メイドインアビスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
無邪気に地獄の底を目指すリコとレグの前に、壁のごとく立ちはだかる"不動"のオーゼン。大人気なく、度し難く、自分勝手で優しい大人は、子供の無力を厳しく教える。
オーゼンさんの不気味な存在感と実力、強烈なエゴイズムと一片の情が強く感じられる師匠獲得回。
というわけで、先週のほのぼの空気とは打って変わって、オーゼンさんの不気味な影がエピソード全体を覆い尽くす回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
老化という摂理すら弾き飛ばし、人外の膂力とシビアな価値観を身に着けた超人。身体はサイバーアップされ、心は上昇負荷で削れ変質する、アビス適合種。リコの目指す最果て。
『深淵を覗き込むとき…』という古びた警句を引くまでもなく、アビスの中で生き残るということはアビスと同質化する、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
そういう意味では、生まれたときから死んでいて、遺物の力を借りて生き返ったリコは、生粋の『メイドインアビス』である。
産地保証済み活動限界付き、ってわけだ。
レグもまた存在してはいけない遺物であり、アビスの申し子だ。バックリと口を開けた肉の揺り籠、外形化された子宮。呪いよけの箱と同じく、禍々しい存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
そんな邪悪さを引きづりつつ、子供たちは徹底的に無力な『子供』でしかないことを、今回のお話は確認していく。
リコは頭血と鼻血を垂れ流しながら昏倒しワンワン泣くだけだし、レグは自分自身の能力も把握しないまま、自滅に近い形で意識を失う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
三層以下に予測される地獄を生き抜くには、あまりに脆く弱い存在。地上で気づかないまま大人に保護されていた児童たちは、娑婆っ気が抜けないまま降りてきたのだ。
今回オーゼンが見せたハードコアな試練は、その事実を思いっきり叩きつけ、生存確率を少しでも上げるためのイニシエーションだ。血も出るし心も傷つくが、子供が子供であることを唯一認めてくれる、アビス唯一の儀式だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
他の儀式はオーゼンが言うとおり、餌か苗床か染みに秒で変えてくる。加減はない
無論オーゼンは白笛にふさわしく、ネジ曲がった人格をしている。子供をリョナって楽しんでいたのも、一部事実だろう。リコが気に食わないのも本音だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
しかし"不動卿"の深い陣笠で顔を隠し、怪物として暴れまわりつつも、子供を保護する『大人』としての表情がちらほら、垣間見えてくる。
マルルクの最善手をしっかり評価する所。ライザの憧れとなって白笛まで鍛え上げる所。ぶっきらぼうで暴力的ながら、オーゼンの手はただ子供を殴るだけではなく、守り育む手でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
千人楔でサイバーアップされた異形の手は、厳しさと優しさのバランスを取れる。リコを殺しかけた火葬砲とは違うのだ
今回のお話はそんな、オーゼンの大きな手が子供たちを殴り、撫でる話だったのだと思う。怪物めいた迫力と、父母の不器用な慈しみが同居していて、なかなか面白いキャラだなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
彼女と『地臥せり』のおじさんに守られて、リコレグがどこまで鍛え上げられるか楽しみである。またゲーゲー戻すんだろうな
リコ→ライザ→オーゼンという憧れのバトンと、オーゼンが二人の弟子に向ける視線の捻れ方もまた面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
時間から切り離された永世者として、少女が自分と同等の探検家になり、母となるまでを導き、見守り、置いて行かれた女の悲哀が回想されて、リコへの嫉妬と憎悪にバックボーンが付いた。
あの白く赤い揺り籠があそこにあるということは、赤ん坊だったリコはオーゼンに背負われ、死と生をまたぎながら地上に上がったのだろう。アビス内部での一度目の出産、地上に上がって人間としての生を獲得する二度目の出産。その全てにオーゼンは産婆として付き従い、リコには覚えられていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
これから本物の探掘家として鍛え直されることで、リコは三度目の出産を経験することになる。その時もオーゼンは付き従う。リコは年を取らないゴッドマザーの顔を、ようやく覚えるのだろうか。その時、オーゼンは笑うのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
世代を超えた因縁が女たちの間で渦巻いているのは、なかなか濃くていい
オーゼンとライザの間に何があったのかは、まだハッキリとは描かれていない。ただリコがライザに抱くような理屈を超えた猛烈な憧れを、ライザもまたオーゼンに抱いていた。それがライザを白笛に、アビスの底に導き、殺し、別れさせたことは感じ取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
その数奇をオーゼンは、どう感じているのか。
子供たちの無邪気な世界を先週じっくり描いただけに、オーゼンの一筋縄ではいかない人格と愛情が、とても興味深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
わざわざ面倒な芝居を仕込み、マルルクの世話もしているあたり、優しい人なのだと思う。その顕れがちょっと…度し難くアビス的であるだけで。その面倒くささが、とても良い。
オーゼンの複雑な表情だけではなく、リコの窮地に奮戦するレグの侠気、レグの蘇生にわんわん泣きじゃくるリコの純粋さと、ちょっと忘れかけていたものが強調されたのも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
そうだよなぁ、あの子達覚悟決まったアビスシグルイってだけじゃなく、普通に優しくていい子なんだよなぁ…そこ大事だ。
レグは目の前でボッコにされるリコのために怒り、地上に置いてきた約束のために奮起できる、生来の主人公である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
その真っ直ぐさは非常に好ましいが、同時に危うい。浅はかさを交えた対決シーンでそれを強調して、オーゼンの後見と修行に繋げる流れも、納得力が強くてグッド。しっかり鍛えてくれ。
先週メインヒロインだったカルルクくんはコンパクトな出番だったが、『おいおいおいここでバクステこするかよ~このチキンがよ~』と思わせておいて、実は最善手を打っていたという裏切りは、とても心地よかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
ちょっとだけお兄さんでアビス経験も多いところが、あの立ち回りからよく感じられた。
かくしてハードコアな通過儀礼が終わり、『子供』たちは『大人』の庇護に入る。異形で捻くれていても、オーゼンの懐は屋根と安全があるホームなのだ…と同時に、アビスに適応した超人でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
そういう割り切れなさを面白さに変えるべく、どっしり腰を落として進む話だったと思う。面白かった。
初対面の時は恐ろしさや断絶が強調されていたオーゼンの巨体が、ハードな接触と理解を経て、緑の闇の中で手を引いてくれる頼もしさに代わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
衣装の使い分けによる印象の操作も見事で、怪物役と『大人』を行ったり来たりするオーゼンの複雑さを、巧く映像に乗せていたと思う。
しかしオーゼンからはくっそ面倒くさい拗らせ人間の匂いがプンプンしていて、もっと深い所が知りたくなるな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月18日
このアニメ闇の地母神話なので『リコの父親』って不自然なくらい存在が薄いんだけども、自分が座れない位置に滑り込んだ泥棒猫を、オーゼンがどう思ってたかは知りたい。クソ面倒そう。好き