イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ホタルの嫁入り:第2話『天女島』感想ツイートまとめ

 無垢な殺人鬼を便利に使って、地獄島から脱出しよう!
 物語のグランドクエストが見えてくる、ホタルの嫁入り第2話である。

 

 

 

 

 

 

画像は”ホタルの嫁入り”第2話より引用


 つーわけでセクシーでホットな男たちの裸身と、性と暴力の只中でなお美しい情景と、程よく手加減して生っぽい簒奪から距離を取ったヤバ状況がワッと押し寄せてくる回である。
 僕は性差の川向うから、むせ返るように都合よく尖った欲望を嗅ぐためにこのアニメを見ている(面もある)が、そこら辺の芳香がタップリ嗅げてとても良かった。
 迫りくる暴力は無垢なる悪魔が跳ね除けるし、自己を否定する性の暴力は可憐に手玉に取れるし、素晴らしきかな天女島!

 

 …って露悪をコスって悦に入るのが目的ではないので、感じたことを書いていく。
 お話としては物語の舞台となる天女島の綺麗な表層を確認し、こっから何をやっていくのか…そのパートナーとなる進平がどういう人間か、大体の筋道をつける回だった。
 女を食い物にする前近代的システムに乗っかり、どんぶらこと本土へ身請けされる以外脱出口がない腐れ売春島。
 迫りくる刺客を撃退し、人殺してでも求められるだけの価値がある私を確かめつつ、唯一残った武器である異性への扇情が一線を越えぬよう気をつけながら、楽しい夜職ライフにレッツゴーだ!
 …書き出してみると、なかなかファンタジー力高いな。

 

 見知らぬ欲望のキャンパスに、見知らぬ人たちの顔を少しでも写し取ろうとしてお話見てんだから、都合の良さは大事な画材であり、そこに保護されているものにこそ色んなものが滲むと思う。
 紗都子はイエの道具として役に立つ、前近代的婚礼&生殖のシステムを疑っておらず、現状島から出るのも便利な道具に戻るためだ。

 それは天女島であらゆる自由を奪われ、華やかな牢獄に縛り付けられているセックスワーカーたちと、対局にあるようでいて通じ合っている。
 犯され収益を奪われ、身体と精神を損なって何の保証も裁きもない、男たちの欲望にあまりにも都合の良すぎる楽園。
 紗都子が流された天女島は、帰還を切望するお父様の懐と、真逆なようでいてそっくりである。

 

 この同質性に気づき、システムから引き剥がされた近代的個人としての自分を確立するのが、紗都子のクエストであろう…というのは、泥に塗れた飯を貪り、艶やかな舞で群衆を魅了するシーンからも感じられる。
 そこに在るのはイエに守られて貧弱だった自分を離れ、嘲りや支配に満ちた(けど、程よいピンチになるよう調整された、花魁テーマパークに反射する)世間に立ち向かい、真の自分を実現する物語だ。
 唐突な誘拐と隔離は、そこら辺のスタンダードな骨格を、扇情的な筋立てと噛み合わせるための物語的機構…ともいえるか。

 偉大なる父の庇護/支配を離れ、ヤベー殺人鬼を見せかけの愛で操り、取り返しがつかないほど婚礼商品としての勝ちを損壊する、ガチンコの性消費から上手く逃れつつ、逞しく糖蜜掛けの地獄を生き延びる。
 そこは血みどろで過酷であると同時に、自己実現の可能性を秘めたワンダーランドであり、真の自分、真の世界がどんなものか教えてくれる「教室」でもある。
 だからとても美しい景色が描かれ、未来へのキラキラした希望が瞬くのだと思う。
 まぁ遊郭で展開しとった搾取、ガチンコでやったら抑圧からの自己実現ファンタジーとはジャンルが変わってしまうので、こういう角度から切り取るのは納得ではある。 

 

 紗都子が愛をチョロ見せして手玉に取り、性愛しか切り売りするものがない自分に変わって、暴力代行装置を努めてもらおうとする進平。
 彼もまた、人殺ししかやらせてこなかった暴力のシステムの中、何も判んないまま異様な暴力を研ぎ澄ませてきた、無垢なる怪物である。
 紗都子の美貌が無根拠かつ圧倒的に、フツーの女たちが粘膜差し出してギリギリ確保している立ち位置を、フワリと上から簒奪していくように。
 進平の暴力もブサイクなぼんくら共が行使するヌルさを超越して、ある種の華麗さすら宿して圧倒的である。(この軽やかな残虐さを、結構気合い入れて作画してくれているのはありがたい)

 

 盲信し、あるいは利用するだけの偽りの繋がりの中で、しかし二人は性と暴力…あるいは女と男に分離されつつも、圧倒的に優れたその才能をどう使い、何を得るべきか何も見えていない、システムの奴隷であることには変わりがない。
 紗都子が便利に使っている進平のぶっ殺し力は、彼がシステムを制御する卓越したオスであることを保証せず、むしろ暴力に溺れるほどシステムにはまり込んでいく、無自覚な犠牲者でしかない。

 それは真に男女が愛し合うことも、人間が生きることも、人を殺しちゃいけない理由も、何も知らない幼さが生み出す、残酷なる無垢だ。
 それと同じモノに脳髄染められている家制度の奴隷は、現状自分の立ち位置を疑わず、同じ奴隷を便利に使って、より大きな奴隷牧場に帰還しようとしている。
 そらまー、不健全な状態だ。

 

 こっから話を回転させて、ホタルの花嫁達にちったぁ人間らしい繋がりを取り戻すためには、紗都子が父を中心とする故郷のシステムを疑わなければいけないだろう。
 進平は自分自身で迷妄を切り開き、見せかけの強さを投げ捨て自分が奴隷であるという現状を認識する能力を、おそらく持っていない。
 そこで道筋を立て、図体だけデカいセクシーな殺人鬼に在るべき倫理を指し示してあげる特権は、暴力も意思決定権も持たない、手弱女にこそあるべきなのだ。 

 性と暴力をハンドリングする権限から遠ざけられているからこそ、そういう物理現象を操作する根本的な倫理で、「男」への優越を掴み取る。
 無辜なる乙女たちがくっそめんどくせー男どもの面倒を見続け、メンタルケアしてヤバ状況を乗り越えていくアニメをまぁまぁ見てきた視聴者としては、やっぱこの構造って「女性向け」フィクションの基本なんだな、と思った。
 自分殺しに来るクズをダイレクトに叩き潰す権利も能力もないが、それを代行してもらえる優しい殺し屋に、真実人間が在るべき形を提示し、物理的現象を超越した真の価値を差し出せる優位性は、常に視点担当人物たる「女」にある。

 

 それはこの都合の良い夢を逃避先にせざるを得ない、現実というクソゲーにおいて真逆の構造が、メイン消費者層を縛り付けている、クソみたいな状況の裏焼きなんだとは思うけど。
 ともあれ紗都子はひたすら彼女との恋の幻に溺れ、そのためならどんな存在もぶった斬って罪にまみれてくれる進平より先に、今どこにいてこれからどこに行くべきか、見つめれる立場にある。
 まぁ主人公なんだからそういう優越性を確保しているのは、必須だし大事なんだけども、そこにセックスとバイオレンスを自力で跳ね除けるパワーがなく、「男」に外部委託してんのが歪で面白いなぁ、と感じた。

 物わかりの良い庇護者っツラしたお父様も、迫りくる荒くれ者どもも、紗都子に嫌なこと押し付けてくるのは皆「男」である。
 そんなむくつけきカス異物の中で、真実あるがままの自分を大事にし、自分が何者であるかを血と欲望の中で見つけるパートナーになってくれる、真実の殿方。
 それが一方的に真実を押し付けてくるプリンス・チャーミングではなく、むしろ自分が人の道を指し示してやらなければいけない、刀を握った幼子であるのが、この話の特殊性かもしれない。

 やっぱ母にして恋人にして倫理的支配者であるという、ハイブリッドな「女」の造形、めっちゃエルロイ味がすんだよな…。
 そこは大変良い。
 もっと混濁して濁れ。

 

 無邪気で幼い進平は、恋人であり母である紗都子に捨てられることに怯え、ガキみてーな結婚の約束にすがりつく。
 その欠乏と恐怖は、彼が今置かれている無邪気な殺戮装置に満足などせず、もっと人間らしい、もっとより善い生き方を、無自覚に求めている証拠に感じる。
 その一番でかくて根源的な願いに、道を示し答えを与えてあげられる特権は、おそらく紗都子にある。
 こんだけ主人公に都合のいい舞台が整っているお話で、展開の心臓部といえるこの特権を誰かに譲るなんてことは、まーないだろ。
 それは人を殺したりセックスを自由に行う力がなくても…ないからこそ、無力な女に許された最後の権利なのだ。 

 運命に翻弄されシステムの奴隷となる被害者に見えて、紗都子は自分から唯一の価値を絞り出すセックス商売を乗りこなし、迫りくる暴力を跳ね除ける超暴力装置を愛の鎖で繋ぎ、その未来を優先的に示せる特権を持つ。
 ハードコアな試練はそういう「強さ」を心地よく覆い隠し、可哀想な弱者として紗都子と物語を甘くコーティングしていく。
 その転倒に陶酔できるからこそ、ファンタジーは欲望充足装置としての仕事を果たすのだろうし、酔えるだけの甘さと面白さをどう創り上げ駆動させるかが、腕の見せ所でもあろう。
 だから今後、紗都子がどう弱く、弱いがゆえに強いのかを様々なイベントの中描いていくかは、自分的に大事なポイントだ。

 

 紗都子以外の「女」を捉え嬲りものにする、暴力とセックスを歯車とする「男」のシステム。
 紗都子は自身の舞で…あるいは進平を縛る愛の行使で、これを乗りこなすタフさを静かに示した。
 このタイミングで暗示さされた構造は、物語全体を差配する極めて大事なものになると思うから、今後も紗都子は「弱くて強い/弱いからこそ強い」存在であり続けるだろう。

 では彼女の欠けた部分を補う、彼女を害せず愛し守る理想の「男」たる進平の、「強くて弱い/強いから弱い」部分は、どんな風に描かれていくのか。
 その弱さにいつ紗都子が目を向け、殺戮奴隷として便利に行使している相手が、自分と同じシステムの奴隷であると気づくか。 
 そこが自分的に一番の眼目かなぁ、と思う。
 極めて古典的なロマンスの構造を引き継ぐ物語において、そういう覚醒の火種になるのは勿論「真実の愛」なんだろうけど、過剰に暴力的なセッティングによって、愛を便利に使って暴力に対抗しているネジレもまた、話が進むほどに加熱していく。
 自分の同類に人殺しを代行させ、罪の肩代わりをさせている状況に紗都子が気づくか…気づいたとして、どうその贖罪に挑むかは、天女島大脱出に忙しくなるだろう今後の展開の中、とても気になるポイントだ。
 いやまぁ気づかないまま便利に使い倒してもいいんだが…求められる式次第は、そういう矛盾の自覚と否応なく衝突するだろ。

 

 解った上で現状紗都子真実の「男」であるお父様のもとに帰り、家制度の奴隷として別の鎖に繋がれるために進平便利に使い倒す、歪なタフさで突き進んでくれても、それはそれで面白そうである。
 鏡合わせの奴隷たちが、お互いに勝手な幻想貼り付け便利に使ってるクソみてーな構図に気づいて、そこからどうにか魂を自由にするべくもがく戦いに、舵を切っても良いだろう。

 どっちに転がっていくかは世間的な正しさでも俺の好みでもなく、血肉削って作品を創り上げている存在の舵取りにかかっているわけで、そこにこそ作品独自の熱も宿る。
 欲望充足のために整えられた舞台に、否応なく噴出する歪みとどう取っ組み合っていくか…楽しみだ。

 

 そこで苛烈な責めにも屈せず、セクシーな半裸で紗都子への忠愛を吠えてくれる二人目の男が登場して、物語は次回に続く。
 ここで新たな燃料をボンボン投げ込んでくる所に、欲望充足装置としての真摯さを感じ取れて大変嬉しいが、この忠犬系男子がどう効いてくるのか…なかなか楽しみだ。
 迫りくる男たちがのきなみ紗都子の容色を褒め、彼女をモノにしようとする欲望故に効率良く目的を果たす道から外れて、都合よく物語が転がっていくように。
 常識や倫理から外れるほどに強い願望を、生み出すほどの特別な魅力が紗都子にはある。
 渦巻く暴力は、そんな特権の証明でもある。

 それが生み出す火花の処理を、自分とは無縁の暴力委託機構に任せて、他人に侵されない自由と権利…それに付随する責任から軽やかに逃げているのが、逞しいアマだなって感じではあるが。
 こういう「弱い強さ」を今後どう扱い、自分にはかなり濃度強いヤダ味生み出す特権化と対峙していくか…とても楽しみだ。

 

 ここで紗都子が秘められた剣才に覚醒し、真っ向から敵ぶち殺す「強い強さ」に目覚めても面白いけど、そういう話じゃねーし、そういうルートを塞ぐための心臓の爆弾だろうしね…。
 宿病も弱くあるためのスティグマとして活用する、ストーリーテリングの逞しさを心地よく感じつつ、次回も楽しみ!

 

 

 

 

 

 

・追記:色んな話が色んな角度から、自分だけに紡げる手つきで何かを語っていて、それが編み合うことで自分だけの「感想」が生まれていく現象を、俺は好きだし慈しんでいる。

 こういう感想を書いていると、暴力による強制、性決定権の簒奪の当事者として、暴力を外部委託せず自分も血まみれになりながら「男」ぶっ殺し、運命切り開く方向性に猛烈に突っ走っていった”おまごと”を思い出す。

lastbreath.hatenablog.com

 

「オメーラに私の肉を引き裂く権利も、呪いをかけて存在を規定する自由もねぇ! ぶっ殺してやる!」と、濃厚な殺意込めて主役が殴り殴られする展開は、二話までで俺が勝手に造ってる、このお話がこういうコースで進んでいくんだろうなぁ…という幻と、気持ちがいいくらいに真逆だ。
 あのトンチキでアバンギャルドな血みどろ復讐譚が、ガチガチにウーマンリブなレズビアン作品だったことと、このお話がお行儀良くヘテロロマンスに収まってる(ように見える)お話なのが、両方結構好感してる自分の中、どういう化学反応を生み出していくか。
 そういうのを観測するのも、自分の中に作品を摂取し蓄積していく面白さであろう。

氷の城壁:第17話『本心』感想ツイートまとめ

 一つの「結果」が炸裂した爆心地で、少女の心は浮き沈む。
 夏祭り前後の小雪の大事な迷走を切り取る、氷の城壁第17話である。

 

 つーわけで桃ちゃんが晴れてイケメン君とお付き合いを開始し、何か知らねーけど永遠に宙ぶらりんでいられると思い込んでいた主役がショックを受け振り回され、色々答えの出にくい難問に思い悩む回である。
 かつては全力で自分の中の正しさをぶつけていた美姫が、ヨータとの衝突を経て立ち止まってモヤモヤする様子含め、キレイで気持ちの良い繋がりだけを肯定しない、この作品らしい視線が垣間見える話数だった。
 「身を引き裂くような痛みなしで、思春期のガキが適切な自省とか出来るわけねーだろッ!」つう、阿賀沢印の厳しいご指摘よね…。

 色々引っ掻き回しそうなオーラムンムン匂わせ、かつての仇の妹として作品に顔見世した秋音ちゃんが、恋とは少し距離を取った間合いで誰かに救われ、ムッツリ黙り込みながらもその幸せを願っていた、「話せる相手」だと判る回でもある。
 第10話で描かれたあの幸せ遊園地が、四人だけで到達できる一つのピークであり、そこに煮えきらない中途半端さとほっとけば心地よい身内だけで腐っていく不健全を感じ取ったから、そこを引っ掻き回す一年組が投入された。
 今回ラストで顔見世した五十嵐くんの再登場も、そういう思春期の水槽を引っ掻き回す換気装置であり、秋音ちゃんは自分のミッションをこのタイミングで終えた…つう話か。 

 桃ちゃんが自分の欲望と権利に向かって、横から全力で突っ走らなきゃ、小雪は選択しなければ何も得られない現実のシビアさも、そうやって引っ掻き回されて乱れる己のどす黒い内面も、それでもなお冷静に状況を見れる落ち着きも、真実感じ取ることは出来なかった。
 あるいは奪われればこそ燃え上がる恋心も、そういう外部因子に引っ掻き回されればこそ観察できる、普段は見えにくい己の影なのかもしれないが。
 どっちにしても、このお話はカメラがメインで切り抜いていた「主役」だけを特権化して、ソイツらで閉じたシェルターの内部だけで話を完結させるつもりは、あんまない。

 

 不快だったり醜悪と感じたり、目を向けず世界から切り離したい…けど、確かに存在してしまっている他者や自己(あるいは他者としての自己)。
 そこに泣き震えながら、得難い誰かの助けを得ながら向き合っていくという、苦くていたい青春の本道以外に、ほっときゃクズになっていく人間を成長させる手立てなんぞねぇ。
 それは氷の城壁張り巡らせて感じ悪すぎた内省女だけでなく、皆に優しいイケメン王子様も、容姿に恵まれたハイカースト女子も、みーんな同じだ。
 今眩しい幸福の中にいて、痛みや醜さに目を向ける必要がないと感じている…そう思い込むことで不安を鈍麻させている連中も、みーんなそうだ。

 今回小雪が辿ったフラフラは、そういう全員共有の道を先んじて歩いているテストケース…でもあり、ヨータが彼女に吐露した「頼れるいい子」であることの虚無性とか、自分とは無縁のコンテンツとして弄んでいた恋に揺さぶられ、涙で自分の形を見つけ直した美姫が、すでに歩いた道でもある。
 つーことは「これが正しいんでしょ?」で自己洞察から逃げまくっとるミナトも、そんなピカピカイケメン君をゲットして幸せの絶頂な桃ちゃんも、近い内どす黒い闇に容赦なく投げ込まれていく。
 そういう場所から何を持って帰り、どういう自分になるか。
 恋の鞘当やら人間関係サスペンスは、そういう正統成長譚の火種でしかなく……同時に人間をがくがく揺さぶる切実さで青春に根を張る、否定しがたい「本当」でもある。

 

 永遠だと思い込んでいた/思い込みたかった世界を、桃ちゃんの正統なる権利行使でぶっ壊され、小雪はフラフラ思い悩む。
 それはかつて氷の城壁に自分を閉じたときより、もうちょい外側に開けた行動であり、表向きの平穏を取り繕いながら、小雪は色んな人と話し自分の気持ちを伝える。
 そうやって誰かの手を取ることで救われるものがあるのだと教えたのは、外でもないミナトであり、だからこそどんだけ状況が変わっても消えてくれない慕情が、小雪を振り回し縛ることにもなる。
 なかなかに人間の面倒くささを感じる展開だけども、小雪の世界は後戻りも破綻もせず、傷を受けてなお前へ進み続けている。 

 むしろ激しく揺さぶられたからこそ、今まで考えてこなかった色んな事実や感情に向き合い、自分がどうしたらいいのか思い悩む契機にもなっていて、傍から見てりゃ「いい経験」である。
 でも青春の当事者として、ガクガク揺さぶられる側にしてみりゃたまったもんじゃなく、出来りゃあの幸せなまどろみが永遠に続いて欲しいと、願ってしまうのも無理はない。
 でもま、そういう夢を揺さぶる権利は誰にでもあって、それが嫌なら自分なり、世界認識とそれに基づいた行動を後悔なくブッ込むしかない…てのが、この作品のルールだ。
 そこで何も考えず行動するのも、考えてる形だけ整えて思考停止するのも、ヤベー結果しか生まない…てのもね。

 

 己の揺れる心と向き合う今回、小雪の内省力と言語化能力が良く見えた。
 彼女は色んな事を考え、それに自分がどういう感情を抱き、どういう状況にあるのかを客観視する能力が高い。
 そういう彼女が一切見ないようにしている、両親不在の寂しさこそが彼女を形作る根本だってのが、また人間の複雑怪奇なんだけども。

 ともあれ自分に見えている…揺さぶられ見えるようになった範囲で、小雪は色々考え、耐えきれないものは誰かに頼り、前よりちったぁ良い自分、心地よい世界を掴もうと、ジリジリもがいている。
 たとえ無駄な足踏みに見えたとしても、その内省と熟慮には大きな意味がある…ってエールが、強く込められた作品だと思うのね 。

 

 甘い自己陶酔と特権化で、ともすれば横恋慕無罪で突っ走っちゃいそうな、胸キュン夏祭りシチュエーション。
 そこで小雪は、傍から見たときの自分の身勝手なキモさを、どす黒い影の中で強く自覚する。
 自分の気持ちがどうあろうと、勝手な線引して「これはセーフ!」とかホザくのはキモいし、かといって動き出してしまった恋情は殺せない。
 自分では答えが出ない問題に、「どー考えてもミナトが小雪を好いとるだろ…」と、当事者と離れた位置にいればこそ客観視出来てる月子ちゃんを頼ることになる。
 この子も第10話以降存在感が増したキャラで、青春の主役として制御不能な感情に潜る小雪では、

把握しきれない「客観的に見た貴方と彼」を伝え、そこから推察できる行動案を提示するっていう、物語的役割を背負わされたキャラだよなぁ…。

 ここら辺、後の西さんとホンちゃんのプロトタイプ的役割も匂うが、氷の城壁に閉じこもりマジ最悪な拒絶キメてた頃とは違って、今の小雪は誰かが隣にいてくれる意味を良く知っている。
 一人でモゾモゾ思い悩んでいるより、人の中で手を動かしている方が心が楽だと感じるし、そう思わせてくれるカラフルな幸福の価値を、「ミナト」という一番デカいピースを抜かれたからこそ感じてもいる。
 「ここに閉じこもっているのが、一番安全で正しいんだ!」と選んだスタイルを、切り崩され投げ捨てて、新しい幸せと価値観を再構築できるのは健全な逞しさだし、小雪をそう生まれ変わらせた功労者は、やっぱミナトなんだよなぁ…。

 

 それがどーしてこんな事になってんだよッ!(唐突なキレ)
 ここらへんに関しては美姫の洞察がおっしゃる通りで、不安と孤独に癒着した博愛に、社会的正しさをコーティングした「自分らしさ」の鍵でもって、ガッチリ認知を覆ってしまった結果である。
 これは外部で発生する出来事、他者からの働きかけに揺さぶられつつ、結局ミナト自身が身を引き裂くほどに後悔し、全部ぶっ壊された更地から再構築するしかない、高校生なり創り上げた歪な鎧であろう。

 「そういう思い込みと自己防衛、傍から見るとかなりキモいし、思い切ってぶっ壊されてみると結果いい感じだよ! 血はビュービュー出るけどね魂からッ!」つうのも、現在進行系で小雪が担当しているテーゼではあり、ミナトもまたこういう青春血みどろ旅に出なきゃいけんわけだが。
 かつてミナトが「生き方を変える」という小雪の決断を、マジギリギリの所で優しく強く受け止めたように、今度は小雪が大間違いに傷つきまくってる…自覚すらなくリア充イケメンやっとるミナトを、支え恩義を返さにゃならん。
 そのためには結構な人間力が必要で、今の迷いと洞察はそのための修行時代…という感じか。 

 

 極めて生っぽい思春期の悩みと痛みを掘り下げつつ、物語はそういう、当事者からは道が見えない無明に何を学び取り、何を鍛え善くなっていくかという、未来からの視線が貫かれている。
 それはジュブナイルであり教育の視線だと思うし、それがあるからこそ僕はこのお話好きなんだけども、それが上から目線の説教にならず、当事者が地獄の苦しみに向き合った末、ようやく見つかる一つの答えとして、水平に公平に描こうとしているのも、とても偉いなと感じる。
 それはガキ共が希う甘っちょろい停滞を許さず、「テメーはここがキモいし、間違ってるからこう事故る!」と、容赦なく殴りつけるところも、フェアで愛に満ちてるなぁと思うね。 

 そういう「お前ら今青春地獄の真っ只中だろうけど、ゼッテー善くなるから! それを嘘にならず描き切るため、内省と言語化の深い所まで潜り切るから!」つう、作品の姿勢が良く出た回だなと思った。
 恋が壊れても、嘘で塗り固めても、足踏みと間違いだけに満ちてると感じても。
 弱くて強くて真っ直ぐな雛鳥たちが、自分たちの羽根でより善い未来に旅立っていくための準備期間(モラトリアム)には、意味も価値も、喜びも幸せも絶対ある。
 そう言い切るためには、情容赦なく人生のキツい局面にキャラを投げ込む必要があると、信じて積み上がる甘ったるい青春の局部麻酔と、それが引っ剥がされた後の素敵な地獄。
 まだまだ、物語は続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像は”氷の城壁”第17話より引用

 つーわけであり得る可能性に蓋をして、自分に一番心地良いルートだけがそこに在るのだと思い込んだ結果、横から恋愛掻っ攫われた小雪。
 中学時代のどす黒い策略と正当防衛的加害、それを反省しての冷たい自己閉鎖を経て、今の小雪はその愚かしさを直視し、どっぷり凹める強さと賢さがある。

 それはヨータとの関係に心ズタズタにされた美姫も同じで、今のミナトには刺さらない正論ぶつける気持ちよさが、自分の選択を肯定するための心理的麻酔だと解ってしまうから、冷静さを装い言葉を選ぶ。
 痛みだけが、子供を大人にしていく。

 

 それは二年生だけの特権ではなく、家でもクソみてーだった姉にさんざん傷つけられ、ユウキの考えない強さに救われた秋音もまた、散々悩み苦しんで、今の生き方を選んだ。
 皆見た目より色んな事に傷つき、色んな事を考え、その上で一緒にいて気持ちの良い身軽さを着込んで、繋がりを作っている。
 高校生の抱える難しさと強さを、このお話はかなり生っぽい視線で大事にしてくれていて、そこが好きなポイントだ。

 話してみりゃ、皆色んなものを抱え込んでいるし、それを明かしてくれる間合いまで心を近付けるのは、結構難しい。
 聞いてんのか心の鍵師さんよぉ~~~~~~~~。 

 

 内側に含むものありすぎるミナトの博愛に対して、秋音を救ったユウキの気さくさはマージで何も考えておらず、しかし結果はよく似ている。
 誰かに無価値だと断じられ、高い壁を張り巡らせることでしか生き残れなかった人間に、壁乗り越えて手を差し伸べてくれる存在は、間違いなく救いだ。
 それで救われてしまってることが、ミナトの行動を肯定し、その根本にある歪んだ自己愛と防衛意識から目を背けさせたまま、誰かに求められる在り方を延々続けるヤバさを続行させてもいる。
 美姫が「ミナトの気持ちは!?」と聞いたのは、問題の本質をストレートにエグッている、かなり重要な問いかけなんだよなぁ…答えないけど、アイツ。 

 ミナトの課題はどんだけ外部から働きかけても現状動かないが、秋音と小雪の間には(桃ちゃんが生んだ波紋を奇瑞として)対話が発生し、お互いを解っていく。
 周りと比べて己を傷つける虚しさと危うさは、中学時代小雪が散々振り回された地獄でもあり、ようやく預けられた秋音の難しさに小雪が差し出すアドバイスには、真っ赤な実感が滲んでいる。
 比較しないならしないで、自閉してどんどん傲慢に腐っていくっていう体験も、氷の城壁に閉じこもっていた時代思い知っとるからな…。
 開けすぎてるのも閉じてるのも危ういなら、んじゃあどうするの? つう話にはなってくる。 

 

 小雪自身がミナトへの恋にビタ浸り中なので、秋音がユウキに向けるアロマンシャルな憧憬は、なかなか理解しにくい。
 猫も杓子も恋しがちなラブコメジャンルにおいて、こういう感情の繋がり方をメインに置いておくのは、結構勇気がいると思う。
 それでも秋音-ユウキ間の感情を、恋情を排しつつ間違いなく誰かに救わてもいる、大切な関係として描いているのは、この作品が志す風通しの良さ、色んな多彩さの肯定なのかなと感じる。
 こういう繋がり方が確かに世界にはあって、小雪も美姫もそっちにはいかないけど、だからといって消えてなくなりはしないし、無価値でもない。
 秋音を通じて、そう書いておく意味は結構デカいと思う。

 何しろ痛い目見してバンバン自己洞察の沼に引きずり込み、そこで得た辛さを成長の糧にさせる物語なので、小雪たちは思い違いと妄想を永遠だと思い込みたくなる、人間種特有のバイアスと向き合い続ける。
 そういうどーしょうもなさを前提として、どうにかそれに立ち向かい流されない、世界も他人も自分もより善く出来る自己をどう獲得していくか。
 恋をメインエンジンにしつつ、このお話はそういう思春期の七転八起をこそ真ん中に据えて、色んな連中の色んな生きづらさと、それを支えてくれる誰かのかけがえなさを、幾重にも重ねているように思う。
 ようやく明かされた秋音のアロマンシャルも、その一環だと感じるね。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像は”氷の城壁”第17話より引用

 そして見ろ!
 この脳髄までロマンスに浸ってるようでいて、彼女と通話する時にどす黒い孤独に身を投げてる男の姿をよぉ!
 桃ちゃんの方は大事にされてる実感でスーパーハッピーピカピカ祭りなのに、オメーはいっつもずっとそこだよッ!

 

 ミナトたちが男女に分かれて演じているこの断絶を、小雪は夏祭りに浮かれるトキメキと、それを振り返った時見える惨めさの自覚で、一人で完結させているのが面白い。
 恋の渦からちと遠い場所にいるってのもあるし、そこで自分を客観視せざるを得ない性質こそが、小雪を小雪足らしめ、この話を支えているって話でもある。

 桃ちゃんが浮かれる恋の輝きは、お試しと哀れみでお付き合いしてあげているミナトから、極めて遠い。
 同じ場所に立ってない繋がりが、恋愛に限らず人間を幸せにしないってことを幾度も書いてるお話が、この「勝ち」をどう扱っていくのか。
 交際開始直後だってのに、既に濃厚なメッセージが出ている画面づくりだと思う。

 

 同時にこの明暗は豊かな内省と成長の苗床でもあって、ミナトと桃ちゃんに於いてはお互いの間に置かれている矛盾が、小雪においては彼女一人の内側で明滅する。
 「どこまでならOK?」とか、マジキモい身勝手に浮かれるラブコメヒロインは同時に、そういう裏切りを自分にだけ許す特権意識を、自分でぶん殴らざるを得ない客観性を備えている。

 今自分が惨めで滑稽な存在であるという、可能なことならLOVEに酔っ払って直視したくない事実を、真っ直ぐ見据えてガンガン凹む。
 これはロマンスへの陶酔だけでお話を進めるんなら、水さしまくりの空気読めてない行動だろうけど、恋していく私たちの深い部分をズブズブ抉る物語としては、とても大事な視点だ。
 私が認識している…認識したい世界も自分も、他者と共有可能な客観性を通してみれば、矛盾や問題を抱えた醜悪な過ちでしかない。

 

 ならどこに出しても恥ずかしくない己になって、軋み少ない世界を掴むには、何すれば良いのか。 
 一回「氷の城壁に閉じこもる」つう戦術が、自分を思ってくれる他者をマジで傷つけるヤバい選択だって思い知っているので、小雪はこの問いかけから目を背けられない。

 それは自分の博愛がズタボロの自己愛と、それを守るための認知の歪みから出ていると客観視出来ないミナトや、自分を傷つけたはずのルッキズムと恋愛至上主義を内面化し、怪物になることで弱い生贄であることを拒んだ桃ちゃんには、得られない視点だ。
 あるいはその痛みに満ちた客観視、それを生み出す洞察と変化への志向が、小雪をこの物語の主人公にしているのかも知れない。
 よくもまー、こんな色々考えすぎる女をラブコメの主役にしとるもんだよ…。 

 そして今の小雪は、自分一人ではどーにもならん重荷に潰されそうになったら、誰かに頼ることを覚えた。
 内面に潜りすぎるあまり、適切な客観視を取りこぼす傾向もある小雪に、「旗から見たら、オメーらこうだから!」と告げる役割を背負う、大事なサポーター。
 自身小雪と仲良くなったことで、縁遠かったはずなのに踏み込んでみると結構楽しい、ピカピカ充実な高校生活を掴み取った霜島月子は、一体どんな助け舟を差し出すのか。

 唐突に顔出した最悪元カレの活かし方含め、なかなか面白い局面になってきた。
 さー恋を中核に思春期のアレソレを掘り下げていくお話、まだまだ荒れるぞぉ! 

 

 

 つーわけで小雪がグダグダ色んな事を考え、秋音ちゃんの本性が見える回でした。
 ぶっちゃけ意味深な沈黙でサスペンスを煽り、話を牽引する仕事はここで彼女の「人間」が見えたことで終わっちゃうんだけども、そのあっさりな機能完遂も含めて、「ガキの狭い視界で見えてるモンって、当人思ってるより本当じゃないよね~」つう、シビアな視線が生み出した展開だとは思う。
 クソ姉へのわだかまりに邪魔されて、あるがままの秋音ちゃんを見ようとしなかったのは小雪の方だしね…。

 ここら辺の濁った未熟さ含め、綺麗なばっかじゃねぇ青春の全部に潜り、掛け替えないものを掴んで未来に進むまでの旅は、まだまだ続く。
 次回も楽しみ! 

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?:第2話『強化した服を着ていたら痛恨の一撃で破壊されトラウマを抱えたプライベートコーデ女子に渾身の一撃を食らう。』感想ツイートまとめ

 ドラゴン強襲にヤクザ冒険者…どいつもこいつもかかってこい!
 底抜けおバカとトラウマ女騎士の奇妙な初クエストを描く、チー付与アニメ第2話である。
 たいへん良かった。

 

 謎ののどちんこENDからヌルっと始まり、恐怖が骨の髄まで染み込んだリリィを背中にかばい、持ち前のチートでドラゴンぶっ殺したレインとの絆は深まる。
 想定の三倍くらい生っぽいヒドさを誇る冒険ギルドのヤクザっぷりにビビりつつ、チート級付与術師の新たな居場所となった”青の水晶”の運命やいかに! …という感じの第2話。

 相変わらず異常なハイクオリティで殴りつける所と、脱力系ギャグで笑わせる所の緩急が良く効いていて、今回はそこに加えて北野映画もビックリなヤクザ・バイオレンス満載の、ギルド商売のヤバさが顔を出してきた。
 こういうノワールな味わいを全面に押し出すなら、前回妙に気合入ってたスラムの薄汚さとか味がしない暴力と脅迫描写とかにも納得がいき、精妙な計算のもと張り詰めたり緩んだりを繰り返しても、間延びしない根本的な仕上がりの良さも飲み込める。
 思っていたより(そして期待してた通り)マジメに、生きたり死んだりを扱う話なんだろうなぁ…という手触りが匂ってきて、とても良かった。
 こっからの”王城の牙”の追い込みが、どんだけエゲツナイかが一つの見所かなぁ…。 

 

 ユルいギャグと上質なファンタジー力、どす黒い暴力。
 色んな面白さがあるが、今回一番良かったのは極めて地道で適切な、レインとリリィの人情の描写だった。
 レインは底抜けのバカだが(それゆえ?)善良で、ドラゴンが目の前に迫ってもビビらずリリィを背中にかばい、その姿勢にリリィは恐怖を乗り越えるきっかけを得る。
 未だ剣を握る手は震えるが、自分の未熟さを真っ直ぐ受け止めたレインに求められて指示を出し、見事に初クエストでのドラゴン切りを成し遂げる。
 そこにはトンチキなギャハハ笑いに回収しきれない、人間同士の嘘のない繋がりが暖かく描写されている。

 これはドライなビジネス的関係と思わせておいて、新米二人のクエストを陰ながら見守っていたエルシーにも薫っていて、今後主役たちの居場所となるギルドが、悪徳の渦の中例外的にキレイに輝いている特別さを際立たせる。
 何しろ対局にある”王獣の牙”が、泣きながら逃げる連中を首チョンパして顔色一つ変えない鬼畜集団なわけで、そこに的かけられた”青の水晶”も仁義なき闘争へと、否応なく巻き込まれていくのだろう。
 その時おバカどもがワーワー騒ぎつつ、人間の柔らかくて温けぇ部分を預け合える関係なのだと、既に匂っているのはありがたい。

 

 ロクでもなくなるしかない非情な世界で、それでも人らしくいられる最後の居場所。
 そういう任侠モノのセッティングに、パーティ追放とチート付与魔術つう流行りのネタを投げ込んだ時、どういう化学反応が起きるか。
 二話にしてかなりワクワクする道具立てが見えてきて、大変いい感じだと思う。

 レインとリリィの騒々しい悪戦苦闘、そこに挟まれるやりたい放題ギャグを通じて、彼らが冒険者稼業のスタンダードだろう悪徳や悪辣に上手く馴染めない、真実人間だからこその異物感も良く感じられた。
 大手ギルドである”王獣の牙”のロクでもなさは、この世界で力を持つものの標準であり「正解」ですらあるかもしれないが、しかし逃げる相手を迷わずぶっ殺し、女を攫ってモノにしようとする最悪が、人間としての「正解」であってはならない。

 むしろ震える足手まといを迷わず背中にかばい、巨龍を薙ぎ払ったレインの立ち姿こそが、人のあるべき姿(つうにはバカすぎるが)だろう。
 しかし彼は搾取される悪徳組織の奴隷であり、ノリで追放されるオマケであり、ナメられ脅される弱者と扱われている。
 そこにはロクでもない社会と、そこではバカにされるしかないお人好しの対立が透けて見える。
 ここら辺の対立構造を、どんだけ本腰で今後描いていくのか…そういうノワールな手触りに、ぶっちぎりのオトボケ加減がどう混ざり合っていくかが、大変楽しみである。

 

感じられる。
 明らかやり過ぎな気合みなぎるブレス作画と、それを切り裂くレインのチートっぷりは、「あえて」の崩し字で綴られたなんちゃってファンタジーで収めるには、あんまりにも本物過ぎる。
 ド正面から剣と魔法のファンタジーをやるだけの土台がありつつ、徹頭徹尾ふざけ倒すそのスタンスがどっから生まれ、どこへと飛び立っていくのか。
 そのエンジンがどす黒いヤクザ汁で駆動しているの含め、大変面白い組み合わせだと思う。
 明らか食中毒起きそうな組み合わせなのに、既に美味そうな味わいしとるのが凄いよなぁ…腕力あるわぁ。 

 レインのチート付与に耐えるだけの武器がなかったり、リリィがまだ恐怖を乗り越えられなかったりと、成長の余白をしっかり残して話を転がしている手際も含め、非常に堅牢かつリッチな物語の土台。
 これがあってこそ、いい感じに崩されたギャハハな笑いも八方破れなパワーを残しつつ、しっかり展開に馴染んでいる。
 本格ファンタジー、人情ドラマ、破天荒ギャグ、そして冒険者ノワール。
 色んな題材の魅力をしっかり引き出しつつ、優れた具材が喧嘩せずお互いを引き立て合うよう、精妙に調子を整えるコントロールの上手さが、良く感じられる第2話だった。
 ここら辺の「手ェ出したジャンルの面白さ、全領域全深度やりきるぞ!」という欲張りな野心、個人的に好きな匂いだ…。

 

 

 

 

 

 

画像は”追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?”第2話より引用

 つーわけで前半戦、レインとリリィのファーストクエストとなるドラゴン退治。
 超力んだドラゴンの凄み描写と、それを恐れずリリィを背にかばいチート斬撃キメるレインの英雄力…を全裸にひん剥き、二人の魂が通じ合う夕日のエモさでまとめ上げる、上下動の激しい展開となった。
 色々ぶっこみつつ、二人の善性と勇気がちゃんと感じ取れる手触りが根っこにあるのは、まー描写力が太いアニメね。

 

 レインは暴力横行するこの世界で、どーして生き延びてこれたか判んないくらいに純朴で、他人にも自分に嘘をつかない良いやつだ。
 その純粋さは見ているだけの傍観者ではなく、震える仲間を背中に庇う戦士のポジションへと、彼を押し出していく。
 彼が”王獣の牙”から取り戻したチートは、凶暴な竜の炎に負けない強さを与え、初クエストを見事に成功させる鋭さをその剣に宿す。
 何かとヤダ味濃いめになりそうな追放&チートネタが、トラウマに震えるリリィを守り、初仕事を成功させ自信を取り戻していく「善」の助けとして描かれているのは、とても面白い異質性だと思う。

 このレインの特別さは、安定性のない危ういものでもあり、かつて幼い天才だったリリィはこれを補助する形で、ちょっとずつ英雄としての自分を取り戻していく。
 恐怖と不安にズタズタにされ、素直に生きるのが難しくなった彼女精一杯の手助けを、恥ずかしいほど真っ直ぐにレインが褒め称えているところもまたチャーミングなのだが。
 竜殺しでの役割分担を通じて、二人に欠けているものと補い合うべきものが既に明瞭なのは、互助会(ギルド)を主人公たちの居場所と定めた物語にとって、かなり大事な描写だった。
 お互い足りず欠けているもの、奪われているものがあるからこそ、仲間として補い合い、支え合って未来へ進むわけだ。 

 

 その舞台が、トンチキな脱力描写で誤魔化しきれないくらいのファンタジーに満ちていることを、優れた美術が豊かに語ってくれているところも良い。
 フォトリアルになりすぎず、独自の絵画的美しさを宿した情景が生み出す独特の美しさは、どんだけヤクザが生っぽいロクでもなさぶん回したとしても、ここが魔法と冒険の舞台であることを教えてくれる。

 それはリリィとレインという、この世界では生きづらいくらい真っ直ぐな連中だからこそ見える、本来あるべき世界の風景…なのかもしれない。
 ここらへんを測位するには、薄汚れた世界のスタンダードたるヤクザ冒険者が見てる世界が、どんくらいドン黒いか書かれねーとな!

 

 

 

 

 

 

 

画像は”追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?”第2話より引用

 つうわけで竜殺しの帰り路では、超ろくでもない元同僚がヒャッハーしながら襲いかかってきて、その片鱗を教えてくれる。
 つーかマジスナック感覚で人の首が飛び血しぶきぶっ飛ぶので、ちょっとビックリしちゃった…。

 こっちが作品世界の「素」だとすると、デフォルメ効いたギャハハ笑いで上手くオブラートかけないと、そらー飲み込みにくくもなるわね…。
 安易にダークファンタジーにしないの、面白いバランス感覚だわ。

 

 殺人強盗凌辱上等、豺狼以下のクソ冒険者達を前に、レインは真っ直ぐあるがままの自分でぶち当たろうとし、リリィはドラゴン退治に続いて(クソダセェ私服で武装して)それを補ってくれる。
 二年間部屋ン中に引きこもり、恐怖と屈辱に身を捩っていた彼女が、過去の自分を悪しざまにいう演技でレインを守り、イノセント過ぎるバカが現世を上手く泳げるよう手助けをしている姿は、気高く咲く野菊のような美しさを感じた。
 バカ過ぎるレインを手助けすることで、リリィは自分を縛る過去を自然と乗り越え、生まれ変わっていくわけだな…む、”セカンドライフ”なのコレも?

 レインもクズ暴力集団がどんな輩か、追放されて初めて自分の目で確かめ、堂々自分自身の力の本質を叫ぶ。
 奪われていたものを取り戻し、自分が正しいと思った使い方をして、ただ踏みにじられるだけじゃない己の本質を、ちっぽけな石に込めて宣戦布告する。
 その結果ヤクザ女を本気にさせて、「ナメられたら終わり」という冒険者の本質に火もついたが…自分に正直に正しく生きるなら、腐った世の中と衝突するは既定路線だわな!
 そのための武器がショボい剣とかただの石なのが、暴力に振り回される弱者の代表たるレインの地金を感じさせて、なかなか面白いチョイスである。

 

 こうして世界観のドス黒さが目立ってくると、ワーギャー騒々しいおバカがむしろ清涼剤として効いてきて、なかなかにありがたい。
 ”王獣の牙”が本気になって、今後そこら辺の苛烈さもガンガン煮立ってくると思うけど、そういう笑えない状況でなお笑う人間の強さが、何かと全裸になるレインとツンデレ可愛いリリィに既に元気なのは、逞しくてありがたい。
 この最悪な空気の中でそれでも逞しく笑う、無邪気なだけじゃない雑草の逞しさは、”ロミオの青い空”を筆頭とした名作劇場テイストを感じる部分でもあり、個人的な肌なじみが良い。
 そういう意味でも、美術強いのはありがたいんだよな…異国情緒が景色に宿ってる。

 泣いてる弱者を踏みにじる強さより、屈辱を飲み干し誰かのために嘘をつく情けなさのほうが、人間として正しい。
 腐れ冒険者共の暴虐をどうにかやり過ごすべく、リリィが選んだ道にも靭やかな強さがあり…しかしそんだけじゃ、本物のクズには立ち向かえない。
 いきなりレインがチート炸裂させるのではなく、こういう渋い強さ描写があったうえで正義の宣戦布告かましたのも、たいへん良かった。
 「腐った世の中がどんだけバカだと罵ろうが、こういう生き方が正しいんだッ!」という主張が、主役たちの背骨を真っ直ぐ支え作品を受け止めているのは、かなりの真っ向勝負で好感が持てる。

 

 同時にそういう直球勝負だけじゃ人生渡れなかったからこそ、リリィは二年間ガタガタブルブル引きこもり、過去を知る謎のハイレグ女が意味深に顔を見せるのだろう。
 ここら辺、リリィが失ってしまった純朴な自信をレインが有し、レインに足りてない賢さと強さをリリィが蘇らせていくと相補的関係でもあるんだな…。
 底抜けのバカで純粋過ぎるレインは、挫折と理不尽に満ちたクソみてーな現実をなんも知らず、だからこそ強くて危うい。

 そこに現実思い知らされたリリィと、彼女と縁深そうなハイレグ女がどう絡んでくるかだが…全然読めねぇな!(嬉しい敗北宣言)
 本気になっちゃった、ヤクザ冒険者共の動きもあるしな! 

 

 

 というわけで、主役二人がドラゴン殺しに挑む中そのキャラクターが良く見え、クズ冒険者との対峙を通じて闇深い世界観も感じらられる、とても素晴らしい第2話でした。
 パット見感じられるライトでギャハハな空気感も、どす黒いノワール味を飲み込ませるための清涼剤としての側面を持ってると解り、よりコクが増した。
 あとエフェクト作画が良すぎるので、チートが炸裂する時のど派手な気持ちよさが本当に凄くて、「チートファンタジー食ってるゥ…」って浸れるのはありがたいね。

 糸目の女との因縁、ヤクザ冒険者どもの蠢動。
 いよいよ物語のギアが入ってきて、作品の温度上がってきました。
 次回も楽しみ!

DARK MACHINE THE ANIMATION:第1話感想ツイートまとめ

 純真ボーイが流れ着いたのは、治安最悪の水没eスポーツ特区!
 DARK MACHINE THE ANIMATION 第1話を見る。

 

 

 

 

 

画像は”DARK MACHINE THE ANIMATION”第1話より引用”第1話より引用

 

 メカFPSを軸にしたマルティメディアプロジェクトの、アニメ方面担当…って感じの座組であり、異常な数の企業が雁首揃えている製作委員会の並びとか、異才がミッチリ集まってるスタッフワークとか、こういうプロジェクト独特の匂いがムンムンしている。
 個人的に結構好きだった”INGRESS THE ANIMATION”の匂いを感じて見始め、実際そういうスメルはバリバリ匂い立つわけだが…想定していたより手堅い第1話だったね。
 俺このアニメ…好きだな、結構。

 

 クリエイティブプロデューサー・谷口悟朗を筆頭に、メインキャラデザ・吉成鋼、衣装デザイン・めばち、脚本チームに鈴木貴昭と浦畑達彦、イメージボードが荒川眞嗣で劇伴がSUGIZOという、なかなか見ないスタッフの並び。
 OPはBUCK∞TICKだしさぁ…ドーパミン湧出最優先の令和じゃなかなか聞けない、独自の匂いのある楽曲で結構好きだね。

 制作会社のProduction +hは劇場版デデデデやった実績はあれど、TVシリーズはこれが初めてで、監督の寺田和生もこれが初監督作品。
 正直もっと個性が混ざり合わずガチャつくかな~とか思っていたが、蓋を開けてみたら第1話でやるべき主人公のキャラ見せ、世界観の提示、作品フォーマットの開示を、手際よく気持ちよく成し遂げてくれていてかなり良かった。 

 

 お話としては爪を隠してる田舎出身の能ある鷹が、地球温暖化に伴う水没でeスポーツ特区に活路を見出した治安悪目シティに降り立ち、沢城ボイスの謎めいた師匠に出逢って、ヤバい危険も伴うホットなゲーム†DARK MACHINE†に飛び込む…という展開。
 現実で売るゲームと連動した企画なので、フルダイブではなく物理キーマウすら使える生っぽいゲーム風景の下、荒っぽい連中がデータを奪い合う治安の悪さをスパイスに、カチャカチャロボット操縦して打ち合う作品内遊戯の「遊びじゃない感」は、まーまー上手く保たれている。
 まーeスポーツ部スポ根とかにしないなら、そういう味付けになるよね…ホビアニの治安が悪めになるのと、同じ原理だ。

 主人公カイリの朴訥ながら有能なキャラ付け…それをゴールデンバレーの荒くれた日常でもある騒動の中で見せていく手際がなかなか良く、素直に入り込めるスタートだった。
 ゲームのことはなんも判らんけども、急旋回する状況に慌てふためくでもなく、リアルでもゲームでも素直かつ反射神経の良い立ち回りを見せ、やるべきことしっかりやってくれる主人公は、なかなか好感度が高い。
 カレー頭に被って電磁警棒をスプーンで受け止めるシーンは、彼が背負っている天然のトボケと優秀さがよく匂って、とても良かった。
 師匠となるルドラの言うことも素直に聞いて、ド素人なりチームに貢献する滑り出しは、チャーミングでいい。

 

 反発モリモリのチームメンバーを攻略し、田舎出身の純真ボーイが周りに認められていく人間関係構築のドラマにも期待できるし、かなりいいスタートだったと思う。
 呼吸するように騒動が湧いて出るゴールデンバレーにもすぐ馴染み、急に銭と揉め事乗っけたヤバゲームに飛び込むことになっても、慌てず騒がずどっしり構えてくれるおかげで、見てるこっちも焦らずにすむ。
 同時に†DARK MACHINE†のことも世界観も全然解んねー自分らの疑問も、しっかり背負って歩調を合わせてくれる主役で、こういう話やるのに手堅い造形でもあった。
 判んないなりに他人を助け、出来ることをしようとする前向きさが既に可愛いのはありがたい 。

 現金が価値を失い街も水没している、温暖化真っ盛りな現在の延長線上にあるゴールデンバレーの描写は、程よい異国感がしっかり演出されていて良かった。
 水上スクーター飛ばしてると、殺意満々のワイヤーが喉に絡みついてくる治安の悪さはどーかと思うが、そのヤバさこそがeスポーツ特区の現実…なのだろう。
 「電脳お遊戯が唯一の地場産業かよぉ!?」という視聴前のナメを、「しょーがねぇだろ土地は沈むし経済も破綻してんだからッ!」という、想定外の生っぽさで上手く殴りつけてきたのは、なかなか良い味付けだと思う。
 なんか全体的に元気良く、新しい野放図さを楽しんでいる街の空気も、勢いあって良い。

 

 カイリが追うメインクエスト相手の†千鬼†が、eスポーツプレイヤーの枠を超えたチンピラの親玉であり、なんか現実でもバチッとる雰囲気は、初回で上手く感じ取らせれたと思う。
 良い年したニーチャンがゲームにだけ夢中になってる筋立てだと、ちとパンチにかけるきらいもあるので、最後に分かり易い意味深さをぶっ込んできたルドラ師匠の謎と合わせて、この治安の悪さはなかなか良いスパイスだと思う。
 同時にシコシコゲーム練習して上手くなり、仲間と絆を深めていく地道な描写も頑張ってほしいが…ここら辺は下手にフルダイブにせず、画面睨んでキーボード叩く描写のリアリズムが、結構良い効き方してた。

 ゲーム画面の中ではミサイルが唸りワイヤー機動が暴れまわる、ロボットアクションも堪能できる。
 現実の戦争ではないからこその奇妙なライトさが、ゲーム内部より空気悪いゴールデンバレーでどう生きてくるかなぁ…って感じではあるが、ここら辺は今後のeスポーツ経済の書き方次第かと思う。
 ロボアクションは一撃必殺の重さにはかけるものの、体力バー削りポイントを稼ぎ合う地道でシコシコした部分と、急にデカくなって鋼鉄クロスカウンターぶっこみ合う派手な部分が初回から見れて、結構良かった。
 ここら辺の見せ方はゲームと連動する部分だから、現実由来の枷を上手く魅力に変えて欲しいもんだね。

 

 僕は相性最悪の尖った連中が、なんだかんだ色々あってチームになっていく物語が好きなので、既にその萌芽が香るカーバンクルの見せ方は良かったと思う。
 「荒くれた街にある、カレー自慢の喫茶店」ていうセッティング自体に、結構良い風味が漂っており、第1話で良く見えたカイリのキャラ性とそのポエジーが、なかなか良い響き合いしてた。

 今後もたかが電脳遊戯が世界を揺るが物語の中で、明日に足ついた日常を癖強仲間と一緒に育み、シコシコゲーム練習していいチームになっていってくれると嬉しい。
 そういう関係構築の舞台として、猥雑で活気に満ちたゴールデンバレーは良い舞台になりそうだ。 

 

 僕はアニメ生態系の外側から、デケー予算と影響力を匂わせてグイグイ押し込んでくる無茶な企画…その結晶たる珍妙なアニメが、結構好きだ。
 最近でいうと”DARK MOON -黒の月: 月の祭壇-”とかかなり良かったが、今作にもそういう、色んな無理を予算でゴリ押してるだろう「軋み」を感じる。
 そこから作品自体が内破する危険性もある、危うい歪みではあるんだが、これが上手くハマった時には独自の面白さがそっから漏れてくるので、自分的には無難に埋め立てず、活かして欲しい気持ちがある。
 こういうゴツゴツした手触りにこそ、僕の好きな「深夜アニメ」を感じるわけだしね。 

 そういう意味でこの第1話、作品世界全般の治安の悪さから明らかに浮いてるeスポーツ描写とか、それをなんとか物語のうねりになじませようとする必死の努力とか、大変いい感じに感じ取れた。
 そういう揶揄混じりのシニカルな楽しみ方で終わらず、主役と世界観がどういう存在で、何を求めて作品世界に飛び込んでいくのか、活劇を心地よく暴れさせつつしっかり教えてくれる手つきには、熟練の手堅さを感じられもした。

 

 この歪さと端正さの奇妙な同居が、一体どんな面白さを形作っていくのか。
 ぜーんぜん読めないのが、トンチキ大型企画アニメ部門第1話、特有の面白さでもあろう。
 かくして動き出した物語、次回も楽しみッ!

 

 

 

●今回言及した作品の、過去感想記事

lastbreath.hatenablog.com

 

lastbreath.hatenablog.com

 

あと感想では言ってないけど、デカ目の企画が見事に座礁した諸作品に三ヶ月向き合った記録たち。

 

lastbreath.hatenablog.com

lastbreath.hatenablog.com

こっち方面に突っ走っていく可能性も全然あるので、受け身取る準備整えつつ、今後も見守っていきたい。

魔法の姉妹 ルルットリリィ:第14話『魔法の歌姫』感想ツイートまとめ

 調査継続お姉ちゃん探偵がたどり着く、魔法の国の暗い秘密。
 あさひのあざといアイドルデビューもあるよ! な、ルルットリリィ第14話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像は”魔法の姉妹 ルルットリリィ”第14話より引用


 つーわけで野々山家・わんすもあ・フェリックススターと、ルルリリにまつわる色んな場所がお姉ちゃん視点で描かれる回となった。
 なんかスケールデカくなってきた魔法の祝祭とか、魔法バレの具体的な代償とか、色々重たい現状をまずお姉ちゃんが認識するのは、彼女の大人びた賢さを感じれて良い。
 まぁ急に水晶玉取り出しスパイシーカレーに怒る、野々山流の天然奇行もタップリ摂取できたが(お姉ちゃんがトンチキ可愛いと…嬉しい!)

 

 前回に引き続き、妹と憧れの先輩アイドルが=なのかを探るお姉ちゃん探偵業は継続であり、結果として魔法世界で進行する神秘の祭り…そこに歌姫として呼ばれそうなルルリリの現状まで、一気に認識が深まった。
 一期では風ちゃん視点メインで話が進んでいった感じなので、ここでお姉ちゃん側に軸足が移るのは面白い変化だが、病と向き合う中大人びるしかなかった流ちゃんが、おバカでノンキな妹に先んじて難しい事情を知るのは、「らしい」運びだと思う。
 風=リリィ疑念に関しては、ほぼ確な感じの手応えを得たけども、そこよりデケー話が魂牢獄の存在といっしょに、モリッと飛び出してきたからな…。

 星の祝祭は二人のアイドル活動でもデカいイベントになりそうで、二期を牽引する大ネタをこの段階で見せておくのは大事だと思う。
 同時に魔法の力を秘密にする、暗くてデカい権力の存在も見え隠れし、ずーっとノンキな小学生目線で、魔法の放課後ファンタジーやってきたお話が、ギアを一つ切り替えた感じもある。
 まぁ裏山に防護柵もなく、ゲキヤバクリーチャー蠢くヤバ領域へのワープゾーンが転がっている世界なので、そういうヤバさもそらあろーよ、という話ではあるが。
 お姉ちゃんとしては、妹にして最愛の憧れがそういうヤベー自体に狙われている、シビアでシリアスな状況を自分だけ知ってる…ていう局面だ。 

 

 リリィという偶像を通すことで、お姉ちゃんはようやく妹がどう笑うのかを見つめ、自分にとっての風ちゃんがどういう存在なのか、己に問いかけだした。
 一緒にカレー食って笑い合う、当たり前で大事な生活空間を共有してる仲なんだし、魔法なんてなくても自然となんとかなる…と思わなくもないが、病によって削られた心の力と合わせて、「そういうフツーの課題こそが魔法の助けを必要とする、とても特別な難問なんだ!」つうのが、エブリデイ・マジックとしてのルルリリの姿勢なんだと思う。
 そういう日常を特別なものにしてくれる魔法、魔法を必要とする当たり前の難しさを大事にしているのは、個人的にとても信頼できるポイントだ。

 お姉ちゃんが風ちゃんが全身から発する幼い眩しさを見つめられないのは、そういうモノを総身にみなぎらせていた(だからこそ、ずーっと風ちゃんの「星」だった)お姉ちゃんが、病という理不尽を前に負けてしまった事実が理由だと思う。
 無邪気で無敵な風ちゃんに反射する、同じように歌で何でも乗り越えれたはずの自分。
 それが病なんぞにぶっ倒され、無敵な自分を信じられなくなってしまった矛盾が、妹の顔を真っ直ぐ見つめる行為から姉を遠ざけている。
 幼い風ちゃんは、そこに潜む現実的な難しさは判んないけど、だからこそもう一度お姉ちゃんと歌える未来を信じて、あの時星を掴んだ。 

 

 その純粋な祈りが世界に響く歌となり、渋谷をジャックする魔法のステージがお姉ちゃんに届いて、もう一人の魔法のアイドルが生まれた。
 このコール&レスポンスが、姉妹感で閉じたパーソナルな関係ではなく、もっと広い場所に夢を広げる偉業だって示すのが、あさひの役割かなと思ったりもするけど。
 ともあれ風ちゃんの無邪気な祈りは確かに姉に届き、一足先に人生の難しさと向き合った結果賢くもなった流ちゃんは、無防備過ぎるリリィが垂れ流すヒントをかき集め、一足先に真実にたどり着く。
 風=リリィという事実が解っても、それが生み出すマジカル懲役のヤバさとか、妹と向き合いきれない自分とかの難問は、まだまだ解けない。 

 一期ではリリィの真っ直ぐな祈りが奇跡を生み出し、ルルがもう一度歌い、お姉ちゃんがぎこちないながら妹と一緒に歩む所まで、物語が転がっていった。
 その先に続く二期では、実は挫折だけではない成長も生み出していたお姉ちゃんの苦悩が、妹に迫る難しさを先んじて認識し、大事な人を守るべく踏み出す勇気とか、ずっと胸の中にあった愛しさとか、色んなものに気づき直す契機になってもいくだろう。
 そういう、等身大の中学生が抱える難問に魔法が力を添え、世界と自分が美しくきらめいていく物語の、下準備を整える二期スタートだったかなと思う。
 風ちゃんの答えは、話始まったときからずーっと揺らがず出っぱなしだからな…。 

 

 病という理不尽に一回ぶっ倒されたお姉ちゃんは、無敵だった幼い自分を信じられず、その輝きを未だ反射し続けてる妹の幼さにも、真っ直ぐ向き合えない。
 風ちゃんが姉に向ける信頼に応えられる自分を見つけ、応えなければ妹を暗い牢獄に奪われてしまう窮地に立ち向かうことで、お姉ちゃんは子どもが大人になっていく中でとてもありふれていて、とても難しい苦しさに勝てるだけの自分を、もう一度捕まえるだろう。
 そこに魔法と歌が力を添えてくれるのなら…そんなに素敵なファンタジーは、なかなかないだろう。
 こういうベーシックかつ瑞々しい構造が、お姉ちゃん探偵のマジカル調査から感じ取れるのは、大変いい。

 そんな戦いの舞台となる、野々山家のノンキな日常と、わんすもあの仲間たち。
 今回はお姉ちゃんが日々を過ごす場所の団らんが、どんな温度と手触りなのかよく伝わるシーンが多く、たいへん良かった。
 ここら辺の情景を焦ることなく、丁寧に積み上げてくれる「余白の上手さ」が、ルルリリの特色であり強みだなぁと感じる。
 自室で一緒に鏡を見つめてくれるあずき含め、お姉ちゃんに居場所と仲間が沢山いて、愛され見守られながら思春期を過ごしているのだと判るのは、中学生主役のお話として大事だし偉い。
 辛すぎカレーにワーワー言い合い、一緒にパン食べる日々あってこそ、マジカル探偵も頑張れるってもんだ。

 

 前回はヤバオタクな部分ばっか目立っていたあさひが、カメラ回るとパーフェクトな偶像を演じきれる、アイドルファンだからこその強さが見えたのも良かった。
 これはドルオタとして「ファンがやってほしいアイドル」を知っているからこその強みだと思うし、そういう正調のあざとさに欠けてるわんすもあの中で、あさひのウリとして活かせると思う。

 期限付きの奇跡が生み出した稼ぎ頭が、いつかいなくなってしまうことが約束されている事務所で、あさひ達がアイドルを続けれるだけの強さを示すってのも、二期の見どころになりそうだし。
 …地球でのアイドル成り上がりと、魔法界での祝祭が同時進行していくの、結構面白い構造ね。 

 

 

 つーわけで、実は結構シリアスにヤバかった魔法アイドルの真実に、お姉ちゃん探偵がたどり着く回でした。
 乗り越えるべき試練の輪郭が見えて、話全体がピリッと引き締まったし、そういう状況下で妹を思う姉の心が照らされても来て、大変いいと思います。
 俺はお姉ちゃんが、風ちゃん大好きな自分を思い出して欲しいとずっと祈っとるから…。

 あさひも衝撃のあざといデビューを果たし、憧れと魔法の助けを借り妹の笑顔を見つめれるようになった流ちゃんの未来も、色々揺れ動いていきそうです。
 魔法界もマジカル重機持ち出して、祭りの準備に大忙しだしなッ!
 二期も色々盛りだくさん楽しませてくれそうで、次回も楽しみッ!!