イマワノキワ

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アクティヴレイド -機動強襲室第八係- 2nd:第9話『第八係 出撃せず』感想

陰謀の蜘蛛の糸がメトロポリスを縛り上げるポリス・サスペンス、今週は動き始めた状況。
稲城都知事に『過ぎた感情移入』を持つ黒騎の目の前で、あれよあれよというまに状況が動き始め、『民間警備ボランティア』という名前の私兵集団を都知事が囲い込むまでのお話でした。
船坂さんのケレンの効いたメカ・アクションは良かったんですが、スパイダー関係はあくまで第八を釘付けにするための囮であり、大立ち回りも核心には迫っていないのが哀しい所。
二期になって自由を手に入れた第八の危うさも表に出てきて、クライマックスに向けて局面が大きく動く話でしたね。

『黒騎さんの外付け冷静装置』こと次郎ことミュトスがまとめていたように、今回の事件はダイハチを蚊帳の外に置きつつ、都知事の個人的権限でウィルウェアという暴力を所有するための巧妙なマッチポンプでした。
高層ビル禁止条例を煙幕兼着火剤として社会不安を表面化させ、これに対する対抗措置という大義名分を得たまま、国家組織の軛に縛られたダイハチの頭越しに民間協力体制を作る。
私兵集団の実態を糊塗するために、『暴力に毅然と立ち上がった老人たち』という美談を飾り紙として貼っておくところとか、腕が良すぎておぞましいまであります。
瀬名くん周りの描写を太らせることで、もはや国家がウィルウェア行政を握り込めない状況を事前に理解させていたおかげで、ここら辺の権限委譲・掌握が伝わりやすかったと思います。

治安行動への民間協力の危うさは別の形でも発露していて、手続き的な隙間があることで、命令に従う地位にいる黒騎さんが独自の判断で作戦行動を立案・実行可能になり、それを止める歯止めがない。
黒騎さんが法執行者に必要な知性と倫理を兼ね備えていることはこれまで描写されてきましたが、しかしその理性も情の前には曇るということも、前回黒騎さん自身が指摘したことです。
これ次郎が冷静、かつ感情的な意味で稲城都知事に権益無いから止まったけども、同じように情に流される連中が寄り集まった時、気づいたら制御不能なレベルまで状況が進みかねないよな……。
面倒くさい手続きからダイハチを救う妙手として描かれてきた民間委託を巧くひっくり返して、その負の側面を強調する話を展開するのは、メリハリが効いてて非常に良いと思います。

大義名分と捏造された民間の支持、ウィルウェア私兵集団という実力を手に入れ、稲城都知事が何を目指すのか。
彼が性急な改革派であることは匂わされていますが、具体的に何をなぜ目指すのかは、これから語られる部分だと思います。
何か個人的なトラウマ(ミュトスで言えば家族の問題)があって変化を求めているのか、はたまたより漠然とした正義感故か。
ラスボスが抱え込む事情によって主人公たちが対峙する姿勢も変わり、それは作品全体の印象を支配しもするので、面白い見せ方をして欲しいところですね。


キャラクター個別の動きを見ると、稲城都知事に強い感情を持つ黒騎さんが、やや暴走気味に話を引っ張っていました。
個人的な恩義を返したいという感情は立派ですが、破天荒な性格と横車を押しうる実力が暴れると、結構ヤバいなという感想。
ロゴス・インシデントを受けて自由を手に入れたダイハチにおいては、チェック機構を飛び越えて一捜査官が重大なオペレーションを実行可能なわけで、これが暴走した時の怖さを巧く想像させていました。
これまで楽しいギャグや頼もしい特例として運用されてきた民間委託の印象が変わるのは、何度も言うけど非常に上手い。

そんな暴走機関車の制御装置として、今回は次郎が目立っていました。
黒騎さんは『熱血漢に見えてクールでありながら芯の部分は熱血漢』という、結構ややこしい人格をしているので、熱くならずに事実だけを見つめ、冷静に情報を収集できる次郎が側にいると、安定感がダンチだね。
ロゴスの内情を知る彼が檻の中から出てきて、本格的に協力を始めたことで、事態が一気に進む期待もありますね。
ここら辺の情報の出し入れは巧く制御されていて、流石に老練な作りをしているなと感じ入ります。

他にも船坂さんがストレス感じてたり、ダイクのやり過ぎはやっぱり避難されていたり、細かい疑問点を拾って投げ返してくれる回でもありました。
ストレス解消法が『武器にカッチェ名前をつけること』なあたり、舟橋さんはやっぱ永遠の未来少年なんだなぁ……ゲッタートマホークとライダーキックを彷彿とさせるアクション、カッコ良かったです。
あれだけの大破壊をやらかしてなんの反発もなしってのはおかしいなぁと思っていましたが、あさみちゃんはやっぱ問題になってました。
まぁそりゃそうだ……ここら辺は今後洒落にならなくなるか、都知事が洒落にならなくするか、突っついてくる部分な気もする。

円ちゃんもクールな情報工作者としてきっちり仕事をして、いよいよフルメンバー大集結という趣がありました。
女の子たちほぼ全員にサービスカットもあったしね!
今回のお話は重苦しくて難しいので、合間合間に華のある描写を強引でもねじ込んで、巧く空気穴を作るのは良かったですね。
状況が動き出したとはいえ現状は疑惑レベルなので、ああいうソフトなセクシーを入れ込んでも雰囲気が壊れない、むしろ重たすぎる当たりが柔らかくなってありがたいってのは、製作者が作品の走り方をうまくコントロールできている証拠かなと思います。


稲城都知事が張り巡らせてきた蜘蛛の糸が引かれ、謀略が形をなしてきた回でした。
ここまで稲城への不信感も、より強大に自由になったダイハチの危うさも、黒騎の私情の強さもしっかり積み上げてきたので、結構複雑な話もスンナリと受け入れることが出来ました。
ここら辺は(主に次郎が)セリフでしっかり説明するところと、情感を込めて視聴者に感じ入ってもらう部分を明確に区別し、巧く組み合わせてきた劇作の強みかな。
全体的にクレバーで堅牢だよね、このアニメ。

危うげな状況ではありますが、未だ決定的な事態は起きておらず、内乱の予感だけがふつふつと煮えたぎっている状況。
『感情移入しすぎるなよ』という言葉が自分に返る黒騎は、一体どんな道を選択するのか。
ダイハチの前にはどんな事件がそそり立ち、メンバーはその苦境をどう乗り越えるのか。
クライマックスの予感を受けて、より楽しみになってくるアクティヴレイドでした。