鬼平を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
火盗改メの真夏の夜の夢は、引退した爺が忍び込んで銀の煙管を盗んでいく。色気や艶はないけれど、遊び心と粋な風情は満載という、なんとも鬼平らしい回。
季節感を強調する風鈴や朝顔、花火といったフェティッシュの使い方が綺麗で、シーンシーンの印象が鮮明な回だった。
今回はチャンバラなし、人も死なない話で、アニメ鬼平のグランドテーマである『取り返せない過去』も比較的簡単に巻き戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
船頭に身をやつした本格の大盗賊も、密偵に落ちた粂八も、綺麗な思い出の中の自分を取り戻して、誰も殺さない盗みを堪能する。
しかしそれは川面の花火のようなもんで、粂八のぞろっぺえ語り口というのは鬼平の前に立つとスッと鳴りを潜め、必死に昔なじみの除名を乞う、弱々しいものになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
髷を結って堂々と公務に励むうさ忠と、庭の土の上を、下を向きながら歩いて行く粂八の対比が面白い。乗り越えられない敷居もある。
老盗賊が見た銀煙管の夢。その形を保ったまま、自分をナメ父の形見を汚した落とし前は付けさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
鬼平は夢と現、過去と現在の境界線をよく見ているだけでなく、それを具体的に線引し、強制的に守らせる法権力の具象でもある。
その上で遊び心と意地悪が満載なのが、どうにも可愛げである。
あるいは、鬼平自身も老盗賊との馬鹿し合いの中で、アウトローになりかけた『本所の鐵』時代に戻っていたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
それはあくまで夢だが、鬼平の中で大切にしたい夢だ。外に出して大事にしなかったのは、そのふるまいが無粋であると同時に、思い出に傷をつけるからかもしれない。
今回の話は船頭がヒロインということもあって、『水の都』としての江戸が綺麗に描かれていた。ゴンドリエーレがカンツォーネを歌う中、花火が舞う。東洋のヴェニスとしての江戸には、魔物くらいすむだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
朝顔の印象的な見せ方含めて、ファンタジックな味わいが楽しい回だった。
鬼平追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月1日
『朝顔の印象的な見せ方』というのは、時間経過を表現するのに『開いた朝顔』と『閉じた朝顔』を使って、動的な変化を付けているところです。
植物の生態を利用して時間を見せることで、エピソードにバイタリティが宿った印象を受けました。隠居もそうだけど、動物パワーが活用された回。