役二人を追うエピソードである。
 正月休みが終わって愉快な仲間たちも戻ってきたが、やっぱ彼らが奏じる陽気で前向きな空気は吸っていると気分が良く、このアニメの大きな魅力だと感じる。
 そっから編入試験で主役を切り離して、せっかく美味しそうな学園祭準備にあんま深くカメラが入っていかないの、極めて”まほなれ”らしいもったいなさだな…。
 俺はもっとあのトンチキ共がなんかしでかす様子や、ワイワイ頑張ってる様子や、そこにクラスメイトとしてユズちゃんやクルミちゃんが混ざってるを見たいよ…。

 

 

 

 

 

画像は”魔法使いになれなかった女の子の話。”第9話より引用

 話としてはノーザン先生の熱烈アプローチを受けて、一度捨てたはずの夢に立ち戻るか否か主役たちが悩み、色んな人のエールを受けてイザ転入試験! という感じ。
 なんだかんだいい子が多いのはこのアニメのすごく良いところだと思っているので、ユズちゃんとクルミちゃんの友達達がすげー素直に二人の未来を応援してくれる様子は、ホッコリと楽しめた。
 リモーネがこんだけデカい感情をユズちゃんに持っているなら、クルミちゃんにぶつけてバチバチさせたら面白かったのに…と思うが、ここらへんは致命的な発火する前に、このアニメらしい物わかりの良さで収まった。

 全体的にとにかくノーストレス、衝突も挫折も無理解も避けてマッタリ温かめな温度感で進んで行くこの物語において、すれ違いや思い込みは物語が発火する材料として選ばれることがない。
 悪感情を作品内部に入れないことで、濁りのない飲みやすい物語を展開できているのは強みだが、それはキャラや関係性を深く掘り下げて、「この話は、こういう味がするんだ」つうのを視聴者に堪能させる機会を奪うことにもなりかねない。
 社会的には落ちこぼれだし、学園からの扱いも相当ヒドい普通科の連中が、既に自分だけの揺るがぬ夢を手に入れ、そういう扱いに動じることのない強く賢い子どもとして描かれている様子にも、そんな手応えのなさが宿る。

 

 どんな時でも陽気でハッピー、奇妙キテレツながらとにかく前向きに進んでいく普通科の連中は、頼もしくて元気だ。
 だからこそ彼らがどういう影を背負っているか、個別に掘り下げたり主役たちとの衝突の中で煌めかせるような、古臭く雑音が多く…多分青春群像劇を描くうえでは未だ有効な描線を、このアニメは徹底的に避け続けている。
 有象無象を話の舞台から追い出し、人数を絞ったことでスジも関係性も一気に深まった正月休みに、立ち会えなかったからこそリモーネは、ユズちゃんの”特別”がクルミちゃんに知らぬ間に奪われていたことに、コミカルな怒りを表出させる。
 しかしそれは、話の真ん中で暴れる嵐にはならない。

 「そういう何度も見た暗い感情のドラマ、もういいですから…」って話なのかもしれないが、こういう衝突や摩擦を避けた結果、クルミちゃんは極めてツルンと表情のない主役になってしまっているとも感じる。
 あの子にどういう強さがあって、それが他人とどういう化学反応を起こして運命を変えうるのか、クライマックスが迫るこの段階でなお、クリティカルなモノがないのだ。
 ここら辺のフックのなさは、ほんとに原則だけ教えてとっとと教壇を去っていったミナミ先生を、まるで人生の恩師のように扱うユズクルの様子にも感じる。
 作中描かれているはずのものと、それを見て僕が感じるものの乖離だ。

 

 

 こういうノれなさは、友達に励まされたり絆が出来たり、作品が提示しているイベントの内実を問うことなく、形式でそれっぽく飲み干せていれば、あんま気にならない部分なのかもしれない。
 古代魔法と現代魔法の描写にも通じるのだが、この作品だけの独特な設定…そこに宿る魅力を力強く掘り下げ、描写を通じてキャンバスに叩きつけ、共感力のある表現に押し上げる力強さ(「アニメとしての野心」と言ってもいい)が、あまり感じられないのは多分、自分との相性が良くないポイントなのだろう。
 アリモノのそれっぽさを連ねるのではなく、泥臭くとも自分だけの表現を積み上げていって欲しかった。

 あるいはこの濁りのない軽さこそが作品独特の味であり、野心を込めて描くべき唯一性なのかもしれない。
 確かに普通科の連中の底抜けな明るさと前向きさは結構好きで、しかしあくまでそれは副菜でしかなく、主役たちは彼らが自らの手で作り上げる祝祭から遠く、転入試験への備えを頑張り続ける。
 僕が作品の魅力と感じるものは、あくまで本筋(と僕が受け取るもの)から切り離されたからこその善さであって、作品全体を牽引しうるポジションにないからこその、軽妙で気楽な魅力なのかもしれない。
 ここら辺、サブキャラが話の真ん中に座って、ガッチリ掘り下げられる筆が凄く少ないので、作品内部での比較ができないのは惜しいかな?

 

 

 そういう横幅の狭い作風の中で、「サウナで整って人生が見えた!」つう、極めて普通科的トンチキでもって、堂々転入試験通知を破り捨てたアニクくんの描写は、大変良かったと思う。
 彼はユズちゃんやクルミちゃんが選び得なかった未来であり、魔法を諦めても、世間がくだらねーと笑おうとも、自分の意志で夢を追うことには意味があるのだと、別角度から照らせるキャラだ。
 ここで彼も転入試験に挑んでたら、魔法に向き直ることのみが”正解”になってしまうわけで、なにやら意味深な危機が迫り、現代と古代の魔法の危うさが暴かれるっぽいクライマックスに向けて、かなり良いカウンターを当ててくれたと感じた。

 長々意味深に物陰で微笑み、視聴者が知り得ない危機や真相を睨みつけてきた物語も、ミナミ先生監禁犯がノーザン先生だと明かされて、ちったぁ目鼻がついてきた。
 こっからどういう強さと鋭さでもって、無邪気な主役たちの裏側で蠢く運命を描き、主役を成長させる大きな危機として使いこなせるかで、作品全体の面白さも決まってくるだろう。
 来たるべき大ピンチで根性出してくれると、クルミちゃんの掴みどころのない無貌にも彼女なりの顔が刻まれ、それが作品全体の貌になってくれるかなという感じだが、さてはてどうなるか。
 次回も楽しみである。

ネガポジアングラー:第9話『鍋パ』感想ツイートまとめ

 大嵐に囲まれていても、釣り竿垂れなくても、思いの外人生は楽しい。
 そう思えるようになった青年最後の日常を描く、ネガポジアングラー第9話である。

 

 ここまでの常宏の歩み、この物語それ自体を騒々しい台風の日に静かに総括するような、中盤戦の終わりだった。
 ハナちゃんが語るラインの意味は、そのまんま作中に描かれる異質なネガポジ人間たちの連帯と繋がり、釣りと生活を通じて主人公が手に入れたものを、より鮮明に可視化する。
 このタイミングでそういうモノを描くということは、多分本当の嵐はこれからで、今回の台風を楽しく乗り越えられたように、雨が上がれば虹がかかるだろう。

 貼ってきた伏線から考えて、終盤戦の台風の目は貴明になると思うんだが、ダメダメな常宏を支え導いてきた彼が崩れることで、目瞑ってなんとか生きてきた赤ちゃん人間は、大事な人のために自分の足で立ち、自分の目で見、自分の手で荒海へと自分だけのルアーをキャストする必要が出てくる。
 見えない海の底で他人が何を願っているのか、わざわざ探って引き寄せる、自分には縁遠かったはずのおせっかい。
 そういうモノに挑める力を、主人公とその周囲のヘンテコな人たちが、可笑しくも逞しく既に備えていることを、しっかり見せる回だった。
 このタイミングでこういう話をしっかりやり切る、構成の確かさが俺は好きだ。

 

 

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第9話より引用

 すっかり釣りにドハマリした常宏は、バックヤードに設えられたお茶の間で彼の”家族”が大騒ぎする輪から、自分を遠ざけてライン結びの練習をする。
 これまで釣りの現場でそうだったように、携帯電話の中の情報や、自分の頭にある上手く行かなさとだけ向き合っていても、PEラインは上手く結べない。
 自分の邪魔をする他人の様子がリフレインし、かつては恐怖の対象でしかなかった借金取りが、雨に濡れ弱っている様子を見届けて、常宏もバックヤードへと…温かな”家”へと足を運んでいく。

 自然に明るく繋がれてしまう者たちと、その輪から外れて繋がれない者。
 常宏が理由なく恐れ遠ざけてきたポジティブな明るさは、エブリマートでの労働となんだかんだ楽しい釣りを通して、もはや見知らぬものではなくなった。
 そこで積み上げられた人生の経験値に助けられて、かつては自分を脅かす敵としか思えず、相手の顔も見ずにただただ逃げてきた(だから追いかけられた)相手を、客として人間として、手を貸すべき相手としてしっかり見れるようになった。

 

 そういう落ち着きを与えている場所が、あくまで血縁で繋がった家それ自体ではなく、一種の偽物である事実から、バックヤードに設えられた”お茶の間”を大事な舞台に選んだこのアニメは逃げていない。
 流れるように…あるいは滑り落ちるように豪雨大宴会の舞台となっていくそこは、真っ昼間仕事中から飲酒解禁余裕のダメ人間どもの巣窟であり、世間が褒めそやすフツーの場所じゃない。

 集った連中は奇妙な縁でしか繋がってないし、お行儀よく能力や性格が揃ってはいないし、特徴的な凸凹を噛み合わせて、なんとか日々を楽しく生きようと、結構頑張っている。
 あくまで疑似でしかない”お茶の間”での家族感は、しかし確かに常広の居場所となり、彼が今まで学べなかった大事な導きを、たくさん与えてくれた。
 目を閉じて暗い場所を疾走るしかなかった赤ん坊が、目を開けて世界と他人と自分を見る足場を作ってくれた。

 

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第9話より引用

 そこでは借金取りがアンコウとネギとキノコ背負ってやって来て、コンビニに足りないモノをバッチリ付け足して、ワクワク楽しい宴席が執り行われる。
 ネガな自分には無縁だと思っていたその喧騒に、常宏も借金取りも混ざって、同じ釜の飯を食う。
 迷い込んできた客にシャワー浴びせるのも、あんこう鍋を魚にビールグビグビ行くのも、全くもってフツーじゃないけども。
 そういうのも結構いいと、今の常宏は知っている。
 そういう主人公と物語の現在地を、あくまで楽しく明るく、このお話らしくスケッチしていく手際が凄く良くて、いいエピソードだなぁと感じた。

 お菓子からコンビニチャンプルへ、ジュースからビールへ。
 台風に閉ざされたエブリマートの中で、状況はズルズルダメな方へと転がっていって、かつては敵としか思えなかった連中が持ち込んだアンコウによって、決定的に”宴”になっていく。
 捌くのに技術がいるアンコウを、吊るしではなくまな板の上でしっかり扱い切るアルアの頼もしさも、これまでと同じようにしっかり作画し、魚が食材に、楽しい宴の主役になる様子を僕らに見せてくれる。
 やっぱ俺、このアニメが”食”を大事に扱ってくれている所が好きだ。
 それはもともと生きてて、結構な手間を掛けて食材になり、楽しい時間を生み出す糧になってくれる。

 今回は釣りに行かないエピソードなのだが、だからこそこのお話が”釣り”をどう扱っているのか見える回でもあろう。
 ここまでこのアニメは釣った魚全部食ってきたし、それはみんなで食べるものであり続けた。
 体温のある誰かと言葉を交わし、心を繋げた時に釣果が得られるルールと合わせて、人生をネガにしちまう孤独と絶望を跳ね飛ばし、美味い栄養を別の命から受け取り、ポジに変えていく力強さが、このアニメの”釣り”と食卓にはある。
 とびきり美味そうな食事風景、楽しい宴席が描かれる今回は、そういう作品の中核を、朗らかな明るさの中に際立たせていく。

 

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第9話より引用

 レジで一人きり、携帯電話を相手に挑んでいた時には上手く結べなかった糸は、雑音の多い”みんな”の中に混じって、ようやく繋がっていく。
 個性豊かでバラバラで、だからこそ面白い連中が繋がって、何かを釣り上げていく営み。
 常宏はエブリマートに釣り上げられて、そういうモンを自分の力に変えてきた。
 怖くて遠ざけてきた他人との触れ合いが、車窓に反射する自分の顔を何より鮮明に照らして、世界の形をよりわかりやすくしてくれる実感を得た。
 生きているのって、案外悪くないなって思えるようになった。
 生粋のネガ野郎がそうなれるまでの物語が、このアニメだ。

 ハナちゃんに問われて、常宏が釣りの何処が楽しいのか、自分の言葉で訥々と語れるようになった姿が、メチャクチャ染みた。
 あんだけワケのわからねぇ恐怖の中、目をつぶって逃げることしか出来ず自分を追い込んできたヤツが、自分が生きてて何を楽しいと思うのか、みんなとやる”釣り”から何を受け取っているのか、言葉にできるくらい鮮明に掴み取れるようになったのは、凄く善いことだと思う。
 それがあるならもう、自分を守るために目をつぶって疾走ることはないし、目の前に立ちふさがるもの全部が敵なんだと、過剰に怯えなくてもいい。
 その証明として、今回常宏は借金取りと、同じ鍋を食べるのだろう。

 それはハナちゃんや貴明が結び方を教えてくれた糸であるし、常宏自身が気づけばドハマリして、自分で結ぼうと頑張った糸でもある。
 それはたしかに結ばれていて、人生のタイムリミットや暗い側面に引っ張られ沈もうとしている貴明を、明るい場所へと釣り上げてくれる命綱になるだろう。
 ずーっと縁遠かった宴会の明るさ、”みんな”の暖かさは、ただ社交的で健常であるだけでなく、常宏自身が把握できなかった自己像を、心地よい疲労感に浸りながら眺める夜景に照らしてくれる。
 自分がどんな形をしているか、他者との乱反射の中で掴めたなら、世界も絶望も、そんなにもう怖くはないのだろう。

 

 

 

 

 

画像は”ネガポジアングラー”第9話より引用

 そんな常宏の現在地を、そこに繋がっている自分を見て、ハナちゃんが大物の牙が残るルアーを引っ張り出すのは、なかなか印象的だ。
 そこに残った傷こそが、常宏がファイトした証明であり、いつか夢が叶うかもしれないポジティブな未来を、約束してくれる希望になる。
 それは”釣り”をメタファーに生きることを語る、極めてこのアニメらしい語り口に翻訳すれば、グジグジネガって生きてきて、今こうしてラインを結び釣りを楽しいと思えるようになった常宏に刻まれた数多の傷こそが、彼の希望となる未来を、穏やかに示しているように感じる。

 俺はすっかり常宏が好きになっているから、この青年がそんなふうに、自分の前に広がっているものを信じるために、自分の過去に刻み込まれた痛みや暗さを肯定出来るようになってほしいなと、心から願っている。
 そう出来る逞しさが彼の中に育ったと見たから、借金取りの姐さんはポンポンと常広の肩を叩き、彼女なりのエールと糸を鍋のお礼に、伸ばしてくれたのだと思う。

 

 そういう風に、元”敵”に思わせる何かがもう常広にはあるのだと、ここまでの物語が彼に与えたものをしっかり描く、とても良い回でした。
 この温度感と弾み方で、こういう総まとめやれるのは強いなぁ…。
 好きだ、ネガポジアングラー。
 次回も楽しみ!