イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第14話『祭りに踊る羅刹』感想

OPもGLAYっぽい歌からGLAYっぽい歌に切り替わった、時空を超える富山ロボアニメ、今週は血みどろ大決戦。
鬼のオジサンが危ういところで乱入したり、姫じゃない奴が学校で大暴れしたり、ロボットが降りてきて集団戦になったり、アクション多めの展開でした。
活劇描写に忙しくても、キャラクターの内面はしっかり見せるクロムクロらしさは健在で、『ああ、こいつはこういう奴だったんだなぁ』という発見が多い回でもあった。
足を止めて喋るシーンだけじゃなくて、アクションの中でもキャラ見えてくるからクロムクロは良いなぁ……。

いろんな事が起こった回ですが、まずは主人公たちから。
腹をぶっ刺されつつ姫を救うことに執着する剣之介と、あくまで命冥加に剣之助を守ろうとする由希奈が、面白い対比を出していました。
一見『死ぬ/生きる』で対立しているように見えるんだけど、剣之介は居場所がなくて死にたがっているというのではなく、むしろ現代に居場所を見出したからこそ、過去を取り戻すべく戦いから引き下がれないという描き方だったのが、これまでの物語が活きる造りでした。
おそらく惚れていたのだろう雪姫と同じ顔のエフィドルグを助けようとするのは当然判るんだけど、自分の命を狙ったフスナーニにすら『あの時は斬ってしまったが!』と後悔を見せているあたり、剣之介は優しすぎる男だ……。
思い返せば、いきなり訳の分からない現代で目覚めても誰も傷つけず、妹ちゃんの頭を優しく撫でていた彼は、その最初から『守るために戦う』戦士だったのだなぁ。

剣之介が持つ強さと優しさに感化されたからこそ、由希奈もショックを受けつつずっと側にいて、司令の無茶苦茶な願いに文句言ったりする。
剣之介からあふれた血飛沫が、由希奈の日常の象徴である制服に跳ねている描写は、彼女が健之介とどれだけ近い距離にいるのか、良く分かる演出でした。
これまでのお話で『戦場』に立つ理不尽には納得しつつ、人が無駄に死ぬ痛みや哀しみにはちゃんと抵抗を覚えている辺り、倫理性が『戦場』によって蒸発しない良い主人公よね。
キレイ事を言って眼をつぶるわけでも、妄執にとらわれて理不尽に沈黙するでもなく、自分に出来ることをやりつつ境界線を引く生き方は、このアニメらしいなと思います。

血反吐吐きつつ剣之介が立ち上がる理由は、守りきれなかった雪姫への後悔であり、これは由希奈が『戦場』から逃げた第七~八話あたりの行動原理と重なる部分が大きいです。
第1クールで展開された由希奈の歩みは、消えてしまった父と優しい言葉をかけられなかった自分、両方にまつわる後悔が原因であり、剣之介が今回ムエッタに執着する理由も、不甲斐ない自分を取り戻したい気持ちが背景にある。
第1クールにおいて、由希奈の後悔が剣之助との交流の中で居場所を見つけたように、今度は剣之介の妄執を由希奈が受け止めてあげる番なんだろうなぁ。
剣之介の代わりに司令に文句言う姿とか、過去にとらわれ過ぎな剣之助にムーっとしてる表情とか、既に『あ、由希奈が剣之助のことわかってるから、まぁ巧く収まるだろう』って安心感があるのがありがたいね。


そういう意味では、絶体絶命のピンチを鬼のオジサンが助けたのは面白くて。
あの人が岳人パパンなのはほぼ間違いないと思うけど、由希奈の後悔だったパパンが剣之介の窮地を救うって構図自体が、非常に宿命的だし因果を内包している。
鬼に魅入られて人界を去り、鬼に戻って娘を助けに来たと見ると、岳人パパンも結構な宿命のソルジャーよね……。
パパンが今の姿になった経緯はエフィドルグの特性含めた大ネタだと思うので、もう少し経ってから明かされる感じかな。
いやまぁ、全然関係ない鬼のオジサンなのかもしれんけども、パパンだったほうが盛り上がるし好みの展開だとは思うのね。

鬼やタイムトラベラーが人情で動いているのに、茅原が性格悪いってレベルじゃない空恐ろしさを見せていたのも興味深いところです。
剣之介が流した血に由希奈やソフィーが傷つく中、目の前で自分の命が驚異に晒されても、優しい国連のおじさんが自分の代わりに傷ついても、一切心を動かした感じがない茅原の姿は、エイリアンよりもエイリアンでした。
正直赤城と同列に描いて『現代の若者』代表するのが茅原の仕事かと思っていたわけですが、今回見せた体温のなさは、それで片付けるにはちょっと異質ですね。
クロムクロは始まった時から、時間や立場の断絶とそれを乗り越える共感を大事にしてきたアニメなので、今回強調された茅原の爬虫類性ってのは、結構大事なネタな気がします。
ディスプレイ越しだから他人事ってわけでもなくて、生身が危機にさらされてもどーでも良さげってのは、第8話でミサイルぶっこまれてた時もそうだったなぁ。


鬼VSムエッタの等身大バトルも、クロムクロ軍団VSスパイダー&メドゥーサのロボ集団戦も、非常に見応えのあるアクションでした。
腕が二本で重力に縛られて……という尋常な超人バトルは人間サイズでしっかりやりつつ、メドゥーサ八刀流のインチキ剣術とか、手が足になり足が手になるスパイダーの異形バトルとか、クリーチャーめいた戦いをロボでやってくれる盛り沢山な感じ、非常に良かったです。
思っていたよりムエッタが手だれで、鬼が振り下ろす大剣を旋回してかわしつつ、その勢いのまま横薙ぎにカウンターしてくる所とか、非常に良いチャンバラだった。

事情通っぽい鬼のオジサンと斬り合う中で『知識だけでは体がついて行かないようだな』つう発言がありましたが、やっぱエフィドルグは精神寄生体であり、姫じゃない奴のボディは姫のモノってことなのかねぇ……声も雪姫と同じ豊崎さんだし。
今更エフィドルグは全員虹彩が真っ赤なことに気づいて、これが一種の憑依状態を表してんじゃないかと思ったんですが、剣之介も眼が赤いのよね……。
フスナーニとの問答を考えても、今回ナノマシンによる異常な回復力が強調されていたことからも、剣之介とエフィドルグの奇妙な一致ってのは狙って入れてる違和感だと思います。
パパンの素性と同じく、剣之介とエフィドルグの隠された因縁も、第2クールで掘り下げる大ネタになりそうな感じですね。

今回は敵が二人ということで、ロボ戦は初の多対多戦闘となりました。
功名に焦って連携が取れず、お互いを傷つけてしまうエフィドルグ側と、夏休みを全部使った合宿で絆を深め、機体戦闘で劣っていても連携で追い詰めていく人類側。
お互いの精神的特性が戦いに現れた、面白いチャンバラだったと思います。
フィドルグの舐めプ体質も功名再優先主義も、言ってみれば歪んだ武士道なわけで、ここら辺もソフィーや剣之助に呼応する要素なんだろうな。

由希奈の提案をボーデンさんが蹴りかけたところで、シェンミィさんが経験を買って提案を聞き、ソフィーが持ち前の頭脳で膨らませて連携に持って行くところとか、非常にチーム間が出ていてよかった。
この流れは当然、第12話で合宿をしっかり描いたからこそ説得力が出ているわけで、エピソードが連携していると満足感が違うなぁ、やっぱ。
クールなソフィをしっかり描いたからこそ、今回剣之介の負傷に熱くなる違和感も際立っていたわけで、描写の積み重ねは当たり前だけどすげー大事ね。


と言うわけで、色んな勢力がゴロンと動き出しつつ、それぞれの抱えるものがよく見えてくるエピソードとなりました。
血反吐吐いても戦い続ける剣之介の執念を見るだに、第2クールは彼の妄念をみんなで昇華していく展開になる予感。
第1クールが主に由希奈のコンプレックスをみんなで解消するお話だったので、良い対比かなと思います。

姫じゃない奴とピンクのブサイクは無事逃げおおせましたが、功名餓鬼のエフィドルグがこのまま済ますとも思えない。
つーかこのままだと、剣之介のこじれた気持ちが落ち着く先がないので、近いうちに再戦はあると思います。
今回由希奈が見せた、流れる血に怯えつつも逃げない成長が、剣之助をどう変えていくのか。
第2クールもたっぷり楽しませてくれそうで、やっぱマジ面白ぇなクロムクロ