鬼平を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
三ヶ月に渡り続いてきた時代劇アニメも最終回、終りと始まりは繋がっているもので、第1話"血頭の丹兵衛"によく似た、だからこそ違いが際立つ、哀しい狗のお話。
情に揺れた話の余韻を、涙と豪雨がスッと断ち切るお話で、アニメ鬼平に相応しいラストエピソードでした。
狗となった元盗賊が、それでも捨てられぬしがらみに追いつかれ、変わってしまった過去、変えられない思いに悶え、苦しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
基本的な骨子は第1話と同じなんだが、役者が違えば事情も中身も当然違う。メインになっているのは粂八と鬼平の擬似親子ではなく、男と女二人、そして腹違いの愛憎である。
鬼平アニメは結構気合を入れてセックスを扱い続けてきて、第5話のようなひょうげた色味も描いたし、畜生働きのさなかの暴力としての性交も、今回のような情の発露としての性行為も扱ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
過去話と比較するなら、長谷川夫妻の情愛を描いた第11話に近い描き方だったかな。
密偵と元盗賊。時代の流れに押し流されて、片や法の狗、片や流行ず仲間もいない元・本格派に別れた二人は、血なまぐさい過去が現在と衝突した一瞬だけ、男と女に戻れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
取り返せない過去のしわ寄せのように、鬼平の優しい嘘は男の命を一回救い、流行病が無情に命を奪う。時の中の、生き死にの不思議
ここでもう一人、二代目狐火に憧れ、憎む男がいる。このことで、お話の横幅はぐっと広がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
腹違いの兄に強い愛憎をいだき、同じ女を求めた弟が、結局殺し合うしか無い血みどろの因果。情がまとわりつく濃厚なお話が、奇妙にスッキリ流れていくのは、山寺・矢尾両名の芸達者ゆえか。
愛して離れて、また出会って離れる男と女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
憎んで、それでも血の因果が結びつけ、どうしようもなく道を違えた兄弟。
相矛盾する善悪愛憎を飲み込んで流れてきたシリーズを代弁するような、時間と感情の幅が広いお話だった。
これはおまさを主役に据え、男女の奇縁を話に取り込めた結果だろう。
盗人である二代目狐火は、江戸には居続けられない。恋しあって、別れていって、それでも生きてくれれば…という儚い人の望みを、鬼平の報告が打ち砕く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
死んでしまいたいほどの悲しみの中で、涙の雨が降る。それでも、人間は生き残ってしまい、繚乱の江戸は日々を続ける。良いラストカットだった。
終わってみるとアニメ鬼平、非常に良いものだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
原作から大胆に改変したことには様々に意見あろうけども、ノスタルジーの麻薬に溺れすぎることなく、原作のエッセンスを絞り出して『今、通用するお話』を仕上げたことは、僕は凄く挑戦的だと思う。
その挑戦には、成功しているとも思う。
世知辛い浮世を扱いつつ、露悪的にも楽観的にもならず、人生のいろんな側面を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
それを目指して選び取った多様なエピソードが、オムニバスの面白さ、いろんなものが真剣に描かれている幅広さを産んでくれて、飽きることがなかった。笑いあり涙あり、血と性に向き合ったアニメだった。
そういう多彩な要素を扱いつつも、流れていく時間の無常さ、『良いことをしながら悪いこともすれば、悪いことをしながら知らず良いこともする』人間の不思議さという、話の芯は全てのエピソードに共通していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
多様性と太いテーマが共存していて、安定感があった。
そういう場の色合いを画面に練り込むために、ざっくりとしたレイアウトや大胆な色彩、構図といった演出がしっかり仕事をして、巧く印象を作ってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
アニメとして絵がビッと背筋が伸びていたのは、お話が緩まない大事な要素だったと思います。単純に見てて面白いしな、良い絵が来ると。
極渋の声優陣を堪能できたのも耳に幸せだったし、池波ファンなら見逃せない料理作画も、毎回気合を入れてやってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月4日
野心と愛に満ちた、非常に良いアニメだったと思います。売れ筋ではないだろうけども、俺のためのアニメで、非常に楽しかった。
ありがとうございました、お疲れ様。