イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第3話『散華』感想

火星にロマンチシズムの居場所はない!! とばかりに、大人がバンバン殺される午後五時憩いのアニメ、第三話。
死ぬオーラをムンムン漂わせていたマトモなオジサンがやっぱり死に、オルガの銃器であることに躊躇いがない三日月の異常さが浮き彫りになり、お嬢はあざといポイント稼ぎした後覚悟を決めた。
ゼント二尉の血で、孤児たる己を『鉄華団』と洗礼した回となりました。
……『散華』ってタイトルの話で、わざわざ『華』の文字が入った名前を付けさせる辺り、最高に性格悪いですね!!(褒め言葉

今週も同時並列的に色んな事が起きていたわけですが、やはり主人公三日月の異質な精神性が目立ちました。
オルガも言っていましたが、生きることに貪欲でありながら執着はなく、殺せと言われればまっすぐ殺す、シンプルで苛烈な生き方。
それは僕ら視聴者の視線からは異常にも見えますが、火星の地獄の中では普通の生き様なのかもしれず、一概に冷たいと切り捨てるわけにも行かない。
彼が持っている人間味を示すために、食事を通してお嬢やビスケ妹Sと交流させていたのは、なかなかよいシーンだったと思います。

一応平和な現大日本の感性に近いのはクーデリアお嬢なわけですが、猫ちゃんハンドであざとく立ちまわったり、孤児になってしまった自分を見つめなおし、赤い荒野で生き残る覚悟を決めたりしてました。
可愛さという意味でも、凛々しさという意味でも、ヒロインポイント荒稼ぎで最高。
ミカとの断絶を理解した上で、ミカとは違う自分自身のやり方で『何か』を求めていく姿は、ヒロインというより三人目の主人公に近い。
ていうか、ミカの持つ獣のロジックは確実に危ういわけで、現実を見据える理想主義者たるお嬢の重要性は、より高まっていくと思います。

二人目の主人公たるオルガは、即決即断で手早くクーデーターを成功させ、名付けによって孤児たちに誇りを与えていた。
あくまで三日月に殺しの十字架を背負わせるのは、信頼の現れなのか、はたまた歪な狡知なのか。
ミカの矛盾に言及するということは、彼がただの殺人人形として操られるままではないと知っているからこそで、しかしその認識はオルガが三日月を扱うやり方と真っ向から矛盾している。
言葉に出来る問題は解決も可能でしょうが、当事者に認識されていない傷はじわじわと深まり、いつか破裂する気がしてなりません。
三日月の危険な真っ直ぐさを、オルガが手に入れられないからこその役割分担なんでしょうが、この後鉄華団が進んでいけば行くほど、秘めた危うさが足元を脅かしそうです。


今回はおとながたくさん死ぬお話でした。
一番組のクズ大人たちはたっぷりヘイトを稼いで死んでいったので、お話しの流れ通りといえば流れ通りの死に様。
ショッキングな殺害シーンを見せた直後に、オルガの『盗人に追い銭』戦術を見せて彼の叡智を強調する流れは、なかなか良かった。
完全に大人を排除するのではなく、『姫さま売っぱらって、当座の運用資金にしようぜ!』という否定されるべき命題≒汚い大人の意見を言う役として、ちょび髭を残している所とか好きなバランス感覚です。

もう一人の大人、ゼント二尉は死ぬべくして死んだというか、死ぬしか道がない場所に自分を追い込んだというか。
無骨なMSになびく赤い布が彼のロマンティシズムを分かりやすく表現していたわけですが、その対象たる少年兵と三日月には、そういう同情はマジやめてって感じなわけで。
結果として少年兵の怜悧な現実が生き残り、場違いな理想主義は死ぬ。
のだけれども、んじゃあ三日月が代表する『殺して、生き延びて、殺される』しかない乾きすぎたロジックが正しいのかといえば、そんなわけがない。

のだけれども、ここは戦場なので死人に口なし、『正しい』倫理を抱えて兵隊やってたゼント二尉の論理がポジティブな意味を持つことは、少なくとも今回はないわけです。
子供を殺す非-倫理から部下を守ろうと暴走したゼント二尉が、最終的にはミカにとどめを刺してもらう展開といい、今回のお話は矛盾だらけでした。
鉄華団の少年とそのスポンサーは、戦場を超えてその矛盾を止揚しうるんでしょうかね?

というわけで、色んな事が起きた回となりました。
『クーデターを成功させいよう』『決闘に勝とう』
目の前のクエストを解決しても即座に『金持ち貴族に会いに行こう!』という目的が発生する辺り、お話がダレなくてとっても素晴らしい。
名前を手に入れた迷い子たちの道が今後どうなるのか、とても気になるところです。