ボールルームへようこそ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
軽井沢の天気は雨のち晴れ、面倒くささが煮凝りのようになりつつ、ぶつかって別れて、意外な人と触れ合って。ややこしいカップル関係が明るい方向に転がりだすまでを、軽妙に描く合宿後編。
ストレスフルな原作の展開を見事に圧縮し、テンポ良く纏める手腕に感服。
つーわけで、先週破裂したちーちゃんの感情爆弾が、落ち着きどころを求めてウロウロ彷徨う話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
一見爆裂したちーちゃんだけに問題ありのようにみえるけども、清春が指摘する通り多々良の曖昧さが大いに問題ありであり、じゃじゃ馬ならせばオールオッケー、というわけではない。
ここら辺のすれ違いと衝突は（休載もあって）原作だと結構しんどいところだったのだが、スキップと改変、ムードの変更を巧く使いこなして、非常にいい塩梅にまとめてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
確かに原作のあの重さで展開すると、初見はすげーしんどそうだし、駆け足ながら肝を抑えた展開でまとめるのは巧い。
今回の話しが激しく衝突しつつ、妙なワクワク感に満ちているのは、合宿というセッティングを活かし、色んな奴らがそれぞれの持ち味や問題点を出す楽しさを、巧く引き出せているからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
ごった煮の楽しさというか、風通しの良さというか。カップルの問題解決に、意外な所から救いの手が伸びる。
意外なことに、二人の問題に一番鋭く切り込んでいるのは清春。もともとセンスがあり、内省的な彼はダンスに関する問題点はすぐさま見抜く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
『男』を信用するチャンスに恵まれなかったちーちゃんと、彼女を受け止めるだけの『男』を自分に育んでいない多々良。その歪さを、清春は的確に言語化する。
のだが、多々良はそんなに頭の良い子ではないので、清春の正論を素直に消化できない。問題解決のための土壌整理、芽吹くための水やりにはなってんだけどね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
清春が言語化する問題のロジックは、視聴者に向いてる気もする。このごちゃごちゃが何故生まれて、どう解決されるのかの説明。
ブラインドダンスやテンポ確認など、清春は二人の間にある『ズレ』をどんどん可視化していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
男女…というか人間二人が向かい合ったとき『ズレ』はあって当たり前で、それを前提としてどう受け入れるか。受け入れた上で、どう一体感のあるダンスを奇跡的に導き出すのか。
天平杯で正面衝突したように、しずくと清春も『ズレ』を無視できているわけではない。長年パートナーを務め、衝突したからこそ『ズレ』を受け入れ、楽しむ準備ができているだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
その領域まで多々良とちーちゃんが行くのは難しいかもしれないが、まずは『ズレ』を認識し、受け入れるところからだ。
同じく天平杯で『ズレ』が表面化し、他ならぬ多々良がそれを埋めるキューピッドになったまこちゃんは、ちーちゃんに接近していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
『前の女』への嫉妬をメラメラ燃やすちーちゃんに、まこちゃんは多々良が与えてくれた芯の強さを全面に出して、嫉妬を超えた繋がりを構築していく。
パートナーに恵まれた、遊ぶ余裕のある別世界の女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
まこちゃんをそう見ていたちーちゃんは、まこが素直に自分をさらけ出すことで変わる。
木立を歩きながら過去、いつか兄と離れていく未来、それまで自分以外に隣を譲る気がない現在を素直に語るまこは、もう出すべき自分がない女の子ではない。
まこちゃんに与えた自尊心とタフさを、多々良が自分のために発見しなきゃいけない状況のねじれも面白いが、思い詰めて目を塞いでいたちーちゃんが、まこの達成した成長の価値、たどり着いた輝きに目を見開くす描写も良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
色々クッソ面倒くさいけども、そういう部分を見落とす子ではないのだ。
いかにも『女の子』っぽいまこと、『男』を演じてきたハンサムなちーちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
正反対に見えるふたりが、ダンスへの真摯さで繋がる。多々良との関係が一歩前に進むとき、まこの視線/それを受ける己への自負をジャンプ台に飛躍するところまで、二人の関係が変わる。爽やかな交流で、とても良い。
ちーちゃんも多々良とは別の意味で、すごくフツーに他人の『眼』を気にしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
恥ずかしいところを見られたくない、劣っていると思われたくない。
そういう意識が彼女を苛んでもいたんだけど、まこと歩調を合わせることで、他人の視線は心地よいプレッシャーになる。対人意識変化の面白い描写だ。
一方、多々良の『男』を引き出し、あるいはナイーブな部分をケアするのは、やっぱりしずくになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
呪いのように、多々良にアスリートであることを強要してしまったことを謝り、手を離す。その優しさが、かつて母にされたように、憧れから見捨てられることへの多々良の恐怖を、グッと表面化させる。
愛する人に見捨てられたくない。愛する人の心に、自分を刻みつけたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
『見られ』たい。
しずくが多々良から引っ張り出した反応は、多々良が何故競技ダンスを選んだのかという『原点』へと彼を帰還させる。
多々良がそこに戻ったからこそ、雨降って地固まる結果にもなったのだろう。
グランプリに出たい、勝ちたいという欲求は、多々良に『原点』を見失わせ、ダンスへの衝動をボヤケさせていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
勝つために勝つのではなく、より大きなものにたどり着くために勝つ。天平杯でも辿った道を、今度はパートナーを変えて歩く必要性。そのためには、ちーちゃん相手に怯えてられない。
しずくと向かい合うことで、多々良は『見られる』自分と同時に、憧れた相手を『見る』自分にも出会った。それがダンサー多々良の武器でもあり、感動の『原点』でもある行為。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
そこに立ち返ってみれば、面倒くさいパートナーは尊敬できる人物であり、自分を刻みつけたいと思えるほどの相手だと判る。
多々良としずくの対話は、少年少女の感情のもつれ合いを飛び越えて、ダンスという競技、表現行為そのものにも刺さっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
誰かの心に刻み込まれるほど、力強い何かを宿して踊る。それは一種の奇跡だ。それを『見る/果たす』ことで、人生のいろいろなものが変わる。それを、ダンスは可能にする。
そういう大きな価値が、少年少女の小さな欲望、絡み合った人間関係と巧く連動していてる。ともすれば冷たい空疎になってしまう理想に、ダイアログを介してキャラクターの体温が宿る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
あのシーンはそういう『表現』になっていて、とてもいいな、と思った。
羞恥心、潔癖さ、不安、不信。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
二人を覆っていた人格の殻はなかなか根が深くて、一回思いっきり衝突させないと、ぶっ壊れない。
そうするためにマリサ先生は圧力が上がる合宿場に引っ張り出したわけだし、その目論見はなんとか巧く行った。雨降って地固まるためには、思い切り雨を降らす必要があった
ザンザン降りだと心も滅入ってくるもんだが、今回のお話、あらゆる道具立てを駆使してストレスコントロールがなされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
『下がる展開は肌色で塗れ』という格言（僕が今作った）に相応しく、気合の入った裸体描写がビュンビュン唸る。マリサ先生、なんでキメッキメのポーズ一人で取ってんですか。
肌色描写すらダンスに繋がるのが、このアニメの面白いところ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
服に包まれてはなかなか見えない、踊りを支える肉体の説得力が先に立って、『エロいんだけどそれだけじゃない』描写になってた。ガジュたちの仕上がった肉体と、ダンサーになりかけの多々良の半マッチョの対比が面白い。
風呂場の裸身よりも、レッスン場で多々良を挑発するしずくの表情、心を通わせるダンスのほうが、エロティシズムは強く思えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
性の躍動は、裸でいるとか、性器があるとか、そういう条件で励起しない。一般的なエロティシズムを飛び越えた所に、ダンスの身体感覚があるし、それを巧く切り取ってきた。
ブラインドダンスのシーンで、ちーちゃんは多々良と『繋がる』ことを怖がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
どう聞いても『童貞と処女の初夜』なやり取りといい、セックスの暗喩は計画的、かつ上品にそこらじゅうに張り巡らされ、作品にスキャンダルとエロティシズムを与えている。身体がテーマである以上、上手い挑発だなぁと思う
他にもまことちぃーちゃんが森の中を歩くシーンの、足元アップが妙に気合入っていたり、『身体』に気合い入れて描くこのアニメらしさが、とても良く唸っていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
一足先に橋を渡る小さな女の子と、置いてけぼりにされるハンサムな女の子。あのシーンの暗喩と詩情も良かったな。
モノローグを原作から削った分、色々取りこぼされている部分もあるのだが、都大会でライバルを張る釘宮さんの存在感は、なんとか維持されていている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
井戸川さんの描写が減ったことは、本当に残念です…そこら辺拾ってたら、このテンポでストレス駆け抜けられないってのは判るんだが。
とまれ、ガジュの気のいいアンチャンぶりもいい感じに描写され、色んなキャラに光が当たる回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
二人だけだったら抜け出せない迷路を、時に厳しく、時に挑発的に、時に親しげに一緒に歩いてくれる人たちのありがたさ。軽井沢の爽やかな美術もいい仕事をして、風通しの良いエピソードとなりました
まこやしずく相手にはできなかった、むき出しの自分をぶつけ、対話していくパートナーシップ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
都大会開幕を前になんとか、自分たちなりの『男』と『女』を見つけたようにみえる二人は、決戦の舞台に飛び出す。それが急ごしらえのハリボテか、揺るぎない魂の土台なのかは、ダンス自体が審査するだろう
二期は原作を小気味よく取捨選択し、作画カロリーも適度に割り振って、ちーちゃんの面倒くささ、可愛さ、それで引き出される多々良とダンスの新たな側面を、見事に際立たせたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月30日
このアニメが踊るアニメである以上、そういう構図に背骨を通すのはやっぱり競技ダンスの現場だ。決戦、楽しみです。
