伊豆半島で面倒くさい黒髪が携帯のデータでウダウダ悩むアニメの西の方、今週は楽しい合宿!
前回ようやくくっそ面倒くさいアレソレを開放し、思う存分バカになることを許されたバカ達が大暴走し、海の家に合宿に大はしゃぎ!!
先輩後輩の垣根を超えた楽しい掛け合いを楽しみつつも、今後に備えての地雷と地雷処理はしっかりやる、サンシャインらしいお話でした。
三年が湿度抜けてきたと思ったら、今度は二年か……ええぞ!!(湿度の濃い女大好き人間)
これまで重たく進行してきた分、夏休みを思いっきりエンジョイする九人の姿が堪能できた今回は、非常にありがたいものでした。
鞠莉はお気楽エセ外人のペルソナをかぶり直して大暴れだし、ダイヤお姉ちゃんは思う存分ポンコツ&シスコンでフルスロットルだし、これまでも鬼札として独特の存在感をもってた善子は鞠莉とタッグで暴れまわるし、非常に元気な回だった。
お話のトーンが変わってありがたいのと同時に、押さえつけられていたものが開放された喜びというか、二年間我慢してきた思いが暴れまわっている感じが画面に満ちていて、『ああ、良かったなぁこのバカども……』という気持ちになれたね。
第7話もそうなんだけど、加入したメンバーがお互い心に負うもののない、平等な間柄なんだと見せる意味で、底抜けにお馬鹿にじゃれあうシーンをどっさり見せるのは説得力がある。
特にダイヤ姉さんの弾けっぷりは凄まじくて、暴走超特急のように状況は引っ張るわ、自分で四時集合って言ったくせに遅れてくるわ、妹は可愛がりまくるわ、マジ大暴れ。
ルビィちゃんと三年があんまドン引きしてない所を見ると、スクールアイドルこじらせる前はもともとこういう人間で、果南への義理立てでキリッとした顔を作っていた、ということだろう。
そう考えると、よくもまぁ9話も我慢して『厳しい先輩』『厳しい姉』を演じてくれたもんだ……本当はむっちゃ同衾したかったはずなのに……。
『女釣りたければやっぱ女だよ、起伏のある女体!!』という作戦を立案するのも、それで実際女が釣れるのも、ラブライブ時空における女性の性嗜好はやはり特殊なんだなと思わされました。
鞠莉も果南ちゃんのおっぱい狙いすぎだしな……ダイヤさんも『果南のお肉には発情する、ジャリとは違う!』と遠回しにアピールする辺り、果南ちゃんからはメスを狂わせるなんかあま~い匂いとか出てるんだろうな。
ついに揃った『PERFECT NINE』がどれだけ楽しい青春を送っているか、良く見えるハッピー・ハードコアな回だったと思います。
水着で乳尻強調されるのもありがたいけど、パジャマや寝る用の髪型が見れるのもリッチな気分に慣れてありがたいよなぁ……みんな可愛いしな髪型。
お話としては無印一期第10話"先輩禁止"を背景に据えて、夏と海と女の子でサービスサービス……と思わせておいて、千歌と梨子の溝がまた一つ埋まり、取り残される曜ちゃんの孤独が際立つという、今後にも繋がる作りでした。
『千歌と梨子だけがシリアスな空気に包まれ、御たがいの心の柔らかい部分にふれあい、Aqoursの未来にとって大事な決断をする』というのはこれまでも何度も繰り返されてきた演出であり、それが水辺の側だってのも全く同じ。
三年を取り巻いた『水』は悲しみと頑なな心の象徴でしたが、千歌と梨子の前に広がる水は表面的な喧騒を取り払った本心というか、澄んだ心理鏡面の現れなんだろうね。
一度は諦めたピアノに向かい合うという展開は、第1話・第2話をそのまま引き継いで発展させる展開でして、サンシャインは千歌と梨子の出会いと相互理解をとにかく力入れて描いているなと思います。
表層的な立場や顔しか見ない付き合いから始まって、千歌が梨子の手を取って挫折から立ち上がらせ、東京での挫折は今度は梨子が千歌の手を取って立ち上がらせ、『みんな』のためにピアノを切り捨てようとした梨子の背中を、Aqoursに誘った千歌が手放す。
沼津の元気娘と東京から来た面倒くさ娘の関係構築は非常に丁寧に、時間を使って追いかけられているため、今回梨子が一旦Aqoursを選ぶ気持ちも、新曲に込められた本心を千歌が受け止め、Aqoursから解き放ってあげる気持ちも、両方すんなり受け入れることが出来ました。
そして千歌と梨子の関係が細やかに描かれば描かれるほど、より際立ってくる曜ちゃんの孤立。
梨子からのメールは事務的な文面ばかりだし、千歌は背負った重荷を預けてくれないし、距離を詰めてどんどん新しい関係に漕ぎ出している二人に対し、孤独に置いて行かれる姿が強調されていました。
これは今回急に挟まれたわけではなく、第1話で曜ちゃんがあまりにスムーズにメンバーになって以来じわじわと積み重ねられた演出なので、こちらもスムーズに飲み込めましたね。
千歌と梨子のシーンが分厚く描かれているのに対し、曜ちゃんの見せ場が薄く作られているのは、三年生を描写するときに使った『意図的な飢餓感』と同じ方法論だと思います。
最初は何気なく『ああ、この二人がメインなのね』とちかりこを見ていた視聴者も、あまりにも曜ちゃんの方を見ない・梨子との間に曜ちゃんを入れない千歌の描き方には違和感を覚えてくるし、曜ちゃんを意図的に画面から排除する作りに飢餓感を覚えてくる。
これまでは三年が目立っていたのであまり表面化はしませんでしたが、心の重荷を取り除いたバカどもが思う存分馬鹿になった今回、新たな地雷として表に出てきた感じですね。
果南ちゃんの捌き方とか非常に上手かったので、この『タメ』も見事に料理する前ふりだとは思いますが。
千歌がなぜ、梨子の物思いにはすぐ気付いて、曜ちゃんの視線には気付けないのか。
もちろん千歌は生来浅はかな人間で、Aqoursを無事結成した今でも『なんとかなるよ~』で十千万を借りようとして、がっつり美渡姉に睨まれ失敗したりしてます。
しかしAqoursメンバーが加入する時には必要な動きをしっかり取る賢さも見せているし、東京で挫折した後は『みんな』のために落ち込んだ様子を見せない気概もある。
自分で言うほど、高海千歌は『なんの取り柄もない、普通の女の子』ではないわけです。
千歌が自分を『普通怪獣』と自己卑下するようになったのは、第1話で描かれていたように『なんでも出来る、みんなに愛される曜ちゃん』と自分を比べた結果です。
幼なじみとして長い時間と空間を共有し、お互いの距離感を『こういうものだ』『これが当たり前なんだ』と思い込まなければ、一緒にはいられなかった相手。
渡辺曜は高海千歌にとって、真っ直ぐ見つめるにはあまりにもまぶし過ぎる才気の塊であり、弱さを受け止め対等に付き合う関係をゼロから作れた桜内梨子との相補的な関係とは、別の繋がり方をしなければいけない相手なのでしょう。
しかし、『普通怪獣』がセルフイメージほど凡庸ではないように、『天才万能少女』もまた完璧ではないはずです。
劣等感と愛情の壁を乗り越えて、自分の全てをさらけ出してはくれない千歌を前に、曜ちゃんは立ちすくむ。
自分は構築できなかった対等な関係を気付く転校生の心に踏み入り、千歌と共有している世界を自分も見ることが、どうしても出来ない。
それは千歌が曜ちゃんを見ている『なんでも出来る、みんなに愛される存在』というイメージとは異なる、震えと体温に満ちた等身大の17歳なわけです。
……『みんな』なんていう茫漠としたモノではなく、千歌一人の眼差しが欲しくて欲しくて、どれだけ才気にあふれていてもそれだけは手に入らないっていう図式、鮮やかに痛すぎる。
誰からも愛される飛び込みの人魚姫だけど、一番大切な王子様には声を届けることが出来ず、ただ遠くから見ているしかない。
散々ネタにしてきた『スリーマーメイド』は、三年生の問題を解決し終わっても、魔女の呪いのように二年生に降りかかってきています。
千歌と梨子の関係がお互いだけを視界に入れながら深まれば深まるほど、そこからはじき出される曜ちゃんが強調される構図は、残酷でよく出来てるなぁと思う。
思い返すと第5話で、花丸がヨハネの『普通だからこそ輝きたいと願う』気持ちを代弁していたシーン、他の子達は全員共感を示しているのに曜ちゃんだけ別の方向向いてたなぁ……。
第8話で梨子が『千歌ちゃんのためじゃない、みんな自分のためにAqoursをやっているの』とまとめていたけども、曜ちゃんがいの一番でAqoursに加入したのは、誰がどう見ても千歌のためだもんなぁ……。
無印含めて『普通だからこそ、なにか特別になりたいと願う』女の子をずっと描いてきたラブライブが、ここに来て『なんでも出来ると思われているからこそ、生まれてしまう孤独』『なんでも出来る優等生ゆえの悲しみ』に焦点を合わせてきたのは、なかなか面白いところですね。
つーかまぁ、梨子に負けず劣らず千歌を思っている曜ちゃんの視線が、長い時間を共有してきたがゆえに千歌に届かない構図が切なく痛すぎる……。
このままだと千歌は、隣りにあることが当たり前だと思ってたものが失われる痛みに向かい合わないといけないわけだけど、その前に梨子が自分から離れていく痛みを前向きに受け止めてしまっている所が、見事な仕上がりだよね。
ある意味距離が遠い梨子との離別は待てるんだろうけど、近すぎて顔が見えなくなっている曜ちゃんがスッと離れていく(か拒絶を見せる)喪失感を、千歌は同じように受け止められるか、どうか。
三年生を活写した湿度とはまた違う視線が二年生の間で交わり始めて、非常に面白くなってきたと思います。
そんなわけで、バカの合間に真面目を挟み、シリアスの重みをコメディで和らげていく、緩急見事なエピソードでした。
一見ギャグに見える『シャイ煮と堕天使の涙とカレー』の描写も、『なんでも出来る』渡辺曜の天才と孤独が反映された、大事な陰画だったりするもんな。
ここら辺の『ネタにして笑っていたモノが、気づくとシリアス棒で思いっきりぶん殴ってくる』構成は非常に面白くて、『タメ』の使い方と並ぶサンシャインの特徴だと思います。
九人のAqoursが結成され、三年が発生させていた湿度と重力が抜けたと思ったら、二年の間に隠秘な空気が流れ始めました。
その柔らかく湿った関係をしっかり描写できればこそ、少女たちの繊細な心の波の美しさ、激しさをしっかり伝えることも出来るのでしょう。
喜びと悲しみを混ぜあわせて滴る女達の涙が、心のどこに行き着くのか。
来週が非常に楽しみです。