イマワノキワ

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アクティヴレイド -機動強襲室第八係- 2nd:第10話『決別の宴』感想

情と法とが我が身を縛る、不自由極まる正義の味方のお話、今回はチェックメイトならず。
一期からジリジリと積んできた稲城都知事への疑惑を一気にまとめて突きつけるも、敵もさるもの、法治国家の限界を盾にとって決着を躱すお話でした。
情に揺り動かされて警察官出来てない黒騎さんと、花嫁衣装に私を鎧って公人の勤めを果たすボスの覚悟が、なかなかの好対照でした。
公権力の方法論を熟知し、ダイハチの突きつけた刃を見事に交わした稲城ですが、追い詰めるべきクロであるのは今回ではっきりしたし、メンバーの気持ちも整理がついた感じ。
死を装ったバードの逆撃も含めて、なかなか気持ちよくクライマックスの狼煙が上がりましたね。

稲城都知事がほぼクロだってのはほのめかされていたので、今回情況証拠を積み上げていくのは、強い絆を持つ二人の警察官が心を整理するためです。
自分の気持に振り回され現状を否認する黒騎さんも、ここで情を出し切って『正義の味方』貫ける心境になっておかないと話がグダグダするわけで、決戦が始まる前に思う存分くだを巻けて良かったと思います。
第8話で見せた怜悧な法執行官としての顔と、今回見せた感情豊かな側面。
どっちが本物というわけではなく、両方あって黒騎猛という人間なのであり、今回思い切り私情に走ったことで、警察官のクールな本分に戻る準備が、しっかり出来たってことだもんね。

相変わらず次郎が黒騎さんの制御役としていい仕事をしていて、情報を収集して真実を明らかにしたり、情という判断バイアスを第三者的立場から外したり、黒騎と稲城の関係を『偶像』というキーワードで簡勁にまとめたり、デキる弟スタイルだった。
ミュトスも一見刑期を削るためだけに協力しているように見えて、自分を利用したバードへの復讐心とか、兄貴ぶって面倒見てくれる黒騎への情とか、色々交えて冷静に動いているのが良い。
黒騎さんが熱い方向に暴走しがちな分、2ndシーズンは次郎が冷却役をうまくやってくれていて、作品の魅力であるバランスの良さを見事に保ってくれてる印象だな。

バードに振り回された仲間として、陽ちゃんと距離が縮まっている所も可愛らしくて素敵だけど、ここ発展させてる時間的余裕はないだろうなぁ……惜しい。
あと次郎が目立つと、自動的に公安の眼鏡おじさんが出張ってきて、話に奥行きが出るのも好きだ。
情熱を秘めつつきっちり仕事を乗りこなすプロフェッショナル物語として、ダイハチ以外の組織と連携する姿が見れるのは、雰囲気あって良いよね、やっぱ。


感情にブンブン振り回されるヒロイン役を黒騎くんが担当する中、情は情、過去は過去と鉄の意志で割りきってなすべきことをなしたボスは、あまりにもヒーローだった。
『花嫁衣装』というフェティッシュが押し殺した情の分厚さを巧く強調して、ボスがどれだけの痛みを押し殺して警察官で在り続けているのかが、良く分かるエピソードでした。
次郎みたいなサイドキックの力も借りず、意志の強さと優秀さ一本であそこまで立ち続けられるのは、頼もしいと同時に痛ましくもある。
黒騎に続きてボスまでグダグダし始めると、お話がすごい勢いで横滑りしていくので、鉄の自制心は、メタ的にはありがたいんだけどさ。

二期になって陽ちゃんの出番が増えたことで、妹を見守り育ててきたボスの情もしっかり伝わるようになって、ただ冷徹な法執行マシーンだから今回感情を押し殺したわけではないと判るのは、面白い構成だった。
瀬名くんが民間に降りて、形に囚われすぎない柔軟な魅力を手に入れたように、様々な要素を内に抱え込みつつ、そのバランスを上手く取って成すべきことを成すバランス取りが、キャラクターのレベルでも組織描写でも巧く言っているのが、このアニメの魅力なんだろうなぁ。
それは『こいつも色々考えてて、パッと見のキャラだけが全部じゃないよ』と描写(説明ではなく)しているからこそ可能なわけで、ザックザックと話を進めつつ中身が濃い、このアニメらしい美点だと思う。
手際の良さが悪目立ちせず、スムーズに強みになっているというか。

魅力的な二面性という意味では稲城都知事もそうで、大義のために小悪を辞さず、改革を強引に為そうとする姿には不思議な魅力がある。
つーか肉体戦闘でも強いのなあんた……分かってはいたが、黒騎さんとの組内で一瞬たりとも顔面のガード外さないところとか、カッチリした殺陣で良かったですね。
黒騎との対峙はルールを作る政治家と、作られたルールを守る警察官の対決でもあって、その決着が『法の内側では捌けないので、玉が逃げる』というものだったのも含めて、なかなか面白かった。
今回決別したことで、これまでダイハチの横紙破りを支えてくれてきた権力の支援が全部敵に回ると考えると、なかなか厄介だなぁ。
1stシーズンの『オロチ占拠による全日本的インフラジャック』という派手目なクライマックスもいいけど、真実を突きつけたところから始まる穏やかな滑り出しも、独特な魅力があって好きだな。

そんな稲城を利用し利用されてたバードですが、さっくり死んじゃった。
って言いたいところだけど、第2話で記憶転写技術を扱っている以上、一時的遁走のための煙幕だよね、あの自殺。
ダイハチは稲城との対決にかかりきりで、バードの奸計には気づいていない感じだけども、ぶっちゃけ上から目線で犯罪を弄ぶあのクソガキはいい加減ムカつくので、2ndシーズンの内に完全決着して欲しいもんだ。
ダイハチの外側にいて、バードに一番因縁が深い次郎&陽ちゃんがバードを担当する形になるんかねぇ。
……稲城を兄貴&姉貴である黒騎とボスが受け持って、バードを妹&弟分が追い詰めるという、Wラスボス二正面作戦なんだな、この状況……面白い。


と言うわけで、これまでの伏線を巧くまとめ上げ、クライマックスへの道を整えるエピソードでした。
優秀な警察官であるがゆえに、一番たどり着きたくない真実から逃げられなかったボスに、誇りと哀しさを感じます。
黒騎くんがもっとメタメタ喚くかと思ってたんですが、次郎がいい具合にまとめ整えてくれて、次対峙するときは正面から向かい合えそうですね。
キャラクターの『らしさ』を殺すことなく、お話全体がコースアウトしないよう的確に調整してくれるキャラクターの使い方は、巧くて好きだなやっぱ。

時には笑いを交えつつ、近未来の法と犯罪を横幅広く描いてきたこのアニメも、クライマックスが近づいてきました。
キャラクターの感情もしっかり整え、伏線や情報もまとめ上げて、さぁ正面からの決戦という塩梅。
死を装うことで自由になったバードがどういう横槍を入れてくるかとか、まだまだ読めない部分もたっぷりあります。
テクニックと情熱を巧みに融合させて展開してきたこのアニメが、最後のジャンプをどう着地させるのか。
非常に楽しみです。