等身大の男子高校生退魔奇譚も五話目、今回のゲストはヴァイオレンスツンデレおじさん。
黒い復讐鬼を浪川さんが好演し、いい子ちゃんだった潮の迷いもしっかりと描写された、好エピソードとなりました。
そして麻子の正妻力の高さときたら……マルノウチ＝スゴイタカイビルくらいあるね。
四話も命がけの共闘を続けてきた潮ととら、このままズルズル仲良しなのかなーと思ったタイミングで、とらの本性が危険な妖怪であることを強調する話が入りました。
慣れ合いじゃない関係性を強調しつつ、惑いもすれば間違えもする、普通の少年としての潮をしっかり捉えていて、中盤の見せ方は好き。
ヒョウさんととらの公園バトルと同時進行なのが、静と動の対比が出てて良い。
気の迷い（というのも酷か、顔面ぶった切られてるもんな）を吹っ切る仕事を、ちゃんとメインヒロインにあてがっているのも素晴らしい。
『槍を持っているから、人間以上の力があるからヒーローなのではなく、只の人間が少しの勇気を振り絞るからヒーローなんだ』という基本原則が徹底されているのは、ブレがなくて気持ちが良いなあ。
麻子があそこで一歩踏み出したことで、潮もとらもヒョウさんも間違えずにすんだわけで、バトル的な意味での雑魚を大事にしていることが、この作品が薄味殴り合いアニメにならない大きな理由でしょう。
『間違えそうな所を間違えなかった少年』である潮と、『過去の過ちを取り返すべく間違えまくる大人』ヒョウさんは対比的、かつ類似的に描かれてました。
初登場の段階で傷だらけの手を強調して、『なんかヤバイぞコイツ』と思わせる見せ方や、浄眼・五行といった能力の説明を思い切りよくかっ飛ばし、絵の説得力で補うなど、演出の巧さが光ってました。
一話に収めたせいで感情の起伏が激しすぎるきらいもあるけど、人生投げ捨てた復讐鬼（元オッサン）はこのぐらいでいい気もする。
浪川さんはベストな演技をしたと思います。
潮が正論で立ちふさがっても、ヒョウさんの傷は治らないし気持ちは収まらない。
そこで自分を支えてくれた麻子の言葉を実行し、ヒョウさんに殴られることで真っ当な道に引き戻す流れは、全員の気持ちに嘘を付かない良いシーンでした。
潮はあくまで自分の気持の落ち着きどころに拘っているだけで、社会的正義とか道徳とかで動いているわけではないのが、あのシーンがグッと刺さる理由だと思う。
潮パンチで気を落ち着かせたヒョウさんにしても、元々は家族を愛するただのオッサンであり、というかただのオッサンだったからこそここまでの復讐鬼になったわけで。
体を張って自分を止めた子供の真心に気づかないほど、人間性が枯渇しているわけではないというのは見ていればわかります。
この話は『化け物っぽい人間』と『人間っぽい化け物』がお互いの業に振り回されつつ、どうにか生きていける道を闘っていく話なわけで、テーマを裏切らないキャラと展開、描写が積み重なっていると強く感じる。
こうしてまとめると、マジBBTだなうしとら。
とらちゃんは今回三番手なので、あえて空気読まずに暴れまわってピンチになり、ヒーローに助けられる立ち位置だった。
時々凶悪なことしないと、ただの金髪ロングの可愛いツンデレだからねとらちゃん。
見せ場を全体的に譲りつつ、最後に強烈なデレを入れて存在感をアピールする手腕は関心であります。
復讐鬼への対応を鏡にして、潮の精神的な成長を見せる回でした。
本筋は地道かつ地味なんだけど、アクションや言動の派手さがあるので見飽きないっていう、エンタテインメントのお手本みたいな造りだったなぁ。
うしとら、いいお話しだしいいアニメ化だなぁホント。
